追放から始まる英雄譚~心優しき青年は真の力に目覚める~   作:おとら0205

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双子の姉妹

 はて、何処かで会ったことがあるのか?

 

「あ、アンタは……」

 

「はい?」

 

「貴族様がこんなところに何の用だい?」

 

「……俺、貴族って言ってませんよ?」

 

「……いやいや、その見た目と立ち振る舞いは、まんま貴族じゃないさ。傷ひとつない綺麗な顔に、自分は上位者という態度」

 

 ……貴族に相当恨みがあるようだな。

 

「もしそう見えたなら申し訳ない」

 

「な、なんだ!? アンタは!?」

 

「アテラさん、彼は貴女が思うような貴族ではないわ」

 

「院長……貴族は貴族だっ! 自分達が偉いと勘違いして威張るクソ野郎だっ! アタシ達と何が違う!? ただの人間じゃないかっ!」

 

「……否定はできない。そういう輩がいることは。だが少なくとも俺は、そんな輩に成り下がったつもりはない」

 

「口でならなんとも言えるさっ!」

 

「アテラさん、落ち着いて」

 

「っ〜!! アタイは帰るっ! 」

 

 その女の子は、足早に去っていく。

 

「すみません、タイミングが悪かったですね」

 

「いえ! こちらこそ申し訳ありません! せっかく来て頂いたのに……」

 

「院長が謝ることはないですよ。あの女性は?」

 

「アテラさんといいまして……最近、孤児院に来てくださっている方なのです。以前から、お見かけはしていたのですが……」

 

「あのねっ! 怒らないで! 」

 

「あのお姉ちゃんいい人なのっ!」

 

「遊んでくれたのっ!」

 

 子供達が真剣な表情で訴えてくる。

 

「怒ってないよ。少し行き違いがあっただけで。さあ、次は俺と遊ぼうか?」

 

「「「わぁーい!」」」

 

 子供達とひとしきり遊び、その場を後する。

 

 

 

 ついでに、スラム街に向かうことにする。

 

 シノブが無茶をしてないと良いが……。

 

 あいつ、張り切り過ぎるところがあるからなぁー。

 

 まあ、それが可愛いとか思う自分もいるけど。

 

 しかし……やはり、さっきの女の子が気になる。

 

「何処かで会ったことがあるわけではない?」

 

 うーん……何かが引っかかる。

 

「ん……? え?」

 

 路地裏にさっきの女の子がいる……。

 しかも……あれは!

 

「大丈夫ですか!? 血が出てますよ!?」

 

 肩から大量の血が出ている……!

 

「ん? 誰だい?」

 

「え? ……先ほどお会いした者ですが……」

 

「なんだって……? 詳しく聞かせてもらえるかい?」

 

 あれ? 随分と雰囲気が違う。

 容姿や口調はおんなじだけど、空気感が柔らかい。

 だが、その前に……。

 

「失礼します」

 

「な、なんだい?」

 

「かの者の傷を癒したまえ——ヒール」

 

「な、何をするんだっ!?」

 

「治療代は頂かないのでご安心ください」

 

「……嘘をついてる目じゃないね。それにつくメリットもないか。ただ、礼は言っておくよ。助かったよ、ありがとう」

 

「いえ、俺が勝手にやったことなので」

 

「ははっ! 変わった奴だね。 アンタみたいな奴もいるのか。私が見てきた教会の人間はクズばかりだったからね」

 

「俺は教会の人間ではないので。えっと、それで……」

 

「ああ、そうだった。ちょっとドジ踏んじまってね……この有様さ。アタイに似た奴を知っているんだろう?」

 

 ……ということは、別人ということか。

 

「ええ、多分ですが。貴女そっくりの女の子でした」

 

「女の子……?」

 

 何やら、めちゃくちゃ睨まれれる……!

 あれ? やっぱりさっきの女の子?

 

「え、ええ……貴女と同じ可愛らしい女の子でした」

 

「……アンタ、命拾いしたね。回復してもらってなかったらぶん殴るところだったよ」

 

「へ?」

 

「アンタ、私がいくつに見える?」

 

「十四か、十五くらいかと……」

 

「はぁ……まあ、仕方ないけどね。アタイはこう見えても——二十三歳なんだよ」

 

「……はい?」

 

 いや、どう見ても大人の女性には見えないぞ……?

 幼児体型というか、丸みというものがないというか……。

 

「今、何を考えた?」

 

「いえ、何も」

 

「……まあ、良いさ。それで、何処で見たんだい?」

 

「えっと、貧困街にある孤児院で会いましたね。ところで、双子ということでよろしいですか?」

 

「ああ、その通りさ。アタイ達は双子の姉妹でね。アタイの名前はアテナ、あの子はアテラさ。この国のスラム街出身でね……ただ、生きているとは思ってなかった……」

 

「何か事情があるのはわかりましたが……一つ聞いても良いですか?」

 

 さっきの傷を癒す時、その傷口が……。

 

「あの傷口は……弓ですか?」

 

「へぇ……わかるのかい? どうやら、ただの治療師ではないようだね?」

 

「申し遅れました。俺の名はユウマと申します。冒険者ランク六級の者です」

 

「その若さでかい?アンタ、中々やるね。実は、アタイも冒険者なんだ、ランクは五級のね。冒険者歴は八年って感じだよ」

 

「先輩でしたか、これは失礼しました。それで……」

 

「ああ、そうさ。その双子と射ちあってね……盛大な姉妹喧嘩ってところさ」

 

「喧嘩というレベルを超えているような……」

 

「まあ、そうだね。でも、会うのも十年ぶりだったしさ」

 

「それは良いとして……彼女も弓を使うと?」

 

「ああ、同じく優秀なスナイパーになってたよ。アタイとしたことが、良いのをもらっちまうくらいに。もちろん、あっちにも手傷を負わせたけどね」

 

 ……それだ、ずっと感じてた違和感は。

 

 一瞬だけ見えた立ち姿、スナイパーという言葉。

 

 ……もしかして、彼女があの時のスナイパーなんじゃないか?

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