追放から始まる英雄譚~心優しき青年は真の力に目覚める~   作:おとら0205

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動き出す物語

 ……ふむ、どうしたものかのう。

 

 中々の好青年じゃったが……。

 

 男爵の次男坊では、ホムラをやるわけにもいかん。

 

「じゃが……たった一人の孫娘。幸せになって欲しいと思う」

 

 亡き息子夫婦も、そう願っているじゃろう。

 しかし……我が家は王家を守る()()()()

 我が家が絶えれば、ティルフォング家が更に増長する。

 

「最悪の場合は、養子を迎えることも視野に入れておくかのう」

 

「随分と気に入ったご様子で」

 

「ノインか……お主から見てどうだ?」

 

 こやつは時期執事長となる男。

 まだ若く、少し調子に乗ることが玉に瑕だが……。

 諜報から護衛、単純な執事とての能力、人を見る目などが優れている。

 

「それは……婿としてでしょうか?」

 

 ユウマ殿の身辺調査や家族構成、趣味嗜好や戦闘能力など……。

 此奴には一通り調べてもらった。

 そして最後に、儂の目で確認をした。

 

「ふむ、気が早いが……そういうことも視野に入れておる」

 

「ホムラ様が惚れ込んでますからね。私から見ると……甘いですね」

 

「やはり、そこかのう」

 

 わしもノインと同じ意見だ。

 優しいといえば聞こえがいいが、それは甘さにも繋がる。

 我が家は甘いだけでは、当主としてやっていけない。

 

「しかし……単純に好きですけどね。真っ直ぐで、人を憎まない姿勢には好感が持てます」

 

「ホホッ! 気があったな!」

 

 そう……そこじゃよ。

 彼の環境ならば、憎むか腐るかのどちらかになる。

 しかし……彼はそれでも尚、真っ直ぐに生きようとしておる。

 あんな若者も、まだいたんじゃな……。

 

「甘いのならば、周りがフォローすればいいので。完璧であったら、私などいりませんしね」

 

「お主のいう通りじゃな。まだ若いし、これからいくらでも学べるか……儂が直々に仕込んでも良いか」

 

「それは怖いですね、伯爵の方すら震え上がる貴方の教えですか」

 

「奴らはなっとらん。領地は預かっているだけで、本来は国の物。それを何を勘違いしたのか私物化する奴もおる始末」

 

 儂も指導係や、御意見番のとしてやってはいるが……。

 いかんせん、歳には勝てん。

 

「そうですね、ほとんどは真面な人ですが、2人ほど問題がある方がいますね」

 

「サウスの小僧と、ザガンの小僧か……」

 

 あの2人が、それぞれ野心を抱えているのはわかっている。

 彼奴らを領主にしてしまったのは、儂の過ちの一つ。

 丁度息子夫婦が亡くなり、儂が意気消沈してしまっていた時期に決まった。

 

「悔やまれますね……ティルフォング家が後押ししていましたから」

 

「……だが、このままにはしておかん。何か隙があれば……」

 

「オーレン様、お嬢様がこちらに来ます。帰ってきたようですね」

 

「そうか、では終わりにしよう」

 

 ユウマ殿のことは気づかれるわけにはいかない。

 

 

 そして、1分ほどすると……。

 

「お祖父様!」

 

「こらこら、扉は静かにと……」

 

 やれやれ、お転婆なのは母親に似たようだ。

 

「す、すみません……でも、大変なんです!」

 

「うむ……ノイン」

 

「ええ、お茶を入れてきます」

 

「ホムラよ、いつも言っているな?」

 

「も、物事は冷静に正確に……」

 

「そうじゃ、まずは落ち着くとしよう」

 

 

 

 ノインの入れた茶を飲み、ホムラを一息つかせる。

 

「で、どうしたのじゃ?」

 

「ゆ、ユウマさんのパーティーに入れたのです!」

 

 知っておるが。

 

「そうか、良かったのう」

 

「はいっ! とっても素敵で、私が落ち込んでたら励ましてくれて……あっ! そうじゃなくて……」

 

「お嬢様、ベタ惚れですね」

 

「なっ——!? 何をいうのですかっ!?」

 

「違うのですか?」

 

「ち、違くないけど……」

 

「こら、ノイン。話の腰を折るでない」

 

 此奴はホムラをからかうのは趣味じゃからな。

 

「申し訳ありません。それで、如何しましたか?」

 

「えっと……今、受けている依頼が……」

 

 

 

 ホムラから一通りの話を聞く……。

 

「なるほど、其奴が怪しいと……」

 

 ほう……そんなことになっておるのか。

 ギルドマスターめ……儂に頼ることを良しとしない姿勢は評価する。

 だが、まだまだ若い。

 いくらギルドマスターとはいえ、抱えるには少し厳しい案件じゃ。

 

「お祖父様の目から見て、サウス伯爵はどういった方ですか? 私は、少し嫌な感じがしましたけど……いやらしい意味で」

 

「あの小僧には野心があるが、それを悪いとは言わん。しかし、その方法がよろしくない。自分ではない誰かを不幸にして叶えようとしておる」

 

「そ、そうなのですね」

 

「して、どう動くのじゃ?」

 

「えっと、ギルドマスターの通知が来てからになります」

 

「ふむ……ノイン、すぐに国王に面会を」

 

「はっ」

 

「へっ? お、お祖父様?」

 

「ホムラ、よく知らせてくれた」

 

「で、でも、あまり関わることを避けていたのでは? 私は、少し相談に乗ってもらえたらいいなって……」

 

「確かに儂は御意見番で、国王の後見人じゃ。しかし、権力を行使することを好まない。そうするとただでさえ多い敵が増えるからのう。それに、老害がいつまでもでかい顔をするものでもない」

 

「え、ええ……」

 

「しかし、証拠が揃いつつあるなら話は別じゃ」

 

 きな臭い動きはしていたが、伯爵は領主権限を持つ。

 いくら儂とて、おいそれと簡単手が出せるものではない。

 儂でも気づかないという事は、ティルフォング家の小僧が絡んでいるな。

 

「で、でも、ユウマとかには言ってなくて……」

 

「わかっておる、ユウマ殿に正体を明かしていないことは。お主達が解決できるなら、それはそれで良い。しかし、保険は必要じゃからな」

 

「お祖父様……ありがとうございます」

 

「礼はいらん。可愛い孫娘のためではなく、公爵家当主オーレン-バルムンクとして動くだけじゃからな」

 

 何故なら相手の後ろにいるのは……。

 

 我が国に二つしか存在しない公爵家、当主ティルフォング-ターレス。

 

 ならば、儂が出ていっても誰も文句は言えまい。

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