追放から始まる英雄譚~心優しき青年は真の力に目覚める~   作:おとら0205

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幕間~とある貴族の話~

 ……ようやく、目障りなのがいなくなったか。

 

 優秀な次男など邪魔以外の何者でもない。

 

「父上!」

 

「バルス、これでお前が名実共に後継者だ」

 

 家臣の反対はあるが、奴はもう出て行ったからな。

 

「はいっ! まったく次男のくせに家臣に取り入ったり、優しく接したりしてせこい奴でしたよ」

 

「そうだな、当主とは家臣を使う側の人間だ。そこに優しさなどいらない。舐められてはいけない、それが相手をつけあがらせる」

 

「おっしゃる通りですね。私も見習って厳しくいこうと思います」

 

「ああ、そうするといい。お前は俺に似ているしな、奴とは違って」

 

「ええ、俺は父上に従います。それで結婚ですが……」

 

「ああ、準男爵の一人娘に決まった」

 

「準男爵の一人娘ですか……」

 

「なんだ?もっと上の爵位が良かったか?」

 

「い、いえ、てっきり対等の男爵かと思っていたので……」

 

「そうすると力関係が難しくなるぞ?どっちが上か明確な方が上手くいくと思うが……」

 

「これは失礼しました。そこまでお考えのことでしたか。確かに父上のおっしゃる通りですね」

 

 それに……バルスの力では扱いきれまい。

 俺に似て何もかもが平凡な男だからな。

 

「わかったならいい」

 

「それでは、失礼します」

 

 バルスが部屋を出て行った後……俺は執務室の机で考え込む。

 

「俺は正しい。優秀な次男などお家騒動の元だ。決してシグルドに嫉妬したり、ユウマに嫉妬しているわけではない」

 

 ……誰に言い訳をしている?

 ……俺は間違っていない。

 誰が何と言おうとも……。

 

「貴方、よろしいですか?」

 

 エリスか……ユウマのことだろうな。

 

「ああ、入るといい」

 

「失礼します。それで、私に断りなく追放とはどういうことですか?」

 

 相変わらず気が強い……そこに惹かれたが……今はただ憎い。

 聖女と言われたお前は、平凡な俺には不釣り合いだ。

 お前を見るたびに——俺は惨めになる。

 

「何故、お前の許可がいる? 当主である俺の勝手だ」

 

「私の息子ですっ!」

 

「それは本当か?」

 

「……どういう意味ですか?」

 

「奴は——ほんとに俺の子か? 俺と似ても似つかぬ姿、その剣の才能……」

 

「私の不貞を疑っているのですか?」

 

「……シグルドとの子供なんじゃないのか?」

 

 シグルドはこいつに懐いていた。

 こいつもシグルドを可愛がっていたしな。

 

「なっ——!? あ、あんまりです……」

 

「では、何故シグルドに会っていた?俺が知らないとでも?」

 

「そ、それは……」

 

「もういい、さっさと消えろ」

 

「……もう、私の言葉は届かないのですね……」

 

 そう言い残し、エリスは出て行った……。

 

「俺は……」

 

 ……後悔しても遅い。

 

 俺は既に……政治の世界に触れ——腐っている。

 

 もはや——誰の言うことも信じることができない……。

 

 

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