翌日、ジムリーダーのシズイさんへ挑戦し、無事にバッジを貰うことが出来た。水タイプの使い手と聞いていた時からサンダースが活躍してくれるとは確信していたけど、それでもかなり苦戦した。特に、ブルンゲルの特性ででんき技を封じられた時は流石に焦ったけど……シズイさんの手持ちに水、地面のような複合タイプのポケモンがいなくて、本当に良かったよ。ジムから出ると近くに人が……ヒュウか!
「お、バッジを揃えたか。お前、分かっていたけど凄いな。本当ならポケモンリーグに挑戦……だけど、プラズマ団が先だからな!」
それを言うならヒュウもバッジを揃えているんだし、ヒュウだって凄いじゃん。
ザバーン!
ん、何の音……って。
「よう、おはんら。聞こえたけど、プラズマ団って何しておる連中よ」
シズイさんか。あれ、でもどうやって……ジムの反対側まで泳いできたんだ?
「プラズマ団ってのは、妹の……いや、人のポケモンは奪うし、ポケモンの力でイッシュを氷漬けにして支配しようと目論んでいる、悪い連中だよ。シズイさん知らないのか?」
「知らん!海で暮らしているとな……そういうこと、あまり気にならん」
ここまで堂々と言われると、そ、そうですか……としか言えないなぁ。
「なにしろ海は、どんな川をも受け入れるからなぁ。で、おまはん、プラズマ団は悪いと思うか?」
「はい」
「そうか、悪いから戦うのか」
「悪いと言うのは、どのように悪いんじゃ?」
どんな風に悪い、か。パッと言えることは……
「自分たちの為に、無関係な人を傷つける所、だと」
ヒュウの妹にしても、他の人のポケモンを奪うことにしろ、ソウリュウシティを氷漬けにしても平気でいられる所にしても。
「そうか、確かにそれは困るなぁ。一本なら兎も角、沢山の川を汚したら今度は海が汚れてしまうたい。じゃあ、おはんたちはどうしたい。そのプラズマ団を倒したとして……別の誰かが、プラズマ団みたいなことをしないとは言えるんか?」
「それは……」
分からない。プラズマ団には下っ端がいるけど、倒したらそれで解決する問題なんだろうか。
「…………」
ヒュウも思う所があるのか、黙っている。
「そうか。先にも言ったが、おいはプラズマ団が今までどんなことをしてきて、どんな被害を与えてきたのか知らん。けどな、誰かと対峙するというのは、誰かの考えと自分の考えに違いがあるだけたい」
自分の考えとプラズマ団の考えが違うだけ……
「おいはおはんらとの対戦を通して、信じているものがある、と感じた。それは自分の考えだけじゃなく、ポケモンに対してもたい。んじゃまず、それをおはんの言葉で語れるようにならんと。そうすれば、自分が何をしたいのか、何を望んでいるか今よりはっきりわかるたい」
………………
「さてと……」
「……おおらかというか、無責任と言うか、なんか気勢を削がれたけど、相手はプラズマ団だからな!」
「気を引き締めろ、ってその前に……何処にいるか探さないと!」
あぁ。やっぱりまだ、見つかっていなかったんだ。
「今までは何処を探していたんだよ」
「え、ジャイアントホールだけど?」
そっちまで行ったのか。でも、俺がヒュウの立場なら、確かにジャイアントホールに行くかも。
「後は、何処を探していない?」
「21番水道と22番道路だな……よし、手分けするぞ。お前は22番道路を頼む!」
まぁ、あの船だ。夜の間に空を移動している可能性もあるし、陸にあるのか、海にあるのかすらも分かっていない。確認の為にも行ってみよう。
さて、ヒュウに言われるまま22番道路に来て、トレーナーと戦いながら空飛ぶ船が来ていないかを聞いてみたけど……収穫はゼロ、昼過ぎからこの辺りを探しているんだけどなぁ。まぁ、昨日もヒュウが探していたんだから、そりゃ収穫がないことも考えていたけど……いや、前向きに考えよう。次に来る時はスムーズに抜けられるはず。それに、メンバーもレベルアップしたということは一層、戦う力を蓄えたってことだ。合間でポケモンも捕まえて図鑑も埋められているし……まぁ、そんなことをしていたから太陽がもう西に傾いているんだけど。
「………」
もう、この一帯のトレーナーは倒したはず。なのに、さっきから視線と言うか、重圧というべきか。俺を見ろ、と言わんばかりの気配がする。ベテラントレーナーだろうか、でもじならしのような音は出せないはず。では一体、誰なんだろう。こっちの方みたいだけど……
凄 く 屈 強 な ポ ケ モ ン が こ っ ち を 見 て い る。
この存在感は一体……
「今、貴方の眼前で存在感を放つそのポケモンは……テラキオン!」
うぉっ、びっくりした……というか今の声って。あ、姿が見えてきた。
「えーと……あの特徴的な髪型は」
アクロマさん……だったよな。
「久し振りです。テラキオンはかつて戦いの炎からポケモンを守る為に人と戦った、3匹のポケモンの1匹です」
そんなポケモンが……こんな所に。
「プラズマ団が発する危険な臭いをかぎ取り、彼らに対抗できる強きポケモントレーナーを求めているのでしょう!」
かつて人と戦ったポケモンが、俺の前に……
「貴方の前に現れたのは興味深い出来事……!」
「それはさておき。貴方は……プラズマ団と戦うのですか?」
まさかシズイさんに言われたことを、早速聞かれるとは。でも、大丈夫。俺の答えは決まっている。
「はい。俺はジムバッジを集める為にイッシュ地方を旅してきました。そこで色々な人に会い、対戦をしてきました。今もお世話になっている人はいるし、トレーナーじゃなくても尊敬できる人もいました。だけど、プラズマ団は自分たちの都合でソウリュウシティを氷漬けにした。そして恐らく、他の街でもやるつもりだと思います。その中には俺が世話になっている人や尊敬している人や場所、母さんがいる街も入っているはずです。その人達は俺のようにポケモンバトルが得意じゃない人も多い。でも俺が、ヒュウが動くことでそれを防げるのなら、俺は戦います」
ヒュウとは違うけど、これが戦う理由だ。これまでの旅やアベニューでの活動を通して、イッシュ地方の多くの人と関わりを持った。確かにプラズマ団のようなポケモンと人との関わり方について、意見としてはあってもいいのかもしれない。けれど、従わない人に対して暴力で解決しようとするのは話が違う。
それは多くの人やポケモンを傷つけた上で、自分の言うことを聞け……と言っているようなものだ。そう言われて、本心からプラズマ団の言うことを聞く人などいるものか。
そして何より、俺が会ってきた人の多くがポケモンと暮らしている。そうした人を脅かすってことだろう?
「その心意気は買いましょう。ですが、イッシュ地方の各地には凄腕のジムリーダーがいるでしょう。その人達に任せよう……とは思わないのですか?」
「ジムリーダーはジムのある街も守っています。ソウリュウシティみたいなことが起きれば、街を守る為に奔走するでしょう。だからこそ、自由に動ける俺たちが動くんです」
アクロマさんが俺の返答を聞いて、満足したように頷いた。
「なるほど。であるのならば、自分のポケモンを守れる強さを持つのです。ポケモンに守ってもらうだけが、トレーナーではありません!」
そう言われると気になるのは、動きの素早いダークトリニティ達だ。彼等相手にはどうしたらいいんだろう。
「ポケモンだけじゃなくて、俺自身も体を鍛えろ、ということですか」
ありゃ、ボケたつもりじゃななかったんだけど、アクロマさんの眼鏡が落ちかけたぞ。
「……それも方法としてあるでしょう。ですが、何よりも!」
「トレーナー自身の心が強いからこそ、ポケモンのことを思うからこそ、ポケモンも力を発揮できる!」
なるほど。
「そうですね。ポケモンにも意志がある。俺のポケモン達も本当は他のポケモンを傷つけたくないのかもしれない。だけど、俺を信じてくれているから、窮地でも迷わず技を使ってくれます。勿論俺も、こいつらなら勝てるんだと信じて戦っています」
「よろしい。では、これは私からの餞別です。試作品なのでそうですね……アクロママシーンとでも言っておきましょう」
し、試作品だし、うん。
「それは私が作った、ポケモンを活性化させる装置の試作品、戦っているポケモンには使えませんが、何かの役に立つでしょう!」
おや、もう行くのか。
「では、あなたとポケモンの旅の無事を祈って!」
それにしても風のように現れて、言いたいことだけ言って去っていったな、あの人。あれ、こっちを振り返ったぞ。
「ああ……そう言えば、21番水道にある海辺の洞窟の中で4番道路を思い出すような、懐かしいものを見ましたよ」
……つまりは、そっちに行ってみろ、と。まぁ、こっちを探してトレーナーから話を聞いても収穫がないし、切り上げるにはいいタイミングかもしれない。
というか4番道路はえ……とあぁ、アベニューとヒウンシティを繋ぐ道路だっけ。
確か、ヒウンシティの端でアクロマさんと初めて戦って、それから……あれ、そう言えばポケモンに道を塞がれていたんだっけ。もし、アクロマさんの言う通りのものがあるのなら……行ってみるしかないな。
翌日、ヒュウと手分けして朝から海辺の洞穴を進んでいると、何時か見たような光景を見た。岩が鎮座していてその奥には出口がある。岩は鎮座していて動かないように見えるけど、地面を良く見れば少しだけ掘った跡がある。とういことは、この岩はポケモンの可能性がある。
「ところでこれ、どうやって使うんだ?」
ボタンを押すと何か変な感覚が……なんだろう、電波、音響?
「あ!」
動き出したイワパレスが俺を見てとびかかってきた!
イワパレスにはどいてもらって先へ進むと……目の前には小さな砂浜と……プラズマ団の帆船があった。やっぱりあの人、これを見越してあれを渡したってことだよな。前々から疑問だったけど、あの人はやはり……
「見つけたか、流石だな!」
「……しかし、何処からあがればいいんだ?」
今のプラズマ団の船には、PWTでみかけたような入り口が見えない。
「うーん。鳥ポケモンで入ろうとしても、狙われるだけだよな……」
俺にはウォーグルが、ヒュウにはケンホロウがいるけど……高さがあるからバレるよなぁ。
「ちょっと待っとき!」
え、ちょ?今の声はシズイさんだよね!?
「これで大丈夫たい!」
あ、入り口が……!
「あんた、プラズマ団と戦うつもりはないんじゃ?」
「おうともよ、おいはプラズマ団に恨みはない。ほんまに悪いことをしているかも、知らん。みんながあいつらは悪い……そう言っているからって、何にも考えずプラズマ団は悪いと決めるのは、おいの流儀ではない!」
声、大きいって!
「だが、おいがいいと感じた、おまはんらが困っとる。それなら、助けてやらねばならん。これがおいのやりたいことじゃ!」
「……あんがと」
「ええか。おはんら……信念を持てよ。奪われたポケモンを探すのでもいい、イッシュを氷漬けから守るためでもいい。理由は何でもいい。自分は何故そうするのか。信念の強さが、ポケモンと自分に力をくれるたい!」
ん、シズイさんは何処を見て……
「まぁ……今こうして騒いでしまったから、何人か出てきたけどな!」
……まぁ、どっちみち突撃するしかなかったし。
「ほな、気を付けて行けよ?」
そのまま潜ってしまったよ。まぁ、犯人がシズイさんって、バレちゃうと狙われるし仕方ないか。
「なぁんだよ……最後、締まらない人だなぁ。とは言え、あの人なりの優しさか」
「ああ、そうだと思う」
「さ、行くぜ!」
プラズマ団の船に入り込んだ俺達は、以前潜入した時に入った場所へ向かおうとしたんだけど……行こうとしていた場所はバリアによって、先へ進めないようになっていた。偶々居合わせた下っ端を倒して聞き出したところ、パスワードを入力して解除する仕組みらしく、解除の仕方やパスワードを他の下っ端が知っていることが分かった。ところで、何でわざわざバリアにしたんだろ。鍵でいいのでは?
再び甲板に出ると、中へ言い争いをしている下っ端から見えないように移動して、船内に侵入する。が、そこには……
「おっとガキ共、ここから先は通さないわよ!」
「ここは俺達のホームだ。卑怯とは言わせないぜ!」
待っていたとばかりに、プラズマ団の下っ端達に囲まれた。ざっと見ても10数名はいる……あまり時間は掛けられないのに、厄介だな。
「おい、キョウヘイ」
どうした、小声で。
「なんだ」
「ここは俺がやる。お前はパスワードを探してくれ」
無茶するね。
「だけど、人数が多い。大丈夫なのか」
「だとしても。下っ端なら、俺だけでも何とかなる」
ボールを三つ取り出して、早速やる気か……分かったよ。とは言え。ボールを構えているのは10人くらいか。いきなり10対3になるのはまずいな。最初は俺も一緒に戦って、と。
「全員の相手はきついだろ。俺も少しは戦うぞ。けど、半分くらいに減ったら、先に行くからな」
「助かる。けど、あまり無茶すんなよ」
「それは、こっちの台詞!」
下っ端達との戦闘になったけど、彼らはあまり連携が得意ではなさそうだった。その隙をついて、手持ちの数を減らさないまま数人の下っ端達を倒したタイミングで……
「俺は行くぞ」
「ああ、いつも助かる」
「ウインディ!」
ウインディに乗って下っ端の群れを抜ける。
「くそ、ガキ1匹逃がしたぞ!」
「追え!」
「っと、それはさせねえぜ」
ヒュウの声か。確かにまだ手持ちに余裕はあるだろうけど……
「直ぐに見つけて戻るからな!」
その後、暫くの間、プラズマ団の船を駆けまわって、片っ端から下っ端達を倒していた。そして二十名は倒したところでようやくパスワードを揃える為の相手を倒し終えた。
「くそ」
「約束通り、教えろよ」
「分かったよ。パスワードは────だ」
ルカリオから見ても、嘘をついている様子はないらしい。
「けど、だ……戦える奴はこっちに来てくれーーーー!」
しまっ!
「勝てなかったなりに、足掻かせてもらうぜ」
これは、不味い!
「何とか下っ端達を撒かないと……」
何かいい方法はないか。部屋の死角に隠れて……いや、足音が多い。分担して探されたら意味がない。
「いたぞ。あのナッシー頭だ!」
だ、か、ら、なんだよアイツら。負け惜しみとは言え、俺達のことをハリーセン頭とナッシー頭、って!俺はせめてバイザー野郎にしておいてよ!
「数で押せ!」
とはいえ、戦闘は避けられそうにないか。もはや、さっさと片付けて逃げるしかないか……!
「ちくしょう、やられた!」
「次だ、次だ!」
「またやられた!」
倒せるには倒せるけど、かなり疲れるな。他の下っ端がポケモンを回復させている間に、別の下っ端の相手をさせられている。これじゃあ、回復する余裕もない。全くどうしようか。いや、違う。律儀に1人1人相手をしている場合じゃないんだ。例え、不利だったとしても。きっと、普通に言っても効き目が薄い筈。なら、母さんがよく見ているドラマだと……そうだな。指を上に向けて、手招きをする。敵役ならきっと……相手を見下すように言うよね。
「どうした下っ端共。どうせ1人でも、3人でかかっても勝てないんだ。けどもしかしたら……全員でかかれば、勝てるかもしれないなぁ?」
出来るだけ見下ろすように笑みを浮かべて……
「ガキが、舐めやがって!」
「潰す!」
「いくわよ!」
「舐めやがって、かかれ、かかれ!」
これは賭けだ。けど、道が出来れば一気にウインディで駆け抜ければいい!
「……くそ」
「何よ、こいつ……」
「また、負けた……」
「こいつ、ナッシー頭の癖に……」
おい、最後!
まぁ、いい。こっちも消耗はしたけど、道は開いた……!
「頼む!」
ウインディに捕まって、一気に甲板まで駆け抜ける!
途中、ヒュウがちらっと見えた。でも、ヒュウもウインディに気付いたから、直ぐに来てくれるだろう。
「ふぅ……」
そんな訳で、ようやく息苦しい船内から出ることが出来た。せめて、回復してから先に進みたいけど……船内からどたどたと足音がしている。
「動きながら、すごい傷薬を使うしかないか」
何とか回復出来たのは2匹。これで、次の戦いまで保てばいいんだけど……
バリアのある部屋まで到着して、急いでパスワードを打ち込んだ。
「よし!」
問題なく、バリアのロックが解除、先に進むとソウリュウシティで会った老人がいた。
「ここまで来るとは大したトレーナーだ。わざわざ来たのだ。いいものを見せてやるとするか」
……何で船の中が、こんなに寒い……!?
「これが……伝説の氷ポケモン、その名はキュレム!」
なんだ、これ……キュレムと呼ばれたポケモンが、苦しそうにこっちを見ている。
「ソウリュウに撃ち込まれた氷のミサイルは、キュレムの能力とプラズマ団の科学力で造り出したものなのだ」
つまり、元はキュレムの能力を使ったものだったのか。何とか出来ないか……?
「さて……お前はプラズマ団にとって不安要素になりかねない。ここで排除する!」
ち、下っ端もいるから2対1か……こっちは手負いが多いけど、いけるのか?
「フフフ……どうやら、我々の仲間が更にこっちへ来ているようだ。2対1で戦えると思うなよ?」
確かに奥からパネルが作動している音がする。今の状況で、挟み撃ちは……まずい!
「2対1になんて……させないぜ!」
この声はヒュウ!
「遅かったな!」
「ああ。それより、バリアを解除してくれてありがとな、助かった!」
「むぅ、まとめて始末してやろう!」
下っ端と老人だけど……これならいけるはず。
メンバーに手負いが多かったからヒヤッとしたけど、ヒュウもいたから何とか勝てたか……
「プラズマ団に負けてられるか!で、ここは何だ」
あ、そうか。俺はさっき聞いたから分かったけど、ヒュウならこの状況を見渡せば……
「あのポケモンを中心に氷が広がっているのに……ポケモンは凍りついていても動けている。つまり、氷が動力なのか……まさか、ソウリュウの?」
「正義に燃える熱血な少年だと思っていたが、存外聡いな。それほどの分別があるのに、何故私達のアジトに乗りこむ危険を冒すのだ?」
まぁ、何も知らない人から見たら、そう見えるよな。
「……決まってる。妹のポケモンを取り戻す為だ。その為なら、俺が出来る全てを使ってでも、何でもする。お前にも聞いてやる。5年前、ヒオウギでチョロネコを奪ったのはお前か?」
「チョロネコぐらい誰かが奪い使っている。そんなことなど私には分からんよ。だが、解せぬ。チョロネコなら他にもいるだろう。何故、そこまで拘るのだ?」
……言うのか、ヒュウ。
「言うつもりはなかったけど、聞かれたなら答えてやる。死んだじいちゃんが、妹の為に捕まえてくれたチョロネコは世界にそいつだけだからだよ!」
あの老人が一度頷く、一応は理解したらしい。
「個人の想い、か。それはお前にとって、とても大きなことだろう。だが、他人から見ればどうにも小さなものだぞ。それに比べ、この船の威容を見たか。この船そのものが、伝説のポケモン、キュレムの力を利用する為の装置よ!」
やたら饒舌なような……けど、あの老人の手持ちはいないはず、何だ、この余裕は……
「これで今度こそ、イッシュを制圧するのだ!」
ん、何の音だ?
「……さて、キュレムもすっかり回復したようだし、遺伝子の楔は、大切に使わせてもらうぞ」
しまった、時間稼ぎだったのか!
「では、後は任せたぞ。ダークトリニティ!」
「ふざけるな、負けたくせに!」
……しまっ!
くそ、気がついたら船の外に放り出されて……船自体も謎の技術で空を飛んでいった……
「逃がしたか……」
「プラズマ団……どこへ飛んでも、逃がさない!」
それにしても、あの方向って……何処?
「……で、あっちになにがあるんだよ?」
やっぱり、同じ疑問を持つよね……あれ、誰かの足音がする。まさか、ダークトリニティが……って、チェレンさんか。
「ごめん……遅くなって。けど、行く先は分かるよ。恐らくだけど、ジャイアントホールだ」
「ああ、22番道路の奥だな。じゃ、俺は行く。キョウヘイも来てくれ!」
「分かった……分かったから。それにしても、いつも以上に忙しないな」
「お前さぁ……だって、あのポケモン……キュレムだっけ。あいつの鳴き声が何だか哀しそうだっただろ?」
そう言って、すぐさま海辺の洞穴へ戻っていく。なんだ……見るべきところは、やっぱ見ているじゃん。
「キョウヘイ、プラズマ団はやはりキュレムの能力を悪用しているのか?」
……チェレンさん?
「では、どうやってプラズマ団を止める。キュレムがシャガさんのいう通りの伝説のドラゴンポケモンならば、対抗できるのはレシラム……若しくはゼクロムだけだ。だけど……2匹とも今はいない」
え、不味くない?
「相変わらずあの二人は……いや、それよりもアイツはどこだ。違うな、引き続き僕が探し出すしかないか!」
とりあえず、チェレンさんも何らかの形で力を貸してくれるらしい。じゃあ、準備が出来たら、俺もジャイアントホールに行かないと……って、張り切って行けたら良いんだけど、流石に疲れた。ポケモンセンターに行って、休もう。あいつらも流石に移動した矢先で、また氷のミサイル撃つのは出来ない筈……
「疲れているところにごめんな、ウォーグル。空を飛ぶで近くの街に……」
ウォーグルの疲れたような、けど俺の言うことを分かってくれた返事をしたのを聞き、倒れるように目を瞑った。