画面の先の別世界の君   作:久遠の語部

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キョウヘイ視点8:楔を解き放つ2

[newpage][chapter:キョウヘイ視点4-2:楔を解き放つ]

 

 アクロマさんの言われた通り、ポケモンの回復を終えた後に先程まで下っ端がいた場所の先を目指す。その途中……

 

 「え?」

 

 そこにいる筈の、キュレムの姿が見当たらなかった。老人も何時の間にか姿を消している。

 ……何かが起きている。急いだほうがいいかもしれない。

 

 そうして、その先の部屋に向かえば……

 

 「アクロマめ!」

 

 ……何か変なおっさんが癇癪起こしていた。

 

 「あやつは科学者として無駄に純粋過ぎる。折角、プラズマ団のボスにしてやったのに!」

 

 これが、アクロマさんの言っていた……プラズマ団のボス、か?

 

 「我々のイッシュ征服という崇高な使命よりも、個人の知的好奇心を優先させるとは!」

 

 あ、俺に気付いた。ところでその使命、アクロマさんは捨て身タックルの反動みたいなノリでしたよ。

 

 「さて、あなたは幸運です。私、ゲーチスの演説をたった一人で拝聴できるのですから」

 

 「いいです。興味ないんで」

 

 変人はアクロマさんで間に合ってます。

 

 「そうですか……では、キュレムが秘めている真の力を、プラズマ団の科学力、技術力で極限まで引き上げ、イッシュを氷漬けにします!」

 

 よし、さっさと倒すか。待って……誰か、隠れている?

 

 「恐怖に支配されたイッシュの民、ポケモンは!」

 

 下っ端……いや、下っ端ならもっと雑だ。同じ場所にいるのに気付けないほどの相手と言えば……

 

 「プラズマ団の……いや、私の足元にひれ伏すのです!」

 

 それに、さっきから動こうとする度に感じるこの鋭い視線は……全体にあいつらだ。

 

 「キュレムは虚無……とあるポケモンが、レシラムとゼクロムに分裂した時の余り」

 

 どういうことだ。今の話が正しいなら……キュレム、レシラム、ゼクロムは元々1体のポケモンだった……?

 

 「私の欲望は、イッシュの完全なる支配!」

 

 「碌でもないですね」

 

 おっと、思わず反射的に言葉が。

 

 「そうです。キュレムという器に、私の欲望を注ぐのです!」

 

 誰かが歩いてくる……?

 

 「ゲーチス様、キュレムの搬送が完了しました」

 

 やっぱり、さっきから俺を牽制していたのはダークトリニティか。

 

 「いよいよ、いよいよ、私がイッシュを完全に支配する素晴らしい時が来ました。では、貴方達、後は任せますよ!」

 

 高笑いをしてゲーチスが船を降りていく。あの男を止めないといけないけど、明らかにこの三人は俺の邪魔するつもりだ。

 よりによって、ここ一番で厄介な相手だな……しかも、3対1。けど、やるしかない。……まずい、誰か後ろから来る!?

 

 「待て、お前がダークトリニティだな」

 

 ヒュウ!

 

 「ヒオウギで奪われたチョロネコのことを教えな」

 

 そうか、ロットさんが言っていた情報が正しければ……

 

 「……ああ、それならこいつのことかもな」

 

 ダークトリニティがモンスターボールのロックを外す。その中から出てきたのは……

 

 「……嘘、だろ」

 

 「…………くそっ」

 

 思わず悪態も出る。出てきたポケモンは想像していた3倍も大きかった。紫を基調とした細身の猫のようなポケモンは、腹や脚先が黄色に変わっており、紫色の鎌のような尻尾、胴には幾つもの三角のような模様が入っていた。そして……今まで見てきた野生のポケモンよりも眼光が鋭かった。

 

 「それ、は……」

 

 そしてそのポケモンには、ヒュウにしか分からない特徴が確かにあったらしい。

 

 「こいつは5年前、ヒオウギで奪ったポケモンだ。だから、お前のいうポケモンはきっとそいつだろう」

 

 チョロネコは……既にレパルダスに進化していた。けど、そのレパルダスはヒュウへ敵意を剝き出しにし、今にも攻撃してきそうだった。ヒュウを見れば分かる。目を見開いて動きが止まっている。もう、バトル出来る精神状態じゃないはずだ。場合によっては、あのレパルダスを俺が倒さないと。だけど、それは……

 

 「だが、今は私の命令しか聞かない。それがモンスターボールに囚われたポケモンの運命だ!」

 

 ……なぁ、お前達は今の言葉を、どう思う?

 

 「なん、だと……ふざけるなよ。他人のポケモンだぞ」

 

 ダークトリニティの表情は分からない。ヒュウを憐れんでいる気さえする。

 

 「やれやれ、ポケモンは哀れだな。モンスターボールに支配され、トレーナーの言いなり……ゲーチス様は野望の為にポケモン解放を謳われたが、2年前の作戦が成功だったならば!」

 

 「実際に救われたポケモンも多かっただろうに」

 

 いや、それだけはない。あの耳が腐るような演説から考えて……その内、人かポケモンのどっちかを、或いはどっちとも追い出したんじゃないのか?

 

 「そのレパルダス……いや、お前にとってはチョロネコか。ボールから解き放たれれば、お前の元に戻っていたかもな」

 

 ……くるか。

 

 「さてと……そこのお前、ゲーチス様の邪魔はさせん」

 

 ヒュウはどう、言い返すことはできていたけど……

 

 「…………」

 

 まぁ、そうだよな。そう、なるよな。

 

 「邪魔……か。お前らが、の間違いだろ」

 

 この状況だ。一切の出し惜しみはしない。まとめて……叩く!

 

 

 勝つことはできたけど、勝てだけだ。十分な時間稼ぎをされてしまった。一人ずつ相手をされた上に、レパルダスを出したままヒュウの戦意を削ぎ続けていた。ふざけんなと言いたいけど、嫌と言うほど有効だった。とは言え、だ。あんなヒュウの姿を見てしまったんだ、負けることなんて許されない。

 

 「そうか。だが、ポケモンが勝っても負けても、私達に痛みはない」

 

 …………

 

 「まぁいい。お前に出来るのはゲーチス様がキュレムを使い、イッシュを凍らせる様子をただ眺めるだけだ」

 

 何だ、レパルダスを出したダークトリニティがヒュウを見て……

 

 「そうだな……気が変わった。お前、このレパルダスは返してやる。ゲーチス様がこれから為されることを考えれば、用済みだったからな」

 

 ダークトリニティの1人がそう言ってレパルダスの入っていたボールをヒュウに投げつけて……消えた。

 

 「…………」

 「…………」

 

 何を思って、ダークトリニティがヒュウにレパルダスを返したかは分からない。ヒュウの目的は達成したと言うのに、これはあまりにも……

 

 「……なぁ、キョウヘイ」

 

 こんな、今にも崩れてしまいそうなヒュウは見たことが無い。プラズマ団に対して猪突猛進していたのはいつものことだったけれど、この再会は……考えたくなかったな。

 

 「あいつら、プラズマ団の思い通りにさせたら、チョロネコやキュレムみたいに哀しいポケモンが増えるよな」

 

 ……きついよな。ようやく届いたのに、ヒュウのじいちゃんや妹との思い出が、レパルダスには残っていなかったんだから。

 

 「そう、だな」

 

 このまま放置していたら、ヒュウの言う通りになるかもしれない。

 

 「ああ、分かっている」

 

 例えキュレムがどんなに強かったとしても、ゲーチスが何を企んでいたとしても、俺のやることは変わらない。

 

 「全部、終わらせてくる。ヒュウは少し、休んでて」

 

 ダークトリニティはゲーチスにキュレムの搬送を終えた、と言っていた。つまり、キュレムはまだあのゲーチスという男の意のままに操られている。だったら、チェレンさんが探している人物を待った方がいいかもしれない。

 だけど、運び終えたということは何かをする直前だろう。イッシュ地方全土を凍らせると宣言したまま、何もしない訳がない。待っている時間なんて殆どないだろう。

 それに一人のトレーナーとして、あのゲーチスだけは……放置してはいけない、してはならないんだ。

 

 

 

 

 氷を滑り、ジャイアントホールの洞窟の最深部に何とか辿り着いた。それにしても、洞窟にしてはかなり広い場所だ。滑らないように気を付けながら先を進んでいくと、その最奥にはやっぱりゲーチスがいた。

 

 「ジャイアントホール、こここそがキュレムのパワースポット!」

 

 うわ、あの声が反響して……何て耳障りなんだ。

 

 「ここでなら、キュレムは最大限のパワーを発揮し、イッシュ全土をいとも容易く氷漬けに出来ます!」

 

 もう物理的にあの男を黙らせるしかないな。一番素早いサンダースで……うん、出したら速攻で、あの男にボルトチェンジだ。

 

 「いでよ、キュレム」

 

 「……ぁ!?」

 

 な、何だ。この寒さ……!

 手が、腕がかじかんで、ボールに触れない……!?

 他のメンバーのボールも凍っているからか、出すことが出来ないぞ!?

 

 「私には許せない記憶があるのですよ、唯一ね。あなたは、それを思い出させる不愉快な眼をしています」

 

 随分と気が触れた目をしている。あんたの方がよっぽど……

 

 「ですが、ここまで来たことに敬意を表し、プレゼントです。ここで氷漬けとなり、イッシュの行く末を見届けるがいい!」

 

 不味い、キュレムに指示を出すつもりか。このままだと……

 

 「キュレム、凍える世界です!」

 

 ……くそ、腕が、手が動かないし、ポケモン達もモンスターボールのロック部分が凍り付いているから自分で飛び出すことも出来ない、か。ちぃっ、逃げられないように全方位につららが展開されて……くそ。チェレンさんの援軍を待つべきだったのか?

 

 つららがこっちに飛んで……くそ、ここまでか?

 

 「レシラム、クロスフレイム!」

 

 今の、指示は……?

 

 「……来ましたか。人の心を持たぬ化け物、Nよ」

 

 ……それ、あんたが言う?

 俺以外に誰がここへ……上か!

 あ、体が……動く!

 

 「レシラムが教えてくれた。キュレムが苦しんでいる、と。ボクは、ポケモンを苦しめる身勝手な人を許さない!」

 

 もしかして、この人が……

 

 「それに、ボクはイッシュが好きです。ボクに人としての生き方を……ポケモンとヒトが共にいることで奏でるハーモニーがあると気付かせてくれた場所、そこに暮らすポケモンやヒトを、ボクは守る!」

 

 凍える世界が打ち消されたのに、何で笑って、拍手までしているんだ、あの男……

 

 「素晴らしい、胸をうつ決意の表れ!」

 

 「私が施した王としての教育、決して無駄では無かったか」

 

 あの男がNさんを育てたのか。その割には……

 

 「とは言え、森の中、ポケモンと暮らしていた貴方を探し出し、面倒を見てやったのに、最後、好き勝手にのたまい、私の計画を狂わせたこと、未だに忘れていませんよ、貴方の能力を利用して、イッシュを支配するはずだったのに!」

 

 聞いている限り、負け惜しみが酷い。この人に育てられたけど旅に出たことで、大きく変わったきっかけがあったんだろうか。

 

 「だが、それも許しましょう。確かに、あなたが連れてきたレシラムなら氷を溶かせるでしょう」

 

 なら、ソウリュウシティも!

 

 「……これで探す手間が省けたというもの」

 

 ……何だ、今の言い方。まるで、ここへ来るのを待っていた?

 

 「最も、ソウリュウに氷を撃ち込めば、異変を察知し、姿を現すと読んでいましたが」

 

 「美しくない数式です。ボクは決して認めない!」

 

 数、式。この人もこの人で、中々個性的な人だな。

 

 「いいえ、認めさせますとも、この、遺伝子の楔を使ってな!」

 

 ここで遺伝子の楔、一体何を……って、キュレムに打ち込んだ?

 

 「うおぉっ!!」

 

 キュレムの咆哮が洞窟内に響く。耳を塞がないと鼓膜が破れそうだ。

 キュレムが大きく吼えると、冷凍ビームのようなレーザーを発射した。ポケモンにあんな技、あったっけ?

 そしてそのレーザーは……レシラムを狙っている?

 

 「な、なんだあれ……?」

 

 レシラムも頑張って避けているけど、多方向から射出されたレーザーからは逃れることが出来なかった。でも、捕まえてどうする……え、白い、石?

 

 「れ、レシラム!?」

 

 「キュレムよ、レシラムを取り込みなさい、吸収合体です!」

 

 …………は、そんなのあり!??

 そう言えば、さっきの変な演説もどきの時に、キュレムは余りだと言っていた。元が一つだったからこそ、今回のようなことが……?

 

 「まさか、ポケモンが合体だなんて、そんな数式あるものか」

 

 Nさんがそう言う気持ちは分かる。だ、だけど、倒せるのか、このキュレムを。圧倒的だ、見ているだけで足が震えてくる。咆哮を聞いただけで、膝が折れそうだ。

 

 「愚か者め。前回はお前を使い、民共の心を誑かし、掌握するはずだった!」

 

 吸収合体というのが上手くいったことで、ゲーチスは勝ちを確信しているらしい。あれだけの威容を放つポケモンを意のままにしているんだから、そんな余裕も出るのかもしれない。高笑いしながら、Nさんを見下している。

 

 「だが、今回は圧倒的なパワー、それでイッシュを支配する!」

 

 確かに、圧倒的なパワー、だ。今、こうして立っているだけでも、気力を振り絞る必要がある。脚へ力を入れていないといけないほど、強い圧を全身で俺はっ感じている。あのキュレムの周囲には炎と氷が吹き荒れている。ポケモンが使う吹雪なんか比にならない、災害のような力だ。

 

 「分かるか、お前が王になっていればイッシュは美しいままだった!」

 

 「…………」

 

 Nさんはあの荒れ狂うキュレムを見て、言い返すことが出来なかった。けれどまだ……俺は、皆は戦える。

 

 「さて、トレーナーよ。今度は誰も助けてくれぬ」

 

 ここで退くことは出来ない。プラズマ団の船には、まだ立ち直っていないヒュウがいる。ジャイアントホールの外では元プラズマ団の人達が、プラズマ団の人達と戦っている。

 

 「だが、もう一度同じことを繰り返すのは面白みに欠ける。そこでだ、あなたがこのキュレムを止められるかどうか、見せてもらいましょう」

 

 ……くそ、なめられてる。こんな奴に……

 

 「おや、貴方のモンスターボールが震えていますね。もしかして、貴方のポケモンは怒りに震えている、とか?」

 

 ……え?

 

 「否、そんなことある訳が無い。たかが道具に、感情や湧き上がる思いなどないのです」

 

 「……」

 

 あの男を今すぐ殴りに行きたい程に頭に血が上っていた。だけど、揺れているボールを感じながらキュレムを見ることで、凍える風を受けた時のように心と頭を冷やせた。そうだ、カッとなってはポケモン達にも移ってしまう。今、大事なことはなんだ。あの男の言葉に耳を傾けることではない。キュレムを解放する事だろう。

 

 「さぁ、キュレムに挑みなさい!」

 

 そのためにはまず、倒すしかない。どんな技かタイプかも全くの未知数だ。けど、全力で倒さないと!

 

 「いくぞ、サンダース!」

 

 タイプは何だろう。見た目から考えるとドラゴン、さっきの寒さから氷との複合タイプかな?

 

 「ボルトチェンジ!」

 

 サンダースのボルトチェンジが当たるものの、痛がっている素振りは見られない。なら、タイプとして優位を取れる……

 

 「いくぞ、ルカリオ!」

 

 キュレムは何だ……冷たい力を溜めている?

だとしても、今の目的はキュレムを倒すこと。攻撃しないのなら、行くしかないだろう!

 

 「今の内だ。はっけい!」

 

 多分、氷は当たりかな。それなりに痛がっている。効果は抜群と見て良さそうだ。

 だけど次だ。さっきの力の溜め具合から、何が来る!?

 

 「さむ……だけど、熱い!?」

 

 何だこの技!?

 だけど、タイプ相性が良かったのか。ダメージは受けているけど、ルカリオはまだ戦えそうだ。

 

 「今度は波動弾だ!」

 

 防御と特殊防御の違いはどうだ?

 堪えているかもしれないけど、大きな違いはないかも。なら、その考えは持たずに攻めていこ……あれ、あの炎は……もしかして、それも使えるの!?

 

 「何とか避けてくれ!」

 

 って、不味い。俺を狙ってあの炎が……って!

 

 「ごめん、ルカリオ……」

 

 俺を庇って攻撃を受けたせいで戦闘不能になってしまった。ちらりと、あの男を一瞥する。完全に余興として見ているからか、手を出す様子はない。あるいは、Nさんが牽制しているのか。

 

 「君!」

 「うわっ!」

 

 Nさんが声を掛けてくれなかったら危なかった。多分、あれは龍の息吹。けど、それより先にだ。

 

 「もう一度だ、サンダース!」

 

 考えすぎては駄目だ。考えすぎて立ち止まってはさっきのようなことになる。なら、まずは……

 

 「電磁波だ!」

 

 基本は脚を奪う事。倒せなくても、それが次に繋がることだってある。それにしてもさっきのクロスフレイムという技。炎だからルカリオに効果抜群だったんだろう。まさか、こおり、ほのお、ドラゴン?

 

 「まず!」

 

 あの巨体で突撃して……きりさくか!

 

 「サンダース!」

 

 まさか……急所!?

 くそ、ここで倒れちゃうなんて……攻撃力も高いのか。

 

 「ダイケンキ、切り裂くだ!」

 

 考えろ、倒す為にはタイプの把握が重要だ。ダイケンキが切り裂くで粘っている間に考えろ。キュレムは恐ろしい氷の技を使う。何せ、シャガさんからも語り継がれるドラゴンポケモンだ。ドラゴンだから炎を使うこともある……けどさっきの炎はレシラムの炎だ。タイプとしてあり得るのは……やっぱり氷、ドラゴン、それから炎。タイプが三つのポケモンなんて聞いたことないけど、合体したんだからあるのかもしれない。

 

 「ダイケンキ!」

 

 暫く粘っていたダイケンキが戦闘不能になる。けど、そのお陰で冷静に慣れた。タイプは最も多くてもこおり、ほのお、ドラゴンだろう。違うかもしれないけど、その全てだったとしても弱点を突くことは……出来る!

 

 「いくぞ、ウインディ。げきりんだ!」

 

 よし、威嚇も決まった。予想が正しければ、効果は抜群なはず!

 

 「む……」

 

 あの男が唸っている。完全ではないだろうけど、タイプは大体合っているはずだ。

 

 「速っ!」

 

 あ、あの動きは龍の息吹。げ、しかも竜の息吹を受けた途端、ウィンディの動きが鈍くなった。不味い、麻痺になったのか!

 いや待て、げきりんの反動で混乱しなくて済んだと考えればいい。それに、キュレムも既に麻痺している。なら、やることは!

 

 「ウインディ、もう一度げきりんだ!」

 

 よし、げきりんが……く。

 

 「早速、麻痺が響いたか……」

 

 ただ、それはキュレムも同様だった。お互いに攻撃できず、距離を取る。

 

 「そう言えば……」

 

 さっきまで熱くなっていたから気付かなかったけど、どうして伝承として語られているポケモンが目の前にいるというのに勝負になっているんだ。キュレムが完全に力を取り戻しているなら、もっと苦戦しているのでは?

 

 「む、ホワイトキュレムの力をすれば、こんな筈では……!?」

 

 もしかしてキュレムは……意図的に力を抑えている?そうか。なら、それに応えるのがトレーナーだ。決めてくれ、ウインディ!

 

 「頼む。もう一度、げきりんだ!」

 

 今の攻撃の入り方、もしかして急所か!?

 

 「よし!」

 

 キュレムの動きが鈍い。いや、それどころかあの姿を維持することすら難しそうだ。

 

 「うわっ!?」

 

 なんだ、この白い霧。この場所一帯を包んで……

 

 「何だ、何が起きている!?」

 

 あの男にも想定外、か。

 

 「レシラム!」

 

 あれ、Nさんの声とレシラムの声。ということは、分離したのか。それじゃあキュレムは……

 

 「おお……」

 

 白い霧が晴れた頃には、キュレムはその姿を何処かへと消し、レシラムがNさんの側にいた。

 

 「まさか、折角用意したホワイトキュレムが……なんと、忌々しい!」

 

 ……あれ、今思ったけど、キュレムを解放したから、あいつの目論みが殆ど破綻したんじゃない?

 

 「消えたキュレムをまた確保せねばならんではないか!」

 

 あ、憤慨した目つきのまま、こっちを見てきた。

 

 「やはり、目障りなトレーナーは私が手を下しましょう!」

 

 しまった、回復している余裕がないぞ!

 

 「今度こそ、誰が何をしようと、私を止めることは出来ない!」

 

 くそ、連戦か……何だ今の白い光、Nさんか?

 

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