「いきなさい、デスカーン」
しっかり準備できないまま、戦闘になるなんて……
「くそ……いくぞ、サンダース!」
相手はデスカーンか、サンダースはシャドーボールを覚えているし、攻めていこう!
「シャドーボール!」
「シャドーボール」
不味い、キュレムとの戦いで体力が削られているのに……!
くそ、避けられなかったか。けど、まだ立ってくれている。なら……
「シャドーボール!」
「シャドーボール」
あれ、思ったより元気があるような……どうして?
「……そうですか、彼のポケモンを回復させたのは貴方でしたか、N」
なるほど、Nさんは俺に託したのか……一層、負けられない。
「いきなさい、ガマゲロゲ」
このポケモンは一体……見るのは初めてだけど、素早くはなさそう。それから、水タイプっぽい。だけど、あの男がタイプ相性の分からない相手だと到底思えない。
「サンダース、シャドーボールだ!」
様子見も兼ねて、近付きつつも接触攻撃なら避けられる距離で技を撃つ。さぁ、どうでる?
「地震です!」
「うわっ」
サンダースの着地を狙われたか……これは避けられない、戦闘不能だ。やっぱり、電気タイプのポケモンにわざわざ出した辺り……水、地面タイプなんじゃないか。でも、手持ちに草タイプのポケモン、技を持ったポケモンはいない、なら!
「いくぞ、辻斬りだ!」
ゾロアークはウォーグルに化けさせている。どう化けるのかと思っていたけど、地面スレスレを飛ぶんだね。まぁ、それでもウォーグルは飛行タイプ。流石に地震は使ってこないだろう。
「だくりゅうです」
飛んで避けようとはしたけど、思ったより波が高い!
「ぬ……そのポケモンは、ゾロアーク!」
「もう一度、辻斬り!」
ちょっと不意を突く形になったけど、何とかガマゲロゲの体力を削り切ったか。とはいえ、ゾロアークもそんなに体力が残っていない。やっぱり、相手は強い……強いけど、さっきから違和感がある。
「いきなさい、かわらわりです」
ドクロッグか。毒、格闘タイプ!
「シャドーボールだ!」
距離を詰められる前に何とかシャドーボールが入ったけど……流石に戦闘不能か。だけど、ドクロッグは防御や特殊防御よりも攻撃に特徴があったはずだ。だったら、多少は削ったはず。なら、タイプ相性の有利で……
「どくづきです!」
「ウォーグル、そらをとぶ!」
やっぱりだ。確かにゲーチスという男は、的確に指示している。ただ、ポケモン達の様子に力強さがない。何としても勝とう、という気迫を感じない。いや、それどころか……ただ従っているだけのように見える。それでも元々相当に鍛えられているからこそ、俺は苦戦している。ゲーチスの使うポケモンは動きが俊敏で、外したとしても、的確だ。なのにどうして……こんなにも彼らの戦う姿に力を感じないんだろうか。
「……って!」
まずは、この男を倒すことに集中しないと。しっかりそらをとぶをあててから……
「不意打ちです!」
「なっ!?」
不意打ちを喰らったと同時にそらをとぶが命中したからドクロッグは倒せたけど……出来れば、ダメージ無しで次の相手に望みたかった。
見誤るな、今のは相手の指示とドクロッグがよく鍛えられているからできることだ。例えどんなに受け入れがたい相手だったとしても、その実力はジムリーダー、あるいはそれ以上何だと思って挑め。じゃないと、ここで負けるぞ、俺は。
「いきなさい、シビルドン」
見た目がシビビールに近い、なら。進化系かな?
「きりさく!」
「10万ボルト」
ドクロッグの不意打ちもあったし、流石に戦闘不能だ。とは言え、10万ボルトを喰らう前に、多少は体力を削ったと思う。けど、まだまだ戦えそうな雰囲気があるのが気になるな……
「残りはルカリオにウインディ、それとダイケンキですか」
俺のメンバーは割れている。大方、アクロマさんとの戦いを見ていたんだろう。例えそうだったとしても、それを上回るしか方法は、ない!
「ウインディ!」
「威嚇、ですか。それで?」
今ので多少、攻撃力は下がったはず。だけど、シビルドンの特性はふゆうだ。弱点だけど、地ならしは使えない。なら、タイプ一致の……
「火炎放射!」
「10万ボルト」
って、倒れない!?
進化して、思った以上に耐久力が上がっているのか!?
「もう一度だ、火炎放射!」
「シビルドン、受け取りなさい」
ここで回復の薬か。いや、表情を見るに向こうの思い通りにはなっていないな?
なら、やることは同じ!
「火炎放射!」
あれ、シビルドンがさっきより熱そうに……もしかして急所か!?
「……ここで、ですか」
このまま……畳みかける!
「もう一度だ!」
「っ、10万ボルト!」
よし、シビルドンが倒れた。けど相手はまだポケモンを持っているし、ウインディも連戦は堪えている。油断はできない。
「ドラピオン、地震です」
「ウインディ、地ならし!」
反応が遅れたか。多分、地ならしは地震に相殺されてダメージ入って無い。火炎放射にすれば良かったか。
「頼む、ダイケンキ」
くそ、ウインディで少しでも削れていれば楽だったんだけど……行くしかない、頼むぞ。
「頼みの綱はルカリオですか。なるほど、計算通りです。ドラピオン、辻斬りです」
「波乗り!」
ドラピオンは以前見た事がある。毒、悪タイプは弱点の少なさが特徴だから記憶に残っている。だけど、ドラピオンは特殊攻撃に少しだけ弱い。辻斬りは入ったけど……動き出しはややこっちの方が早いか。なら、次は少し下がりながら波乗りをすれば、辻斬りに当たることなく倒せる、かも。
「辻斬り」
「二歩下がって、波乗り!」
よし、ドラピオンの攻撃が届く前に何とか倒したな。後は……
「……?どういうことなのだ?」
なんだ、動揺しているのか。
「計算が狂っているぞ!?」
いや、取り乱してる、か。
「そんな筈はない。無銘のトレーナーにこの私が負けるなど……!」
バトルの最中でそんな状態は致命的、だけど危険すぎて何をするかが読めない相手だ。
「で、最後の手持ちを出したらどうだ?」
さて、こっちの声は届いているのか──?
「そうだ。私が、私が負けるはずなどあり得ない……」
「いきなさい、────」
よし、最後の手持ちだな。まぁ、そのポケモンの特徴は既に……
────────────
「ごめんね、キョウヘイ君。本当は同行したいんだけど、どうしても探さなくてはならない相手がいてね」
「それでしたら、一つ教えてくれませんか。二年前、チェレンさん達がプラズマ団と対峙したと聞きました。その時、その……ボスみたいな男は、どんなポケモンを最後に出しましたか?」
「最後に出したポケモンかい?それはあいつから聞いているし、見ているけど……どうして最後まで残していたポケモンを?」
「最後に残しているポケモンは多かれ少なかれ、トレーナーにとって重要なポケモンです。例え、どのような人であろうとも、メンバーから外すと思えないんです」
「キョウヘイ君、いいところを突くんだね。そうだね、そのポケモンは……」
────────────
チェレンさんを通して、知っていた。最後のメンバーはサザンドラ、悪、ドラゴンタイプのきょうぼうポケモン。特殊攻撃も強く、物理攻撃も侮れない、危険なポケモンだ。そして、俺がやることは既に決まっている。
「ダイケンキ、近付きながら吹雪だ!」
先手必勝、動揺している隙は突かせてもらう!
「サザンドラ、噛み砕くです!!」
って、噛み砕く!?
「何ですと!?」
向こうも想定外だと言わんばかりの反応をしているが、それはこっちもだ。てっきり、以前と同じく特殊攻撃を中心にしていると思ったのに。けれど今、大事なことは吹雪を確実に当てることだ、相討ち上等。確実に勝ってプラズマ団自体を倒すには、この行動が必要だ。辛い役割だと思っているけど、ダイケンキは受け入れてくれた。
だからこそ、この吹雪は当たる、外れる訳がない。自分が傷つくことを理解し、受け入れてくれたダイケンキには後で何かあげないとな。
「くっ!」
決死の吹雪を喰らって尚、倒れないのか。聞いていた通りとは言え、本当にタフだな。まぁ、元々のタイプじゃない技というのも大きいか。それでも、サザンドラにとっては弱点タイプの大技だ。少なからず体力の半分は削ったはず。なら残りは……ルカリオで十分に倒せるはずだ。
それにしても本当、ソウリュウシティで別れる前にチェレンさんから聞いておいて良かったよ。
「……ありがとう」
ダイケンキは吹雪をサザンドラに勢いよく当てたものの、突っ込みながら吹雪を撃ったせいでかみくだくを全身で受けてしまい、戦闘不能になった。けど、そのお陰だ。後は、その最後を決めるだけ。
「決めに行くぞ!」
頼んだぞ。弱点をついて、倒してくれ。
「くっ、ドラゴンダイブです!」
噛み砕くを指示した時から思っていたけど、やはり物理攻撃型に技の構成が変わっている。これなら、余裕を持って倒せるはずだ。そしてルカリオは……俺が指示を出すまでもなく、波動弾をあててサザンドラを戦闘不能にした。
……よし、作戦の肝だと思うキュレムを失った。団の長としてポケモン勝負を挑み、敗れた。一つの組織としてのプライドも、作戦もこれで折ったはず……!
「これ以上、やるようなら……」
この男を放置してはならない。ルカリオのはっけいをいれてでも、無力化しないと。
「またしても、私の目論みが!」
異様に体を震わせているけど……何だ一体?
「世界の完全支配が!」
…………あの杖をガンガンと地面に叩き付けて、地団太を踏んで、何を?
「ありえるか!」
「これは……」
今まで周囲を見張っていたNさんがあの男を見て……唖然としている。
「いいや、ありえぬ!ありえてはならぬ!」
挙句の果てには、取り乱した拍子にコートすら投げ捨てて、変な髪型も滅茶苦茶にして……
「何処の誰とも分からぬ、つまらぬトレーナーなんぞに!!」
……これ、いわゆる発狂ってやつなのかな?
何度か疲れたように息を荒げて、次はなんだ……
「……どういうことだ?」
まだ、まだ収まってないよ。返って怖いよ、この人……
「この私はプラズマ団を作り上げた、完璧で究極な男なんだぞ!」
それは、自己評価が高過ぎない?
「世界を変える、完全な支配者だぞ!?」
荒げた声が反響して、洞窟内に響き渡る……哀れ、とはこういう時の為の言葉なんだろうか。
「一度ならず二度までも、無銘のトレーナー如きに……!」
「認めるか……在り得るか!」
「ポケモンなる道具を使いこなせぬ、愚かな者達に遅れを取るとは!」
この期に及んでまだ……あれ、Nさん?
「敢えて、こう呼びます」
大きく息を吸って、どうするつもりだろう。
「父さん、分かって下さい。ポケモンは道具ではないのです。ポケモンと人はお互いを高みへと誘っていける、素晴らしきパートナーなのです。それを分かっている人達もいるのです。なのに……」
「黙れ、黙れ黙れ黙れぃ!」
「ポケモンと話せる化け物が、人間の言葉を語るな!」
Nさんと話すことすら拒んでいる。何だ、誰かの足音が……ダークトリニティか!
「ゲーチス様はもう正気では……ここは私達が」
「そうだね。父さんがいなければ、プラズマ団は……」
「では……」
ゲーチスを連れて、ダークトリニティは去った。キュレムは無事に逃げ出せた。正直、ゲーチスはここで捕まえておきたかったけど、Nさんの心情を考えるとそれをするのは……別の機会の方がいいんだろうね。
それに、プラズマ団はキュレムという手段を失った。ヒュウもチョロネコをどんな形であっても取り返した。なら、一旦はこれで良しにしよう。俺に出来ることなんてここまでだ。後は、警察の人とかに頑張ってほしい。
……でも、本当に終わったんだろうか。
Nさんと少し話をした。どうやら、凍り付いたソウリュウシティを元に戻す為に今から行くらしい。レシラムに乗って、ジャイアントホールを後にした。
「あぁ……ようやく、か」
俺の因縁じゃないけど……ようやく、終わることが出来たんだ。これで、ヒュウ達も前に進めると良いんだけど……それにしても、疲れたな。
連戦に次ぐ連戦で体と頭はすっかり疲れていた。寒いけど、思わず大の字で横になる。ああ、冷たいけど、この地面の冷たさが、散々頭を回して疲れた頭と動き続けた体を冷やしてくれる……
「……あ?」
奥から誰か……来る?
「キョウヘイ!?」
「あぁ、ヒュウか」
出てこないから来てくれたのか。なら、起きないと。
「っと、とと、とぉ」
「おいおい、大丈夫かよ?」
流石に頭も体も疲れ切っていた。立ち上がったはいいけど、力が碌に入らなくて頭から倒れそうになったけど、ヒュウが咄嗟に支えてくれた。そのまま肩を借りて、ゆっくりと洞窟の出口を目指す。
「プラズマ団の船、飛んで行ったけど……終わったのか?」
終わったか、ヒュウや俺のプラズマ団との戦いは……
「ああ、戦いはこれで終わった……んだと思う」
「そうか……終わったんだな。それより、プラズマ団からキュレムを助けたんだろ、すげーな。相変わらず」
ただ、あまりにも現実感がない。船に潜入してからの連戦に次ぐ連戦。キュレムとの戦いやゲーチスの戦いなんて特にそうだった。倒す為に、勝つことに。負けられないという重圧が、今までの比では無かった。ジムリーダーと戦った時のような楽しむ余裕なんてない。頭をフル回転させて、精神を研ぎ澄ませて……そうしてやっと勝てた。そんな一連の戦いだった……気がする。
「あ、ああ……」
全てを勝つことに回して、ようやく勝った。正直、もう一度やってできるかと言われても……答えられる自信はない。
「それで、ヒュウはこれからどうするつもりなんだ?」
「俺は……チョロネコを妹に返す。まだ、モンスターボールから出すなんて無理だけど……いつか、モンスターボールから出しても安全になるまで、見守りたいと思う」
「ああ、それがいいな」
やっぱり、ヒュウは立ち直った。立ち直ると思っていたよ。
「それで、お前はどうする?」
洞窟を出る。確かにヒュウのいう通り、船が降り立った後こそあれど、その姿は何処にもない。ああ、本当に終わったんだな。
「実は、手助けしてくれた人から、ポケモンリーグに行けって……」
「ポケモンリーグに行け……か。それはいいな!」
どうした、急にテンション上げて?
「だって、今のお前、イッシュで一番強いだろ。それを証明してこいよ。ジャイアントホールで最初にあった場所を覚えているか?」
「ああ、あそこか」
「途中で道が分かれていただろ。こっちの降りるほうじゃなくて、道なりに進めば23番道路に出る。その先がチャンピオンロード、そしてポケモンリーグだ。今まで色んなことに巻き込まれてきたんだ。今までの経験、全部ぶつけてみろよ!」
そうだな。今の自分が何処まで戦えるトレーナーなのか、それはとても気になる。うん、落ち着いたら、挑戦してみよう。
「って、何か鳴ってね?」
何の音だろう。かなり近い場所から鳴っているようだけど……
「あ、俺のライブキャスターか……」
そんなことにも気付けない程、疲れていたんだな。えーと、母さんかな。連絡なんて殆どしてないけど、やっぱりソウリュウシティのことがあったから心配しているのかな。そう思いながらライブキャスターの着信を確認した俺は……思わず、声に出してしまった。
「って、ルリさん!?」