四日後、来客を一通り終えた俺は事務所の机で項垂れた。
「お疲れ様です。キョウヘイ様」
「お、終わった……ようやく、チャンピオンロードへ行ける」
いや、まさかこんな直ぐに今のジムリーダー達が来たのは驚いた。チェレンさんが付け加えた情報、よっぽど効いたんだな。
「お陰様でこのアベニューの評判も上がっております。数日は外されても私とイチミで何とかしますので、心置きなく挑戦してきてください!」
「うん、そうだね。それじゃあ行ってくる!」
「行くよ、ウォーグル。カゴメタウンまでお願い!」
ああ、ほのおタイプの技のような夕焼けが眩しいな……
「それにしても色々あったなぁ……この数日」
今日はカゴメタウンで宿泊して、朝一番でチャンピオンロードへ繋がる道を踏破する。だから、この数日にあったことを振り返っておこう。
それは、チェレンさんがアベニューへ来た翌日のこと。前日までに片付けるべきことを済ませていたから、その日は空いた時間でチャンピオンロードの下調べをしようと思っていたんだけど……そんなことが頭から吹っ飛びそうなことが起きたんだ。
♪♪♪~♪♪♪~
そのきっかけは、ライブキャスターからの着信。
「チェレンさん、珍しいな」
昨日話をしたから、最初は何の用事か分からなかったんだ。
「はい、おはようございます、チェレンさん」
「やぁ、キョウヘイ。しっかり起きているみたいだね」
背景はトレーナースクール。だから、最初はヒュウの進捗なのかとも思っていた。
「まぁ、朝ですから。でも珍しいですね、チェレンさんから連絡をくれるなんて」
「うん。今日の昼頃にそっちへ向かうから、案内を頼めるかな?」
今思い返しても……は?????
と俺も理解が追い付いていなかった。
「ど、どういうことですか?」
「昨日キョウヘイと話した後、イッシュのジムリーダー達と話す機会があってね。その時に君のことを話したら、一度挨拶に行くということに決まったんだ。その中でもキョウヘイの連絡先を知っている僕が先んじて君のアベニューへ行くことになったのさ」
つまり、プラズマ団を潰した俺に挨拶しに来る……ということか。勿論、非公式の情報だけど。
「……何時頃来るんですか?」
「僕は今日の昼頃に、他のジムリーダーは分からないけど僕より後に来る筈だ。キョウヘイは多分、近日中にチャンピオンロードへ行くんだろう。そう思ったからここ数日の間に行くように伝えたよ。だから、皆への対応は宜しく頼んだよ」
あのやりとりを思い出して、苦笑いも出た。そう言えば、通話していた時も苦笑いが出たなぁ……
「おや、迷惑だったかい?」
「ジムリーダーが来たとなればとてもいい宣伝にもなるんですから、凄く助かります。助かりますけど、ちょっと受け止めきれていなくて……」
「ははは、君はそれだけのことを成し遂げた、ということさ。それじゃあまた、アベニューで会おう」
トリプルバトルの時に、中心にいるポケモン大爆発をした時のような衝撃だったなぁ……
「「キョウヘイ様、おはようございます」」
突然の話だったから、朝から話をするには重い内容だよなぁ……って思いながら話したら、イチミさんが張り切って各店舗の店主に連絡しだしたし、ミライさんは俺に各ジムリーダーのプロフィールを調べて見せてくれたんだから、話が大きくなってたのを本当に実感したなぁ。
ミライさんが用意してくれた資料を確認していたら、あっという間に昼になっていたんだっけ。あの時は、プラズマ団と戦う時とはまた別の緊張感があったよ……
「キョウヘイ様。早速、来られたようです」
「やぁ、キョウヘイ。早速、来させてもらったよ」
「ありがとうございます!」
「うん、いい返事だね。きっと他のジムリーダーも来るだろうから、案内してあげるといい。ここへ来る前にどんな店があるのかは一通り見たつもりだけど、ポケモンを育てられるお店はあったりするかい?」
「えーと、それでしたら……」
道場なら……ジョナスの店がいいか。けど、トレーナースクールで紹介してくれるかもしれないから、カフェを紹介した方がいいのかな。そこならきっと、チェレンさんが食事をして帰ることも出来るだろうし。
「そうですね。いい店を案内します!」
「宜しく頼むよ」
色々考えたけど、結局はアッツォの店にした。アベニューを始めた時からいるから気軽に案内できるし、一番メニューが豊富な店だから。
「へぇ、食事もとれるし、食事でポケモンの育成が出来るのか。どうやっているんだろうか。タウリンなんかを料理に混ぜているのか、それとも別の地方には能力を上げる食べ物があると聞くし、それと同じ手法を使って提供しているのか……何れにせよ、興味深い」
丁度昼時だったから、俺もチェレンさんと一緒に食事をとっていた。そんな中、何かに気がついたように話しかけてきたんだっけ。
「そう言えば、キョウヘイ。この食事処は2か所あったけど、こちらと向こうの違いは何かあったりするのかい」
「ああ、実は……アッツォとジェーンの店では伸ばせる基礎ポイントが違うんです」
「へぇ、それはいいことを聞いた」
そうそう、ここで思い出したんだったか。
「チェレンさん、チャンピオンロードについて教えてくれませんか?」
そこから聞いた話は大いに役立つ内容だった。準備の必要性を改めて教えて貰ったんだっけ。
「面白かったよ。今日の出来事はトレーナースクールでも活かせそうだ。忙しい中、ありがとう」
「チェレンさんこそ忙しいのに、ありがとうございました」
それが昼過ぎのこと。確か、この後に続けてホミカさんがやってきたんだっけ。
そうそう、夕方だ。チャンピオンロードのことを調べつつ休憩を兼ねてアベニューを歩いていたら、ホミカさんから声をかけてきたんだっけ。
「へぇ、あんた。あいつらぶっ飛ばしたどころか、ここのオーナーもやってる訳?マジヤバじゃん」
「まぁ、色々ありまして」
「えー、年近いんだし、遠慮すんなって。あ、そうそう。ポケウッド覚えてる?」
アベニューと違って、やらなかったら何かがある訳じゃなかったから後回しにしていたんだよね。
「うちのオヤジがさー」
タチワキシティ、船……この辺りで思い出したんだっけ。
「あー、あれか。ここ最近は色々ありすぎて……そう言えばウッドウさん、だっけ?」
そうえいば、どうしてスカウトされたんだっけ?
「なーんかさ、相変わらず俳優を募集しているんだってさ。オヤジから聞いたんだけど、そのリストの中にあんたもカウントされてたって話、何処で嗅ぎつけたのか知らないけど。ま、あんたの気が向いたら行ってみたら?」
「そうだね。今は忙しいけど、落ち着いたら行ってみようかな」
「いよっし。それじゃあ行きたいお店あるから、ぶっちゃけ言っちゃうよ!カフェ!花屋!保育所!美容室!道場!こーゆーお店知ってる!?」
「保育所はまだないけど、今後出していきたいと考えているよ。それ以外だったら今からでも」
そうそう。この話を聞いたから、ミライさんに再度募集を依頼したんだったなあ……
「お、そーなんだ。いいこと聞いた」
「まずは美容室から行く?」
「おっけー、いってみよー!」
その後、ホミカさんに引っ張られながら道場、花屋を巡り、最後はカフェで食事を一緒に取ることになった。
「凄いじゃん、ここ。もっと早く来ればよかったし。そいえばさ、ここのオーナーの話もポケウッドみたいな流れだった訳?」
「まぁ、そんな感じ。ただ、こっちは俺個人で済む問題じゃなかったから……」
「それでも引き受けるとかとんでもないお人よしだな、おまえ」
バンッ、バンッ!
「痛いから、痛いから」
「いよーし、今日は楽しかったー。今度は皆をつれて遊びにいくから、よろしくなー」
そんなことを言って、嵐のように帰っていったんだっけ、ホミカさん。
「オーナー、今のはもしや……」
「あの人はタチワキのジムリーダーだよ。いや、ここまで連れまわされるとは思わなかったけど」
ほんと、女性のこういう時のパワーには驚かされた。案内するだけだったのに、気がついたらもう夜だったんだから……
「……そうですか。それにしても、ジムリーダーが急に来るなんて何があったんですか?」
「付き合いのある人から、ご厚意でアベニューを紹介してもらうことになってね。ここ数日で他のジムリーダーも来るかもしれないから、よろしくね?」
「はい、オーナー!」
これが1日目のこと。実家のヒオウギに帰ろうかと思ったけど、朝から来た場合を考えると……帰るに帰れなかったんだよね。
その翌日のお昼前にアーティさんが来てくれたからその案内を終えて……確か、夕方前にヤーコンさんが事務所へ乗り込んできたんだっけ。
「本来なら、俺が一番乗りのはずなんだがな」
この人はホドモエトーナメントを行った直後に来てくれたから、実質1番目だったりする。
「そこでも負けず嫌いを発揮するんですね。でも、以前に来ていただいたのは知っていますよ」
「なんだ、知っていたか。あぁ、そうだ。お前さん達がやったことはチェレンを通じて知っているが、あの生意気な兄貴分はどうしたんだ?」
そうそう、ここでヒュウに少し触れてくれたんだよね。
「ヒュウは今、ヒオウギに戻っています」
「ほう。姿を眩ませたプラズマ団を追っていないということは、無事に取り返したのか?」
「はい」
ここでチョロネコじゃなくてレパルダスだったことを思い出して苦い顔を出してしまったからか、ヤーコンさんがあんな言葉を投げたのを覚えている。
「あいつが取り返したかったものに、何があったかなんて聞かねえぞ。だが、あいつは諦めなかったんだろ?」
「……はい」
「なら、何とかなるさ。最後まで諦めなかったんだからな。さて、折角ここまで足を運んだんだ。掘り出し物を探すか、若しくは伸るか反るかの勝負できる場所へ行かないか?」
「えーと、それでしたら……」
そう、ここで少し困ったことがあったんだったか。他の3人は初めて来た人だから案内が楽だったけど、ヤーコンさんは一度来ていた上、ヤーコンさん好みの店は古道具屋のジョエルの店しか無かったこと。少しだけ救いだったのは、前より品数は増やしたと聞いていたくらい。
「お、前よりは品数が増えているみたいだな!」
「はい、ヤーコンさんのような勝負好きな方が好んで通ってくれているおかげです」
「よし、折角だからお前もやっていけ。そうだな……俺はこれを貰おうか。お前はどうだ」
「はい、俺はこれで……」
ここでちょっとした勝負になったんだけど……年の功と言う言葉を思い知ったというか。
「ふっふっふ、甘いな」
「うーん……」
俺は硬い石だった一方、ヤーコンさんは流石の目利きと言うか、金の玉を当てていた。
「とはいえ、毛色の違う店がもう一つくらいあった方がいいかもしれんな。使う頻度の高い店を複数並べるのは理に適っているが、時には違う店も入れておいた方がいい。見た所、まだ店を入れる余裕はあるんだろう」
「はい、毛色の違う店を取り入れたいんですけど、募集が中々ないんですよね」
「だからと言って、機を逃すなよ。一度過ぎちまったのを取り戻すのは簡単じゃねえんだからよ」
「ありがとうございます!」
そう言えば、帰り際に気になることを言っていたんだっけ。
「そうだお前さん。ポケモンリーグには挑戦するのか」
「はい。他のジムリーダーが来られた後にチャンピオンロードへ行く予定です」
「そうか。俺は俺でイベントを考えているからよ、もしかしたらお前にもチャンスを出してやれるかもしれん」
「イベント……ですか。分かりました」
今もまだよく分からないけど、どうやらヤーコンさんは何かを企画しているらしい。
その翌日の朝にはシズイさんが来てくれたんだけど……上半身裸だったんだよね。まぁ、ちゃんと着る物持ってきていたんだけど。
後は……そうそう。あれは衝撃的だったなぁ。 チャンピオンロードに向けた調整としてメンバーの持ち物や技の見直し、PWTでハートの鱗を使って技を思い出させたりと忙しくしていたんだけど……
「イチミさん、何か外が騒がしくない?」
「ええ、少し声が大きいような……様子を見てきますね」
それも、何か黄色い声、というやつだっけ。よく分からないけど。事務所から出たら直ぐに理由は分かったけどね。目立つもの、あの人たちは。
「やっほー、遊びに来たよ」
始めは挨拶をされたからそれを返していたんだけど……うん。
「キョウヘイ、今日平日よね?」
あの時、本当に訳が分からなかったよ。
「こ、こんばんは」
何で呆然とした中でも返答できたんだろう、あの時。
「本当はもう少し早く来ようと思っていたんだけどね、カミツレちゃんの日程が合わなくて」
フウロさんはフウロさんで突っ込まないし。
「ファッションショーもあったからね」
「うん。カミツレちゃんに会うついでに、噂のアベニューに来ようって決めてたから。ねぇねぇ、アタシ、ショッピングがしたいです!」
「そうね、私は可愛い女の子のいるショップに行きたい気分!」
あの時、本当によく切り替えられたと思う。
「女性が出店していてショッピングできる店ですね、それなら……」
そうして先程まで、ある人と話をしていたんだ。その人は今日の昼過ぎに来たんだっけ。
「キョウヘイ様、来客です」
「ミライさん、どうしました?」
ミライさんが珍しく、かなり緊張していたのを覚えている。
「応接室へ案内しますので、キョウヘイ様も移動をお願いします」
……ここで、誰が来たのか気付いたんだっけ。
「分かりました。飲み物は合わせるから」
「承知しました」
チェレンさんはジムリーダー達が挨拶に来ると言ったこと。まだ来ていない人と言えば……一人しかいない。
そうして、その人はほどなくして開けていた扉から入ってきて……扉を閉めた。
「久しぶりだな、キョウヘイ」
「はい、プラズマ団達を蹴散らした時以来ですね」
「変わらず元気そうで安心したよ」
ソウリュウシティのジムリーダーであり、市長のシャガさん。正直、来ると思っていなかった。復旧で忙しいと思っていたから。
「それで……街の方は大丈夫なんですか?」
俺もあの日以降、ソウリュウシティへ行けたなかったから、状況を聞いたんだっけ。
「君が思っている通り、復旧にはもう少し時間が必要だが……後は作業を進めるだけだ。今日はいくらか時間に余裕もある。それよりだ、あの時は本当に助かった。君にはなんと礼をしたら良いものか」
「いえ、あれはその……あの時は動ける人が動いただけの結果です。だから、顔を上げてください」
「……そうか。君は謙虚なのだな」
謙虚とか……そういう訳ではないんだけどね。
「すみません、忙しいのに来ていただいて」
「いやいや、君が、君達がいたからソウリュウシティは元の姿を取り戻せたのだ。直接会って、感謝を伝えるのは当然のことだ」
「忙しいのに、ありがとうございます」
「それにしても、こんな商店街がライモンシティ近くに出来ていて、そのオーナーが君だったとは。いやはや、世界とは存外狭いものだ」
「それはその……成り行きなんですけどね」
「はっはっは、どうあれ悪事を働いた集団を倒し、その上で商店街を経営しつつ、ポケモンリーグへの挑戦を目前に控えているトレーナーは、未だかつていなかったのではないだろうか?」
「案外、他の地方でもしかしたらいるかもしれませんよ?」
ただ、ジム戦をした時の印象と比べると疲れた様子が見受けられた。だから、少しでも気楽に過ごせる場所をと思って、案内しようと思ったんだっけ。
「どうしますか。折角ここまで足を運んでくれたのです。何処かへ寄っていきますか?」
「それもそうだな。ここは君のアベニューだ。是非、君のお勧めに連れてって欲しいのだが」
「はい、それでしたら……」
そうそう。前日に頼んでいた物がアッツォの店に届いていたから、あれを試したんだった。いや、まさかヒュウにバレたことが回り回ってこんな時に役に立つとは思わなかったなぁ……
それが今日の夕方前までのこと。っと、ここ数日のことを思い出していたら、もうカゴメタウンか。
「ありがとう、ウォーグル」
ウォーグルをボールへ戻してポケモンセンターへ入る。気がつけばもう日が暮れそうだ。確か、カゴメタウンは夜間外出禁止なんだっけ。だったら、さっさと寝ちゃうか。ここ数日の慣れないことで疲れているんだし。
「その前に、と」