画面の先の別世界の君   作:久遠の語部

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ルリ視点9:約束と秘密のポケモン

 最後に出演した番組の本番が終わった後、マネージャーから熱が下がるまで仕事は控えるように言われ、直ぐに家へ帰った。帰ってみれば頭はふらふら、体はだるい。だから、直ぐにパジャマへ着替えてベッドに入る。体のだるさも相まって、直ぐに眠りについた。

 

 それから三日後の夕方。この間、休みをたっぷりと取ることが出来たからようやく元気が出てきた。

 

 「37.0度、ようやく下がってきたわね」

 

 「うん。それでも微熱かぁ……」

 

 「ここの所、相当無茶をしていたんでしょう。折角何も考えずに休めるんだから、休める時に休みなさい」

 

 そう言いながらも、お母さんは仕事を休みにして面倒を看てくれた。

 

 「ありがとう」

 

 「それと、買い物ついでにこの子を外に出していたから、今の内に渡しておくわよ」

 

 そうだ、サファリゾーンで捕まえた子……特に水辺にいたポケモンはお母さんの買い物ついでに外に出すのをお願いしたんだった。

 

 「あ、ありがとう」

 

 「そうそう。ルリのそのポケモン、凄いのね。こっちの言葉が分かっているかのようだったよ」

 

 「そう言えば、そんなこと言っていたような……」

 

 バオバさんだっけ。その人がとても賢い子なんだと言っていたような気がする。

 

 「二人を乗せて意気揚々と泳いだ時はどうしようかと思ったけどね」

 

 弟と妹と一緒に買い物へ出かけたはずだから……その二人を乗せたってことなんだろう。

 

 「買い物が長いと思っていたけど、そんなこともしていたんだ」

 

 「ルリが人を乗せるのが好きだよって言っていたから、それを二人に教えたら乗りたいって言い出して止まらなくって。その子もその子で乗り気だったから、見える範囲で乗らせたのよ」

 

 「そうだったんだ……」

 

 「仕事先でも、時間があったら水辺に出してやりなさいよ」

 

 「うん、ありがとう……」

 

 この子のこと、今度キョウヘイ君に会った時に見せたら、驚くかな?

 

 

 

 夜、お母さんが作ってくれた夕食を食べ終えてシャワーも浴びた。もうひと眠りしたお陰ですっかり体温も平熱に戻ったし、最近は出来ていなかったパッチール達の毛繕いも終えて後は眠るだけ。そんな時にキョウヘイ君から連絡が来た。早速繋げて、と。

 

 「あっ、キョウヘイくん!」

 

 「こんばんは、ルリさん……あ、タイミング悪かった?」

 

 私の服を見たからだろう。

 

 「ううん、今は誰かと話したい気分だったから大丈夫だよ」

 とは言え、私がこの時間でパジャマ姿なのは気になったらしい。もうほとんど熱も落ちたとは言え、説明は必要だろう。

 

 「そっか。熱は落ち着いたの?」

 

 「うん、明後日にはまたお仕事。今日までずっと休んでいたし、今は誰かとお話したいかな」

 

 仕事の日だと長く話せても10分程度だ。楽しくてホッとする時間だけど、仕事先だからいつでも切れる心構えは持っていた。

 

 「そ、そっか。俺も今日は外出する予定はないし、大丈夫だよ」

 

 けど、今日はその必要がない。だから……

 

 「ありがとう……最近はキョウヘイ君と話す時間が一番楽しくて」

 

 つい、こんなことを言ってしまったんだろう。

 

 「…………」

 

 「…………」

 

 あ、ああああああああ……

 

 「「あ、あの……」」

 

 「ご、ごごご、ごめんね。遮っちゃって……」

 

 「お、俺の方こそ……」

 

 「「…………」」

 

 こ、こんな時、ど、どうすれば……

 

 「…………」

 

 あれ、キョウヘイ君が違う方を向いて……何しているんだろ。

 

 「あ、あのさ……」

 

 「な、なあに?」

 

 何かのケースを私に見えるよう持っているけど、なんだろう。

 

 「実はさ……バッジ、全部集めたんだ」

 

 「えっ、凄い。凄いよ、キョウヘイ君!」

 

 先程の気恥しさが吹き飛ぶほどの衝撃だった。最初に連絡した時からそんなに時間は経っていないはずなのに……凄い!

 

 「もしかして、明日からポケモンリーグへ挑戦!?」

 

 思わず声に力が入るのも仕方ないだろう。自分と同年代のキョウヘイ君がバッヂを全部集めただけでも快挙だし、そんな人が友人にいるなんて思ってもいなかった。確かにキョウヘイ君はポケモンに詳しい人だったけど……凄い、凄いよ!

 

 「その前に、チャンピオンロードを抜けないと。チェ……詳しい人に聞いたらバッジを集めたけれど、あまりの難度に引き返す人もいるって聞いていてさ。だから、ここ数日で別のことをしながらしっかり準備していたんだ」

 

 別のこと……確か、ある施設のお手伝いだっけ。

 

 「大変だと思うけど、頑張ってね。そう言えば、他の地方でもチャンピオンロードってあったなぁ」

 

 「やっぱり、イッシュだけの名称じゃないんだ」

 

 「うん、私は入ったことないけど強いトレーナー達ばかり通るから、そこに生きるポケモン達も強いポケモンばかりになったとか、無暗に人が来ないように、あえて人里離れた場所に構えているんだって」

 

 人伝に聞いた話だけど、その傾向が強い。ジョウト、カントー地方も中心地から離れているし、ホウエン地方やシンオウ地方なんかは海を越えた先にあるらしい。

 

 「イッシュ地方のチャンピオンロードも気軽に行けない場所にあるなぁ。かつてチャンピオンロードを通ったことがある人から聞いたら、ポケモンの秘伝技を使わないと先に進めない場所もあるって聞いているし、敢えて行き辛い場所にしているんだなぁ……」

 

 実際に入ったことはないから分からないけど、どんな道なんだろう。ところで……

 

 「ポケモンの秘伝技って、どんな技があるの?」

 

 違いはあまり分からないけど、ポケモンバトル以外でも日常的に使われている技という印象がある。秘伝技で有名なのは……波乗り、だっけ。あれ、キョウヘイ君は何をして……あ、秘伝マシンを取り出して、取り出して?

 

 「俺が持っている秘伝技は……細い木を切る為のいあいぎり、自分が知っている街までポケモンに乗って飛べる空を飛ぶ、暗い場所を明るく照らすフラッシュ、海や深い川をポケモンに乗って移動する波乗り、通り道を邪魔する大きな障害物を力でどかせるかいりき、持っているのはこれだけかな。他にも秘伝技がある……とか」

 

 …………それ、一人で持っているの?

 

 「た、沢山持っているんだね。キョウヘイ君」

 

 「旅の中で色々と、知り合いや一緒に街を出た人からも貰ったんだ」

 

 「そ、そうなんだ」

 

 あれ、秘伝マシンと言えば技マシン以上に数が少ないと聞く。そんな貴重な物を人から貰えるキョウヘイ君って、私が思っている以上に凄いトレーナーなんじゃ……

 

 「もしかして、技マシンも沢山持っていたりするの?」

 

 イッシュ地方の技マシンは何回も使えることで有名だけど、その分値段が張るんだよね。私は買ったことないけど、弟が頑張って買おうと貯金していることは知っている。確かライモンシティへ来た時に見た、比較的安価な技マシンだっけ。

 

 「それなりにかな。まずポケモンセンターとかで購入した時もあるし、ジムリーダーに勝った時にジムバッヂと一緒に貰った時もあったかな。人から貰うこともあったし、道端で落ちている時もあったかな……」

 

 「い、色々なところであるんだね、技マシン」

 

 人から貰うのは分かるけど、落ちていることなんてあるんだ。技マシンって貴重品じゃないのかな?

 

 「誰かがもう使わないから捨てたのか、移動している時にバッグから落としたのかは分からないんだけど、何か落ちているんだよね。けど……ダウジングで見つけたことは殆ど無かったかな」

 

 「そ、そうなんだ……」

 

 「成長するにつれて新しい技は覚えるんだけど、バトルで活かせない技も結構多くて……」

 

 ポケモンが自分で覚える技だから、その技を覚えていた方がいいのかなって思っていたけど。

 

 「それって、攻撃しない技とか?」

 

 「変化技のことかな。いや、変化技は一つ持っておくといいと思っている」

 

 「そうなんだ。弟やお父さんは攻撃技ばかり覚えさせていた気がするけど、キョウヘイ君から見たら違うの?」

 

 「うん。例えば相手を状態異常にする技……歌う、催眠術、眠り粉が有名かな。技が決まると、寝ている間はそのポケモンは攻撃も防御も出来ないし、捕獲もしやすくなる」

 

 「そうなんだ。この間、プリンとラ……もう一匹を捕まえたんだけど、捕獲にも活かせるんだね!」

 

 危ない危ない、あの子について口を滑らせるところだった。あの時捕まえたポケモンはかなり珍しいと聞いたから、サプライズにしたいのにうっかり台無しにするところだった。

 

 「うん、妹さんにポケモンをプレゼントするって前に言っていたけど、眠り状態に出来るポケモンが2匹いるんなら、やり易いんじゃないかな」

 

 「うん、今度使ってみるね!」

 

 

 その後も何気ない会話が続く。キョウヘイ君はどうやらヒオウギシティ出身らしく、近所のお兄さんと一緒に旅を出て……その人も同じくバッジを8つ集めたらしい。一地方のバッジを全部集めることすら多くの人が断念すると聞くのに、一つの街で同時期に二人も出たのは驚きだ。近所のお兄さんも、キョウヘイ君と同じようにポケモンリーグへ挑戦するのだろうか。

 

 「…………」

 

 「…………」

 

 とりとめのない会話だけど、それがとても楽しい。お互いにやっていることへの接点なんてないのに、不思議だなぁ。でもそれは、私の仕事の顔をキョウヘイ君が知らないから。私のことに興味を持っているのか知りたくて、あえて仕事で行ったことのある他の地方の話をしてみても、キョウヘイ君は仕事のことだけ避けて話をしてくれる。それがとても嬉しくて、ちょっと寂しい。だから、なんだろう。この時間がとても楽しいのに、物足りなく感じるのは……きっと。

 

 「そう言えば、待ち合わせの場所と時間を決めていなかったけど、どうする?」

 

 「そうだね。集合場所はこの前と同じ、ライモンシティの観覧車の近く、時間は……11時でも大丈夫?」

 

 「うん、俺は大丈夫」

 

 忘れかけていたけど、決めていなかった日程も決まった。ああ、次に会うのが楽しみだなぁ……

 

 「ちょっと、ルリ~。誰と話しているかは知らないけど、治りかけなんだからしっかり休みなさいよー」

 

 どうやら、かなりの時間を使って話をしていたらしい。お母さんから注意されてしまった。

 

 「ごめんね、体調が治りかけているんだから、しっかり休みなさいって言われちゃった」

 

 「俺の方こそごめん、体調が万全じゃないのに色々と話しちゃって」

 

 「ううん。今日、キョウヘイ君と話せて楽しかったよ」

 

 「………………そうだね」

 

 折角楽しく話が出来たのに……何だろう、今の間。

 

 「私、変なこと言ったかな?」

 

 「い、いや、ルリさんは言ってない、言ってないよ。ただ……」

 

 「ただ?」

 

 何だろう。悩んでいると言うか頭を抱えているというか……形容しがたい顔をしている。キョウヘイ君に一体何が……

 

 「一昨日に言われたことを思い出しちゃってさ……」

 

 「だ、大丈夫なの?私で良ければ話は聞けるけど……」

 

 もしかして、急に力を付けてきたから誰かから陰口とか……

 

 「それは大丈夫、大丈夫なんだ。ただ、それを言った人があまりに予想外で、しょうもなくて、妙に頭に残っちゃっただけだから。あの人、あんなこと言う人だったんだなぁ……って」

 

 どうやら、悪口の類ではないらしい。じゃあ、何を言われたんだろう、と言う疑問は残るけど。

 

 「なら良かった。それじゃあ、また今度会おうね」

 

 「うん、またね」

 

 ライブキャスターを電源に繋げて充電する。これで明日起きる頃には充電が終わっている筈だ。

 

それにしても、キョウヘイ君は誰に何を言われたんだろう。そもそも私、何か変なこと言ったかな、うーーーーーん。

 

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