個室でのテンマさんとのインタビューを終える。それにしてもポケドルって大変だな。てっきり歌って踊ることがメインだと思っていたのに、あんなインタビューもやっているのか。イッシュリーダーズトーナメントでも思ったけど、ポケドルってやること多すぎるんじゃない?
ともかく、どうにかして時間を作って……
「キョウヘイ、立食パーティーをするからシアターに向かってくれんかの?」
「…………え?」
聞いていなかっただけに焦る俺へ、アシスタントさんが補足をしてくれた。俺へ連絡がいってなかったのは、撮影後にプラズマ団の調査へ出ていて行き違いがあったかららしい。ウッドウさんの意向とあっては理由を付けて立食パーティーへ参加しないことも難しいし、かと言って参加したらしたで、あいつらが強襲して来る可能性だってある。
「随分焦っていますけど、何かありましたか?」
「あ……えっと、その……」
……マズい、今からダークトリニティ達を探しに行って迎え撃つつもりだったのに。いや、仮病とかで何とかして時間を作って……
「この後ちょっと外せない用事があって、少しポケウッドを離れたいんですが……挨拶だけじゃ駄目ですか?」
「ウッドウさんから、後でキョウヘイさんにも一言欲しいとおっしゃっていました。それまでに戻って来られるなら……」
「……頑張ってみます」
アシスタントの人がウッドウさんの後を追いかけるように部屋を後にする。
「あの、随分と困っているようですけど、何か力になれますか?」
「あ、その……こっちの事情だから気にしないで。それから先に向かっていてもらってもいいかな?」
様子を見ていたテンマさんが俺のことを心配してくれているけど、彼に協力してもらうのはあり得ない。何せ、キリキザンの刃のように鋭いあいつらのことだ。目的が俺を排除で、人質が有用だったら間違いなく使ってくる。どうやっても、一人で探して見つけ出さなきゃいけない。
俺を心配しつつも、テンマさんも部屋を後にする。
まずい、本当にまずい。
本来だったら慣れないスーツでパーティへ行かなきゃいけないんだろうけど、事情が事情だ。ダークトリニティ探しを優先したい……が、スーツ姿のまま探しに行ける訳がない。かといって、誰かを巻き込むなんて絶対に出来ない。
こうなったら……
「すみません、お待たせし……」
驚かれるか、笑われるかは分かっていた。急いだ風に見せて普段の姿で来ればどんな形でも注目を集めてしまう……だけど、そうも言ってられない。
「すみません。この後外せない用事があって、少しポケウッドの外に行きます。用事が終わったら直ぐに戻りますので!!」
ウッドウさんは俺をひとしきり眺めた後、諦めたようにため息をついた。
「……分かったよ。何があるかは知らないけど、早めに戻ってきてよ。アシスタントの人から聞いたと思うけど、キョウヘイにも一言もらうつもりだから、そのつもりでね」
「……はい」
戻れるなら戻りたいけど、応えられないだろう。だって、あいつらはあんな予告状を出したんだ。万全の準備をして俺と戦うはずだ。そんな状態でポケウッドの人達や建物を巻き込む訳にはいかない。増してや、あいつらだけが襲ってくるなら、ポケウッドやタチワキシティで堂々と戦ってくるわけがない。
早足でシアターの外へ出る。その姿を、心配そうに見ている人に気付かないまま。
「……まぁ、そうなるよな」
シアターを出て周囲を探しても、ぱっと見では見つからない。それも仕方ない、そもそもポケウッドは広い。スタジオセットや撮影セットの保管をする倉庫が幾つもあって、映画で使う小道具やその映画でしか使わないセットをその幾つもある倉庫で保管しているから、何時の間にか保管する場所が無くなっていたと嘆く担当者の声が出るほどだから。
ただ、そうしたポケウッド内をまずは探さないといけない。倉庫周辺や入り口付近、はたまた屋根の上など調べる場所は幾らでもある。ただ、そうこうしている内にポケウッド内で10分が経っていた。誰かが見ていたら、不審に思われる頃だ。
「……どう、ルカリオ?」
さっきからボールの中ではルカリオが波動をキャッチしようとしているけど、一向に反応がない。 ルカリオの波動感知でも、奴らを捉え切れていないようだ。やっぱり一筋縄ではいかない相手だ。だからこそ、罠と知っても一人になったのに……空を確認させていたウォーグルも、見つけられていない様子からポケウッド内にはいないかも。
「……やっぱり、外か」
ポケウッドでいなかったら、次に探すのはタチワキシティ、道路、コンビナートか。だけど、タチワキシティとコンビナートは人が多いからやり辛いと考えるし、わざわざ俺を挑発して呼び出そうとする辺り、人目を避けたいはず。
「少しだけコンビナートを見て、それから道路かな」
自転車に乗って急いでポケウッドを後にする、その視線に気付かないまま。
タチワキコンビナートとタチワキシティをざっくりと見まわしたけど、やっぱりいそうにない。気になるけど、そっちを気にしている場合じゃない。となるとやはり、本命の20番道路か。そう言えば、さっきから歌声のような音が鳴っている気がするんだけど、何処からだろう。まぁ、いいや。ゲートを通って秋風を浴びる余裕もないまま、暗くなっている道路を探そうとして……
「っどうした!?」
突然、ボールの中からルカリオが出てきて警戒心を露にして何度も吼える。ルカリオの向いた先に目を向ければ、涼やかな音が聞こえてくる水辺のある方向だ。ルカリオが波動を感知したのなら、そこにあいつらはいるんだろう。その水辺は波乗りが必要なくらい深さもある水辺だけど、あいつらの尋常じゃない身体能力を知っているからか、20番道路の水辺など軽々と越える姿が容易に想像ついた。
「……まじか」
ダイケンキに波乗りをしてもらい、その先へ向かおうとして……まさかの滝があった。え、こんな近くに滝なんてあったんだ!
「いや、忘れさせるなら……」
よく考えろ、どんな形になるか分からないけど戦うことになる。今ダイケンキが覚えている技で使いそうにない技と言えば……
滝登りを覚えさせて、その先へ進む。するとそこには……小さな洞窟のような何かがぽつんと在った。
「……こんな所に洞窟があったのか。それで、ここでいいんだよね」
ルカリオが頷くなら間違いないだろう。何が起きるか分からないけど、入るしかない。何しろ、ここで逃げられたら次は間違いなく、アベニューにやってくる。既に手痛いけど、ここで何とか食い止めいないと。
「念には念を……と」
ルカリオに加えて、ダイケンキ、ウィンディを出して慎重に洞窟へ入る。ルカリオが居場所を探して、ウィンディが威嚇で牽制して、ダイケンキで奇襲を防ぐ体制だ。旅をしてきた期間も長いこのメンバーなら、連携に必要な指示も最低限で大丈夫。それくらい、信頼できるメンバーだ。
それにしても不思議な空間だ。温かくも冷たく、あの20番道路の片隅にあった小さな洞窟なのに奥が広い。下っている様子もないのに何処までも続きそうなこの洞窟は一体……
「よく来たな……」
いた、ダークトリニティ。
「よかったな。ゲーチス様はもう何も為されない。いや、正しくはもう何も出来ない……だから、お前を許さない」
「……そうか」
それはいいことだ、勝手にすればいい。ただ、不可解だ。この三人なら、闇夜に紛れて奇襲だって出来たはずだ。
「だからこそ……わたしたちと戦え!」
手段を選ばなければ幾らでもやりようがある相手だから、こうしてポケモンバトルになるのは楽だけど何でまた……
「ゲーチス様の為に戦うこと!それだけが今、我らが生きている証!」
あいつらが手持ちのポケモンを取り出した。
「我らダークトリニティは今までも今もこれからも、ゲーチス様の忠実な部下!」
1人がシングル、もう1人がトリプル、最後の1人は……前衛と後衛に分けたあのスタイルは……ローテーション。これを同時に相手する、か。
「おまえに勝つ! それこそがあの方の失われた心を取り戻す、たった一つの術!」
──あぁ、そういうことか。
嫌でも理解させられた。わざわざあんな遠回しな方法、かつポケモンバトルでの決着を求めたのは多分、ポケモンバトルで俺を打ち倒し、その土産話で何とかしてゲーチスの気を取り戻したいからなんだろう。このダークトリニティ達がかつてゲーチスからどんな縁があったのか分からない、知る気もない。ただ、俺がすることは……
「そうか。なら……」
正直、プラズマ団の後始末とか面倒だと思ってた。俺一人だったら、プラズマ団を倒すくらいで止めていたと思う。プラズマ団のポケモンとの関係性が嫌いだったから、嫌なら関わらなければいい。だから、今目の前に立っているダークトリニティ達も嫌いな方だ。自分の目的の為にポケモンを道具として育ててきたのが、モンスターボールから出したポケモン達の目を見れば一目で分かったから。
それでも、認めなきゃいけないこともある。あろうことか、ダークトリニティ達はポケモントレーナーとして俺と対峙することを選んだらしい。
──逃げる訳には、いかないだろ。
「……分かった」
……ただ、非常に分が悪い。連戦なら兎も角、同時に3種のバトルを展開されている上に、ダーク達自身が仕掛けてくる可能性すらある。
「……行くぞ!」
それでも、今日の為にメンバーにはそれぞれ道具を持たせて万全の準備をしてきたつもりだ。やるしかない!