画面の先の別世界の君   作:久遠の語部

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キョウヘイ視点3:砂浜と波、焦る気持ち

 ヤマジタウンまでフウロさんの操縦で連れて行ってもらい、ベルさんと共にリバースマウンテンを進んでいく。いや火山だから分かっていたけど、何故か涼しい。涼しいからいいけれど、なんでこんな火山に沢山のトレーナーいるんだろう。ベルさんは珍しいポケモンの調査だから分かるんだけど……修行なんだろうか。

 それにしてもリバースマウンテン、何で人が歩いても、ポケモンバトルしても平気な空間があるんだろう。ポケモン達がかつて掘った跡だったりするんだろうか。

 それにしても流石はベルさん、かつて旅していたこともあって脚が強い。俺もまだまだ平気だけど、こうして旅をすると鍛えられていいよね。とはいえ、かなり進んだはずだからもうじき出口だと思うけど……

 

 「あっ!ここを抜けるとサザナミタウンだね!」

 

 「あたしはもうちょっと調査したいんだけどどうする。一度ここで別れちゃう?」

 

 「はい、次のジムも目指したいんで」

 

 「うん、そうだね。ヒードランに関することをもうちょっと調査しておきたいし、もうちょっとだけここにいるね。一緒にいてくれてありがとう!」

 

 「いえいえ、ポケモンの回復とかありがとうございました」

 

 「気にしないで。それから気を付けて旅を続けてねえ!」

 

 「はい、また会いましょう!」

 

 リバースマウンテンを抜けた先は……確かにベルさんの言う通り、太陽が輝くビーチだった。

 

 「えー……」

 

 火山を抜けた先がビーチって、どうなっているんだ。あ、吹き抜ける風が気持ちいい。冷たい水気の風と海の潮気って、どうしてこんなにテンション上がるんだろう。

 

 「よし、とりあえずポケモンセンターに寄ってから……と」

 

 ベルさんのお陰で回復はしているが、新しい場所では捕獲に向いたポケモンを別途連れて行っている。ジムへ挑戦するメンバーに戻してまずは町を見て回ろう。

 

 朝早くリバースマウンテンに潜ったこともあり、火もまだ高い。先を急いでいないんだし、サザナミタウンを一通り見て回ってもいいだろう。そして、ここにはポケモンジム、あったかな……

 

♪♪~~、♪♪~~

 

 おや、これはルリさんからの着信だね。

 

 「あ……キョウヘイさんですか」

 

 「今、お時間は大丈夫ですか」

 

 ポケモンジムを見つける為に街を散策したかったけど、リバースマウンテンを抜けた体は思っていた以上に疲れていたらしい。電話を取ったら途端に座りたくなった。

 

 「大丈夫ですよ」

 

 折角だから、砂浜まで歩いて腰を下ろす。ベルさんとのリバースマウンテンの探検は楽しかったが、うん。流石に足がパンパンだ。ひんやりとした海が気持ちいい……

 

 「あぁ~、気持ちいい……」

 

 背中はビーチ特有の白い砂浜、ポカポカと照らす日差しはほんのりと温かいくらいの温度、これが一層眠気を誘う。今、ルリさんと会話してなかったら寝ていたかも。

 

 「今、どちらにいるんですか?」

 

 「サザナミタウンです。実は少し前に着いたばかりなんですよ」

 

 「いいなー……何時かプライベートで行ってみたいです。砂浜が綺麗なことで有名なんですよ」

 

 「確かにそうですね。こう……適度な日差しのお陰で砂浜が温かいし……海の色も透明で……疲れてなかったら泳いでいたかも」

 

 うん、ちょっと眠くなってきた。あまりに心地いい……

 

 「水泳もされるんですか?」

 

 「うん。最近はそんな機会無かったけど、多少なら」

 

 「そうなんですね……それから暫く空きましたけど……ポケモンリーグのバッジは何処まで集めたんですか?」

 

 そんな眠気も、ルリさんの何気ない一言で吹き飛んだ。

 さて、どうしようか。ここ最近、ジョインアベニューへ戻ったりすることも多いことや次のジムまでのアクセスの悪さから、実はバッヂが増えていない。次のジムまでが何故か遠いこともあるんだけど。まぁ、それはいいや。ルリさんとしても俺のことを気にしてくれているんだろうし……

 

 「もうじき……8つ全て集まります」

 

 ……やっべ、ちょっと見栄張った。まだ6つです。勿論、バッヂを集めてここまで来たのだから、今更引き返す気も無いけれど。

 

 「凄い。キョウヘイさんってジムバッジをそんなに集められるほど、すごく強いんですね」

 

 ま、まぁ?

 今の俺だって弱くは無い筈。ベルさんからもこの調子なら8つ揃えられるよ、とお墨付きを頂いたのでつい言ってしまった。

 

 「いやぁ……俺と一緒に旅立った兄貴みたいな人も同じくらいジムバッヂを集めていますから、俺なんてまだまだですよ」

 

 ヒュウはバッヂよりもチョロネコを取り返す為にプラズマ団打倒を目指している。でももし……ヒュウが負けることがあったら。負けた上で取り返すどころか奪われてしまったら……

 

 「……………………」

 

 「どうしました、キョウヘイさん?」

 

 「あ、ああ。ごめんなさい。少し考え事をしていまして」

 

 しまった。ついヒュウやプラズマ団のことを考えて、ルリさんと会話しているのを忘れていた。折角、ルリさん忙しい合間を縫って電話をしてくれているのに。

 

 「そうでしたか。じゃあお二人共強いんですね。私はあまりポケモンバトルをやらないから分からないけれど……ライモンシティのスタジアムで楽しそうにバトルする人を見るのは好きですよ」

 

 「ああ、あそこはポケモンバトルする人が多いですよね。時折行きますけど、いつも熱気に包まれているような気がします」

 

 「そうですね。私も見掛けることがあるんですけど、あの熱量には少し圧倒しちゃう時もあります。ところで、キョウヘイさんは旅を続けていますけど、道中で音楽を聴きながら旅することはありますか?」

 

 「旅先ではあまり聴かないかな……ポケモンの声を聞いて草むらに分け入ることもあるから。だけど、ポケモンセンターで寝る前とか、休んでいる時に聴いています」

 

 「どんなジャンルの曲を聴かれるんですか?」

 

 どんなジャンルと言われても……

 

 「旅の前に聴いていたのは……番組とかCMとかに流れている曲とかかな。あれってどういうジャンルなんでしょうか。あまり、音楽のジャンルに詳しくなくて……」

 

 「へぇ……ということは、キョウヘイさんてポップスをよく聴くんですね」

 

 「そう……なんですか」

 

 ジャンルの区分がよく分からないけど、ポップスに分類されるらしい。

 

 「音楽っていいですよね。聴いていると笑顔になれます」

 

 顔は相変わらず見えないけれども、声が何処か弾んでいるように聞こえる。

 

 「ルリさんって、音楽が好きなんですね」

 

 「はい。昔から、楽しい時も辛い時も音楽があれば元気になれましたので!」

 

 何となく、ルリさんは音楽に関係する仕事をしているのではないか……そんな直観じみた予想を立ててみる。けれど、まだ会ってもいないんだし、このライブキャスターを返すまでの関係になるかもしれないんだ。今踏み込んでも良い話じゃないよね。

 

 「なるほど。俺は今まで見た事の無いポケモンを見つけたり、育てることが好きです。やっぱり、色んな場所にそれぞれ違ったポケモンがいて……違う場所だと進化していたりとかするのが面白いです」

 

 「確かに、ポケモンってありとあらゆる所にいますからね。それで……ふと思い出しましたが、先程疲れていると言っていましたよね。どうやって来たんですか?」

 

 「実は……リバースマウンテンを通ってきて……」

 

 「……暑くなかったですか?」

 

 「これが意外にもう涼しくて。だけど、ヤマジタウンから長距離移動したから疲れているので涼んでいます」

 

 「大変でしたね……」

 

 さて、話題が互いに無くなったらしい。いつもならルリさんの先輩が呼びに来て会話が終わるんだけど……

 

 「……あぁ」

 

 最近の悩みを聞いてもらおうか。どうも、あの問題は自分にとって思った以上に厄介であり、次に戻るまでには是非とも解決しておきたい。

 

 「そうだ。一つお聞きしたかったんですが、まだお時間は大丈夫ですか?」

 

 

 

 自分の、個人的な相談に乗って貰った後、いつも通り先輩が来たらしく、通話が終わる。

 

 「ああ~、相談出来て本当に良かった」

 

 前々から悩んでいた悩みが、ここに来てようやく解決した、と思う。さて、ようやく気が付いたが、この町にはジムがない。ならば、先に進んでしまった方がいい。次に戻るまでの課題は、その切っ掛けを作れたんだし、わざわざジョインアベニューへ戻る必要もない。

 

 「待ちなッ!」

 

 っと、この聞き覚えのある声は……

 

 「ヒュウ!」

 

 「お互いどれだけポケモンを育てたか、確かめようぜッ!」

 

 丁度いい。ジムバッヂを共に集めている同士、今の自分の実力を図る良い機会だ。

 

 「よし、ポケモン勝負だ!」

 

 そうして、ヒュウのとの何度目かの対戦が始まった。

 

 

 

 ──少し危うかったけれど、何とか倒した。

 

 「いいぜッ! 俺達これだけ強ければプラズマ団も逃げ出すよなッ!」

 

 ただ、ヒュウが強くなっているというよりは……

 

 「まっ、逃がす訳ないけどなッ! アイツのチョロネコ……絶対に取り戻すッ!」

 

 最近はジョインアベニューへ行くことも多かったからか、思ったより自分のパーティが育っていない……?

 

 「…………」

 

 確かに、ヒュウと違って俺は6匹を既に揃えている。ただし、揃ってはいるもののバラつきがあるかもしれない。実際に半分以上が戦闘不能になってしまった。

 

 「と言う訳で……これからも助けてくれよッ!」

 

 まぁ、アララギ博士達の言葉からもプラズマ団を放って置けない感じは出ていたし、ヒュウの旅の目的に付き合うということはプラズマ団とは嫌でも戦うだろう、これからも。チョロネコ……進化しているかもしれないけれど、ここまで旅をしてきているんだし何とか見つけて欲しいと思う。

 

 「あと、ポケモン図鑑も頑張れ! 正式に完成を頼まれたのはお前だもんな!」

 

 「ああ」

 

 先に進むのか、ヒュウが俺から背を向ける。折角だから次の道路に行くまでを見送ろうとして……

 

 「あ、そ-だ」

 

 ヒュウが一度振り返った。

 

 「……だけど、偶にはリフレッシュした方がいいぞ。ここ、リゾート地らしいし」

 

 「……え、そんな疲れているように見える?」

 

 もしかして俺、ヒュウ以上に余裕が無かったりする?

 

 「ああ、勝てなかった身で言えたもんじゃないけど、キョウヘイの指示に気迫が無かったというか。攻められる時に攻めていない印象があったぜ。ま、それでも戦えているから十分凄いんだけどな!」

 

 じゃなー、と言って今度こそヒュウは次の道路へ走っていった。

 

 「…………」

 

 ヒュウの言葉は今の自分にとてもよく刺さった。どうも考えることが多くなり過ぎたのだろう。プラズマ団が何をしてくるか分からないから、心なしかポケモン図鑑集めする為の寄り道も避けていたのかもしれないし。他にも、同等の悩みとしてイチミさんとミライさんから与えられた課題が重かったこと……かな。うん、色々と重なって参っていたのかもしれない。まぁ、アベニューの件は……ルリさんのお陰で一歩進めそうだったけれど。

 

 「…………」

 

 だからヒュウにも苦戦した……のだろうか。いや、ヒュウが弱い訳ではない。恐らく、ヒュウは手持ちを絞っている分、レベルが高い。だが、自分はどうだ。強敵に挑む為のパーティこそ選び終えたが……その分、レベルの高いポケモンと低いポケモンで差が出てきているのでは?

 

 「……ヒュウ」

 

 ヒュウは妹のチョロネコを取り返す……その一心で旅をしている。傍から見れば立派な理由だ。人によってはプラズマ団打倒の救世主……なんて言うかもしれない。だけど……違う。ヒュウは……塞がってしまった妹の心を取り戻したいんだ。

 

 「……ヒュウの親父さん達にも頼まれているんだ。俺がこんな所で置いて行かれちゃ、不味いだろ」

 

 今までそりゃあ……何度もプラズマ団の下っ端を倒してきた。これからもヒュウだけでも下っ端は倒せるだろうし、俺も倒せるだろう。だけれども、幹部やボスに当たる人物とは当たったことがない。それがどう出るのかが分からない。

 

 「……ん。何、どうした?」

 

 先程まで戦ってくれていたポケモン達が呆れた様子で俺を見ていた。声を掛けて見たが返事はない。だが、一様にある方向を見ており、そっちを見ろ、と言わんばかりの態度をしている。一応、性格バラバラだったよね、君達。

 

 「……何だよ、いった……」

 

 ああ、こんな光景にも気が付かなったのか。そりゃあ呆れられる。

 

 「すっげー……きれいだな」

 

 夕焼け空のサザナミビーチを見る。

 

 ──プライベートで行ってみたいです。砂浜が綺麗なことで有名なんですよ。

 

 「ルリさんの言う通りだ。砂浜と海、夕焼けが綺麗だなぁ……」

 

 どうやら、自分は思った以上に考え込んでしまっていたらしい。今日はとりあえずサザナミタウンに泊まることにして、夕日が沈むまではポケモン達をボールから出して自由にさせながら、何気ない時間を過ごした。

 

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