13番道路を抜けて、サザナミシティの先にあるカゴメタウンに何とか到着した。途中、かなりトレーナーが多かったから、回復させてあげないと……それから、途中に何かがいた気がするけど、気のせいだったかな。まぁ、いいや。まずは回復回復っと。
「はーい、キョウヘイ」
何処かで聞いた覚えのある声が……あ!
「このカゴメから真っ直ぐ進めばソウリュウシティ。だけどその前に……あなた達にも聞いて欲しい話があるの」
「どんなお話ですかあ?」
アララギ博士の助手である、ベルさんも聞かされていないのか。
「いいから、いいから。とにかく行きましょ!」
出来れば、ポケモンセンターへ行きたいんだけど……待ってくれそうにない、か。
案内されたのは御婆さんの一軒家。どうやら昔話を聞かせてくれるらしいけど……前置きも長く、おれは次第に眠くなっていく……が、幸い立っていたことやモンスターボールから適度に振動してくれていたお陰で、何とか居眠りせずには済んだ。そんな俺でも、会話の中に興味をそそられる言葉が幾つもあった。いんせき、ジャイアントホール、凍えるような冷たい風……この辺りがチェレンさんが調べていたことと関係があるような、そんな漠然とした直感があった。
昔話を聞いて御婆さんの家を出た後も、アララギ博士とベルさんは話し込んでいたけれど研究者だなぁ……というか、もう夕方じゃないか!
「ところで、キョウヘイ」
「は、はい!」
な、何を質問されるんだ!?
「レシラムというポケモンの話は覚えている?」
ああ。これならなんとか……
「はい」
博士の見解が始まったけど、レシラムとゼクロムって見たことがないからどうにも実感が湧かないんだよな……でも、プラズマ団はかつてそれを手にしようとしていたから、レシラムとも関係があるんだろうか。
「話が長くなったわね。その辺りもシャガさんに聞いてみてね」
うーん……幾ら俺が博士の知り合いとは言え、話してくれるのだろうか。
「そうそう。ソウリュウシティのシャガさんは、ポケモンを鍛えるため自らレスリングをしちゃうんだよ!」
え、ベルさん……俺、そんな人に勝てるの?
「って、アララギ博士。待ってくださいよお!」
「行っちゃったよ……」
ようやく話が終わったけれど、結構時間がかかった。今日中にソウリュウシティまで行こうと思っていたけど、流石に無謀だな。……なら、もう少しカゴメタウンを見て、ポケモンセンターに戻ろう。
それにしても、こう歩いていると、他の街と比べて何というか……
「うーん。さっきの伝承のこともあるからか、他の町と比べても静かだね」
だけど、この独特の雰囲気は嫌いじゃない。この町にいると、不思議と時間の流れがゆっくりになっているような……そんな気がするから。ヒオウギシティやライモンシティのようなにぎやかな街も好きだけど、こういう場所もたまにはあってもいいな……って、あれ。あそこにいるのは……
「ヒュウ」
「よう。この辺りにプラズマ団を見なかったか。そんな噂を聞いたんだけど……」
……こんな静かな町にプラズマ団だって。うーん、この町に来てからは見ていないけど……ん、あれは?
「どうした、キョウヘ……!」
ヒュウもこっちに近付く人に気付いたか。見慣れたプラズマ団下っ端の服と、何処かでみた老人を。
「やれやれ。それはご苦労な話だな、物好きなトレーナーよ。その好奇心に応じて、少し語ってやるとするか」
ヴィオという老人の語りは、よく分からなかった。いや、理解したいとも思わなかった。
「……口を閉じろよ。俺は奪われたポケモンを取り返すだけだ」
そうだよな。ヒュウはその為に旅へ出たんだから。
「キョウヘイ、力を貸してくれ。準備はいいよな」
「ああ!」
大丈夫。流石にこんな相手に負ける気はないさ。……あ、回復。
「言っておくが……俺は今から、怒るぜ!」
いや、こいつら相手にはいいハンデか。それに、奪われた人達の気持ちが分からないこいつらには、絶対に負けたくないよな!
バトルは問題なく勝てた。うん、前にヒュウと戦った時より調子がいいのかな。
「ヴィオ様と共に戦ったのに、何だこいつら!?」
「このトレーナー共、2年前を思い出させる……が、それよりもアレを探さねば!」
アレ?
「あの科学者が言うように、やはりソウリュウにあるのかもしれん。お前達、遊ぶのはまた今度だ」
「待てッ!」
ちょ、ヒュウ。まだ下っ端がいるかもしれないし、ポケモンセンターに行って、体力回復させた方がいいんじゃないか?
「うーん……」
ヒュウのことが気になるけど……もう、暗くなり始めているんだよな。
「少しだけ追ってみて……プラズマ団がいなかったら、ポケモンセンターに戻ろう」
隣の道路まで探しに行って……何人かと戦ったトレーナー達から話を聞いてみたけれど、プラズマ団の姿は見掛けなかったらしい。もしかして、よく分からない3人組に回収されたんだろうか。ついでに、ヒュウはそのままソウリュウシティ方面へ向かったことも聞けた。
「仕方ない。今日は休もう」
ヒュウの様子が気になると言えば気になるけど……激情のままに進むように見えるけど、案外しっかり準備しているタイプだし、いなくなったと知れば切り替えてくれるはずだ。こっちに戻ってこないって事は、そのままソウリュウシティに行ったんだろう。俺のメンバーは疲れているし、流石に休ませてあげないと。
「お疲れ様です。あなたのポケモンを預かりますか?」
「はい、お願いします」
「皆さん、結構疲れていますね……時間を頂きますが、良いですか?」
「はい。今日はここから出ないつもりなので、急がなくて大丈夫ですよ」
「それじゃあ、少々お待ちください」
そうして、皆の回復を待つ。今日はなんやかんや連戦が続いたし、そりゃあ疲れたはずだ。せっかく静かな町に来たんだ。ソウリュウシティへ行く前に、時間を取って自由にさせる時間を取っていいかもしれない。
あー……元々の人数も少ないから、回復にも時間が掛かっているみたいだね。イチミさん達への連絡は終わったし、休憩室のテレビでも見て時間を……あ、そうだ!
「お、今なら繋がるみたいだ」
繋がらなかったら諦めてテレビを見ようと思ったけど、今日は電波が繋がっているみたいだ。
「あっ、キョウヘイくん!」
割り当てられた部屋でライブキャスターを繋げると、ルリさんの声が聞こえてきた。
「こんばんは、ルリさん。今、話しても大丈夫?」
「うん、今は大丈夫だよ。あのね……この前はありがとう!」
いやいや、こちらこそ。
「俺の方こそ、無事に返せて、ほっとしています」
「実際に会ってみたら、年が同じくらいだったからびっくりしちゃった」
それ、俺の台詞ですよ。
「俺も驚きましたよ。仕事していると聞いていたんで、もっと年上の人かと」
「私の方こそ……声の感じだけだと私よりも年上なのかなって思っていたから、こう見えてライブキャスターで話す時も少し緊張していたんだよ。これからは緊張しないで話せるのが嬉しい……かな」
確かに、俺も年上の人だと思っていたから、少しよそよそしかったかもしれない。
「そうですね。滅茶苦茶忙しい人だと思って、少し身構えていたかもしれません」
「そういえば、以前にキョウヘイくんはジムバッチを集めているって言っていたけど、どんなポケモンが好きなの?」
「そうですね。どんな……と言われても、皆、色んな違いがあって面白いと思います。その分、世話も大変なんですけど。ちなみに、ルリさんはどんなポケモンが好きなんですか?」
「私、ノーマルタイプのポケモンが大好きなの。その子のがんばり次第ではどんなポケモンにでもなれる。そんな魅力を感じない?」
「ノーマルタイプですか。色々なタイプの技を覚える印象が強いです。そういえば、強いトレーナーが使ってくるノーマルタイプって結構怖いんだよなぁ……」
そういう面含めて、チェレンさんはノーマルタイプのジムリーダーをしようと決めたんだろうか。だとしたら、凄い人だ。
「それに……可愛いポケモンもたくさんいるんだから」
「確かに、女性でチラーミィを持っている人は多いですよね。ルリさんのお気に入りは何ですか?」
「私はパッチールかな。今の仕事が始まってからの付き合いだった……かな。だから、私のこともよく分かっているみたい」
「一番付き合いのあるポケモンが好きになるのは良く聞きますね。その中だと俺はダイケンキが一番の付き合いかな。後は人から是非引き取って欲しいと頼まれたり、草むらで捕まえたポケモンだったり……かな」
「人から頼まれることもあるんだ。その子は、どんな子なの?」
そう言えばあんまり見ないポケモンだけど、ここぞという強敵と戦う時には頼りになるんだよな。
「うん。そのポケモンは変わった特性を持っていて、攻撃を受ける前なら他のポケモンに化けることができて……」
「凄い、そんなポケモンがいるんだ。タイプも変わるの?」
「いや、元のタイプは変わらないかな。けど、一度目は意表を突けるから、強いトレーナーと戦う時に活躍しているよ」
「そうなんだ。でも、そんなポケモンだと偶に間違えちゃったりしない?」
……はい、心当たりあります。間違って覚えていない技を指示した時なんか、乱れひっかきのポーズをしていたなぁ……
「うん。偶に間違えて、睨まれるんだよね……」
「キョウヘイくんみたいな強いトレーナーでも、間違えることがあるんだね」
うーん……強い、のだろうか。
「俺なんてまだまだですよ。ところで、仕事が無い時は何をしているんですか。俺はポケモントレーナーだから、ポケモンを捕まえたり、トレーナーと勝負していることが多いですけど……」
「私、料理が趣味で美味しいものの話を聞くと、研究の為にわざわざ食べに行ったりもするんだよ。最近だとヒウンシティで評判のヒウンアイスを食べたいんだけど……いつも行列が出来ていて全然買えないの」
ルリさんは料理が趣味なのか。
「確か……新チャンピオンが食べたことで噂が広がったとか聞きましたね。新チャンピオンって誰なんだろう」
「私もその辺りの話は詳しく知らないかな……アデクさんのお弟子さんとか、息子さんかな?」
……アデクさんの弟子ってレンブさんですよね。あの人が食べているのは想像……
「ブフッ」
「確かに、印象に合わないもんね。それから、お休みの日はよく散歩に出かけるの。周りの景色をのんびり見て回るだけでも、いい気分転換になるんだよ。ライブキャスターを落としたのもライモンシティを散歩している時だったから、キョウヘイくんに出会えたのは散歩のお陰かもね」
なるほど、仕事が立て込んでいたから、ちょっとした休憩の時に気が抜けちゃったのかな。
「確かに、普段と違う景色を見るのって、いい気分転換になりますよね。俺も今、カゴメタウンにいるんだけど、他の町と違って、とても静かなんです。空を見たら、星が沢山見えるのかな?」
「カゴメタウンかぁ……静かでいい町だけど、夜に外へ出るのがちょっと怖いよね」
「ポケモンの声が聞こえるほど静かなんで、驚きました。今は町の人に倣って、ポケモンセンターに戻って……ポケモンの回復を待っているんです。そういえば、ルリさんは色々な場所を知っているみたいですけど、他の地方にも行ったことがあるんですか?」
一瞬、ルリさんが躊躇いの表情を見せる。きっと仕事に関わることだからだろう。
「……そうだよ。それからわたし、よく人とポケモンの交換をするの。仕事でいろんな地方に行くことが多いから、その場所で出会った人達と記念に交換したりするんだよ。いつか、キョウヘイくんともポケモンを交換したい……かな」
「いいよ。それなら、どんなポケモンが欲しい?」
気軽に言っちゃったけどいいのかな、これ。
「えっ、いいの?」
「うん、ルリさんなら大事にしてくれるだろうし。欲しいポケモンがいれば、捕まえてくるよ」
まぁ、今のイッシュ地方で見つけることが出来るポケモンなら、だけど。
「でも私、あんまり人にそういうお願いしたことないから……」
「折角だから大事にして欲しいし、一緒にいたいポケモンの方がいいかなって」
「そ、そうだね。うーん……」
多分、親しくなった人と交換はしてきたけど、どんなポケモンが欲しいとは言ってこなかったんだろうな。そうなると、以前話した時の記憶から……何て言っていたっけ……あ!
「そういえば、前にイーブイ欲しがっていたよね」
「よ、よく覚えていたね」
「うん、何か覚えてた。確か……ヒウンシティ近くで見たんだっけな」
「え、ヒウンシティにいるの!?」
図鑑でもう一度確認って……マジでヒウンシティだ。あれ、あそこの草むらって……あ。
「あー……でも、あそこって」
よく考えたら、下水道通らないといけないじゃん。流石にそんなところへルリさんを案内する訳には……!
「そもそも、ヒウンシティに草むらってあったの!?」
「……の、近くの道路……だったかなぁ。ただ、イーブイは野生の数も少ないって聞くから、もしかしたらトレーナーが散歩させていたのかも」
「そっかぁ……まぁ、イーブイは人気だもんね」
よし、無理やりだけど誤魔化せた。
「キョウヘイくんって、ポケモンの生息地にも詳しいんだ」
「ま、まぁ記憶している範囲だけだけど」
嘘です。ポケモン図鑑を貰っているからです。そして、出会ったポケモンなら生息地が分かります。
「トレーナーのポケモンじゃなくて、野生でも出てきたらいいのになぁ……あ、そうそう。トレーナーと言えば……この間、弟がお父さんと凄く楽しそうにポケモン勝負をしていたの」
「弟さん、結構強いんですか?」
「ハハコモリがね……まぁ、お父さんも普段戦わないけど、若い頃はキョウヘイくんのようにジム巡りをしていたんだって。だから最終的にお父さんが勝ったんだ」
「へぇ……」
当時の話は少し、気になるかも。
「そうしたら……私と一緒に見ていた妹がポケモンバトルできることが羨ましくなったのか、自分もポケモンが欲しいって泣き出しちゃって……」
「あー……それ、友人の妹がそうなったの、見たなぁ……」
まぁ、ヒュウの妹さんのことだけど。
「そこで……相談があるんだけど、聞いてもらえるかな?」
「いいですよ」
「今度、妹にポケモンをプレゼントしようと考えているんだけど、どんなポケモンがいいかな?」
なるほど。それなら、力になれそうだ。けど、俺の経験って参考になるのかな。
「初めてポケモンを貰った時は、ほのおタイプか、くさタイプ、みずタイプの中で友人と一緒に選んだかな」
「そうなんだ。そんなに沢山から選べるなんて凄いんだね!」
とは言え、ルリさんの忙しさを考えると、手軽に捕まえられる方がいいよね。
「そ、そうかな。ただ、捕まえに行くのなら……ほのおタイプは熱い所にいることが多いから、気軽にはいけないかな。その点、みずタイプ、くさタイプは近くで見つけやすいかも」
「そうなんだ。それじゃあ、みずタイプ、くさタイプにはどんなポケモンがいるの?」
「イッシュ地方で見かけたみずタイプだとコダック、マリル、コアルヒー。それから……あぁ、後は海だからなぁ。一緒に行くのが大変か」
それに、海のポケモンって、危険なポケモンもいるんだよね。プルリルとか。
「そ、そうだね」
「マリルとコダック、コアルヒーは進化するの?」
こういう時、図鑑があって本当に良かったと思う。だって、図鑑を持っていない人はどのポケモンがどう進化するなんて分からないから。
「うん。マリルはマリルリに、コダックはゴルダックに、コアルヒーはフウロさんも使っているスワンナに進化するよ」
「スワンナ、知ってる。綺麗だよね!」
スワンナは知っているんだ。まぁ、フウロさんが有名だし、女性としてちょっとした憧れとかあるのかな。
「うん。それからくさタイプだと、あー……クルミルは避けた方がいいか」
「あー……ハハコモリ」
多分、弟さんと喧嘩になるよね。
「他には……ヒマナッツ、チュリネ、ロゼリア、シキジカ、かな?」
「そのポケモン達も進化するの?」
「うん。って、あー……」
しまった。これは想定外だ。最終進化ってシキジカ以外……
「ど、どうしたの?」
「いや、あの……シキジカ以外、進化の石が必要なんだった」
「でも、進化の石があれば、いつでも進化出来るんだよね?」
それなんだけど……うん。言い辛いことだけど、しっかり伝えよう。
「進化の石で進化するポケモンって、進化させちゃうとレベルアップで覚える技が減っちゃうんだよね」
「そ、そうなの!?」
「うん、だから強い技を覚えさせようとすると、進化させないでレベルを上げる必要があるんだ」
だから、まだガーディを進化させていないんだ。
「キョウヘイくんに相談して良かったよ。そうなると、初めてのポケモンはみずタイプがいいのかな?」
「そうかも。だけど最終的には妹さんが気に入るかどうか、だね」
「ありがとう。今度、妹と一緒に捕まえに行ってみるね……」
それから、ルリさんの悩みを聞いていく内にあっという間に時間が過ぎていった。
「そろそろ仕事に戻らなきゃ。またね、キョウヘイくん。バイバイ」
まさか、こんなに話が出来ると思わなかったし、いい気分転換もできた。
「キョウヘイさーん、回復が終わっていますよー」
やっべ、かなり時間が経ってた。
「今、いきまーす!」