インフィニット・ストラトス REXM   作:灰崎 快人

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「メールが届いてますよ」「ん?ありがとう」

篠ノ之束って知ってる?そう今から10年くらい前にISを開発した張本人、「篠ノ之博士」って呼ばれているその人だよ。ISって知ってる?当然知ってるよね、なら簡単におさらいしよう。

篠ノ之博士がISを創ったのは知ってるね?ISは当初は宇宙空間活動を想定して設計されていたマルチフォーム・スーツだった、だけど「白騎士事件」をきっかけにISは本来の設計運用から外れて軍用兵器として転用されたんだよ。白騎士っていうのはその事件に登場したISの機体名だよ。第1世代型?違うよ、白騎士はその当時初めて姿を現したISだから恐らく第零世代型、最初期に製造された機体だよ。

白騎士は今のISとは違って全身装甲型、最初期型というのもあって今では小型化されている武装のプロトタイプが搭載されていたらしいよ。映像では近接用のプラズマブレードと思われる武装しか持ってないからね。

最初期型としては完成度が高くて、当時の現代兵器は全て意味を成さなかった。要はまったう通用しなかったんだよね、今のISに搭載されているシールドエネルギーは当時の兵器じゃダメージすら与えられなかったし……そもそも的が小さすぎて当てるのさえ一苦労だっただろうからね。

まぁ話はここまでにして、その篠ノ之博士からのメールだったんだよ。うん?僕と篠ノ之博士の関係?幼馴染み(腐れ縁)だよ、まぁ色々と人間関係は複雑なんだ、察してくれ。

それで彼女からのメールの件なんだけど、男性操縦者の件はニュースで知ってるよね?そう、ISは女性にしか反応しない欠陥機、男性なんか動かせるはずが無い。なのに、この10年の間に適性のある男性操縦者が見つかったんだよ、僕だってこうしてISのコアを研究しているけど反応した事なんて一度も無いよ。

……たまに顔色が悪い?あー、まぁ、確かに時々変な夢は見るよ。自分は水面の上に立っていて目の前には水平線、上を見れば雲一つ無い青空が広がっている。そして僕のことを見てくる一人の女性、その人は何も言わず動かず、ただ僕のことをじっと見ているだけ。不思議な夢だよね。

ISのコアが反応しているんじゃ無いかって?最初はそう思ったけど、女性がそんな夢を見たなんて記録は一つも無い、ましてや僕は男だ、あの夢は疲れが溜まって見た夢だと割り切ってるよ。心配しないで。

 

少し話がそれてしまったね。本題に戻るんだけどその男性操縦者の名前が「織斑一夏」、そうあの世界最強(ブリュンヒルデ)の称号を持っている織斑千冬の実の弟だよ。不思議なこともあるものだよね、篠ノ之博士も面白いって言ってたよ。それでね僕は少しだけこの研究所を離れることになりそうなんだよ、ちょっと僕の立場というか……まぁ色々あってね?

簡単に言えばIS学園に入学する事になると思う。……20代の男が学生として学園に入学する、まぁ笑われてもおかしくないよね。でも彼女達に直接頼まれてしまったからね、断るわけにも行かなくて。まぁ何事も無ければ戻ってくると思うよ?

IS適性が無いのにどうするのかって?それは僕にも分からない、ただ生徒として入学して欲しいって言われてるからね、そこから先はライブ感でやっていくしかないよ。

心配?大丈夫だよ、そこまでIS学園は鬼じゃ無いだろうし。彼女もきっと……

いつこの場を立つか?明日だよ、明日から僕はIS学園の新入生「柊咲夜」として制服を纏って生活する。

まぁ第二の学生生活を楽しんでみるとするよ、もしかしたら3年も経たずに戻ってくるかも知れないけどね。

 


4月初旬、僕はIS学園の1年1組の教室に入っていた。周りは一名を除いて全員女子、やっぱりISは女性にしか反応しないこともあって女子校と変わらなかった。そんな中に目立つ一人の男子生徒、それが織斑一夏だった。彼は慣れない環境下に置かれており動くこともままならない様子だった、誰だって突然女子校の中に入れられたら困惑するしか無い、僕だって内心どうしたら良いのか分かってすら居ない。とりあえず受け取った学生証や書類を確認することにした。

まさか入学式前に千冬に偶然出会って抱きしめ上げられるとは思わなかった。

 

「……久しぶりだな、咲夜」

「久しぶり、千冬。髪の毛伸ばしたんだね」

「お前もな。全くまさかこんなところで再会することになるとは思わなかったが……」

「こっちもだよ。僕は新型のISの開発研究所でのんびり働いていたのに、君たちにこうして引っ張り出されて学園の制服を着せられているからね」

僕は少しだけサイズが合っていない制服を見せびらかすようにその場でクルリと回っていた。本来ならSサイズの制服を僕はMサイズに変更して貰っていた、身長は中学時代から全く変化無しの150㎝代、千冬とは16㎝も違った。全くどうして身長が伸びないのか理解できないね。

なに?20代になっても身長が伸びるのを期待しているって?当たり前でしょ、僕はまだ身長が伸びると信じてセノビックを飲んでるんだよ?何だよ笑わなくたって良いじゃ無いか……

「相変わらず身長は伸びてないな」

「言わないでよ、気にしてるんだから……」

「髪の毛も伸びて可愛らしい女の子のよう」

「シバキたおすぞ」

「可愛くなくなっちゃった……」

そもそも僕は男だ、可愛らしい女の子ではない!しっかりと男性特有のアレがしっかりとついている!二度と女の子と言うな!

「で?僕はどうしたらいいの?ISなんで僕には操れないよ?」

「それは心配ない、お前にはとある機体が送られてきているからな。とある博士お手製だそうだ、良かったな」

うわっ……凄い白々しい笑顔。絶対篠ノ之束お手製の機体だ、僕のことをモルモットか何かだと勘違いしてるんじゃない?あれ?でも僕は適正無いんだよ?IS渡されても意味無いんだよ?

「ISでは無い、性格にはドイツで使われている物をを束が改良したものだ。お前も話は聞いたことがあるだろ」

ドイツの欠陥機(EOS)かな?

「簡単に心を読んでこないで、とある博士って言ってたのに束ってもう名前出してるし。EOSは僕でも知ってるよ。でもアレはISよりも欠陥が多かったじゃ無いか、30㎏のバッテリーを背負っているのにもかかわらず十数分しか稼動できないなんて、欠陥機ですって言ってるようなものだし。そもそもシールドエネルギーが無いのに生身の身体が露出するんだから」

「それは問題無い。オリジナルよりも少し大型化したらしいが、バッテリーの改良と小型化で最低でも5時間は稼動できる様になっているらしい。またシールドエネルギーが存在しないのを踏まえて装甲はエネルギー系武装でも傷が付かないように強靱な物にしているらしい。全身装甲型だとも聞いている」

……それってISじゃなくて人型ロボットじゃないの?コックピットとか無いよね?15メートル級の機体になってないよね?あとシールドって武装の中に含まれるかな?全身装甲型だとしても流石に怖いんだけど!?

「安心しろ、私が試した」

「あ、それなら安心」

ブリュンヒルデ(化け物)のお墨付きなら問題無いかな。

「……何か変なことを考えたな?」

「ままままさか!そんそんなそんなわけないじゃん!」

「……あとで説教だな。ひとまずお前は一年一組の教室に行け、担任は私だ」

終わった……

 


 

「さてと。諸君、私がこのクラスの担当を務める織斑千冬だ。お前達小娘をこの1年で使い物にするのが私の仕事だ」

「「「「キャァァァアァァァァァアァァ!!!!」」」」

おうぁぁぁああぁぁぁぁぁっっ!?!?!?み、耳がぁぁぁ!?鼓膜ががぁぁ!!??突然の黄色い歓声に僕の耳は耐えられず激痛だった。ブリュンヒルデとして人気があるのは知っていたけれど、まさかここまでとは思いもしなかった。一夏くんも耳がやられたらしくボーッとしてるし……

「山田先生、ホームルームは何処まで進んでいる?」

「織斑一夏君の自己紹介の直前まで進んでますね」

「そうか。織斑自己紹介をしろ」

「…………」

「織斑?聞こえないのか」

「……?」

「千冬、多分本当に聞こえてないよ。耳やられちゃってるかも」

「……全く、私が代わりに紹介するしかないか。コイツは織斑一夏、私の弟であり世界初の男性操縦者だ。情けない弟だが仲良くしてやれ」

……自己紹介の時間なのに本人じゃ無くて姉が弟を紹介するのって珍しいよね、珍しいって言うかおかしいんだけどね。

「ホームルームも時間が無いからな。咲夜、お前の自己紹介でホームルームを終える。あとの生徒や休み時間に交流しておけ」

なんで僕に振ったの?僕が男だから?こんなところで目立ちたくないんだけど……やらなきゃ怒られるよね、多分お説教と一緒に。

「では自己紹介させて貰います。柊咲夜、千冬とは幼馴染み……で良いんだよね?」

「私に振るな、束とも幼馴染みだろ」

「そうだね。学園に来る前には日本のIS開発研究所で働いていました。性別は男なので間違えないようにしてくださいね、意外と傷つくので。とりあえずこんなところかな?これからよろしくお願いします」

控えめな拍手が広まったところで、授業が始まった。

一夏くんの鼓膜は次の休み時間には元に戻ったらしく、普通に聞こえるようになっていた。おかしいな、鼓膜って最低でも数週間しないと完治しない気がしたんだけど……

 

「あの、咲夜さんですよね?なんでIS学園に居るんですか?」

「久しぶりだね一夏くん、僕が何でこんな所にいるのか……まぁ僕はISの適性が無いし不思議に思われても仕方ないよね。僕がここに居るのは君の監視もあるけど、保護って項目でもある。世界初の男性操縦者である君を様々な組織が狙っている、解剖すれば何故ISを操縦できるのかも分かるしね」

「か、解剖って……」

「あくまで学園に在籍させたのは3年間外部からの接触や指示を受けないようにするため。だけど必ず組織達は穴を突いてくる、だから万が一の為に僕がいるってこと。まぁ保険だと思ってくれれば良いよ」

「は、はぁ……」

あんまり分かってないって感じがするな、まぁ無理もないよね。とりあえず状況が飲み込めるまでは落ち着かせるしかないか。僕はまだ良いけど一夏くんは学園で注目の的、間違いなくこれから波瀾万丈な学生生活を送ることになるのは目に見えている。それに僕が何処まで干渉して良いのかすら分からない、だけど彼らが僕に手助けを求めるのなら、僕は全力で支えて見せよう。

「分からない事があったら彼女に聞くと良い。そうだろう?箒ちゃん」

僕がそう言って腕を引っ張った女子生徒。彼女の名前は篠ノ之箒、篠ノ之博士の実の妹だ。まさかと思ってちょっと強引に腕を引っ張ったけど彼女の表情を見るにどうやら大当たりみたいだ。束とは違って日本女性として容姿端麗に育っているみたいだ、姉譲りの大きな───

「柊さん」

おっと、この子も姉譲りで心を読めるみたいだね。それを使って一夏くんの心も読んで我が手中にでも収めてみたらどうかな?今の君になら充分出来ると思うんだけどね。

「怒りますよ」

「うん、姉譲りだね」

「全くまさかこんなところで会うことになると思いませんでした。一夏、お前にもな。ニュースで見た時はまさかと思ったが、本当に一夏がISを操縦した世界初の男性操縦者になってしまうとは……千冬さんの弟だからなのか?」

「それは俺にもよく分からない、咲夜さんが言った様に解剖すれば分かるんだろうけど……死にたくないし身体を好き勝手に弄られたくも無いからな」

「そうだろうな。それにしてもお前というやつはIS学園について事前知識なしで来たように見えるぞ?参考書は一体どうしたんだ、とりあえず目を通しておけばある程度ついて行けると言うのに……」

「電話帳だと思って捨てた」

一夏くん……今の時代に電話帳がある方が希なんだよ。確かに貰った参考書は電話帳のように分厚かったけれど、あの中にはかなり多くの情報がわかりやすく記載されている。あれを捨ててしまうなんて、まったく相変わらずだね。

「僕の参考書を渡しておくよ。そのまま返さなくても良いからね」

「良いんですか?」

「大丈夫だよ。IS開発研究所に居たんだ、ある程度のノウハウは頭に入っているさ。それに操縦に関する事については覚えてもしかたないしね」

「柊さんはISの操縦が出来ないんですね」

「そうだよ箒ちゃん、あくまで僕は一夏くんの監視と保護を任されているようなもの。ISの操縦授業になったら僕は置物にしかならにからね」

まぁ代用の物は彼女が用意して居るみたいだし、僕はそれに賭けてみるしか無いんだけどね。

「とりあえず今は箒ちゃんに一夏くんの教育を任せるよ、同じ部屋だから教室にいなくても教えること出来るよね」

「「えっ?」」

「ん?あぁ、まだ教えて貰っていなかったんだね。一夏くんと箒ちゃんは同室だよ」

「「えぇぇぇぇぇっ!?!?」」

「幼馴染み同士だから丁度良いよね」

千冬から教えられた時は大丈夫か心配したけど、ここまで行きが揃っているなら心配しなくても大丈夫でしょ。何かあれば二人の方から聞いてくる、よね?

「それに箒ちゃん、君にとってはチャンスだよ」

「……?」

何か分かっていなさそうな箒ちゃんに耳を貸すように誘導する。「一夏くんの事、好きなんでしょ?」僕がそう言うと箒ちゃんは顔を真っ赤にしていた。うん、昔からわかりやすいね、君は。

「それじゃあ箒ちゃん、一夏くんの事よろしくね。僕は君たちの隣の部屋だから、何かあったときはいつでも尋ねてくると良いよ。その時はもてなすよ」

「は、はい……」

姉と違って可愛いね、姉妹でこんなに違うのも不思議なこともあるものだね。束もこのくらい可愛かったら良いのに……あの破天荒だからね。

さてと、僕は僕で色々と動かないとね……まだ一夏くんの専用機も届いていないし、僕の機体だって届いていない。今はただこの学園について色々と調べておかないとね?代表候補生とかその関係者とか、これからこの学園にやってくるであろう生徒とか……ね。

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