模擬戦当日、第3アリーナには多くの生徒が集まっていた。おかしいね、このことは1年1組しか知らないはずなのにそれ以上の人数が観客席に座っているように見える。しかもその中には上級生もいる辺り何処かから情報が漏れたのかも知れないね、全く迷惑なことこの上ない。
「良いのかい織斑先生、他のクラスは授業中だろう?」
「言っても聞かんだろうからな、それに織斑の力を知りたいという生徒も多いだろう」
「全く、学生が学業を怠るのは感心しないけどね」
それにしても当日になっても機体が送られて来ないじゃないか、一体どうなっているんだい?もしかして道中が混み合っているのか?それなら仕方ないかも知れないが他生徒やオルコットがずっと待つことになる、僕としても手空きの時間があるのは正直頂けないね……何かやれることも無いし、全くせめて前日に届くように出来なかったのかい?多少なりともそう言った工夫が必要だと思うが……配達員には非は無いのが現実だね。
「それにしても来ないね……」
「予定では先日中だったのだが……」
2機とも先日中には届く予定だったのか、そうなると何かしら絶対に問題が起きているね。束が突貫で何かを追加した可能性も充分考えられる。彼女の事だまた極端な武装でも開発したのだろう。
「お、織斑先生!来ましたよ!織斑くんと柊さんの専用機!」
山田先生が急いで駆け込んできたので、後ろを振り返ると大きなシートが被られている2つの荷物か置かれていた。山田先生が両方のシートを取り外すと片方は灰色の、もう片方は少し白い機体が佇んでいた。
「白いのが織斑くんの専用機「ホワイト・ユニコーン」、灰色の方が柊さん専用機の「ジェダ」です!」
ふむ、こう見るとジェダは大きく感じるね。
「時間が惜しい。柊先にお前から行け、織斑の機体は初期化と最適化が必要だ」
「それまで僕が彼女相手に戦えれば良いのだけどね。まぁあまり期待はしないでおくれよ?僕だって初乗りなのだから」
ジェダの装甲を展開し機体内に入っていく、全身を包み込むように装甲が閉じるとヘッドマウントディスプレイが起動しシステムチェックが行われる。脳内インターフェイスもしっかり組み込まれているため、手脚の様にこの機体を動かすことも出来るだろう。簡易的なスペックを確認するが従来のISより少し本機は重いのか……特殊装甲を採用した事による重量の増加か。武装はあの資料で確認したとおり、アサルトライフルにパイルバンカー、ガトリングにミサイルか。今回は腰部にアサルトライフルの予備弾倉を3つ設置、あとはナイフを1本取り付けておくとしよう。オプションも少しだけ送られてきているのはとてもありがたいね。
「柊、機体チェックは済んだか?」
「問題無いとも、いつでも動かせそうだね」
「そうか。ならカタパルトに移動しろ、そこからアリーナの中に移動できる。射出される関係上少し身体にGが掛かるから気をつけておけ」
「了解だよ」
カタパルトに移動するとレースの上には足を乗せるための台が置かれている、両足を固定して勢いよく機体を射出するという仕組みだ。さて、この機体の性能実験と行こうか。
『柊咲夜、ジェダ発進する!』
その言葉と共にカタパルトレールが起動し勢いよく加速してそのままの勢いで射出される、特殊装甲を起動すると機体色は灰色からオリーブドラブカラーに変色した。なるほど、これが特殊装甲が機能している証の発色か。面白いね。
「IS……?それにしては大きい」
「僕にIS適性は無いよ、これはISじゃない。EOSの発展型と考えてくれればわかりやすいかも知れないね。さてと、稼動データをたっぷり取らせて貰うとしようか。なにこの勝敗に僕は興味が無いのでね、正直君に勝とうが負けようがどうでも良いんだ。あぁ気を悪くしたのなら申し訳ないね、でも事実なんだよ。この機体が何処まで飛べるのか、それを僕は知りたいだけだからね」
「……」
「さてと、そろそろ始めよう織斑先生。彼女もやる気満々みたいだからね」
アリーナのスピーカーから千冬のため息が聞こえてきた。仕方ないじゃ無いか、実際僕はクラス代表になんて興味は無いしどちらかというと巻き込まれた側だ。それに研究者の一人としてこの機体の限界にも興味がある。ISコア非搭載なのにも関わらずそれと同等の性能を持つこの機体の限界や危険性、そして可能性を僕はしっかり確認したいんだ。だからオルコット、君には犠牲になって貰わないとね……
『第1試合。セシリア・オルコット対柊咲夜を始めます。カウント5秒前』
山田先生がアナウンスするのか……確かにあの場にいたね。少し影が薄くて忘れっぽくなってしまうよ。
『3、2、1、スタートです!』
スタートと同時にお互いにライフルを構えて射撃戦に突入。やはり射撃戦主体の戦術機体か、想定内だね。BT兵器のサンプリング機体、カスタムウイングに搭載されているのが恐らくそのBT兵器だろう。腰にはミサイル、かな?大口径のサイドスカートがあるね……だけどそれは突貫で取り付けられたかのようにあまりにもその機体には似合っていない。実弾武装を最低一つでも取り付けて万が一に対応すると言ったイギリス開発研究所の考えが透けて見える。
それにしても随分と精確な狙撃だね……大型特殊レーザーライフル、アレが主力武装である以上それが基本的な戦術になるのは当然か。僕は射撃が上手なのかと言われればそこまで上手い分ければ無い、射的屋があれば8割は当たるレベルだ。倒れるかは別だけど。
「慎重な立ち回りだね、もう少しガツガツくると思ったよ」
「そちらの機体が分からない以上、こうするしかありませんわ」
「流石代表候補生。相手の機体性能や戦術を理解してから本領を発揮するタイプか」
少しギアを上げるとしようミサイルコンテナ展開、追尾ミサイル相手にどうやって立ち回るのか見させて貰おうか。勿論僕は僕で邪魔させて貰うけどね?ライフルとミサイルの弾幕相手にどう立ち回るのか見せて貰おうか。
「行きなさい、ブルー・ティアーズ!」
彼女がそう言うとBT兵器が4機展開された。ミサイルは全て落ち落とされ、弾丸もある程度は回避された。なるほどね……大体あの機体について分かってきたよ。そうとなればもうこちらは出し惜しみ無しで行かせて貰うとしよう、ガトリングの標準はBT兵器にオート照準、ミサイルは全てオルコット本体に追尾するように変更、パイルバンカーチャージっと……
「さぁ踊りなさい!わたくしセシリア・オルコッドォォォォッ!?!?」
「あ、すまない。なにか喋っていたのかい?隙だらけだったから撃ってしまったよ、さぁ改めて言いたまえしっかり聞いてあげるよ」
「このッ……!ブルー・ティアーズで奏でる
かなりお怒りらしい。ライフルとBT兵器による射撃はまさに弾雨だった、的確な射撃でもあるが、4機のBT兵器がそれぞれ独立して稼動しているのもあって全方位からレーザーが襲いかかってくる。なるほどね、かなり便利だね。全方位によるオールレンジ攻撃、これに実弾も混ぜたらかなり面白そうだ。だけどこっちも負けてないよ、致命傷になりそうなものはパイルバンカーに備え付けのシールドで防いでいるし、追尾ミサイルがオルコット本体を襲いかかっている。ガトリングは自動照準でBT兵器を一つ一つ破壊していくようになっている、ただ弾切れが問題かな……?
「装甲が破壊できない!?馬鹿げた耐久性ですわね!」
「それでもエネルギーはしっかりと減っているから安心したまえ、この世の全てには欠点という物が存在するからね」
BT兵器は相手にすると厄介だね!全方位からの射撃を掻い潜らないといけないし、本体も動いてるし!ミサイルが合間合間に来るしさぁ!まぁこっちはこっちで暴れられるからありがたいことこの上ないし、こっそりBT兵器のデータも記録してるんだけどね!無駄にBT兵器も硬いからかなりの弾薬やミサイルを消費することになるし、本体を潰した方が速いかな……?でもぶっ壊すけどね!
「右足、貰いましたわ!」
「じゃあ僕は最後のBT兵器を頂くとしよう」
ミサイルとガトリングそしてアサルトライフルによる弾幕で容赦なくBT兵器を破壊する、腰に着いていたミサイルは偶然破壊できた。ラッキーとはこのことだろうね。でも僕の方も正直限界だ、バッテリーの残りはあと8メモリー、元々20あったのにここまで減ることになるとは思わなかった。特殊装甲にダメージが入るとバッテリーの消費が激しくなると聞いていたけれど、まさかここまで急速に減るなんて思わなかったな……今後はなるべく避けた方が良さそうだ。
「さて、今度はこちらが
ミサイルを段階に分けて発射、追尾ミサイルを必死に避けているオルコットに対してガトリングの銃身が焼き切れるまで撃ちまくる。
うんうん、綺麗に避けるね……ちゃっかり弾幕の中を綺麗に突き進んでくるんじゃ無いよ、寧ろよく出来るね?あとは追尾ミサイルをガトリングの弾幕にぶつけて回避しているね……うん、オルコット普通に強いな、代表候補生ってここまで強いんだ。
あれ、一夏くん勝てるかなこれ?なんか駄目な気がしてきた。
「バッテリーも少ないし、弾数も残り僅かか……パイルで決めるか」
弾幕を浴びせながらジリジリと近づいていき、パイルバンカーを構える。ガトリングとライフルの弾幕で動けなくなったところにパイルバンカー!!本機最大火力を叩き出すパイルバンカーの一撃、大型の鉄杭がブルー・ティアーズのシールドバリアを破壊して絶対防御を発動させた。それどころか最大火力と言うこともあり、撃鉄を起こして炸薬の威力も載せた一撃だったからかアリーナの壁にめり込んでいた。ほほう、これは良い武装だね正にロマン武装。男の子ってこういうの大好きなんでしょ?っていう束の考えが透けて見えるね、その言葉に返すとすれば「うん、大好きさ!」だろう。まさに大火力のロマン最大火力で相手に直撃させれば状況をひっくり返すことも用意だろう、強いて言えば冷却に時間が掛かるということだろう。一撃必殺の武装だが文字通り一撃しか撃ち込むことが出来ない、オーバーヒートして冷却するのに大体2分程。本当に肝心な時しか使えないね。
『し、試合終了。勝者、柊咲夜』
壁にめり込んでいたオルコットがなんとか機体を動かして壁から出ていていた。うんうん、問題無さそうだね。
カタパルトに帰還すると千冬達が迎えに来てくれていた、何か言いたそうだね?
「かなり面白い機体だな」
「そうだね、ロマンと実用性を両立したかのような武装だったからね。特にパイルバンカーはチャージ可能で、炸薬の威力も上乗せの鉄杭を撃ち込むからね。まさに一撃必殺、資料通りだね」
「そうだな。次は織斑と戦って貰うぞ5分のインターバルがあるからそれまで補給しておけ」
ジェダは非稼動状態になり、機体色は灰色に変わっていた。バッテリーを充電するために電力ケーブルが接続されている状態、武装の方も弾薬がしっかりと補給されている。
「それで一夏くんの機体は?」
「無事に初期化と最適化は終了、一次移行も終わってる」
「ちゃんと一夏くんの専用機になったんだね、良かったよ」
そう言って僕は一夏くんが纏っているISに視線の移す。ホワイト・ユニコーンはその名の通り白い機体だった、ただ一つ気になったのはこの機体のデザインを何処かで見たことあるような気がした。確か凍結された機体にこんなのがあったような気がした、全く設計開発が頓挫して欠陥機として生み出されたあれが思い浮かぶとは、僕は少し寂しくなっているのかな?
「この機体の武装は?」
「エネルギー系がメインだ。ビーム腕部ガトリングに手持ち用ビームガトリングガン、ビームサーベルが基本武装となっている。他には実弾バズーカと実体シールドが拡張領域に追加されている」
「こっちはエネルギーメインか、中々面白いんじゃないかい?」
「そうだな、織斑は篠ノ之との特訓で近中距離の戦術を築けているだろ。お前のジェダと対の存在になりそうだな」
「一夏くんには合ってると思う。機体スペックは分からないけど多才な武装が搭載されているから武装面で苦しむことはあんまり無いと思うよ、問題があるとすれば弾切れもしくはエネルギーが枯渇し始めた時だね……そこで一夏くんがどう動くのか、それが楽しみだよ。君もそう思うだろう?ちーちゃん?」
「ちーちゃんは辞めろ馬鹿者」
「はいはい。それで第2試合はオルコットと一夏くん?」
「いや、お前と織斑だ」
おっと、まさか僕が先に2試合する事になるとは思わなかったな……武装ちょっと調整するか。