剣と魔法とノスフェラトゥ   作:十二夜

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マジでサブタイ思いつかなかった。

ごめんて


恐ろしく速い回し蹴り、俺でなきゃブギャ!?

アーカードがエレグを脅迫していた頃、エクラン王国の王都にある自宅で、アレスは一枚の手紙を受け取っていた。

 

上質な厚紙の便箋からは白百合の香りが漂い、封筒は丁寧に蝋で封をされている。

 

印璽が捺された青い封蝋には、白百合を咥える一匹の羽の生えた蛇の紋章が刻まれていた。

 

アレスはすぐに手紙の差出人を悟った。

 

そして、その人物が手紙を送ってくるときは大抵、良くも悪くも人類の最高戦力に集合をかけなければならない出来事が起こったということだ。

 

今頃アレスだけじゃなく、他の四英雄や王城に滞在している双璧の二人にも同じ手紙ようなが届いているだろう。

 

紋章が示す人物は、賢者。

 

二千年を生きる、人類最高の魔法使いである。

 

確かに強さや攻撃力、殲滅力で言えば「魔神」ニィクスが勝るかもしれない。

 

ただ、賢者の魔法の真価はその万能性と凡庸性にある。

 

出来る事があまりにも多すぎるのだ。

 

アレスは溜息をつきながら封を切り、手紙に目を通す。

 

いつものうざったらしい文言や流れるような煽り、こちらを小馬鹿にする態度は相変わらずだったが、その内容にアレスは目を剥いた。

 

手紙の最後はこう締めくくられている。

 

『そういうわけで、アーカード一行と魔王を同時に屠れる、脳筋なあなたでは思い付けない一石二鳥な案があります。私の天才的な考えを聞きたいでしょう?聞きたいんですね?よろしい!九日後にそちらに向かいます。いつものようにあなたの家で集合しましょう』

 

どうしてアーカードの名前を知っているのか、どうして今の状況を知っているのか、なぜ九日後なのか、そもそもそんなことが可能なのか、考え出せばキリがないのでアレスは思考を早々に放棄した。

 

ただ一つ、彼の作戦は今までただの一度も失敗したことが無い。

 

『追記 去年のあなたの誕生パーティーで地下の秘蔵ワインを飲み尽くしたのは私です。どうもありがとう』

 

それはそうと、とりあえず会ったら一発殴ろうと心に決めた。

 

 

 

 

 

 

 

×××

 

 

 

 

 

 

 

オベロン公国の首都、オベロン。

 

この世界に三つしか残っていない国、その首都ともなれば栄え具合は尋常じゃない。

 

ユールの城壁と違って、徹底的に実用を突き詰めた巨大で無骨な城壁の前にはユールに負けず劣らずの長い列が形成されていた。

 

ノロノロと走る馬車の窓から顔を出したリルは、その気の遠くなるような列を目にしてうげぇと唸って顔を顰める。

 

その横でエレグは感心したように声を上げた。

 

「今日は一段と列が長ぇなぁ。壮観壮観」

「私並ぶの嫌なんだけど。全部殺していいかしら?」

「おっかねェ事言うなよっ。嬢ちゃんもおじさん程のプロになれば、並んでる間も退屈しないようにできるぜ?地面の砂を数えるのが意外と楽しいんだなぁ、これが」

 

今でこそ親しく話しかけているエレグだが、リルがかのフェンリルだと知ってからは二日もの間ひたすら気持ち悪い敬語で接しており、三日目に遂に気持ち悪いニヤニヤを浮かべながらゴマすりを始めたところで後頭部にリルの回し蹴りが叩き込まれ、今に至っている。

 

ユールで一週間滞在したアーカードたちは昨日から馬車に乗ってここ、首都オベロンに向かっていた。

 

アーカードはユールを隅々まで回ることができてご満悦、リル目当てのチンピラが二回もアーカードにケンカを売ったが、二回ともエレグが瞬く間に制圧、激昂したチンピラは無謀にも街中のゴロツキを集めて、三度目の正直とばかりにアーカードにけしかけ、見事に全員吸血鬼の餌になった。

 

ちなみにこの件に関してはエレグも何人か殺っているため、街を大掃除してやったぐらいの認識でいる。

 

まぁ、そうでもないとアーカード達とは付き合ってられないので、ゴロツキ共は運が悪かったとしか言いようがない。

 

そんな三人を乗せた馬車が人の列に近づき、寝ていたアーカードが起きて馬車を降りた時だった。

 

一台の豪華な四頭立ての馬車が、まっすぐ三人に近づいてくる。

 

馬車の扉には、白百合を咥えた羽の生えた蛇の紋章が刻まれていた。

 

その馬車は三人の前で止まると、御者をしていた老紳士が馬車から降りて恭しくお辞儀をした。

 

「アーカード様、リル様、エレグ様でいらっしゃるとお見受けいたします」

「その通り。だが、貴様はなんだ。何故こちらを知っている」

「私めは賢者様の使いでやってまいりました。お三方がお着きになりましたら、賢者様のお屋敷へご案内せよとのこと」

 

そう言うと老紳士は馬車の扉を丁寧に開き、アーカード達のほうを見た。

 

「さぁ、どうぞお乗りください」

 

明らかに怪しすぎる。

 

アーカードとリルを知っているのはまだしも、つい一週間前に同行するようになったばかりのエレグまで知っているのは不自然だ。

 

手の者をユールに潜ませていたのだろうか、だがアーカードもリルもエレグも、尾行どころかこちらを監視する者がいたら気づくはずだ。

 

エレグはともかく、アーカードとリルが見逃すことはあり得ない。

 

リルとエレグは判断を待つようにアーカードに視線を送る。

 

アーカードの答えは決まり切っていた。

 

「面白い。乗ってやろう」

 

三人を乗せた馬車は悠々と走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オベロンの貴族街のとある片隅。

 

まるで森の一部を切り取ってきたかのように、そこだけ不自然に木が円形に分厚く生い茂っている。

 

街にぽっかりと空いた穴のような森の前で、馬車が止まって三人が降りてくる。

 

老紳士は魔法で手のひらに光の球を生み出すと、アーカード達に振り返った。

 

「先導いたします。この『賢者の森』は許可無き侵入者を撃退する罠に溢れていますので、私めからお離れになりませぬように」

 

そう言って森の中に入って行く。

 

森の中はまるで夜のように暗かった。

森全体が不気味なほどに静まり返っており、時折木の枝が生きているかのように動いて音を立てること以外には、四人の歩く音だけが響いていた。

 

「す、すげぇ。今から滅多に表に出ない賢者様に会える上に、屋敷も見れんのか、、、」

 

リルの怪訝そうな視線に気づいたエレグが、声を潜めてリルに話しかける。

 

「なぁ、嬢ちゃん。これがどれ程凄いことか知らないのか?」

「どうして?」

「どうしてって、、、賢者様の屋敷は今まで誰も見たことが無いんだぜ?何百年にも渡って無数の人がこの森を突破しようとしたけど、無事に森の先へたどり着けた奴は一人も居ねぇんだ。噂じゃ、歴代の公王ですら屋敷に招かれたことは無い。つまり俺たちが初めての訪問者になるってこった!」

「へぇ」

 

特に興味がないようにリルが聞き流す。

 

そうしているうちに先頭の老紳士が突然足を止めた。

 

「私めはここまででございます。ここより先は、お三方のみでお進みください。まっすぐ進めば間も無く森を抜け、お屋敷が見えるでしょう」

 

では、と言い残して踵を返し、来た道を戻っていった。

 

残されたアーカード達が仕方なくしばらく歩くと、言葉通りに急に視界が開け、その先に屋敷が見えた。

 

それは特別豪華でも特別質素でも無い、とても普通な屋敷だった。

使用人などの気配もなく、もしここが賢者の家だと知らなければ、廃墟だと思った可能性もあっただろう。

 

ただ一つ普通と違う点は、屋敷の門には白百合を咥えた蛇の紋章が刻まれており、それだけがここの所有者を表していた。

 

「おぉ~ここが賢者様の屋敷か。なんか、、、思ったよりも普通だな」

 

勝手にガッカリしているエレグの横でアーカードが門を叩く。

 

一瞬の沈黙の後、扉の中から男の声が響いてきた。

 

「どうぞ。扉は君たちのために開けてある。自ら入ってきたまえよ」

「、、、ほぅ、それは殊勝なことだ。実に結構」

 

アーカードは皮肉気に唇を歪めると、遠慮なく扉を開いた。

 

まず、目に飛び込んできたのは外観からは想像もできないほど高い吹き抜け。

玄関の左右の壁からは緩やかな弧を描いた階段がおりている。

ところどころに飾られた絵画や調度品が、一見質素な空間を引き立てていた。

 

そして門から少し離れたところにその男は立っていた。

 

不思議な男だった。

 

老人にも青年にも、美しくも醜くも見えるその男は、長い白髪を後ろで束ね、貴族のような出で立ちをしていた。

 

人を食ったような笑みを浮かべ、まるで舞台役者のように両手を大きく広げてアーカード達にお辞儀をした。

 

「ようこそ、この私の小さな世界へ。歓迎しますよ。僕はゲオルク・リプリー、『賢者』などと呼ばれています。以降よしなに、アーカード様」

 

アーカードとゲオルクの視線が交差する。

 

アーカードはその真っ黒な瞳の奥にゾッとするほど深く澄んだ光が渦巻くのを見た。

 

まるで永劫の時を生きてきたかのような。

 

「遠路はるばるお疲れでしょう。応接間にどうぞ。あなたとはお話したいことが山のようにあります。そうそう!つい先日とても上質な茶葉を手に入れましてね?美味しい紅茶を――」

「魔王の居場所と帰還の条件は」

 

アーカードが唐突に話を遮る。

口を噤んだゲオルグが訝るようにアーカードを見た。

 

「私は貴様と話がしたいわけでも親睦を深めたいという訳でも無い。魔王の居場所と帰還の条件は」

「はて、一体なんのことやら、、、」

「下手な芝居は辞めてもらおう。貴様はどうやってか、こちらの動きを逐一把握していた。まさか行動目的だけを知らないとは言うまいな?」

「、、、困りましたね。ええ、本当に困った」

 

ゲオルグは苦笑いを浮かべながら頭を掻いて見せる。

 

そして、おもむろにアーカードとの距離を一歩詰めると友好的な笑顔で言い放った。

 

「どうやらお話という言葉が誤解を招いたようです。正しくは脅迫、でしたね。それとも何か?ここで何回か死んでみますか?」

 

ゲオルグの笑みが更に深まる。

 

有利が不利へ、強者が弱者へ。

 

絶対的な立場から突きつけるのが脅迫だ。

 

決して、()()()ではない。

 

ゲオルグ・リプリーはそのことをよく心得ていた。

 

「大人しく俺とお話ししましょう?あなたでは私を殺せませんよ、アーカード」




ほぼ推敲せずにGO!したので誤字脱字ありましたら報告お待ちしています。
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