アベレージ   作:ヤナミウリュウ

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出会ってしまった1

夏の風物詩の一つといえば、高校野球

国民的プロスポーツの一つといえばプロ野球

野球というスポーツが誕生してから、プロアマ共に多くの人を熱中させ続けている。

 

主に男子プレイヤーを中心に発展していた野球だが、ある時を境に女子野球の発展にも力を入れようという動きが世界的に起こり、長い長い年月を経て、ついに女子野球も男子の野球に劣らない規模のスポーツ興行へと発展した。

 

そんな時代の、白球を追いかける少女達の話

 

 

 

 

照りつける日差し、響く声援

人々は白球の行方に一喜一憂し、熱気がスタンドを包み込む

そんな熱い試合の中、1人熱くなれない少女がいた

 

夏のリトルシニア女子野球全国大会の決勝

2点ビハインドで迎えた9回裏、ツーアウトランナー1塁

一弓はバッターボックスで構える後輩の姿を、ネクストバッターズサークルから見守る

 

「絶対に先輩まで繋ぎます!」

 

バッターボックスに向かう直前、彼女は一弓にそう宣言した

そして今、相手投手から8球も粘りなんとか出塁しようと必死になる彼女を

一弓はどこか冷めた気持ちで見つめていた

そして9球目、相手投手の決め球であろうカーブに彼女のバットは大きく空を切る

 

ドッと相手のベンチが沸き、メンバーがマウンドに集まり抱き合う

 

「先輩...すみません...私...」

 

「別にいいよ、来年頑張って」

 

大粒の涙を流す後輩の肩を軽く叩きベンチへ下がる

悔しさとか悲しさなんて感情は全く無かった

野球というスポーツに対する情熱を、いつの間にか失ってしまっていたから

 

こうして一弓の中学最後の試合は幕を閉じた。

 

 

 

野球好きな父の影響で子供の頃からプロ野球を応援するのが好きだった

いつしか自分も野球をやりたいと思うようになり小学校低学年の頃に地元のクラブチームに入った

野球は上手い方だと思う。ヒットはたくさん打った

中学の頃は世界大会の日本代表にも選ばれた

 

でもいつからだろう、自分にとっての野球は楽しいモノではなく惰性で何となく続けているだけになっていた

そんな中途半端な気持ちでダラダラと野球を続けていていいのだろうか?

 

自分の将来について考えた時にこのまま野球を続けてプロを目指す、自分の人生を野球というスポーツに捧げる、という覚悟と情熱がはたして自分にあるのだろうかと疑問に感じた

胸を張って「YES」と答える事はできない。

つまり、自分はもう野球を続けていても仕方がない、ということなのだろう。

 

この先自分がどうするべきなのか、いつまでも悩んでいる時間は残されていない。

 

夕飯時、家族がリビングに揃うタイミングで一弓は「高校では球をやらない」という意思を打ち明けた、両親はとても驚いていた。

 

「どうしてだ?何か嫌な事でもあったのか?」

 

「ううん、そうじゃない、何もなかったよ、何も、なくなっちゃった。」

 

両親は不思議に思い、なんとか一弓を説得しようとした、娘は将来的にはプロになれるかもしれないと期待していたからだ。

それでも一弓は「続ける」という意思を示さず、最終的には「娘の人生なんだしこの子のやりたいようにさせてあげよう」と両親が気を使ってくれたことで、一弓の野球引退が決定した。

強豪校からスカウトの話も来ていたが断った。

 

もう野球をやることはないだろう、そう決めたはずだった。

 

 

高校の入学式を終えて翌日

いよいよ登校日

今日から高校生活が始まる。部活は特に入る気は無いがそれなりの青春を送ってそれなりの進路に進めたら良い

なんて事を考えながら前原一弓(まえはらかずみ)は自分のクラスへと向かってると、前から歩いてきた少女と目が合った、すると何かに気が付いたように少女が一弓へと声をかけてきた

 

「あなた...もしかして女子U-15の日本代表に選ばれてた外野手の人?」

 

「え?あぁ...そうだよ、中2の時にね」

 

声をかけてきた少女は身長は170センチ程はありそうな大柄で、

一弓はこの少女をどこかで見た事がある気がすると思った、しかしハッキリとは思い出せない。

 

「なぜこんな学校にいるの?というかあなた3年の時は代表にいなかったわよね?辞退したの?」

 

「まぁ...いろいろあってね」

 

なんだこの人は、熱心な野球ファンか何かだろうか、だとしたら面倒くさい

「じゃあ」、と彼女の横を通り過ぎて立ち去ろうとした時

一弓は、がっしりと腕を掴まれた。

 

「あなたみたいな選手がいるなんて好都合だわ、一緒に全国目指しましょう」

 

その少女の視線は真っ直ぐ一弓の眼を見つめている。

突然の出来事に困惑しながら掴まれた腕を振りほどこうと軽く上下に動かしながら一弓は答えた

 

「え、えーっと...何を言ってるのかちょっとよくわからないんだけど」

 

「あなたと私がいれば全国優勝も夢じゃないわ!とりあえず放課後、グラウンドで会いましょう」

 

力強く握られた手が離され、彼女は教室へと姿を消していった

初日から面倒くさい奴に目をつけられてしまったと肩を落としながら一弓も自分のクラスの教室へと入っていく

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