白き流星の羽搏き   作:丸亀導師

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オーバーヒート

一年戦争…、その中でのホワイトベース隊という不可思議な部隊は、幾度もの不運を乗り越えてきた部隊であった。

その仕事は、大凡正規軍とは思えないもの。敵中を進み強行突破し、前線ではなく後方を撹乱する。

 

素人集団であった彼等にかせられたそれを踏破するのは、至難の業であったとすら言える。

その中で編み出された戦術は、非常に歪なものだった。

 

アムロの駆るガンダムが中心となり、ガンキャノン、ガンタンク。その他コアファイターを用いたそれは、急造のそれで前面を張るアムロにはあまりにも大きな荷であったと言えた。

殆どの敵意を一身に受け、それでも生き残るには異様な程にまで強くならざるおえない。彼には適性があったからというのも大きい…。

 

さて、そんなアムロであるが、実際のところ正規の軍隊としての正式な部隊運用を1度たりとも経験したことは無い。

いや、一応はあるがそれでもその中身は、大規模戦闘の中でジム1個師団を護衛するような、やはり荷の重い囮のような役割だ。

 

だから、彼の経験の中にモビルスーツ1個大隊を生き物のように操りながら戦うというものは殆ど無い。

あったとしても、其れ等を相手取ったようなそんな戦い方しか無いのだ。

 

さてそんな彼が、今地球連邦軍の正規部隊と真っ向から戦っている。

一応の奇襲には成功し、部隊の半数を瞬く間に屠って行ったのも束の間の、敵方の動きは予想よりも受け身の対応をし始めていた。

 

アムロとまともに戦うことはせず、逃げに徹する者達。そして、そんな者とは対照的に攻撃に徹する者もいる。

役割の分担、それがハッキリとした部隊運用は、これまでジオン軍と戦ってきたアムロにしてみても、経験のない相手であった。

 

地球連邦軍のモビルスーツの運用は、そのパイオニアであるはずのジオン軍のそれとは大きく違った。

 

ジオン軍はモビルスーツを様々な形で運用し、汎ゆる全てにそれを活用しようと万能兵器として扱っていたのに対し、地球連邦軍はモビルスーツ一つ一つに役割を担わせたのだ。

 

例えるなら、ジオン軍はモビルスーツを戦車として扱うのに対して、地球連邦軍はモビルスーツを戦車すら包括するという一つのジャンルとして捉えていて、その中でも様々な用途に使い分けしやすいように、バリエーションを持たせたと言ったところだろう。

 

つまりは、それだけに部隊運用の本質も変わってくるということだ。

 

テネス率いるハンター隊は、その装備は至って普通と言っても過言ではない、単なるジム中隊である。

テネスの駆るジムスナイパー・カスタム後期型指揮官仕様が1機、ヤザン等前衛を担当する機動力重視のジム後期量産型コマンドが8機。そして、中距離を担当するジム重装型が3機という塩梅で、特に目立った物もない。

 

ただ、これがアムロにとっては厄介な問題であった。

アムロが今まで相対してきたジオン軍は、一機種に対して大したバリエーションも多くなく、実戦的に運用されたもの等あまりにも少ない。

それこそ、様々な形にしたのはザクくらいなもので、それも現地改修に近い形だ。

 

だが、連邦は違う。

汎ゆる機体に汎ゆる部品が共通化し、最悪共食い整備も完璧にこなすことの出来る互換性…、それこそがジムという機体の強みであり、連邦軍勝利の理由だった。

ジム一つでも何十というバリエーションを生み出すことのできる、拡張性の高さはそれ故に強かった。

 

それ故に、アムロはこの戦闘に際して大いに悩んだ事だろう。どれから撃破すれば、自分の損害が少なく済むのか。

どれから身を隠せば、敵を完全に屠る事が出来るのか…、結果的に彼の出した結論はこうだった。

 

戦闘の形は追撃戦となる形だが、アムロが反撃として駆り出されたという設定だけに、相手を如何に長時間釘付けにするのかと言うのが求められる。相手は索敵能力が高い事も含め、ミノフスキー粒子は完全に散布状態。レーダーは使えず、赤外線と目視とモーションセンサーが頼りだ。

 

まず、ルナツーの影になるように敵に接近し、地球を中心に考えルナツーと太陽の方角を完璧に計算した上で、敵から見て自らが太陽の方角に入るように、機体を動かした。

この時、スラスター等を使用すれば最悪見つかってしまう。そのため、ルナツーの微弱な重力と周囲の幾つか浮かぶ残骸等を駆使して、彼は進んだ。

 

そして、太陽を背にする形になるや一挙に懐に入り込むようにスラスターを吹かすと、続けざまに3射ビームライフルを放つ。

リミッターを解除されたジム・コマンドは、その出力をガンダム並みに跳ね上げ、機体が悲鳴を上げる。

 

放った3射のうち2射は見事に敵を捕らえ、中距離支援機をまず沈黙させた。彼等の一年戦争時の乗機はボールであった…、だがモビルスーツの適性が無かった訳では無い。

 

その後一挙に近づき、瞬く間に屠る。それでも相手も手練れであるから、早々やられはしない。

 

2分間で6機、アムロの想像よりも彼等は善戦していると言っても良いだろう。

 

奇襲効果は短時間しか自機の安全を担保することは出来ない、テネスの恐慌状態が冷静さを取り戻し、指揮に集中するようになると、部隊単位での彼等はその本来の力を取り戻す。

 

「ようアムロさんよ…もっと楽しんで行こうじゃないの!」

 

その中で、ヤザンは嬉々としてアムロに追い縋ろうと機体を見事なまでに機動させ、アムロの洗練された攻撃を見事に逸らしていく。

ただ、恐らくは一対一であるならば彼は、アムロに勝つことは出来ないだろう。

その証拠に、僅かに損傷を示す信号が幾つかの装甲を点滅させている。

 

だが、彼が幾つもの傷を負いながらも致命傷を負っていないのは、僚機の働きによるものだった。

直撃コースの射撃を取ろうとすると、その隙を突いてテネスがビームを撃ってくる。

殺気に対する反応は、アムロを急激な回避へと誘う…。

 

全身にかかる強烈なグラビティ、しかし並のパイロットであれば振り回されているであろうその感覚も、慣れ親しんでいるアムロにとっては、常の戦い方である。

だが、そう言った機敏な回避をせざるをえない状況、決してアムロは推していない。

 

戦局は膠着し、互いに致命傷を取ることのできない戦いが続く。

 

ハンター隊はその道のエース達を結集して創り上げられた部隊である。ヤザンもその他の部隊員も生え抜きだった。

それが、たった1機に対して大苦戦どころか半数落とされているだけで、如何にこのアムロと言う男が恐ろしい存在であるのか…。

 

ルナツー司令部の中で、その光景を覗く武官たちはその事実に舌を巻いた。

いや、それだけではないアムロ・レイの一言に驚愕してしまう。

 

「くぅっ!…、反応が遅い!!」

 

ハンター隊の面々は、機体性能を確実に引き出し100%ジム系列の力を引き出していた。

しかし、アムロにとってはそれは足枷にしかなっていなかったのだ。

 

0.何秒と言う時間の最中、それでも反応を遅いと言ってのける。そもそも、マグネットコーティングが施されたジム・コマンド、その後期型の性能は、ガンダムのそれよりも高い次元にある。

それであるにも関わらず、彼には不満しかないのだから、コンピューターが人間の認識速度よりも劣っている、あり得ない事実だった。

 

戦闘は既に5分を経過していた。始めの襲撃の余波も収まり、まさに一進一退の攻防は、しかしその時間が長く続かないことを、ある事象によって理解することが出来る。

 

「アムロ機、駆動系のオーバーヒートまで残り40秒!!」

 

逐次に表示されるデータを、指令室のコンソールに着いていた女性士官が話す。

アムロの操縦に対して機体が追従出来ていないのは事実であり、更に言うのならばやはりマグネットコーティングと言えど、それは限界値を底上げするに過ぎないのだ。

 

機体性能という足枷の中で、エース部隊と互角かやや押しているにも関わらず、機体によって勝敗が決しようとしている…。

後味としてはあまり宜しくない、そもそも機体限界が有るのだからそれがなければ、ハンター隊は負けていたかもしれない。

 

実際、アムロの被弾は未だに0である。

 

戦場を俯瞰的に見るケネスは、大粒の汗を流しながら引き金を引き続ける。

まるで未来でも見ているかのように避けていくその姿に、彼は驚愕と同時に自身の腕が訛っているのでは無いことを、信じられなかった。

 

彼から迸る殺気は、この戦場では誰よりも高い次元にある。まるでプレッシャーの様に放たれるそれを、アムロは柳のようにいなしている。

テネスの射撃は確実にアムロの脅威になっているのだ。現に、テネスのその射撃もアムロの次の動作を感じながら、無意識にコンピューターの補正を無視しているものだった。

 

それにも関わらず、1度たりとも命中しない。

 

テネスの肌が粟立つ、慌てて機体を急激な加速とともに回避機動を取るが少し判断が遅かった。

ロングライフルを引っ提げていた右腕と共に、ライフルに撃破判定が下されるとその機能が停止する。

 

ほんの一瞬の出来事、決して意識を話した訳では無い。

ただ、アムロ機に対する射線の中に一瞬だけ味方が入り、アムロと被っただけだ。

だが、その一瞬味方が避けるのと彼の機体が一直線になる事を見越したアムロの射撃が、テネスを捕らえたのだ。

 

そのため、テネスには殺気を感じる事すら出来なかった事だろう。アラートも鳴らず、唯一勘だけが彼を救った形となる。

 

「クソが!!」

 

苛立ったとしてもそれは後の祭り、彼の援護という外力が無くなると一挙に均衡が崩れ去る。

まず最初に起きたのは、ヤザンの機体の不調であった。そもそも、アムロの機体と最も接近して戦闘を行なっているのだから、その損害も大きい。

 

既に機能不全陥っていた各部のユニットは、完全に機動の妨げとなってそれが祟り撃墜判定を下される。

彼の健闘は、アムロにビームライフルを使い終わらせたと言うところだろう。

だが、ジム系列はその武装を使うに互換性が有るのだから、漂流する撃墜判定を齎された機体のそれをひったくり、戦いを続ける。

 

怒涛の展開は、崩れた部隊の崩壊を食い止めることはできず、30秒の内に最後の1機が落とされる。と言う展開となって収束した。

もっとも、アムロの機体に関しても機能不全を起こし、結局勝者のない戦いとなってしまった。

 

ただ、追撃戦と言う形で有るのだから、部隊を足止めされたと言う点では、ハンター隊の敗北であると言えよう。

 

 

ただ、作戦上はそうなるのかもしれない。けれど、けれどね?模擬戦である事を忘れてはならない。

 

「あの……すいません、曳航していってもらっても良いですか?」

 

『おいおい、結果だけ見りゃすげぇけどよ…、加減ってもんをわきまえろや。若大将』

 

無線をいれると真っ先に反応したのはヤザンであった。

 

状況終了後、アムロは己の機体が完全にイカれてしまった事に気が付いていた。始末書ものの出来事である。

そもそも、純粋な戦闘でもないのに双方ともやりすぎていると言うところもあるが、それにしても機体をお釈迦にする程やれとは言われていない。

 

『見かけによらず、結構負けず嫌いなんだね…アンタ。気に入ったよ…。アタシはイオナ・パターソン、宜しく。』

 

オープン回線で、アムロのそれを拾った女性パイロットの声が聞こえる。

序に序にと、戦ったはずの彼等は次々に彼に言葉を投げかける。

向こう見ずな彼の、歳相応な反応は意外な所だったのだろう。アムロという人物の人間性に惹かれたとも言うべきか…。

 

そんな光景を見ているテネスはと言えば…

 

「ふ…ふふ…ふハハハハハ……、ばからしい。おい、戦場でもそんな事やってたんなら、良く生きてたな。お前は凄いよ、ただ自重ってもんを覚えろ。」

 

戦闘での結果を受けてか、何かが吹っ切れたのか?それはさておき、何やら上機嫌にそう言うと一番にアムロへと曳航用のワイヤーを射出した。

その動きは卓越したもので、やはり腕の良いパイロットである事の何よりの証だろう。

 

「ありがとうございます。」

 

『俺はテネス…テネス・A・ユングだ。わかったらとっとと帰るぞ?戦友殿。』

 

ハンター隊は周囲を警戒しながら、アムロの機体をルナツー基地の入り口にまで持って帰る。アムロにとっては初めての経験だが、そこには迷いなどなかった。

 

尤も………、格納庫に着くや否や彼はこっ酷く怒られる羽目になった。

 

「ちょっとコレはやり過ぎたって…、どうやったらこんなことになるんだよ!!」

 

「すいません、動かしすぎちゃって…。でも、上手く整備は出来ていましたよ。僕の操縦が荒っぽいのが原因です。」

 

カンカンに怒った整備兵等が待ち受けているものの、彼等もアムロの戦いを見て知っている。

目の前のこんな何処にでもいそうな、人畜無害な顔をしているこの青年が、あれ程強いのだと言うことを…。

 

パイロットスーツから着替え、ロッカールームから始末書と他の書類を書くために移動する道中、友人たちとも出会い。

 

「やっぱりお前スゲェよ、今度教えてくれよ。どうしてあんな動きするとかさ…」

 

「あとあと…ガンダムとジム、どっちの動きがどうとか具体的に!気になってるんだよ!」

 

と、揉みくちゃにされていた…。

 

唯一

 

このルナツーの中で唯一、アムロ・レイと言う人物をデータでしか見ていない、指令室の人間だけが

 

「コレは正真正銘の化け物だな…」

 

アムロ・レイと言う人物の危険性だけを、認知していた。

そして、同時に…。

ハンター隊の幾人かの人間にもその兆候が有るのを、危惧していた。

 

 




誤字訂正、感想ありがとうございます。

また誤字、感想よろしくお願いします。
評価の方もよろしくお願いします。

ガンプラを改造出来る人達が羨ましい。
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