白き流星の羽搏き   作:丸亀導師

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〜0080〜シャイアン編
出会い


 

ヒュルルル〜〜…カッ…

 

そんな音と共に、1機のモビルスーツが爆発し空中で火球を灯す。ザクの様な見た目で有るそれは、所謂ハイザックと呼ばれる機体であり、一年戦争後ティターンズを初めとした対ジオン残党狩部隊を中心とした者達に配備された物だった。

 

コロニーの住民、ジオン残党軍。そんな彼等の心理を逆手に取ったそれは、嘗て心の拠り所であったそれを挫くための、一瞬の宣伝戦略の1つであった。

その分、性能は幾分か犠牲となりジム2とどっこいの様な物である。寧ろ、ビーム兵装だけならばジム2の方が良いとまで言われていた。

 

そんな物が主力であるのか、シャイアンを襲撃してきたティターンズの部隊は、空中戦で瞬く間に数を減らしていた。

 

そんな中にあって、より鋭く、より重く、その戦場を駆け抜ける1機のジーラインの姿は、まるで華があり戦意の高揚をさそう。そんな戦場の中、ティターンズを迎撃に上がってきた部隊、その中でも周囲の警戒に当たりつつ、指揮を飛ばしている者がいた。

 

「7号機、ミッチェル!!無理はしないで?ゆっくり戦場を体験すれば良い、生きる事だけ考えて!!」

 

迎撃に出ているシャイアン基地部隊、そのマッケンジー大隊その隊長である、クリスチーナ・マッケンジー少佐は新兵にそう言い聞かせた。

 

練度と言うものは、決して上げるのが難しいものではない。日々の訓練と演習、それらが揃っていれば自ずと上がっていくものだ。確かに、戦場と演習とでは違いがあるが、かと言って訓練は身を護る物であるのは事実だ。

 

だが、どれだけ演習を積んでもどれだけ訓練をしても、鍛え上げられないものがある。

それは、恐怖への耐性だ。

恐怖と言う物は劇薬と同じく、適切な量でなければ人を狂わせる物となる。そして戦場という場は、その恐怖を過剰に投与される禁忌の領域だ。

 

耐性が着きやすいものと、そのまま壊れてしまうものもいる。

この戦場の中でその事に誰よりも詳しいのは、このクリスに他ならない。

一年戦争以前から、短期間ではなく正式に軍の教練を受けたからこそ、その事を理解していた。

 

それは戦場を縦横無尽に駆け抜けるアムロの出来ないところであって、全体を指揮する者として彼女はその経験を遺憾無く発揮していた。

 

迎撃戦は緊張を孕みながらも、次第に基地側有利に変遷していく、そして戦場で最も輝いていたのは、やはり英雄という者。アムロは、その力強い姿で戦場を当に支配していた。

一つの区域、それを当に勢力下に置けるそんな存在は、味方にするには心強いのだ。

 

そんな彼の戦いを、クリスは大局を見据えながら損傷機が無いか、確認しつつも目で捉えていた。

 

「相変わらず上手いのね、操縦じゃ絶対に敵わない…けど」

 

たった一人の青年が、戦場を支配するという事に違和感を覚えるのもまた事実である。

クリス……彼女にとって、彼という存在は単なる歳下の男の子であるのだから。

 

 

……

 

 

宇宙世紀0080,6月某日 地球連邦軍本部・ジャブロー

 

カッカッカッカッ

 

と言う、ブーツが刻む音が明かりが灯る廊下に響く。通り過ぎる窓の外は、人工の光が漏れ込みその奥を暗闇が支配する。巨大な洞窟のようなそんな景色が広がる。

そんな中その音の主である赤毛の女性、クリスチーナ・マッケンジー中尉(・・)は、周囲の人々からの腫れ物を見るような視線を感じながらも、命令にあった場所へと向かっていた。

 

暫く歩いて到着する場所は、その基地の一室。閉じられた扉のその前には二人の歩哨がいて、内部に入ろうとしている人間に警戒をしている。

きっと精鋭なのだろう、その鋭い眼光には誰もが不審に映っているのだろうか?

 

「カードを…」

 

言われてスッと、一人に手渡す。その間も、彼等の警戒は拭われない。特に…、懲罰を受けていた人間がこの様なところに、ノコノコと一人で現れていること自体が稀なケースであった。

 

「良し、入れ。」

 

二人の内片方がキーロックを解錠する。開いた扉の内は暗がりが永遠に続くのではないかと、そう思えるほどに暗い。

入る前に一呼吸し、意を決して足を踏み入れるとヒンヤリとした空気が…場を静かに締めていた。

 

「クリスチーナ・マッケンジー中尉、出頭しました!!」

 

右手を額に当て、宇宙軍制式の敬礼をする。

その言葉に呼応するかのように、辺りが俄に明るくなったかのように見えた。

実際は最初から薄暗いだけなのだが、クリスはその中で生唾を飲んだ。

目の前には1つだけ椅子が置かれており、彼女が来る事は予定されていた事だった。

 

「取り敢えず……良く来てくれたね。尤も、君としては我々と面談するのは息苦しい事であると思う。

もう少しリラックスして、そこの椅子に掛け給え。」

 

周囲をグルリと囲われるように、人々が座る。その襟首は、彼女よりも遥かに格の上である者達であると、星が煌めく。

 

「失礼します!」

 

クリスはその命令に対して応答し、椅子に座る。いや、座る他無い。何故ならば、この中で彼女は最も階級が低く、尚且つ彼女には銃が突きつけられているのと同じ様なものだからだ。

 

中央に座る男、軍人とは思えない程に肥え太り顎の見えないタプタプの首…そして何より、周囲の人間の中で一際異彩を放ったその姿は、この会場を統率している者だと嫌でもわかる。

そして、同時に彼女にとってはある種忌むべき相手でもある。

その顔は忘れもしない、彼女の恩師であるレビルをしてジャブローの土竜と評した男…、ゴップ大将である。

 

「クリスチーナ・マッケンジー中尉、サイド6リボーコロニー出身。76年連邦士官学校入学、そして78年首席で卒業後戦技研究団へ配属、戦争勃発後はV作戦のテストパイロットとして参加し、テム・レイ技術部隊にも参加…、Rx78-2のシューフィッターとなる。

 

その後、サイド6出身者である事を理由に、NT1アレックスのシューフィッターに抜擢。

同月、コロニー内部で戦闘し敵モビルスーツの撃破に尽力するも、その途上でアレックスを大破させる。

査問会にて、上官の命令に対して違反をした事により、ここジャブローにて追加の査問を行われる…。

 

この経歴に嘘、偽りはないかな?」

 

「ありません…。」

 

太々しい態度であるが、彼の言う事に嘘偽りは無いのかクリスは首を縦に振り、それを認める。

認めるしか無い、彼女が上官の命令を無視し市街地から山林部へと移動したことにより、彼女の乗機であったガンダムアレックスが、敵の欺瞞にまんまと嵌り死角からの近接戦を仕掛けられ大破した事…。

 

決して大破させる気は無く、寧ろコロニーでの被害を最小限にしようなどと、そんな事を考えての行動だとそう言ったとしても、結果はその状態である。

この事態が、戦争の大局を左右するようなそんな大規模な結果に直結するような事はなかったにせよ、それを受領予定だった部隊としては、それこそたまったものではない筈だ。恨まれても、文句は言えない。

 

それが、クリスがここジャブローに半ば軟禁されている理由でも有るのだから。

 

「別に……、私は君を責めているわけではない。君は今は亡きレビル元帥の子飼いとして、良く働いてくれたと評価している。私はね…ほかの面々がどう思っているかは兎も角だ…。」

 

中央で話を続ける彼は彼女個人に対しては、何ら興味を示している訳では無い。寧ろその手の平に有る、一つの紙に興味を示すようにヒラヒラとさせている。

そんな行動に、クリスはいちいちイライラとすることはしない、そんな事をしても無駄である事など分かりきっていた。

 

「君の処遇だがね?コロニーへの被害を鑑み、スカーレット隊の落ち度が大きいと判断している。君だけの責任ではないと、そう結論は出ている。そこは安心してほしいな。」

 

そこにステファン・ヘボン少将が、彼女の罪状が意外にも軽い事を告げる。

所謂飴と鞭の様な、そんな関係であるのだろうことは、クリスにも理解できた。問題は、そんなことの為にここに呼ばれた訳では無い事を、クリスはその優秀な頭脳で推理していた。

 

そもそも、一介の尉官に対して将官クラスが雁首揃って迎える事など、殆ど有りはしない。

そんな事をするならば、書面で充分効果的だからだ。

故に、クリスは目の前の彼らに対して少し挑戦的な態度を崩すことはない。

そんな態度の彼女が気に入ったのか、ゴップは口元を少し綻ばせると静かに頷く。

 

「なるほど、彼等が推すわけだ…。問題なかろう、君にこの案件を受けてもらいたくてね。君が退官する前に、是非ともやってもらいたい。」

 

その言葉とともに、一つの封筒を彼は机の上から彼女の方へと突き出す。

その態度、受け取れというのだろうか。きっと、退官したくともさせてもらえない程度には、権力を使ってくるだろう。そんな事はクリスにも分かっていた。

 

「君は彼に、ある意味では償いをしなければならない。

君のせいで、いらぬ損耗をしたかもしれない。それだけは肝に命じて欲しいな?」

 

封筒の中身、きっと指令書であろう事はわかった。だからだろう、その言葉にある棘に何かチクリと感じた。

その後、周囲にいたものの中で佐官の人間が立ち彼女に命令を言い渡す。

 

「今日付けを持って、ジャブローよりの移動を命ず。指定された日付けまでに荷物を纏め給え。新天地での、貴官の武運長久を祈っているよ。」

 

その言葉とともに、彼女はその部屋から退出させられる。

彼女の手元にある封筒の中身、そしてそこに書かれている場所は、その命令にしてはあまり良い場所と言うこともなく…。

 

シャイアン基地への転勤・配属、事実上の左遷と言うそんな命令が言い渡された瞬間だった。

 

封書に書かれていた場所は、宇宙世紀以前の西暦の時代から使われていた古い基地施設。

それ程重要度が高いと言うこともなく、一年戦争後は特にそのレーダー基地すら真艫に動くことも無い。

 

そんな僻地に、彼女は追いやられた。

 

と、端から見ればそう映るだろうが、実態は違う。

 

そもそも、地球連邦軍は一年戦争により貴重な士官学校を卒業した士官が激減しており、クリスの退官届けを受領することなど出来ようはずもない。

特に、士官学校首席卒業者であり特Aクラスの機密に触れた人間が、おいそれと連邦軍を辞めることなど出来るわけがない。

 

つまりは、彼女を確保しておく為の方便であり、そしてもう一つ大きな思惑が目の前に横たわっていた。

 

 

 

ジェット音を轟かせながら着陸するミデア輸送機、そこから降りるクリスは一般的な連邦軍の軍装をしながら、幾つかのモビルスーツと共にシャイアン基地へと配属された。

使い古された機材、錆の見える建物…お世辞にも良い環境ではない。

 

しかし、そんな中で彼女に言い渡された命令を遂行するために、彼女はこの大地に現れたのだ。

 

「本日付けて当基地に配属となりました、クリスチーナ・マッケンジー中尉です!よろしくお願いします!!」

 

そんな掛け声とともに、気合の入った彼女の言葉に対してこの基地の司令官である男…、マッキンゼイ中佐は気だるげに彼女の言葉を流すようにしていると、ヒラヒラと手を振る。

やる気がない…、何よりこの基地全体にそんな空気が漂っていた。

 

この基地に集められている人材が、いったいどんな者達であるのかクリスは、それだけで容易に想像してみせた。

左遷されるような逸れ者、懲罰を受けた者から果ては無能とされた者まで、様々な者たちがいる。

 

戦力としては2線級…いや、3線級も良いところ。ただ、全員が全員その様な者達であるかと言われれば…、どうやらそうでもないらしい。

新米パイロット達が、士官候補生達が、大きな声と気合いの入った張りのある声で滑走路をランニングしている姿は、まだまだ捨てたものじゃないと、クリスに感じさせた。

 

そして、クリスはそんな光景を見つつも件の指令書に書かれていたとある人物に会うために、基地全体を脳裏に記憶しながら基地の中を歩いていく。

そして……、出会ったのだ。

 

地球連邦宇宙軍・元第13独立機動部隊ホワイトベース所属機

RX78-2ガンダム

パイロット

 

アムロ・レイ

 

若干17歳とは思えないそんな大人の雰囲気を放ちながら、新兵達に声をかけている。

それは当に、歴戦の戦士と言うには充分すぎるもので、果たしてこれが未成年なのだろうか?と、己が同じ頃どのようだったかだとか、そんな物が脳裏を過ぎる。

 

だが…、そんな感想を持ちながらもクリスには目の前の青年が、何処か無理をしているのではないかとか、そんな心配があった。

聞いていたよりも少し硬い印象だった。

故テム・レイ技術士官が、事あるごとに自慢していたあの写真の子供にはとても見えない様に。

 

そんな彼の事を彼女が見ていると、そんな彼女の事が目に入ったのか、彼は顔を向け彼女の方を見た。

 

「何ですか?」

 

そんな質問にクリスは、封筒の中にあった物に書かれていた事を思い出しながら、口を開く。

 

「始めまして、私はクリス、クリスチーナ・マッケンジー中尉、貴方の監視と手助けの為にここに配属されたの。」

 

嘘は彼には効果がないと言うことを……。

 

 

 




誤字、感想、評価等よろしくお願いします。

全体的にたぶん100話くらい続くのではないだろうか。
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