白き流星の羽搏き   作:丸亀導師

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2人(兄妹)

〜0083年3月20日 

 

トロイホースの艦橋には、いよいよ戦闘が開始されると言う時間ともなると言うことで、野次馬のように艦内で暇を持て余している人材が殺到した。

ただ、やはりパイロットを優先してと言うこともあり、それなりの序列を敷かれていたが、それでも艦内で一番に大きいモニターはここにあった為に、それなりの人数がひしめいていた。

 

「アムロ…、どうなると思う?」

 

「不審船…、それから出た3機のモビルスーツの方が勝ちますよ。」

 

アムロのその予言めいた言葉に対して、異論を唱える者はいない。寧ろその言葉に対して、信頼を持っているのだから、彼のこの艦内での立ち位置はやはり、連邦のエースと言えた。

 

連邦軍からの戦力は、ホワイトベースⅡの率いるモビルスーツ隊がそこから発進する姿は、曲がりなりにもペガサス級を有用する部隊である。それなりの練度を見て取る事が出来た。

そしてなにより、そのモビルスーツの中でも特筆すべきものがあるとすれば、戦争に参加したものならば嫌と言うほどに見たことがある機体……。

 

ガンダム

 

その3番機であるRX-78-3の姿が確認出来ていた。そんな戦力に対する、ジオン側の戦力はと言えばたった3機の高機動型ザクIIである。ジム・コマンドを主軸にしている、ホワイトベースⅡの部隊に対して言えば、それは力不足にも程がある。

 

「だが、数の上でも機体性能上でも我々連邦軍が上だが?」

 

アムロの言葉に対して不満を挙げる声が無かったところから、ガディ大尉が反対意見を敢えて言うと、アムロはそれに対して答えた。

 

「ええ、数の上では。ですが、モビルスーツの性能の違いが戦力の決定的な差では無いです。

特に…、今回の戦闘において確実にシャアの影があります。

 

それに…」

 

アムロは一拍ため、そして宇宙を観ながら何かを確認する為に目を細めた。

 

「一人じゃない。」

 

アムロのその言葉にブライトは何かを感じたのか、釣られてその景色を観た。

眼光の先その暗黒の先に、幾つかの光が交錯を始めた時、その言葉の意味を多くが理解するだろう。

しかし、アムロの事を良く知るブライトにとって、その言葉の意味は当に一つのみ。

 

ニュータイプがシャア以外にもいるのだと。

 

「アムロ」

 

「ええ、わかってます。」

 

そう言うや否や、アムロは艦橋から格納庫へと歩みを始め、周囲の目はそれを僅かに追い、ブライトは艦内放送のスイッチを押して号令をかけた。

 

「総員第一戦闘配置!」

 

その言葉がかかると共に、一気に色めき出しほぼ全員が同時に動き出す。

その後に起きる事を最低限の予測と共に。

 

「副長、出港までどの程度かかるか?」

 

「最低10分…ですが、3分で済ませます。」

 

ガディ大尉は、直ぐに港湾の方へと連絡を入れほぼ恫喝に近い形での出港を実現しようとするだろう。やり方は多少よろしくはないが、軍事行動。特に連邦軍に対する有事法に則っているのだから、達が悪い。

 

艦内に振動が僅かに伝わって来ると、エンジンの始動が開始されたことを意味する。

トロイホースが少しずつ前進を始め、エアロック区画に到着すると同時に遮蔽シールドが閉じていく。

 

閉じきると同時に内部の空気が吸い出されて行き真空となっていくと、周囲からの音が徐々に無くなり、後はエンジンの音だけがトロイホースを揺らしている。

 

吸い出しが終わると、外部遮蔽部が開きガイドビーコンが点滅すると、トロイホースが加速する。

 

『間に合うか…?だが、最悪の事態は避けたいものだ。』

 

ブライトは嫌った。彼の目の前で、彼の記憶にあるあのホワイトベースが2度も沈没するところなど、見たくはないのだと。

 

この行動はサイド3駐留軍司令部からの命令違反であるが、彼等の所属はサイド3駐留軍ではない。更に言えば、彼等の所作に対する縛りは

 

第13実験隊の実験任務上の偶発的戦闘

 

と言う形となるだろう。そうなった場合咎を受けるのは、彼等の行動範囲に対して、軍務上必要以上の出撃を許した司令部の方である。と言う、余りにも理不尽な行動が可能となる。

 

「艦長…こちら一番機アムロ、出撃の準備が整いました。」

 

「同じく2番機マッケンジーです。こちらも出撃準備完了、何時でも行けます。」

 

モビルスーツ隊の発艦準備が終わった事を告げると共に、各員の配置が完了したからか、艦内は当に一触即発の雰囲気である。

 

「モビルスーツ隊は出撃位置で待機!別命有るまで、出撃するなよ?

艦長!どう出ます?」

 

「向こう側の出方を見る。アムロの見立てでは、確実に負けるだろう事が予想されるが…、向こうの艦長の判断次第だ。」

 

ガディからの質問にブライトは直ぐ様答えると、同時に思考を巡らせた。

実戦を経験している人間ならば、引き際を弁えているだろうか?だからこそ、そういう場面で出て来られると困るものがいる。

 

「司令部から何か入ってきているか?」

 

「何も!ただ、我々が出港した事に抗議してきました。」

 

この結果が鬼が出るか蛇が出るか、それこそ未来を見届けなければ分からなかった。

 

 

 

 

〜同日・交戦宙域

 

不審船を庇う様に、高機動型ザクIIがスラスターを明滅させて戦闘機動を行っている。

既に幾つかのジムカスタムが行動不能に陥り、戦力の大幅に落ちたホワイトベースⅡは、この後の進退に苦慮していた。

 

「我が方の被害甚大!ジム中隊沈黙します!ガンダムだけが…」

 

我々の負けだな全機に撤退信号、本艦はコレより」

 

艦艇の指揮を執っていた艦長と、この追撃戦の指揮を執る様にと座乗していた司令官は、いきなり入ってきた通信に対して驚愕していた。

 

「司令部からのレーザー通信です。ホワイトベースⅡの帰投は許可出来ない…!司令官は更迭、艦隊の援護が来るまで遅滞戦闘に努めよ!!です!!」

 

あり得ない判断、現場に任せることよりも頭を優先するという愚を、サイド3の司令部が行ったのは単に見栄から来るものだったのか?

たかだか3機のザクに、型落ちとは言えガンダムを擁する部隊が負ける事などあってはならないということか?

 

「……、艦長…私の権限で帰還する。司令部からの命令は無視せよ!」

 

艦長は板挟みにあっていた。

司令による判断は、確かに適切だっただろう。特に戦力評価として、ガンダム1機に対して敵はザク3機。

しかしながら、ジム中隊を壊滅させた前提を重きを置くと、その評価がとたんに裏返るのだ。

 

戦艦1隻がモビルスーツに勝てると言うのは、ルウム戦役以前の幻想であり、現実宇宙艦艇は基本的に接近戦に関して言えば、ザク1機に対しても勝つことは容易ではない。

 

板挟みになり、判断の即決が遅れる間にも艦は確実に不審船を追い続けている。

それが相手からどの様に見られるかなど、それは簡単な答え合わせであった。

 

「敵さらに近づく!ガンダム、未だ交戦中ザク2機来ます!!」

 

「…!?対空戦闘始め!!」

 

バラバラと対空機銃による迎撃が始まり、近接信管による爆発がバンバンと発生するも、それは疎らに終わりザクは殆ど一直線に近い形で近づいてくる。

特に動きの良い1機のザクは、手に持ったマシンガンを真艫に正面に見据え、艦橋へと一直線に進んでくる。

 

その姿は正しく彗星の如く、スラスターの光は正にその尾のようだ。

 

「総員衝撃備えよ!!」

 

備えたところでどうなるというのか、艦橋要員は漏れなく即死だろう。そして、艦の他の部位も時間を置かずにあの世に送られるに相違ない。

 

ゆっくりと流れる時間の最中、銃口が艦橋に向けられるのがよくわかる。

そして、

 

 

と言うものがハッキリと見えて来た……。

 

 

だが、それが訪れる事はなかった。 

 

引き金が引かれる瞬間、ザクは何を思ったのかそれを取り止めると、スラスターを全力で吹かし船体から離れて行く…。

彼等は、白煙を上げる船体で辛くも生き延びたのだ。

 

 

ザクを久方振りに駆るシャアは、自らのその操縦テクニックにより敵を翻弄し、今まさに引導を渡そうとしていた。

 

「我々も無益な争いは避けたかった…、呪うのならば司令部を呪え。」

 

そう口ずさむと同時に、トリガーに指をかけた。

 

『シャア大佐…ワタシたち見られてる…とても、とてもツヨイ人に!』

 

シャアの脳裏にその言葉が走った…、と同時に彼にも馴染みのある感覚が襲い掛かり、それによって一瞬の判断の下機体を反転させた。

と同時に、弾幕に共に飛び込んだザクへと通信を開いた。

 

「ファビアン!カムジ!帰還するぞ!!奴が来る!!」

 

目端に尾を引く光が、僅かに見える。その数は8つ、如何に腕の良いパイロットであったとて、連戦ではお墜されないと言う保証は無い。

シャアの言葉の端には、確実に恐怖が入り混じっていた。

 

カムジと言う少女のパイロットはそれを敏感に感じ取り、シャアの意向を直ぐに反映させようと、相手どっていたG-3に対して思い切りの良い蹴りを見舞うと、その反動を利用して戦線を離脱する。

メインノズルを破壊されたG-3は、成す術なく宇宙を漂うだけとなった。

 

この中で唯一、それに対して渋るのはファビアンと言う男のパイロットであったが、上官であるシャアの言葉に対して反攻することはしなかった。

シャアよりも腕がある訳でもなく、寧ろシャアに助けられたのだから、それに従わざるを得ないのだ。

 

其れ等を引き連れて、シャアは自らが出撃した艦へと再び進路を取った。

 

 

ホワイトベースⅡの艦内では安堵の空気が流れていた。艦内各所が悲鳴を上げる中、そう言った空気を流すのは俄早い(にわかはやい)が、それでも即死は免れたからである。

ダメージコントロールを行いつつ、1分が経過したくらいだろう一つの機影を確認した。

 

「識別…!連邦軍、トロイホース所属機……ガンダムです!通信入ります!!」

 

「こ…ら、アム………イ中尉。貴艦の直…に入る!各機周囲に警戒しつつ、陣形を組め!!」

 

その声は、非常に若くしかしハキハキとし自信に満ち溢れていた。そして何より、その機体のその姿は紛れもなく連邦軍勝利の立役者である、ガンダムのそれであった。

 

「私は本部隊の指揮をしているアッテン大佐だ、貴官等の支援心より感謝する。」

 

その姿に感動と、迅速な判断に感嘆しつつ彼等が如何にしてこの場へと辿り着いたのかと、少し気になる部分があるにせよ、それを口に出すほど彼は無粋ではなかった。

そして、その返答にはアムロではなくもう1機から通信が入った。

 

「自分はクリスチーナ・マッケンジー大尉です。我が隊は、偶発的に貴官等の戦闘を視認、いち早く支援に入った所存です。」

 

本音と建前というものは、どういう場所でも大切なものである。故に、彼はその言葉を快く受け入れたのだった。

 

 

〜同日・ムサイ級巡洋艦

 

シャアは自らが操縦していたザクから姿を現すと、己が着ていたパイロットスーツのヘルメットを脱ぎながら、先の戦闘最後に現れた強烈な力に、自らが気圧された事に手が震えが止まらなかった。

 

恐怖か…、私は何を怖がっているのだろうな…。

 

誰に話すでもなく、彼は一人ごちる。ぎゅっと手を握りしめると、その震えは直ぐに治まりその直ぐ後に彼の部下となっていた2人が彼の元へと飛んできた。

 

「大佐…ありがとうございます。あのままでは自分は…」

 

ファビアンは、己の不甲斐なさによって敵船を仕留めることもできず、何より撃墜される寸前まで追い詰められていたことを恥じた。

 

「礼は良い、次はそれを活かすようにしてくれればな。それよりも、私に何か聞きたいことがあるようだが?」

 

それに対してシャアはやんわりと受け止め、逆に質問を問いた。

 

「何故、艦にとどめを刺さなかったのでしょうか?」

 

それは当然の疑問であった。未だ敵機が見えておらず、何よりあのまま行けば、連邦艦は艦橋に甚大な被害を受け多くの傷を残せた筈だからだ。

だが、シャアはそれを敢えてしなかったのだ。

 

「あのまま彼処にいた場合、我々は数分のうちにやって来る敵にやられていた事だろう。

特に、次に現れる敵は君だけではなく、カムジ准尉ですら想像もつかない程の強敵だ…。あのようなつまらないところで、君たちを喪いたくないのだよ。少尉」

 

シャアのその言葉に嘘偽りはなく、寧ろあの判断は適切であったと、持論を展開した。

しかし、それでもファビアンは納得行かないような顔をしていたが、横から現れたカムジの発言によって少し状況が変わった。

 

「あのパイロットは、ムカシ大佐が戦ってた相手デしょ?だから…、大佐はツヨサ知ってた。」

 

「君の言う通りだよ准尉。私は、一度たりともアノパイロットに勝てたことはない。ただの一度も、言うなれば彼を育てたのは私のようなものだが…、その強さは折り紙付きだ。ジオングでさえ…、同性能であったなら私だけがやられていただろうな。」

 

あっけらかんと言うその姿は、いっそ清々しく寧ろ誇らしげでもある。いったい何の自慢をしているのだろうか?

 

「アムロ・レイ…。連邦の白いヤツとも、白い悪魔とも君達は呼んでいるらしいが…私から言わせてもらえば、彼はそんなたまではない。

准尉、君の前任であるララァ・スンは奴によって討たれた。恐らくは、最強のニュータイプだろう…。」

 

シャアはそれだけ言って閉口し、次には直ぐに切り替わると二人を連れてブリッジの方へと向かって行った…。

 

 

 

 

〜同日・地球

 

ガションガション

 

と、そんな音が周囲を響き渡り巨大な人影が大地を踏み締める。足元が若干泥に塗れているものの、その他のその姿はグレーとホワイトに塗られており、その背中と肩には大きく白地に堂々と赤十字が描かれていた。

 

地面に座る子どもたちは、そんな姿を見上げてはキャイキャイとうれしがったり、または大きく口を開けてあんぐりとしていたり…中には泣き出す者もいた。

 

ただ、大人達はと言えば複雑な顔をしながらも、運ばれているものを見れば嬉しくないわけではなかった。

 

「まさか、私たちを追っていた物が私たちを救うなんて…、あの人が見たら何ていうかしら?」

 

ペルシアは、数機のザクⅠの姿を見てそう口にする。彼女にとってザクは、自分達の生命を狙ってきた言わば敵の様な相手で、実際そうだったのだが、今のその姿はまるで兵器ではない様に動いている。

そんな風体をくだすそれに、なんとも言えない気持ちであった。

 

ゆっくりと、しかし確実に背負っている荷物を降ろす。その姿はあまりにも滑稽であるが、同時に安心感を与えてもいた。

その姿は、モビルスーツのあり様をまざまざと見せつけるように。

 

そんな姿を見せているものの、其れ等の作業に直接的な指示を飛ばしているセイラの姿は、やはりかなり目立っていた。

彼女の号令のもと、様々な作業をこなしていくこの集団、地球出身者だけで構成されている訳では無い…、寧ろモビルスーツを操っている人間は、ジオンの人間であった…。

 

「シュマイザーさん、次の品物はわかっていまして?それが終わったら、休息してください。」

 

「了解した。」

 

コックピットディスプレイの光を受けて、乗機であるザクⅠの操縦をしているのは、ゲラート・シュマイザーと言う男である。

彼は所謂傷痍軍人と言うもので、視神経に傷を負い戦闘時のGに下されると視界がブラックアウトする、と言う障害を持っている。

 

そんな彼であるが、現在は視神経にインプラントを行う事により、モビルスーツの視覚センサーを直接脳に転送する技術が、彼の生活を一変させていた。

 

コレは要するに、オーガスタで行われていた非人道的な研究の功罪の産物である。それの功の部分を、彼は恩恵として受けているのだ。尤も、最新機体に対応するには人体に負荷は大きく、やはりザクⅠ程度が丁度いいと、リミッターをかけられているが…。

 

兎も角として、彼は今もパイロットとして現役で仕事に就いていた。

それもこれも、戦場で傷付き、民家で匿われていた彼を見つけ出した、セイラのお陰と言えた。

 

そしてそれは、彼だけではない。多くの協力的な元ジオン軍人達は、彼女のその言葉と行動と……その名前に惹かれてここにいた。

 

彼女が語るその名は

 

アルテイシア・ソム・ダイクン

 

今は亡きジオン・ズム・ダイクンの2人の遺児のうちの片割れ、妹の方だと言う彼女は、その名が示す通りに彼女のその行動力は誰よりも目を引いた。

 

多くの人々を救おうと、その名を道具とする事によって残党へと身を窶そうとしていた彼等のもとに現れては、もっと生産的な行いをしなさいと、そう叱咤した。

傷ついた者には薬品と包帯を、飢えたものには食料とその生産設備を…生活を与えた。

 

衣食足りて礼節を知ると言うが、彼女はそれを体現していた。

 

失う物が増えれば、人は争う事を好まざる。

それを良しとするもしないも、彼等の判断を尊重し手を掴むものは掴み、離すものを追うことはない。

 

故に彼女の周囲の人間は、彼女を信頼しても良いと言う人間だけであった。

 

それがアムロが士官学校へと入学してからと言うその間、医師への道をと言いながらも続けていた、彼女の出来る限り、精一杯の平和への貢献であった。

 

 




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