白き流星の羽搏き   作:丸亀導師

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ジークアクスのニャアンって、正史だとたぶん人体実験とかされてるか、サイド2で亡くなってそう。


第54話

〜0083年4月中旬 北米オーガスタ

 

春の訪れとともに、雪解けが始まりつつあるオーガスタでは、ニュータイプ研究所としての、新たな一歩が始まっていた。

まず、ニュータイプというものの定義から、連邦のそれとは全く違う見解に基づくものとなっていた。

 

連邦にとってのニュータイプというものは、所謂人智を超えた化け物のように思われているが、実際はそうでない。

しかし、それを言葉等でとらえる場合どうしても観念的描写が付き纏う事となる。

 

例えば、時や宇宙と言った、物質と宇宙の真理の様なそんなものの探求の果てに出てくるような語句が増えていく……。

もし、宇宙世紀のに於いて宗教がまだ力を持っていたならば、このような事に対して、『預言』だの『ブッダ』だの言う輩が出てきていただろう。

 

要は、時代に即さない異端的な側面を持つ。

それ故に、連邦政府は危機感を持っていると言えよう。

 

では、当の本人達の目線から言えばどうであろうか?

 

例えば、アムロ・レイの視点で言えば、ニュータイプ等というものは決して特別なものではなく、それそのものは人という存在が次に目指すべきステップであって、汎ゆるすべての人にその可能性が存在しているという。

 

従って彼の言うニュータイプというものは、人の考え・人の定義そのものとも言える。

 

人の定義と言えば、現在、主流となっている人種というものは、ホモ・サピエンスである。

ホモというものは、人属を表し、例えばホモ・ネアンデルタールも人属である。

 

これらは、遺伝的に言えばかなり近縁の種と言えようもので、互いに交配が可能な領域である。

 

対して、ホモ属となる以前に枝分かれした種。

例えばチンパンジー等の類人猿と、人類とは何ら掛け合わせは不可能である。

 

では、ニュータイプとオールドタイプをこれらに当て嵌めた場合、果たしてどちらの系統に属するのか?

と言えば、やはりホモ属である。

元来ホモ属からの派生種であり、これからより発展していくであろうこれは、正しく新人類。ニュータイプ、と呼ぶに相応しくはある。

 

実際、ニュータイプであろうミライとブライトの間には二人の子供が出来ていて、多感な時期を過ごしている。

これこそが、オールドタイプとニュータイプが非常に近い存在であり、全くの別種ではないということの証左である。

 

従って、ニュータイプというものは、決して人類とは別種ではなく、人類の遺伝子にも必ず含まれる要素が、他者よりも先んじて秀でている人物ということだけだ。

 

つまりその部分が、人類全体で少しずつ上昇する傾向にあったのが、この宇宙世紀という時代であった。

 

しかし、ここに来て問題がある。

 

ニュータイプというものは、人類からの派生種である。

派生種というものは、往々にして既存種と対立することがある。

そう、サピエンスとネアンデルタールの様に、環境に即した方が勝ち残る。

 

ネアンデルタールは、人類の遺伝子の一つに溶け合うように消えて行った…。そうなればもう、ネアンデルタールというものは存在しないも同然だろう。

 

連邦政府の議会議員には、そう言ったものに対して危機感を持つものがいると言うことでもある。

でなければ、非人道的なニュータイプ研究所を、合法の下に運営することなど出来ない。

 

オーガスタ研究所は、そう言った合法・非合法スレスレの機関からいち早く脱却する道を選んだのだ。

 

現在のオーガスタ研究所の主な研究は、ニュータイプの特性を活かした、或いはオールドタイプがニュータイプのサポートを行えるような、そんな機材を開発することがメインである。

それは、戦技研究所以前のオーガスタ研究所に殆どスタンスが立ち変わっただけであるが、それだけでも変化は劇的であった。

 

併設されていた孤児院(実験動物塔)は、純粋な孤児院となりそんな子どもたちの中から、ニュータイプ的適性のある子には、成長過程に於いて精神的苦痛が、比較的人よりもかかることを理解して、それの手助けとなるよう友人関係等のコネクションをつけたりと、そう言った事も行なっている。

 

そんなオーガスタ研究所に、その日ある人物が訪れた。

パリッとしたスーツと、ハットを被った議員バッジを付けた人物である。

彼は、施設に横付けされたリムジンから降りると、先ずは礼儀正しく研究所のゲートへとその姿を現した。

 

研究所のガードは、己に課された仕事を忠実に守っており、例え要人であろうと、容易に中には入れさせない。

 

「君も仕事熱心だな。」

 

その姿に、男は関心を持って讃えた。と、検査を終えると直ぐにまたリムジンに乗り、奥へと向かった。

男の襟首には議員バッジが輝いており、連邦議会の議員であることを称えていた。

 

男は車の中からチラリと外を見て、様々な事を思案する。

他のニュータイプ研究所よりも、張り詰めた感覚が薄い事を感じていた。

 

リムジンが横付けされた研究所の入り口、そして降りた先に待っていたのは、この研究所の責任者であった。

 

男は進んで前に出て、右手を前へと突き出すと所長と強く手を握り合った。

 

「はじめまして、私はジョン・バウアーと言います。ニュータイプ研究所の噂はかねがね、ここは他の場所よりも待遇が良いと聞いております。」

 

「こちらこそ、今日のご予定は、ある人物とお会いすることですね?案内します。」

 

署長はバウアーを連れて、建物の中に消える。その姿を、監視するように見る者たちは、全員が建物の外で待機を命じられていた。

 

「しかし広い施設ですね。モビルスーツの開発から、量産まで手広くやっているとか?」

 

「ええ、ジム・カスタムを知っていますでしょう?アレは家の自信作ですから……。まあ、それは表向きですよ。

こちらです。」

 

署長は客室に通された。そこには先客の姿があった。

金髪の美女…、昨今噂になっている…所謂ジオンの忘れ形見と呼ばれている、マス家の令嬢。セイラ・マス或いは

 

「はじめまして、ジョン・バウアーと言います。

貴女がアルテイシア・ダイクンさんですね?

昨今地球上のあちこちでボランティアや、各財団と協議を重ねていること耳にしまして…、こうしてお近づきに慣れることを光栄に思っています。」

 

「お世辞がお上手なんですね。私はセイラ・マスです。アルテイシアと名乗るのは、その名が必要になる時だけです。

それで、今回はどのようなご要件で?」

 

バウアーは、目の前の年若い女性の姿に一瞬見惚れたものの、直ぐに頭を切り替えて、質問を重ねた。

 

「ええ、とりあえず座りましょう……。

さて、何から伺えば良いか……、では一つ。

一年戦争から既に3年、地球上や宇宙でもその傷は少しずつ癒えてきました。

しかしながら、未だにジオン残党は蔓延り市民に脅威を与えています。

そんな残党を集めて……、貴女は何をなさろうとしているのか?」

 

彼の物言いは率直だった、実際セイラはここ一年間の間で、既に幾人ものジオン残党兵を集めて、その人員の中から宇宙に戻りたいものを帰らせてはいるものの、地球に残る者たちもいるのだ。

 

端から見れば、怪しい動きである事は言うまでもない。にも関わらず、今まで放置されていたのは、その行いがあくまでも堂々としていたものであり、赤羅様に軍事的でなかったのが大きい。

所謂ボランティア活動や救命活動をしている人間を、比較的穏健なものが多い連邦議会は、見逃していた。

 

だが、このジョン・バウアーが来たのは全くの別の問題が起こったからである。

所謂サイド6での、アムロ・レイの発言は連邦議会でも一定の波紋を呼んだ。

 

またぞろ、ジオンの様な者達が現れるのではないか?と、そう思う者達もいる。

バウアーは、そう言った人間ではないが、彼の発言に対して今まで目を瞑ってきた存在を、いっそう気になったというところである。

 

つまりは、自らの目で見極めてみたくなったのだ。金を払ってまで、ニュータイプの研究を始めた連邦政府、その指導してきた方向性と、まるで違うアクションを起こす研究所。

ゴップ肝いりの、そんな判断の下で行われている行為、そしてその人物に。

 

「私はそれ程問題には思っていません。寧ろ、穏当なやり方で、彼等が道を踏み外すのを阻止できるのならば、喜んで汚名を被ります。不干渉なだけでは、前にすら進めないと彼にも、そして…今は、私の友人にも気付かされただけです。」

 

「だが、君を利用しようとするものは山ほどいる。私も含めて、政治家というものは汚い生き物だからね。」

 

その物言いに対してセイラはおかしく思って、クスクスと笑った。それをバウアーは、不快にすら思っていない。

寧ろ、当然だとも思っている。

ニュータイプというものが洞察力に優れた人類であるとすれば、バウアーのこの言い方もフェイクである事を見逃さないだろう。

嘘が通じぬ人種というものは、当に脅威である。

だが同時に…希望でもある。

 

「そうでしょうね…、そう言われれば私も汚い生き物です。

何せ、泥を被りますからナマズの様なものでしょうか?」

 

「だが鯰は池の主でもある。

主である君がやろうとしていることは、非常に大きな変革を伴うだろう。

多大なリスクもある。それを承知で、彼に宣伝させると言うなら、それはとても豪胆なやり方だろう。

お父上そっくりだな。私は直接会ったことはないが、嫌いではない。」

 

バウアーの目指すところは、ダイクンの目指しているところに似ている。

何れは、地球連邦は宇宙に本部を置かなければならない…、それは彼とてわかっているが、流石にダイクンのそれは性急に過ぎた。

 

未だ100年と経っていない連邦は今、生みの苦しみに苛まれているのだと。耐える時期を耐え、後の世を見据える為には今はこそ安定に徹しなければならない。

そんな時に、戦争などという浪費をすべきではない。というのが彼の持論でもあったが、同時に連邦軍を解体するほど人間を信じ切ってはいなかった。

 

彼の後ろ盾には、ヤシマ家のパイプがある。

やはりその点はゴップと似通った物があるのか、セイラに対してもそれなりに理解していた。

 

「私はそんな大それた事は望んでいないわ。ただ、争いの芽になるような、そんな政策を推し進めればまた争いが起きる。

そうなった時、私が護りたいものを護れなかったら後悔するの。

それを繰り返したくない、だから彼等に意思を問うた。それだけよ。」

 

「そうですか……、何れにせよ私は貴女の敵ではない。無論味方になったつもりはないが…。

それともう一つ忠告です。貴女宛にこのような物が来ていますが、御心あたりは?」

 

それは何であろうか、幾つかのモノグラムがある。古い暗号のようだ。

 

「内容は貴女と接触を図りたいと言うこと、妖精が差出人の様だが…、まあこの手はよく知っています。海兵隊からでしたよ、ジオンの。」

 

セイラには身に覚えがない。だがきっと、アムロが接触した人物なのだろうことは、理解した。

ジオンの海兵隊、一年戦争時の大罪人をアムロが受け入れるのか?それとも、その大罪が欺瞞に満ちているものなのか?

 

「会ってみてはどうでしょう?貴女の身の安全は保証しますが?」

 

「嫌な人ですね、これを私が拒否できない事を知っているのでしょう?」

 

バウアーは口元をゆがめたが、彼は席を立ち上がり、再び帽子をかぶる。

 

「こちらとしては、そうして頂くと幸いです。」

 

部屋を出ていく彼の背を、セイラは遠巻きに見送る。

 

「面倒な事をよこしてくれたものね。でも…、アムロ。そんなにその人を信頼しても良いの?」

 

セイラは気にせずに、バウアーが置いていったそれを手に取って、思案し始めた。

 

一転してバウアーは部屋を出ると、案内されるルートで施設を見学して行く。

表向きの施設の監査をしつつ、孤児院にも寄ってみた。

 

普通の子供達は彼に対する警戒があったが、特別な子供達は彼に対してさほど、警戒する素振りを見せなかった。

お陰で彼の周りには子供達がたかり、彼は戸惑いつつも子どもたちの相手をする。

 

それを遠巻きに、思春期くらいの孤児達は幼い孤児達の散らかしたそれを片付けながら、彼を見ている。

孤児のなかで一番背の高い、黒髪の長い娘がお菓子を持ってくると、子供達は引き潮の如くバウアーから離れて行った。

 

帰り際、車のなかでバウアーは一人

 

「悪くはなかったな」

 

と独り言を呟いた。

 

 




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