白き流星の羽搏き   作:丸亀導師

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星の輝き3

戦いにおいて必要なものは何か?

それは古今東西、有りと汎ゆる場面において通ずる物がある。

 

それは士気だ。

 

どれ程強力な兵器が有ろうとも、どれ程頭の良い司令官が居ようとも、結局最後に物事を決するのは士気である。

どんなに強い武器・兵器を持っていたとしても、兵が逃げてしまえば意味はない。

兵が及び腰になっていては、進むものも進めない。

 

デラーズ・フリートの士気は決して低くはなかった、しかし高くもなかった。

当初、ジオンの大義をもって挙兵したと言う、そんな彼等の言葉は今では迷いの生ずるものとなっていたのだ。

 

セイラの、アルテイシアの言葉というものはそれ程にまで、デラーズ・フリートというものの基盤を軟弱にするには、充分な力があったのだ。

 

迷えば敗れる

 

優柔不断な判断は、時として思いがけない事故を起こし、当事者に不運を齎すものである。

決断というものは後先を考えてはいけない、だからこその決断なのだから……。

 

戦端は、アムロ・レイが切ることになった。

ガンダムℵFbはその機動力を持ってして、敵中のど真ん中を突き進むように一直線で、突き進む。

それを食い止めるべく、多くの機体が弾幕を形成しようとするも、尽くがまるで最初から当たらない事が分かっているかのように、躱されている。

 

「貴様…コレ以上先に行かせるわけには行かん!!!」

 

ガトーの駆るノイエ・ジールは、そんなアムロに立ち向かうべく、戦場に躍り出た。

彼の本来の目的は、星の屑成就の為に確実を喫する為に、連邦軍のソーラ・システムを破壊する事であった。

 

しかし、このままアムロを野放しにしていた場合、確実に前線は食い破られ瞬く間に、デラーズ・フリートは全滅する可能性すらある。

 

「純粋な殺意…いや、焦燥か。」

 

アムロは、自らに向けられるその敵意を敏感に感じ取ると、ノイエ・ジールから放たれるメガ粒子砲を、ヒラヒラと躱す。

その動きに一切の無駄はなく、AMBACを駆使してスラスターの出力を最小限抑えながら、その見事な動きは極技に達していた。

 

彼の脳裏にほぼダイレクトに伝わってくる殺意を、彼は一瞬に解析し、その動きはバイオセンサーを通して機体の僅かな機動に変換されていく。

それは、彼の操縦を更に研ぎ澄ましていく。

 

ノイエ・ジールという機体は巨体である。

それ故に、被弾の可能性は極めて高く実際、ガトーはその機体を被弾をしない為にスラスターを全開にして操縦している。

彼の顔は、加速Gによって引き攣り肉体には相応の負担がのしかかっている。

 

ノイエ・ジールのミサイルが発射される、其れ等は全てガンダムℵに向けられていた。

雨の如きミサイルの矢を、アムロは捌き続ける。

 

一瞬!!

 

アムロは、ビームライフルを放つとソレはノイエ・ジールに展開されている、Iフィールドによって弾かれる。

しかし、その軌道にガトーはより苦しく焦りを覚える。

 

そう、ビームのその軌道はノイエ・ジールのコックピット、その周辺に着弾しているのだ。

アムロの一射は、ガトーという人間一人に対して、確実に殺しに来ているという事である。

 

「ぐっ!、…ぬぅぅお゛お゛お゛お゛お゛!!!!」

 

ガトーは、声を振り絞り気合いを入れた。

 

「Iフィールドか……、ならやりようはある!!」

 

アムロは適確に、ガトーを追い詰めていた。

 

同じ頃、アムロが開けた穴に向けて、ニヴルヘイム及びトロイホース、アルビオンの各隊は侵入し、戦闘が始まった。

戦闘の進行として言うならば、大混乱のデラーズ・フリートを奇襲する形での戦闘となった為、初期は優勢であった。

 

この時のデラーズ・フリートはシーマ艦隊の離反に気がついたものの、部隊の士気の低下から迅速な行動が出来ていなかった。

アルテイシア・ソム・ダイクンの銀の御旗を掲げるシーマ艦隊は、其れ等を数の劣勢の中乱戦に持ち込んだのだ。

 

誰が敵で誰が味方か、デラーズ・フリート参加の部隊、そのIFFにはシーマ艦隊を、味方と表示し戦闘に躊躇する機体があった。

そんな機体をさも当たり前かのように、海兵隊は切り捨てていく…。

 

デラーズはその戦いとは名ばかりの虐殺に、額に血管を浮き出させていた。

 

「……ええい、動け! なぜ撃たんッ!! 目の前の敵は、ジオンを……我らの大義を汚す裏切り者なのだぞ!!」

 

グワデンのブリッジに、デラーズの怒号が虚しく響き渡りました。

大型モニターに映し出される戦況は、もはや組織的な艦隊戦とは呼べない凄惨な混迷を極めていた。

銀の鳳凰の紋章 を掲げ、死に物狂いで食らいつくシーマ艦隊。そして、その背後から「本物のダイクンの遺児」 が見守り、伝説の英雄 が先陣を切る。

 

「アレはまだか!!」

 

デラーズの怒号と

 

「準備出来ました!!」

 

その答えが来るのは、ほぼ同時であった。

その言葉に、デラーズはニヤリと口角を上げて手を打った。

 

その手拍子の奏でる音と共に、その巨体が途轍もない量のブースターと共に動き出した。

異形の化け物…、赤き巨体…ヴァル・ヴァロの姿がそこにあった。

 

 

 

 

シーマは部隊の一部と共に行動を行なっていた。

 

艦隊を2つに分け、一方をデラーズの方面にもう一方をコロニーのコントロールセンター。

即ち核パルスエンジンの防備とに分けたのだ。

 

シーマはこの時、ちょうど核パルスエンジンの防衛の指揮を担っていた。シーマがこの場を守備するのは、敵が来た場合自らが駆る、ガーベラ・テトラの機動力を存分に発揮し、片っ端から相手を撃墜しようという、捨て身の考えだ。

 

核パルスエンジンが使用不可能となった場合、既に地球への落下コースをとっている、アイランド・イーズの速度を上げて位置をずらすことすら出来なくなるのだ。

 

現在、デラーズの艦隊との戦闘を行っているが、全体的には押していた。

デラーズの艦隊は、その動きは決して良いものでは無かったが、万が一があると、後詰めに徹していたがその万が一がやって来たのだ。

 

自らが駆る、ガーベラ・テトラを動かしながら近付いてくる敵機を迎撃していくが、相手も中々に手練れであった。

 

「アクシズめ……、余計なものを持ち込みやがって!!」

 

ガーベラ・テトラの加速を振り切る程の加速性能と、その直進的な動き。

まるで、オニイトマキエイの様な外観を持つ機体。

それこそ、中々にお目見え出来ないレア物の姿があった。

 

ビグロマイヤー

 

ア・バオア・クーの攻防において実戦配備されたと言われる、MA(モビルアーマー)

その性能の特徴は、直線的な動きによって敵を強襲し、その火力によって敵艦や、重要拠点を攻撃するビグロ。その発展機である本機は、その出力とは裏腹に比較的小型なその身体を、存分に飛び回っていた。

 

防衛しているシーマにとって、最も厄介な相手であるのは言うまでもない。

 

『シーマ様、後10分持たせてください!!』

 

コロニーの軌道をそらす、その為にはコロニーを加速させる為に、核パルスエンジンを点火しなければならない。

 

「あいよ!」

 

コロニーの進行方向には地球がある。

加速のタイミングを誤れば、ソレは死出の旅となるだろう…。

しかし、加速しなければこのままコロニーは地球へと落下する。

 

「言うのは簡単だねぇ……!」

 

シーマの背中には汗が流れていた。

 

 

アムロの開けた穴を抜け、飛び込んだモビルスーツ部隊は交戦を続けながら、次第にデラーズ・フリートの中枢へと近接していた。

元来、デラーズ・フリートのモビルスーツ総数はそれ程多くはなく、連邦軍が本気で排除しようとするならば、片手間に吹き飛ぶだろう。

 

しかし、そうならなかったのはそれこそ、アルテイシアに処理を頼み互いに潰しあいをさせる為に他ならない。

だが、戦闘の状況は部隊数と一転して、デラーズ・フリート側は劣勢に立たされていた。

 

シーマ艦隊からの奇襲を受け、混乱に陥っていたデラーズ艦隊は、ちょうど挟撃される形で、迎撃戦を行わなければならなかったのだ。

 

その中を、一機の白いモビルスーツが飛ぶ…。

金の衣裳を施されたソレは、アルテイシアのセイラの機体。ブロッサム・ミデン。

ミデンは、スルスルと弾幕を抜けつつ反撃を行って、攻撃してきた相手を容赦なく撃ち落とす。

 

既に彼女の目の前には、デラーズの艦隊本隊の姿が見えていた。

 

「各機もう一押しよ、気を引き締めて。」

 

機体を操りながら、そう言って士気を高めようとする。

大将自らが前線に出て奮迅する姿は、実に勇ましく見えるもの。シーマ艦隊のゲルググMのパイロットもまた、そんな姿を戦い方をする彼女に関心を持っていた。

 

『そこの方、シーマ・ガラハウはどちらにいるかご存知?』

 

ふと声をかけられた。

凛としたセイラの声は、それこそマイク越しでもよく透き通って、ゲルググMのパイロットは悪い気はしなかった。

 

「はい、シーマ様は現在、核パルスエンジンの防衛に当たっております。」

 

「そう!!ありがとう……。

クリス!シュマイザーには、私はシーマの方へと向かったと伝えておいて!」

 

クリスのGキャストは、ハンドサインを送るとセイラはミデンを加速させた。

一方で、残されたクリス等その他の部隊員は、デラーズ・フリートを相手取り有利に事を推移させていたが……、不意に何か巨大なものが姿を現した。

 

「なんだ…アレは!!」

 

コウは口走った。

そう!!この世界線では、コウはヴァル・ヴァロとの交戦を経験していないのである!!!

 

――――――

 

 

ヴァル・ヴァロは、一年戦争末期ビグロの改良型として開発された、多用途MAである。

本来、MAとは宇宙や水中などの限られた空間で、限定的な目的の為に造られた。

強力なジェネレーターと、其れ等から裏打ちされる強力な武装によって、強襲用や防衛用等と役割を限定される事が多い。

しかし、このヴァル・ヴァロは例外である。

 

ヴァル・ヴァロは、機体に取り付けられた大推力のブースターと、口吻の大型メガ粒子砲によって敵艦、敵要塞に対して強襲的な攻撃を行えると同時に、プラズマリーダーと呼ばれる装置。

アッザムリーダーの改良版を使用しながら、近接はクロ―によって敵MSを絡め取り、撃墜する事も想定されているのだ。

 

 

――――――

 

 

巨大なMA……ヴァル・ヴァロである!!

 

その巨体は、その強大なスラスターを力いっぱい使う事により、急加速を始めた。

 

「ウラキ少尉、援護お願い!」

 

クリスがそう叫ぶが、そんな言葉を待つより先にウラキの身体は動いていた。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

 

GP01Fb(ガンダム試作1号機 フルバーニアン)のスロットルをめいいっぱい引き絞り、彼はヴァル・ヴァロへと突貫した。

 

「ウラキ少尉、深追いはしないで!」

 

クリスの叫びも、加速するGP01Fbの爆音にかき消された。コウ・ウラキは、目の前の巨大な「赤」に目を奪われていた。

ヴァル・ヴァロ。その巨大なクローが、まるでもがく獲物を求めるように虚空を掴む。

 

『ハハハッ! 逃がさんぞ、連邦のガンダム!』

 

ヴァル・ヴァロから放たれたのは、三基の特殊ポッド。プラズマ・リーダーだ。

空間に展開された電磁網が、GP01Fbの電子機器を狂わせる。火花がコクピット内で散り、コウの視界がノイズで埋まった。

 

「……くっ! 動け、動いてくれ!」

 

「ウラキ少尉、離れて! 撃ち抜くわ!」

 

後方から、クリスの操るオーガスタ製ザクが援護射撃を開始する。1450kwの高出力を誇るジェネレーターを背景に、精密に調整されたビーム・ライフルがヴァル・ヴァロの装甲を焼く。

だが、ヴァル・ヴァロは巨体に似合わぬ機動でそれを回避し、今度はクリスへとその大型メガ粒子砲を向けた。

 

一方、アイランド・イーズの基部。

シーマ・ガラハウのガーベラ・テトラは、満身創痍であった。ビグロマイヤーの直線的な強襲は、一撃が致命傷になりかねない。

 

「ちっ……! まとわりつきやがって! あたいの寿命を削るんじゃ……」

 

シーマの呟きを遮るように、ビグロマイヤーがメガ粒子砲のチャージに入る。逃げ場はない。

だが、その射線を横切るように、純白の閃光が走った。

 

ブロッサム・ミデン。アルテイシア(セイラ)の駆る機体が、高出力のビーム・ライフルでビグロマイヤーの推進器を一撃で貫く。

 

「……お姫様!? 随分とお早いお着きじゃないか!」

 

『お待たせしました、シーマ中佐。ここからは私が引き受けます。貴女はエンジンの再点火に集中してください!』

 

セイラの声は、戦場にあってなお、湖面のように静かであった。

彼女のニュータイプとしての感覚が、ビグロマイヤーの「次」の動きを捉える。加速する敵機を、ブロッサム・ミデンはまるで誘い込むように迎え撃つ。

 

「ハッ! 恩に着るよ、お姫様! ……野郎ども、聞いたかい! あと8分だ! 死んでもエンジンを回しな!!」

 

その頃、戦場の中心部では、アムロ・レイがガトーを完全に圧倒しつつあった。

ガンダムℵFbは、ノイエ・ジールの巨大な火線を、まるで針の穴を通すような精密さで潜り抜ける。

 

「ガトー、貴方の言葉に迷いがある。アルテイシアさんを見て、自分の『正義』が揺らいでいるんだ!」

 

『黙れ……! 黙れッ、アムロ・レイ! 私の魂は、デラーズ閣下と共に……ジオンの理想と共にあるのだぁッ!!』

 

ガトーの叫び。ノイエ・ジールのクロー・アームがガンダムℵを捕らえようとする。

だが、アムロは機体の簡易サイコミュを通じて、ガトーの「殺気」の拠り所を正確に感知していた。

 

「……そこだ!」

 

アムロのビーム・ライフルが放たれる。ノイエ・ジールのIフィールドはその必殺の一撃を受け止める。

 

次の瞬間

ガンガンガン!!

とけたたましい音が装甲を伝わって、コックピットに座るガトーに振動を感じさせた。

 

そして小規模な爆発とともに、機体そのものの推力が一挙に低下していった。

 

「いったい何が起こった!!」

 

ガトーに知覚できないほどの、一瞬の隙。

アムロは、盾に隠していたレールガンを4発速射したのだ。

実弾兵器であるレールガンは、その初速は宇宙空間ではそれ程速いものではない。

機体を急加速すれば、簡単に避けることが出来るだろう。

 

しかしそれは、ロックオンアラートが感知出来るセンサー検知の視覚が頼りとなる。

アムロはその死角を見事に看破したのだ。

 

そしてそれは、ノイエ・ジールの装甲を破壊するのではなく、その動力パイプの接合部を正確に撃ち抜いた。

巨体が、一瞬の硬直を見せる。

 

「チェックメイトだ、ガトー……!?まずい!!」

 

アムロは何かを感じ取ると、機体を急激に加速させ核パルスエンジンの、シーマのいる方向へと機体を向けた。

 

まるで自分等眼中にないのか、アムロに対するぶつけようが無い怒りと、無力感がガトーを襲う…。

 

「こんなところで……、私はまた恥を!!」

 

あとに残されたのは、推力を失い戦う力を失ったノイエ・ジールだけであった。

 

 

 




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