白き流星の羽搏き   作:丸亀導師

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最後の最後

西暦、某年。

 

人類が長きにわたって使用してきた暦がその役割を終え、新たなる時代への扉が開かれようとしていたその日。

地球上の特権階級が住まうであろう、豪奢で巨大な邸宅のリビングルーム。壁一面を覆うほどに巨大な薄型スクリーンには、漆黒の宇宙と、青く輝く巨大な地球、そしてその中間に浮かぶ、人類の新たな叡智の結晶が映し出されていた。

 

トーラス(円環)型の巨大なスペースコロニー。新たなる時代、宇宙移民の幕開けを象徴するために建造された地球連邦政府の首相官邸――『ラプラス』である。

巨大なリングの周辺には、それを警護するための小さな小さな哨戒用の宇宙艇が、まるで蛍のように幾つも浮かび、銀色の軌跡を描いている。

 

その歴史的な光景を、画面の外から食い入るように見つめている一人の青年の姿があった。

彼はまだ10代の半ば。本来ならば世の複雑さや政治の薄汚さなど知る由もない、純粋な好奇心と希望だけで構成された年齢である。彼はまるで、初めて空飛ぶ鳥を見た幼い子供に戻ったかのように、瞳をキラキラと輝かせ、その光景を脳裏に焼き付けていた。

 

「すごい……」

 

青年は、傍らに立つ父親を見上げて、弾んだ声で言った。

 

『コレからは宇宙の時代だ……! 俺は学校を出たら、地球連邦を支える仕事がしたい。宇宙へ行く人たちを、この手で支えるんだ』

 

仕立ての良いスーツを着た父親は、青年のその真っ直ぐな言葉に目を細め、誇らしげに頷いた。

 

『ああ。お前の言う通りだ。これからの人類は、重力を振り切り、あの星の海で新たな可能性を築いていく。お前がその一翼を担うというのなら、父さんにとってこれ以上嬉しいことはない』

 

父と子の間に流れる、穏やかで希望に満ちた時間。

画面の中では、華やかな式典が進行し、地球連邦政府の初代首相が演説の壇上に立っていた。

 

全世界、全宇宙の回線がその一点に集中する。首相の口から、人類の過去への反省と、未来への大いなる祈りが語られ、そして――新たなる時代の名が、高らかに叫ばれた。

 

その瞬間、人々の期待と希望は最高潮に膨れ上がった。

誰もが、争いのない平和な宇宙の時代が到来したのだと信じて疑わなかった。

しかし、その無邪気な期待は、文字通り「一瞬」にして崩壊する。

 

――閃光。

 

音はなかった。ただ、画面の中のラプラス官邸が、太陽がそこで生まれたかのような強烈な白い光に包まれた。

次の瞬間、巨大なトーラス型の建造物は内側から無惨に弾け飛び、引き裂かれた金属の破片と、数え切れないほどの「人命」だったものが、無重力の虚空へと無言のまま散華していった。

テロリストによる爆破。

新時代の象徴は、新たな血の歴史の開幕を告げる祭壇へと変貌した。

 

「……あ……」

 

青年の喉から、かすれた音が漏れた。

瞳に映っていた希望の光は完全に消え失せ、代わりに、宇宙の絶対的な冷酷さと、人間の果てしない悪意が、深く、黒く刻み込まれた。

 

ザァァァァァァッ……!!

 

突如として、激しい砂嵐(ノイズ)が視界と聴覚を真っ白に塗り潰す。

そして、それが引いた後。

 

青年は、20歳になっていた。

かつてラプラスの惨劇を目撃したあの少年は、少しだけ頬の線が細くなり、瞳の奥には何処か悲哀を帯びた思索の色を宿す大人へと成長していた。

彼は、日差しの差し込む静かな病院の一室にいた。

パイプ椅子に腰掛け、ベッドで身を横たえる一人の女性――彼と同い年の、愛する妻の手を、祈るように両手で包み込んでいる。

白いシーツの下、彼女のお腹は生命の重みでふっくらと大きく膨らんでいた。

青年は、妻の穏やかな寝顔を見つめながら、ひどく優しい、それでいてどこか切実な響きを帯びた声で微笑みかけた。

 

「この子の名前は、ジオンだ。……聖なる地(シオン)から貰ったよ。この子には、偉大な人になって欲しいからね」

 

ジオン。

それは、彼がこの絶望に満ちた世界に見出した、たった一つの希望の響きだった。

女性は目を細め、少しだけ困ったように微笑んで、ゆっくりと首を横に振った。

 

「偉大になんて、ならなくていいわ。……この子が、ただ健康に、大きく育ってくれれば、私はそれだけでいいの」

 

母親としての、あまりにも純粋でささやかな願い。

だが、男は妻のその手をさらに強く握りしめ、自らの内に燻る「思想」を、まるで懺悔のように語り始めた。

 

「……あの日、僕は見たんだ。人類の希望が、一瞬で宇宙の塵になるのを。人間は、どこまでも残酷になれる。だけど……だからこそ、僕は地球と、そして宇宙を、誰もが等しく幸せに生きられる場所にしたいんだ。争いも、憎しみもない、本当の楽園に。……この子には、その新しい世界を歩いてほしいんだ」

 

女性は、黙って男の顔を見つめ返した。

彼の瞳の奥にある、狂気にも似た強迫観念。ラプラスの光に焼かれた日から、彼がどれほどの絶望と闘い、そしてどれほどの理想を自らに課してきたかを、彼女は誰よりも知っていた。

 

偉大になってほしい。それは我が子への過剰な期待ではなく、この残酷な世界に対する、彼なりの精一杯の反逆なのだと。

女性は、そんな不器用で、悲しいほどに優しい彼のことが、心底好きだった。

 

時は流れ……。

彼が「偉大になれ」と願った子供は、父親の愛情と呪縛を一身に背負いながら大きくなり、やがて20歳になった。

男は、初志を貫き、地球連邦の議員となっていた。

 

青年時代に抱いた「誰もが幸せになれる場所を作る」という理想を胸に、彼は腐敗しきった連邦議会の中で、孤独な改革の闘いを続けていた。

しかし、現実は彼の理想を嘲笑うかのように重く、そして厚かった。

 

ラプラス事件以来、地球連邦の議員たちは「宇宙」という存在に対して、病的なまでの恐怖を抱くようになっていた。

彼らは理解してしまったのだ。どれほど巨大で強固な建造物を宇宙に作ろうとも、テロリストが仕掛けた「たった一つの爆弾」の、ほんの些細な起爆の連鎖だけで、数万の命が真空に放り出されて死ぬということを。

宇宙は、人間が住むにはあまりにも脆く、危険な死の世界である。

 

その恐怖は、特権階級を強固な地球至上主義へと走らせた。彼らは安全な地球の重力にすがりつき、宇宙へ追いやった棄民たちの自治や権利の拡大など、決して認めようとはしなかった。

それでも、男は食い下がった。

 

宇宙に住む者たちも同じ人間だ。彼らを搾取し、対話を拒絶すれば、いずれ第二、第三のラプラス事件が起きる。そう議会で叫び続けた。

 

男の子供――ジオンは、そんな泥まみれになりながらも決して理想を曲げない父親の広い背中を見て、成長した。

父の苦悩、父の孤独。そして、父を嘲笑う地球の重力に魂を縛られた大人たちの醜悪さを、若きジオンは静かに、しかし決定的な冷徹さをもって観察していた。

 

やがて子供は、父と同じ政治の世界へと足を踏み入れた。

親の地盤や議席を継ぐという安易な道は選ばなかった。自らの足で這い上がり、圧倒的なカリスマ性と弁舌で、若くして連邦の議員となったのである。

 

男は、自身が成し遂げられなかった改革を息子が引き継いでくれるかもしれないと、密かな期待を抱きながら自身の議員活動を続けていたが、連邦の分厚い壁は、依然として微動だにしなかった。

 

そして、子供は悟った。

 

『父さん。この地球(ここ)にいては、何も変わらない。彼らの魂は、重力に引かれて沈む一方だ』

 

息子は、ついに腐敗しきった連邦議会に見切りをつけ、漆黒の宇宙へと飛び出していった。

彼が向かったのは、地球から最も遠い月の裏側、サイド3。

 

それが、ジオンが自らの目で選び取った「道」であった。男は、去りゆく息子の背中を止めることはしなかった。いや、止められなかった。かつて自分が「偉大な人になれ」と名付けたその呪いが、息子を地球から引き剥がしたのだと、痛いほどに理解していたからだ。

 

息子は宇宙で、己の思想を説いた。

地球という揺り籠から自立し、宇宙環境に適応した新たなる人類の革新。

 

その言葉は、連邦に搾取され、絶望の淵にあったスペースノイドたちの心に火をつけ、狂信的なまでの熱狂を生み出した。彼は民衆を扇動し、バラバラだった一つのサイドを一丸の国家へとまとめ上げていった。

 

男の息子は、ついに「偉大な指導者」となったのである。

 

しかし。

運命は、ラプラスのあの日から、何一つ変わってなどいなかった。

独立を宣言しようとしたその日。

熱狂する数百万の民衆を前に、演説の壇上に立った男の子供は――。

 

突如として胸を掻きむしり、その場に崩れ落ちた。

暗殺。毒殺。あるいは過労。真実は闇の中だが、結果は一つであった。

 

男の息子、ジオンは、その高揚の頂点で、あっけなく命を散らしたのだ。

地球でその映像を見ていた男は、声を上げて泣き叫んだ。

画面の中で動かなくなった息子の姿に、かつて一瞬で消え去ったラプラス官邸の光がフラッシュバックする。

 

『違う! 私は、お前を争いの火種にするために、その名を付けたわけじゃない! 私はただ、お前と一緒に、誰もが幸せになれる世界を……!』

 

男の顔は、どうしようもない悔しさと、絶望の涙でぐしゃぐしゃに歪んでいた。

自らの理想が、自らが名付けた「ジオン」という名が、やがて地球圏すべてを巻き込む血みどろの戦争の旗印となることを、この時の男はまだ、知る由もなかった。

 

深い、深い絶望の闇が、男の意識をどん底へと引きずり込んでいく。

 

ピッ……ピッ……ピッ……。

一定の間隔で時を刻む、ひどく無機質で聞き慣れた機械音。

その音に引かれるように、重い重い目蓋が、ゆっくりと持ち上がった。

視界に飛び込んできたのは、無地の真っ白な天井だった。

消毒液の匂い。腕に繋がれた点滴の管。

そして、傍らで規則的な電子音を鳴らし続ける心電図のモニター。

 

(……ああ。私は……)

 

男は、自らが病院のベッドに横たわっていることを、ひどく緩慢な思考の中で理解した。

しわくちゃになった己の手のひらを見つめる。

20歳で妻の手を握ったあの日の若さは、もうどこにもない。そこにあるのは、絶望と後悔に塗れて老いさらばえた、一人の老人の手であった。

 

(……夢、か。いや……)

 

「……すまない。……すまなかった、ジオン……」

 

男は、自らの嗚咽で意識を浮上させた。

鼓膜を打つのは、長く平坦な電子音ではなく、規則的で無機質な心拍を刻み続けるモニターの音だった。

 

死の淵を彷徨う脳が見せた、残酷な走馬灯。あるいは、一生背負い続けなければならない地獄の記憶。自らの理想を押し付け、愛する息子を宇宙の毒牙へと放り込み、死地へと赴かせた己の罪の残滓。

 

男の瞳からこぼれ落ちた涙は、幾重にも刻まれた深い皺を伝い、真っ白な枕を濡らしていた。

男はまだ、死ぬ事は許されていなかった。

 

あの日、地球の重力に縛られたまま息子の訃報を聞いた時から、彼の時間は止まっている。いや、止まった時間の中で、肉体だけが理不尽に老朽化していくという、無間地獄のような刑罰を受け続けていた。

 

それが、息子を宇宙の神輿として死なせた、自らへの懺悔であるかのように。

 

 

宇宙世紀0085年。

 

病室のベッドに横たわるその身体は、もはや枯れ木のように痩せ細り、自力で寝返りを打つことすらままならない。

 

彼は、地球連邦議会における最長老の一人であり、かつては宇宙移民政策の根幹に関わった重鎮であった。しかし今の彼は、議会の壇上に立つことすらできず、ただ生命維持装置の管に繋がれて生き長らえるだけの、哀れな老人に過ぎない。

 

連邦の若手議員や、ティターンズに阿る腐敗した政治家たちは、彼が早く死ぬのを待っている。彼が握りしめている「議席」と、それに付随する古き良き時代の権威をハイエナのように奪い取るために。

 

だが、男はその議席を、誰にも与えるつもりは無かった。

身体が腐り落ちようとも、どれほど周囲から老害と疎まれようとも、彼がこの地球の特権階級の椅子にしがみついているのには、彼なりの意地と、醜い執着があった。

 

(……私は、俗物なのだよ、ジオン)

 

男は、濁った瞳で病室の白い天井を見つめながら、心の中で死んだ息子に語りかけた。

 

お前は、宇宙という無限の暗闇の中に、人類の新しい光(ニュータイプ)を見出した。重力を振り切り、私情を捨て、全人類の革新のためにその命を捧げた。

 

だが、父親である私は違った。私は地球の土の匂いに執着し、連邦という巨大な権力の椅子に執着し、お前が死んだ後も、こうして泥水をすすりながら生き延びている。

 

私は、お前のように気高くはなれなかった。どうしようもない俗物として、この地球の重力に魂を縛られたまま、朽ちていく運命なのだと。

 

それでも。

 

俗物には俗物なりの、捨てきれない未練があった。

男の脳裏に、一つの美しい金髪の少女の面影が浮かび上がる。

唯一の肉親。死んだ息子が遺した、ダイクンの血を引く正統なる孫娘。

 

現在、アルテイシアという名を隠し、セイラ・マスとして地球圏の経済と影の政治の世界で台頭しつつある彼女。

男は、彼女の動向を密かに追い続けていた。彼女がオーガスタ研究所を支援し、孤児たちを救い、連邦の闇と戦おうとしていることも、朧げながら把握している。

 

(あの子が……私の後に座ってくれたなら)

 

そう思わない事は、この数十年、一度たりともなかった。

自らの手は既に汚れきっている。だが、もしアルテイシアがこの病室に現れ、自らの議席と、それに連なる連邦内部の旧保守派のネットワークを受け継いでくれるというのなら。

 

そうすれば、息子が掲げた理想と、自分が地球で守り続けてきた現実が、ようやく一つの線で繋がるのではないか。この無様な延命にも、最後にして最大の大義が生まれるのではないか。

それは、孤独な老人が抱く、あまりにも身勝手で、甘美な妄想であった。

 

コンコン、と。

 

静寂に包まれた特別病室の扉が、控えめにノックされた。

男の専属の秘書が、一枚の暗号化されたデータパッドを手に、足音を忍ばせて入ってくる。

 

「……先生。極秘の面会要請が入っております。軍の回線を幾重にもダミーで経由した、最高度の秘匿通信です」

 

秘書の言葉に、男の枯れ果てた身体の奥で、心臓が大きく跳ねた。

軍の回線を誤魔化してまで、この死に損ないの老人に接触を図ろうとする者。

 

(……来たか)

 

男の脳裏に、アルテイシアの顔が閃いた。

ついに彼女が、身を隠すのをやめ、連邦という表舞台の権力を取りにきたのだ。祖父であるこの私の元へ、力を求めてやってきたのだ。

 

「……読め」

 

酸素マスク越しに、掠れた声で命じる。

秘書は恭しく一礼し、データパッドのロックを解除して、そこに記された短いテキストを読み上げた。

 

「発信元は、北米シャイアン基地……地球連邦軍第13外郭独立艦隊。……面会を求めているのは、同部隊所属、アムロ・レイ大尉です」

 

その名を聞いた瞬間。

男の胸の中に膨らんでいた期待の風船は、音を立てて萎んでいった。

 

アルテイシアではなかった。血の繋がった孫娘からの、和解と継承の申し出ではなかった。

なんだ、軍部の人間か。それも、今連邦内部で厄介者扱いされているという遊撃部隊の若造ではないか。

一瞬の落胆が、男の全身を重い鉛のように沈ませた。所詮、自分は誰からも見捨てられた過去の遺物。孫娘でさえ、この薄汚れた祖父の手を借りる気などないのだと。

 

だが。

 

落胆の波が引いた直後、男の思考の深淵で、その「名前」が持つ真の重みが、ゆっくりと、しかし確かな熱を持って発火し始めた。

 

――アムロ・レイ。

 

一年戦争において、連邦の白いモビルスーツを駆り、ジオン公国という名の怪物を打ち倒した英雄。

そして何より、男の息子……ジオン・ズム・ダイクンが提唱した「ニュータイプ」という存在の、最も純粋にして究極の体現者。

息子の思想が生み出したジオン公国という呪いと真っ向から戦い、宇宙の意思をその身に宿しながらも、今なお地球連邦という組織の中で足掻き続けている青年。

 

ザビ家の独裁に歪められる前の、息子が本当に夢見た「人類の革新」の光を、その瞳に宿していると言われる男。

 

(……あの、アムロ・レイが。私に、会いたがっている……?)

 

なぜだ。

ニュータイプの象徴である彼が、なぜ、ニュータイプの思想を生み出した男の、ただの俗物である老いた父親に会いに来る必要がある。

 

政治的な裏取引か? ティターンズへの牽制か?

いや、違う。アムロ・レイという男は、そのような権謀術数のために動く人間ではない。

彼には、どうしてもこの私に問わねばならない「何か」があるのだ。

 

宇宙の未来を、これからの時代を背負って立つあの若者が、過去の象徴であるこの私を、必要としている。

 

「…………っ」

 

男の濁りきっていた瞳に、突如として、熾火が風を受けて燃え上がるような、強烈な光が灯った。

それは、死を待つだけの老人の目ではなかった。歴史の転換点において、己が果たすべき最後の役割を見出した、一人の政治家の、そして一人の「父親」としての執念の光であった。

 

息子よ。

 

お前が残した思想は、呪いとなってこの宇宙を血で染めた。

だが、その血の海の中から、お前の理想を正しく受け継ごうとする一人の若者が、私に会いに来ようとしている。

俗物には俗物の、意地の見せ方がある。

 

「……面会を、許可しろ」

 

男は、酸素マスクを自らの震える手で引き剥がし、秘書に向かってハッキリとした声で命じた。

喉から血の味がした。だが、心地よかった。

 

「極秘裏に、彼をここへ通せ。……連邦の監視網をすべて欺いてでもだ。誰にも邪魔はさせん」

 

それは、男に与えられた最後の機会であった。

息子を死地へ追いやった罪を雪ぐため。そして、地球と宇宙の間に横たわる深い断絶の歴史に、最後の一石を投じるため。

静まり返った病室の中で、老人の止まっていた時計の針が、微かな、しかし確かな音を立てて、再び動き始めていた。

 

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