ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第96話『PHASE-37『アスラン2』』

 オーブ近海で艦隊を展開していた連合軍艦の中で、ブルーコスモスの盟主ムルタ・アズラエルは静かにその時を待っていた。

 手元の端末に展開されているのは、今回アズラエルが連れてきたパイロット達のデータである。

 

 生体CPUとして調整する筈であったが、彼らの情報を知ったキラとセナが、アズラエルが視察中にロドニアのラボへ押しかけ、今すぐ非人道的な研究を止めろ! と大騒ぎしたのだ。

 その結果、研究員たちは世界に知られる事を恐れ、研究は比較的人道的な物へと移って行った。

 

 結果として、アズラエルが望む様な優秀なパーツとなる事は無かったが……彼ら自身の感情が強く出ている事で、想定とは違う方向で能力が伸び、それなりに満足する結果となっている。

 無論それもキラとセナがナチュラル用のOSを作った事と、二人の戦闘データが良い訓練になったから……というのもあるワケだが。

 

「彼らは使えそうですかな?」

「あぁ。勿論だよ。サザーランド大佐。闘争心は十分に高まっている。何せ、あの子達を殺した国だからね。数値上はかなり高いよ」

「それは素晴らしい。艦隊も士気はかなり高いですし。もしかするとアレは必要なかったかもしれませんな」

「まぁそれはそうなんだけどさ。せっかくだしね。それに、アレを動かしてる子。実はかなり数値が高いんだよね」

「なんと……! まだ幼い子供だと聞いていましたが」

「あぁ。才能って奴かな。もしくはキラやセナとの姉妹ごっこのおかげか。とにかく良いデータが取れそうだし。適当に暴れさせよう。どうせ、何がどうなっても良い国だしね」

「マスドライバーとモルゲンレーテはよろしいので?」

「そうだね。別に第一目標じゃないよ。運よく残ってたら使う。その程度で良いんじゃない?」

「承知いたしました。では焦土作戦ですな。我らの怒りを見せつけてやるとしましょう」

「うん。プラントの前に前哨戦だ。しっかり気合を入れていこう」

 

 サザーランドと軽い調子で話をしていたアズラエルに、伝令が駆け寄ってきて一枚の紙を渡す。

 アズラエルはそれを広げながら整った眉を片方上げるのだった。

 

「要求は不当なものであり従うことは出来ない。オーブ連合首長国は今後も中立を貫く意志に変わりはない」

「……」

「さて。これがオーブの遺言って事で良いのかな。じゃ。大佐。時間になったら始めましょうか」

「承知いたしました。全艦! 戦闘準備!」

 

 そして、アズラエルはサザーランドに指示を出してから、手元の端末で今か今かと出撃を待っている者たちへ通信を繋げる。

 

「さて……あー、君たち? 聞こえてるかい?」

『あん?』

『あぁ?』

『はい。聞こえてますよ』

 

「予定通り、オーブを討つ事になった。後は頼むよ」

『全部壊しちまって良いんだろ?』

『ですね』

『……キラと、セナを裏切った国……!』

 

 怒りを滲ませながら闘志を高めてゆく三人を見て、アズラエルは昏い笑みを浮かべてから手元の時計を見た。

 そこに示されていた時刻は開戦の時間……。

 

「時間です! さぁ、はじめましょう!」

 

 そして、アズラエルの言葉を合図として連合軍はオーブに対し、全戦力を向けるのだった。

 しかし、オーブもただで負ける事は出来ないと、迎撃部隊を発進させこれの迎撃に当たる。

 

 

 オーブ近海で戦闘が開始された頃、地球軌道上に存在するオーブ連合首長国が所有する宇宙ステーション『アメノミハシラ』では、格納庫でロンド・ギナ・サハクがミナに降下ポッドの準備をさせながら、その時を待っていた。

 オーブを護る為、打てる手は全て打つ。

 その為に、彼らを『アメノミハシラ』へと呼び寄せたのだ。

 

「おーう! 邪魔するぜー!」

「すまない。少々遅れた。オペレーション・メテオの影響か、連合軍もかなり警戒している様だ」

「ん? 劾! 劾じゃねぇか!」

「ロウ。お前も呼ばれていたのか」

「いや、俺はキラに頼まれただけでなっと」

 

 ジャンク屋ロウ・ギュールと、傭兵部隊サーペントテールの叢雲劾。

 二人は久しく会った友の様に言葉を交わしていたのだが、ギナの切迫した空気にすぐ口を閉じ、ギナへと視線を向けた。

 

「よく来たな。ジャンク屋も……ついでだ。話を聞いて行け」

「おぅ」

「あぁ。依頼があると聞いた」

「そうだ」

 

 ギナは椅子から立ち上ると姿勢を正したまま二人の前に行き、そして静かに頭を下げた。

 その光景に、ギナの双子であるロンド・ミナ・サハクも、格納庫で降下ポッドの準備をしている作業員たちも、皆目を見開いた。

 

 あのプライドの塊の様な男が……まさか、頭を下げるとは思ってもみなかったのだ。

 

「どういうつもりだ?」

「我の依頼はただ一つ。オーブ防衛戦に参加して貰いたい」

「オーブ防衛戦……?」

「って事は連合が攻めてきたのか?」

「あぁ。既に地上では争いが始まっている。だが、戦力が足りん! オーブを守る為には!」

 

 ひたすらに頭を下げ続けるギナに、ロウは軽く笑いながら頷いた。

 

「分かったぜ! キラからも頼まれたからな! あの降下ポッドで地上に降りれば良いんだろ? 作業を手伝ってくるぜ!」

「俺も問題はない。既に料金も受け取っている。仲間も、オーブからの脱出戦の護衛についている筈だ」

「なに……?」

「セナ姫から依頼があった。お前が頭を下げる必要はない。俺も、オーブを守る為にここへ来た。姫にはいくつか借りもあるからな」

「……そうか。では遠慮なく、力を借りるとしよう」

 

 ギナは顔を上げながら、複雑な気持ちを抱えた顔で頷く。

 そして、そうであるならばと急ぎ二人のモビルスーツを降下ポッドへと乗せるのだった。

 

 それからさほど時間をかけずに、レッドフレーム、ブルーフレーム、ゴールドフレームを乗せた機体は地上……オーブへ向けて射出された。

 

 

 そのころ地上では。

 軍本部にて、オーブ全域を観測していたオペレーターが悲鳴の様な声を上げていた。

 

「地球軍の戦力増加中!大型 輸送機が接近中! モビルスーツを搭載していると思われます! 数20!」

「えぇい! アスラン達を向かわせろ! ムラサメは!」

「カガリ様! 上空より熱源! 降下ポッドです!」

「何!? まさか宇宙からの増援か!?」

「いえ……これは、識別コード! アメノミハシラ! 友軍です!」

「来たか! ロンド・ギナ・サハク!」

 

 軍本部で叫ぶカガリの声に応える様に、ZAFTが使っていた降下ポッドを改造したオーブ製の降下ポッドが四方に割れ、中から三機のモビルスーツが現れる。

 三機のアストレイはそれぞれにメインカメラを光らせながら起動し、すぐ近くにあった大型輸送機に襲い掛かり、オーブへ降りようとしているモビルスーツを端から破壊してゆくのだった。

 

『なに!? こんな上空にモビルスーツだと!? うわぁっ!』

 

「劾! ロウ! まずは航空戦力を潰す! 一機たりとも地上に降ろすな!」

『了解した!』

『分かったぜ!』

 

「カガリ・ユラ・アスハ! 聞こえるか!? 状況はどうなっている!」

『まだ持ちこたえている! モビルスーツ部隊! 指揮はどうする!?』

「貴様に任せる! 我は、恥知らず共の排除に全力を注ぐ!」

『分かった! 死ぬなよ!』

「ふっ……誰に言っているのだ。今の我に勝てる者などいない!!」

 

 ギナはカガリの言葉に小さな笑みで返し、連合軍の量産型モビルスーツ『ストライクダガー』と輸送機を次から次へと破壊してゆくのだった。

 ギナ達が空を押さえた事もあり、オーブは上空から襲い来る脅威を排除する事に成功した。

 

 

 しかし、オーブ軍の正面には、最も凶悪な脅威が暴れていたのであった。

 

『GAT-X131:カラミティ』

『GAT-X252:フォビドゥン』

『GAT-X370:レイダー』

 

 連合軍がGのデータを元に新しく開発した第二世代GAT-Xシリーズである。

 彼らは圧倒的に強化された性能で、二コル達第一世代GAT-Xシリーズを圧倒していた。

 

『二コル!』

『マズいですよ! ディアッカ! 追い込まれている!』

『んな事言ってもよ! オッサン!』

『オッサンじゃない! だが、コイツらがオーブに行ったらおしまいだ! 踏ん張るぞ!』

『んな事言ってもよぉ!』

 

 連合軍の新型モビルスーツは、連携こそしていないが個々の戦力が飛びぬけており、機体の性能差もあって、ムウたちは少しずつ追い詰められていった。

 そして、その隙にレイダーというモビルスーツが戦闘機の様なモビルアーマー形態に変形して三人の間を通り抜けてしまった。

 

『しまった!』

『狙いはアークエンジェルか!』

 

 ムウは急いでレイダーを追おうとエールストライクで向かおうとするが、それを牽制する様にカラミティのビーム砲がストライクを狙う。

 咄嗟にムウはそれを回避したが、レイダーを追いかける事が出来なくなってしまった。

 

 

『終わりだ! 白い奴!』

 

 そして、レイダーを操っていたパイロット。クロト・ブエルが叫びと共にアークエンジェルへ突撃しようとしたのを、上空からやってきたモビルスーツが蹴り落とす。

 

『はぁっ!?』

「アークエンジェルは、やらせない!!」

『なんだぁー!? お前! 邪魔すんなよ!』

「連合の新型……! 結局キラとセナの願いは、踏みにじられるのか! だが!」

『お前から落ちろ!』

「それでも俺は!!」

 

 レイダーが空中で静止しながら『100mmエネルギー砲:ツォーン』をモビルスーツの頭にある口の部分から放つが、それをアスランはムラサメを高速変形して急加速する事でかわし、レイダーの上空に移動して太陽を背にしながら落ちる様にレイダーへと迫った。

 そして、ビームサーベルを抜きながら、レイダーの腕に装備されていた『短距離プラズマ砲「アフラマズダ」』へとビームサーベルを突き刺す。

 

「戦うんだ! キラ達の守りたかったモノの為に!」

 

 腕から火花を散らしながらレイダーは後方に軽く退く。

 それを見ながら再びビームライフルを抜こうとしたアスランであるが、海から突如として飛び出してきたモビルスーツに一瞬動きを止めてしまった。

 

『そらぁー!』

 

 そして、水中から飛び出してきたフォビドゥンは『誘導プラズマ砲:フレスベルグ』を放ち、ムラサメを落とそうとする。

 だが、アスランはその攻撃をギリギリでかわそうとして……。

 

「これはっ!? ビームが、曲がる!?」

 

 何とかシールドで防ぐ事が出来たが、その火力の高さゆえに、シールドごと左腕を破壊されてしまうのだった。

 機体の中でアラートが鳴り響く中、アスランはジッと二機のモビルスーツを見ながら呟く。

 

「結局俺は……この程度の人間だったか。だが! タダで死ぬつもりは無い!」

『おい! アスラン! どうした!? アスラン!』

『アンタ! 逃げろ! レイ! アイツを助けるぞ!』

『あぁ!』

 

「だが、それでも……俺は! キラ! セナ! ……カガリ!」

 

 アスランは頭の中で何かが弾ける様な感覚を味わいながら、レイダーの攻撃をボロボロのムラサメでかわし。

 ビームサーベルを構えながら、フォビドゥンへ向かった。

 同じ攻撃は効かないと、フレスベルグをかわしながらフォビドゥンの持っている『重刎首鎌:ニーズヘグ』にビームサーベルをぶつける。

 

『うっ!?』

「うぉぉおおおお!!」

 

 そして、武器を両断し、フォビドゥンを海中へ蹴り落とす事に成功した……が、すぐ近くに迫っていたレイダーの攻撃に対処する事は不可能だった。

 

『これで……! 終わり!』

「……すまない。俺は……! 最後に君に」

 

 だが、レイダーが攻撃を放つよりも早く遥か上空。大気圏からまっすぐに降りてきたモビルスーツによってレイダーは海中に蹴り落とされた。

 そして、そのモビルスーツはボロボロのムラサメの前で静かに静止する。

 

『地球連合軍、及びオーブ軍に告げます。僕はZAFT所属特務隊。キラ・ヤマト。今すぐ不必要な戦いを止め、戦闘を中断してください』

 

 真紅に輝く機体を陽の光で照らしながら、少女は全軍に対してハッキリとそう告げた。

 

「キラ……!?」

『もし、戦闘の中断が確認されない場合。僕は全ての兵器を……破壊します』

 

 少女の声はどこまでも冷たく、アスランの目に映る赤いモビルスーツは、どこか黒々とした空気を纏っている様な感覚があるのだった。

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