ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第100話『PHASE-40『ラクス出撃』』

 プラント本国へと無事戻ったジャスティスは、出撃した時とは別の格納庫へと案内され、ゆっくりと格納庫の中に着地した。

 そして、コックピットハッチから飛び出して、案内してくれた者達に礼を言う。

 

「ありがとうございます」

「いえ! ご無事で何よりでございました。ジャスティスは如何でしたか?」

「はい。とても良い機体だと思います。素晴らしいですね」

「そう言っていただけますとありがたいです。キラ様には……あっ!? え!?」

 

 キラがコックピットハッチを出てすぐの所で、近くまで迎えに来てくれた者達へ礼を言っていると、中からアスランが飛び出してきてキラの手を取りながらジャスティスを蹴り、無重力の中に飛び出した。

 そして、そのままプラント内部へと行くべくキラの手を取ったまま真っすぐに向かう。

 キラはアスランに手を引かれながらも、整備員たちにぎこちない敬礼を返し、整備員たちも急いでキラに敬礼を返すのだった。

 

 しかし、キラ達の姿が見えなくなってから、整備員たちは分かりやすく不満を口にする。

 

「なんだ。アレは」

「俺、見た事あるよ。アスラン・ザラだ。議長の息子」

「それが何でキラ様と一緒にジャスティスから出て来るんだよ」

「さぁー。なんでだろうな。案外、婚約者とかだったりするんじゃねぇの?」

「はぁー!? 俺のキラ様が! 何であんな奴に!」

「誰がお前のだ。誰が!」

 

「おや? 私語をしている余裕があるとは、既に仕事は終わった認識で良いんですね?」

「も、申し訳ございません!」

「すぐに取り掛かります!」

 

「まったく」

 

 ジャスティスの前でウジウジと言葉を交わしていた者達を一言で散らした金髪の男、アルバート・ハインラインはジャスティスを見ながら目を細めた。

 そして、近くの整備員を捕まえながら問いかける。

 

「ジャスティスのパイロットは?」

「あ、それが……どこかに急いで向かわれた様でした」

「健康状態に異常は?」

「無かった様に見受けられましたが」

「そうですか」

 

 アルバートは整備員を開放してから、ふむと腕を組んで考える。

 そして、ジャスティスの隣にある機体の整備を始めるのだった。

 

 もしかしたら、すぐに出撃させる必要があるかもしれないと。

 

「あぁ、すまない。君。ラクス嬢に言付けを頼めるか? コンサートの準備が出来た……と」

 

 

 格納庫を飛び出したキラとアスランはそのまま、最高評議会へと向かい、議長の部屋へと向かおうとしたのだが、その前にキラが待ったをかけた。

 

「アスラン。まずはレノアさんの所へ行こうよ」

「……母上の?」

「そう。僕、気になっちゃって」

「それは構わないが……良いのか?」

「うん。アズラエルさんも月基地で話をするって言ってるし。まだ時間はあると思う。それに……親子で話す時間は誰にだって必要でしょ?」

 

 その、全てを見透かす様な瞳に、アスランは言葉を失いながらも小さく頷いた。

 そして、キラと共にレノアの居る病院へと向かう。

 

 最後に来たのはいつだったか。

 アスランはもはや遠い過去の様な気持ちとなり、思い出せないが、レノアは最後にアスランが会いに来た時と何も変わらず眠ったままであった。

 

「……母上」

「レノアさん。キラです。アスランを連れてきましたよ」

「キラ……?」

「ほら。お母さんの手を、握ってあげて」

 

 酷く寂しそうな顔で、キラは冷たいレノアの手を両手でギュッと握りしめてからアスランへと視線を送る。

 その瞳の強さに、アスランは言われるままレノアの手に触れ、その冷たさに一瞬怯えてしまった。

 

 しかし、柔らかくアスランの手を握ったキラにより、再びレノアの手を握る。

 アスランがレノアの手を握り、その上からキラが柔らかく包み込んでいる様な状態だ。

 

「レノアさん。アスランが来てくれましたよ。分かりますか? ふふ、僕ら、子供なので、手が暖かいでしょう?」

「……っ、はは、うえ」

 

 優しく、柔らかくレノアに語り掛けるキラに、アスランは大粒の涙を流しながらギュッとレノアの手を握りしめる。

 そんなアスランを、キラも目じりに涙を浮かべながら見つめるのだった。

 

 それから、二人は軽く近況の話をしてからレノアの病室を出て行こうとしたのだが、不意にアスランの握っている手が少し動いた様な感覚があった。

 それに気づき、アスランが急いでレノアの顔を見ると、僅かに開かれた目で、アスランを見ている。

 

「……ラン?」

「母上! 私です! アスランです! それに、キラも一緒に居るんですよ!」

 

 必死にレノアの前にキラを連れて来てから、アスランは言葉を重ねた。

 どれくらいぶりだろうか。

 話をするのは。

 

 意図せずに、また涙が流れてしまう。

 

「……キラ、ちゃん……アス、ラン……おねがい」

「母上? どこか痛いんですか?」

「お医者様を呼んできますか?」

 

 心配そうにレノアを見つめる二人に、レノアはふわりと笑った。

 そして、一度目を閉じて、少し重く息を吐いてから再び口を開く。

 

「あの、ひとを……止めて」

「あの人って」

「父上、ですね」

 

 確認する様に呟いたアスランの言葉にレノアは小さく頷き、また起きている事が難しくなったのか静かに瞳を閉じた。

 そんなレノアにアスランは何度も声をかけるが、それ以降レノアが再び目を覚ます事は無かった。

 

 しかし、それでもアスランは全てを理解したとレノアの手を強く握り、頷く。

 

「母上の願い。確かに受け取りました」

 

 

 それから二人は病院を出て、今度は真っすぐに最高評議会のある場所へと向かう。

 最高評議会のある建物は、本来であれば様々な手続きが必要となる場所であるが、キラとアスランはほぼ素通りで中まで向かう事が出来るのだった。

 

 そして、すぐにパトリック・ザラと対面する事が出来るようになり、キラはやや緊張しながらパトリックの執務室へと入った。

 

「戻ったか。キラ嬢……そして、まさかお前が一緒に居るとは思わなかったな。アスラン」

「オーブで傷を癒しておりました」

「フン! ならば報告の一つでも上げんか!」

「父上。キラはもうプラントの味方はしませんよ」

「なに……?」

「俺も、もう! 父上の命令にただ従って、ナチュラルを皆殺しにする様な事はしたくない!」

「アスラン!! どういうつもりだ! 貴様!」

「父上だって本当は分かっているんでしょう!? こんな戦いに意味は無いって」

「アスラン……!」

「ナチュラルを全て滅ぼしたって! 母上は治らない! 俺たちの時間は、元には戻らないんですよ!」

「黙れ!!」

 

 激しい剣幕で言い争いをするアスランとパトリックに、キラは何も言えないままオロオロと戸惑ってしまった。

 しかし、今の二人にキラを気にしている余裕などなく、ただ互いに言葉を遠慮なくぶつけ合う。

 

「停戦してください。父上。今なら戦争を止める事が出来る!」

「止めてどうなる! 奪われたまま終われと! そう言うつもりか! お前は!」

「これ以上の悲しみを増やして、それで嬉しいんですか!? 父上は!」

「当然だ! 我らコーディネーターが何も奪われぬ様に、全てを管理する! それこそが正しき世界の姿だ!」

「そのどこに正義があると言うんですか! 父上の命じた作戦がどれほどの命を奪っているか! まだ分からないのですか!?」

「奴らが、まだそこに居るんだぞ……! 何故、それを討つなと言う! 撃たねばならんだろう!!! 撃たれる前に!」

「父上……!」

「敵は全て滅ぼさねばならん! 我らの世界を壊した報いを! 奴らに与え! 我らは再び、我らの世界を取り戻さればならんのだ! 何故これが分からん!!」

「父上!」

 

 もはやこれ以上の言葉は不要とアスランは懐から銃を抜き、パトリックを見据えた。

 そして、パトリックもまた、机の引き出しから銃を取り出し、アスランに向ける。

 

 訳も分からないままに、話が拗れ、親子で銃を向け合う様な事態となってしまい、キラは僅かに涙を滲ませながら、二人に叫ぶ。

 

「止めて下さい! アスラン! パトリックおじ様!」

「キラは外で待っていろ。すぐに終わる」

「話はこのバカ息子の後だ」

 

 しかし、二人はもはや互いしか見えていないと銃口を向け合い、睨み合うのだった。

 そして……。

 どちらが先か分からぬが、銃弾は放たれ、アスランの弾は壁に、そしてパトリックの弾はアスランを押し倒したキラの腕を貫いて壁に着弾した。

 

「キラ!? 何をやってるんだ!」

「だめ、だよ……アスラン……! お父さんを、撃つなんて……だめだ」

「しかし、父上を止めるには、もう!」

「それ、でも……僕らは、もう……こんな悲しみを、繰り返さない……って」

 

 キラは痛みをこらえながら必死にアスランへと言葉を重ねる。

 そして、パトリックへとゆっくりと振り返りながら、手を伸ばそうとした。

 

 しかし、銃声に反応した兵士たちが部屋に駆け込んできた事で事態は急変する。

 

「何事ですか!?」

「銃声が!」

「キラ様!? そのお怪我は!」

 

 近づいて来た兵士に、アスランは咄嗟にキラを抱えながら銃を向ける。

 しかし、キラはこの状況を脱する為にアスランへと小さく言葉を囁いた。

 

「アスラン……ぼくを、人質にして」

「……! しかし!」

「だいじょうぶ。彼らは、ぼくを、ころせない」

 

「っ! 近づくな! この少女がどうなっても良いのか!?」

「貴様……!」

「止めろ! 銃を下ろせ!」

「し、しかし!」

「キラ嬢に当たったらどうする……! 見逃せ」

 

 そしてアスランの言葉に応える様にパトリックは椅子に座りながら頭を抱え、キラとアスランを見逃す様にと指示を出した。

 それからキラを抱えたアスランが部屋を飛び出して行って、少ししてから後を追うようにとパトリックは兵士に指示を出すのだった。

 

「……アスラン。何故貴様は理解せんのだ。奪われてからでは、全てが遅いのだぞ」

 

 一人になったパトリックは机の上に置かれた写真立ての写真を見ながら呟く。

 その写真には、まだ元気であったレノアと、まだ幼いアスラン、キラ、セナが写っており、皆幸せそうに笑っていた。

 その写真をそっと指でなぞりながら、パトリックは再び言葉を漏らした。

 

「レノア……私は、間違っているのか? 教えてくれ……レノア」

 

 

 最高評議会のある建物を飛び出したアスランは、プラントから脱出するべくキラを抱えたまま走っていたのだが、道路を走るアスランのすぐ横に一台の車が止まり、扉を開く。

 

「さぁさ。乗ってくださいな」

「……っ! 貴女は!」

「まぁ。キラは怪我をしていますのね。この事情は後で聞きますが、今は急ぎ港へ向かいましょう。さ。お早く」

 

 顔をすっぽりと隠す様なフードを被った少女に促され、アスランは車に飛び乗った。

 そして、それを確認してから車は高速で走りはじめる。

 車の中で、アスランはキラを抱えたまま、正面に座る少女へと強い視線を向けるのだった。

 

「どういうつもりですか。ラクス・クライン。貴女が介入してくるとは」

「時が来たのです」

「時が、来た……?」

「色々な事が以前とは違いますが、それでも、やはり(わたくし)達が向かわねばならない様な事態に移りましたから。(わたくし)もキラと共に戦場へ」

「まさか! モビルスーツにでも乗るおつもりですか!?」

「多少訓練はしましたが……お二人の様に上手くは動かせませんわね。ですので、(わたくし)は訴える者として。戦場へ向かいます」

「訴える……?」

(わたくし)の声は他の方よりも、よく響きますから」

 

 ピンク色の髪を靡かせて、ふわりと笑う少女に、アスランは戸惑った様な顔を見せるが、ラクスは昔からよく分からない子だったと納得し、小さく息を吐いた。

 そして、来た時と同じ様にジャスティスがある格納庫へと向かい、車から飛び降りて走る。

 どうにかしてジャスティスを奪わなくてはと考えて居たのだが、格納庫へとついた時、そこには誰も居なかった。

 

 否……一人の男を除いて、だ。

 

「お待ちしておりました。ラクス・クライン。それにキラ嬢。アスラン・ザラ」

「あなたは」

「私はアルバート・ハインライン。昔、共にジンの開発をしたのを覚えていますかね」

「……! あの時の!」

「そうそして、今、ここに二つの剣がある!」

 

 ハインラインの言葉に合わせて証明が並び立つ二つのモビルスーツを照らし出した。

 

「ZGMF-X10A フリーダム」

「ZGMF-X09A ジャスティス」

 

「自由と正義を形どった。ZAFTの最新鋭機です。今の貴方方には必要な力であると、ラクス嬢より伺っております」

「さぁ。アスラン。(わたくし)はキラと共に参りますから。貴方は貴方の機体へ」

「俺の機体……か」

 

 アスランはしばし考えてから、真っすぐに先ほどまでキラが与えられていた機体へと向かう。

 キラには自由を。

 そして、自分は……己の信じる正義を貫くと。

 

「やはりアスランはそちらを選びましたわね。ではキラ。(わたくし)達も行きましょう。世界に囚われる貴女に、自由の翼を用意しましたわ」

「……じゆう?」

「そう。貴女は貴女の思うまま、飛んでもよいのです」

「ぼくの……おもうまま……」

 

 無重力の中で、キラに抱えられたままキラはラクスと共にその機体を見上げた。

 ジャスティスとは違う。

 自由を願う者達の魂が宿った蒼き機体。

 

「……きみは」

「私はラクスですわ。キラ。共に行きましょう」

「うん……」

 

 まだ傷が痛むだろうに、ラクスの言葉に柔らかく微笑んで、キラはラクスに身を預けた。

 そして、二人はコックピットに入り、そのまま機体を起動させる。

 

『ラクス嬢。発進の準備は既に終わらせております。そして、エターナルも既に』

「承知いたしました。色々とありがとうございます。アルバート様。では、キラ。行きますわ」

 

 ラクスはフリーダムのスラスターを吹かせながら、開いてゆく隔壁を見やった。

 そして、宇宙が見えた瞬間に、フリーダムを発進させる。

 

「ラクス・クラインですわ。フリーダム……! 出撃します!」

 

 

『おい!? なんだ!?』

『フリーダムが……動いている!?』

『エアロックを止めろ! 本部へ通報! スクランブルだ!』

 

『待て! これは!』

『エターナルが!』

『おい! 何をしている! 貴艦に発進命令など出てはいないぞ!』

『どうしたのだ! バルトフェルド隊長! 応答せよ!』

 

 通信から聞こえる声を振り切り、宇宙へと飛び出したフリーダムの前に現れたのは、隔壁を主砲で破壊しながら現れたピンク色の戦艦であった。

 そして、フリーダムに追いついて出てきたジャスティスと共にフリーダムはエターナルへと向かう。

 

『ラクス様! ご無事で』

「はい! バルトフェルド隊長も。ご無事で何よりですわ」

「……ばると、ふぇるど、さん?」

『どうやらお姫様は危ない状態の様ですな。ラクス様、エターナルへ』

「はい!」

『ラクス。追撃は俺が止める。クサナギへ合流を。通信コードを送った』

「ありがとうございます。アスラン」

 

 

 エターナルの中へ移動してゆくフリーダムを見送りながら、アスランは追撃に出てきたジンを見やる。

 頭の中にはジャスティスから叫んでいる様な声が聞こえていた。

 戦え! ZAFTの理想の為に、掲げる正義の為に戦え! と。

 

『キラ様! お戻りください!』

「……俺は、もう誰かの正義で戦う事はしない!!」

『う、うわっ!? 何を!』

「俺は俺の正義を貫く! キラはもう誰にも……利用などさせない!」

 

 そして、追撃に来たモビルスーツを全て行動不能にし、アスランはエターナルに合流するのだった。

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