ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第101話『PHASE-41『立ちはだかるもの』』

 プラントから飛び出したエターナルは、プラントの近くで待機していたクサナギと合流し、ひとまずプラント周辺宙域から脱出した。

 そして、クサナギからはキラが撃たれたという事で、カガリとメンデル仮面がエターナルに飛び込んで来るのだった。

 

「キラが撃たれたというのは本当か!?」

「あぁ……すまない。傷つけないと約束したのに……」

「後でキラに謝っとけ。それで? 容態は?」

「応急手当は行いまして、今は寝ていますわ。ですが、一度どこかの病院で検査をする方が良いかもしれません」

 

 ブリッジの中央付近で柔らかく微笑むラクスに、カガリは一瞬動きを止めてしまった。

 エターナルに飛び込んできたは良いが、ブリッジの中には知らない人間ばかりで、どうすれば良いか分からなくなったのである。

 

「あー、うん。そうだな」

「それで、バルトフェルド隊長。どこか良い場所はありますか?」

「んー。そうですなぁ。とは言っても、ここから行くとなるとプラントが一番近いですが、今戻るのも問題ですし……月は現在連合軍の領域ですからね。ZAFTの艦である我々が近づくのは難しいでしょう」

 

「なら、メンデルに向かえば良い」

 

 宙域図を見ながら仮面を付けた男、メンデル仮面が呟く。

 その言葉に……というよりは、その姿に一同は口を閉ざしてしまうが、クルーゼという他の仮面男をよく知っていたバルトフェルドが誰よりも早く口を開く。

 

「メンデル……確か、 L4のコロニーだったかな?」

「あぁ。かつてバイオハザードが起きた。という事になっているコロニーさ」

「という事に、なっている?」

「あそこではブルーコスモスにとって都合の悪い研究が行われていてね。研究員は皆殺しにされたんだが……犠牲者のほとんどはナチュラルだったからな。そういう事になっているのさ」

「……酷いな」

 

「しかし、確かにL4のコロニー群は良いかもしれない」

「アスラン?」

「L4にはまだ、稼働しているコロニーもいくつかあるんだ」

「そうなのか?」

「あぁ。だいぶ前だが、不審な一団がここを根城にしているという情報があって、ZAFTは調査したことがあるんだ。住人は既に居ないが、設備の生きているコロニーもまだ数基あるはずだ」

「そこなら、キラの状態もちゃんとチェックできる。という訳か。よし! そうと決まれば! メンデルへ向かうぞ!」

 

 とカガリは勇ましく宣言をし、その宣言でエターナルとクサナギは動き始めたのだが、ラクスはそんなカガリを見ながらクスクスと笑ってしまった。

 ラクスの反応にカガリは気恥ずかしさを感じて黙ってしまったのだが、そんなカガリにある男が大笑いをする。

 

「わっはっは! 君は変わらないな」

「む! なんだよ! そういうお前は……! って、砂漠の! 虎!」

「そう。久しいな。相変わらず情熱的なお姉ちゃんをやっている様で安心したよ」

「……生きていたのか」

「あぁ。何とかな。この通り、片目と片足は失ってしまったが、誰かさんが用意した脱出装置のお陰で助かったよ。ま、この傷は名誉の負傷という奴だ。愛を守る為のね」

「そうか……キラが聞いたら喜ぶだろうな」

 

 カガリは全身に痛々しい傷跡を残しながらも軽快に笑う男、アンドリュー・バルトフェルドに安堵の息を落とした。

 砂漠での戦い以降、キラに覆いかぶさっていた昏い影が、また一つ消えたのだと。

 

「それで? お前も平和の為にって飛び出してきたのか?」

「あぁ。その通りだ。ZAFTもかなり過激な感じになってきちゃったからねぇ。このままじゃ最悪の結末が待っているだけさ。かつて見た光景みたいにね」

「かつて見た光景って……」

「ホープって機体に乗って、見た光景の事よ。お嬢ちゃん」

「誰がお嬢ちゃんだ! 誰が」

 

「おぉ、アイシャ。キラ君の状態は?」

「んー。まぁそこまで悪くないわね。弾は貫通していたし。血も早く止められてた。よく食べて、良く寝れば若いし。すぐに治るわよ」

「だが! 精密検査は必要だ!」

「っ! お、驚いたわね。あの男以外にも仮面を付けている人が居るなんて」

「アイシャ。仮面を付けている人間は総じて変態ばかりだ。危ないぞ。離れた方が良い」

「そうね」

 

 エターナルのブリッジに入って来たアイシャは腕を組みながら堂々としているメンデル仮面から離れ、バルトフェルドの近くへと移動する。

 そして、先ほど話していた言葉の続きを語り始めた。

 

「プラントの技術者たちは、ここではない世界から流れてきたパーツを使って、あるモビルスーツを作り出したわ。そして、その機体に乗った時、私とアンディは遠い未来の光景を見たのよ」

「未来の、光景……」

「そこから先は(わたくし)がお話させていただきますわ」

 

 アイシャの言葉を引き継いで、ラクスが口を開く。

 どこか申し訳ないという様な空気を纏いながら。

 

(わたくし)達が作り出してしまった機体は、(わたくし)達が、おそらくは手を出してはいけなかった物です」

 

 それはまるで懺悔の様に。

 ラクスは両手を握り合わせながら言葉を紡ぐ。

 

「その金属は……あるモビルスーツのコックピットブロックから発見されました。名を『サイコフレーム』」

「……サイコフレーム?」

「はい。カガリさんも、ご存じでしたか?」

「あぁ。オーブにもあるんだよ。そのサイコフレームってのが乗っかったモビルスーツがさ……あー、えっと」

(わたくし)はラクスですわ。ラクス・クライン。キラとセナさんのお友達ですわね」

「あぁ、すまないな。私はカガリだ。カガリ・ユラ・アスハ。キラとセナの姉だな。よろしく」

「はい!」

 

「それで……そのサイコフレームが搭載されたモビルスーツがオーブにはあってな。今、クサナギにもあるんだけど……」

「危険はないのか?」

「いや、さっぱり分からん。今のところは異常なしだ。ただ……パイロットが言うには妙な声が聞こえるんだという」

「妙な……声?」

「あぁ。なんでもその機体に焼き付いた人の意志だとかなんとか」

 

 カガリ自身よく分かっていないという様な顔で首を傾げながら質問をしてきたバルトフェルドに言葉を返した。

 その回答に、なるほどなと言いながらも、バルトフェルドもアイシャも理解しがたいという様な顔で頷いていた。

 

 しかし、たった一人。

 この場でラクスだけは、カガリの回答に何か明確な答えを見た様な気がしていた。

 

「あの、カガリさん」

「なんだ?」

「その機体に焼き付いた意思。というのは……パイロットの代わりに機体を操縦したりする事も可能なのでしょうか?」

「いや……特にそういう話は聞かないな。前にキラやセナが乗った時も、特に異常は無かった様だし」

「そうですか……」

 

 ラクスはカガリの回答に何かを考え込んでいる様だった。

 その様子に、ラクスとは幼い頃からよく接していたアスランが問いを投げる。

 

「ラクス。何か気になる事でもあるのか?」

「……はい。実は……プラントで開発していたサイコフレーム機である『ホープ』という機体が、セナさんが搭乗した後に、どこかへ飛び去ってしまったのです。しかもその際に行われた戦闘は……あまりにも熟達したもので……並のパイロットでは考えられないほどの物でした」

「確かに、それはセナではない何者かが機体を動かしたと考える方が自然だろう。セナはそこまでモビルスーツを上手く扱えないからな」

「はい。(わたくし)もそう考えています」

 

「しかし……セナ君がホープに乗ってどこかへ消えてしまった、か」

「困ったわね。アンディ」

 

「ん? そんなにヤバい機体なのか? そのホープって機体は」

「……(わたくし)の認識では、セナさん以外は動かす事の出来なかったモビルスーツ。程度なのですが、バルトフェルド隊長は何かをご存じなのですか?」

 

 ラクスの問いに、思わず叫んでしまったバルトフェルドはバツの悪そうな顔をするが、アイシャに促されゆるゆると語り始める。

 

「あの機体。ホープに乗り込んだ時、僕とアイシャは鮮やかな虹の世界を見たんだ。そしてそれはおそらく、未来の光景を映す世界だった」

「さっき言ってた話か」

「あぁ。その世界ではね……連合とZAFTが核兵器と、ジェネシスという最終兵器を使い、殺し合っていたんだよ。互いを滅ぼすべくな」

 

 バルトフェルドが神妙な顔つきで語った話に、エターナルのブリッジに居た誰もが口を噤んでしまった。

 何故なら、一年前にはそんなバカなと笑えた話が、今では限りなく現実に近い話になっていたからだ。

 

 そして、この場で唯一その未来を視た事のある少女……ラクス・クラインは、大きく息を吸い、吐きながら言葉を紡いだ。

 

「おそらく、バルトフェルド隊長が見た未来は……現実に起こりえる物です。そして、(わたくし)達が何もしなければ、確実に起こる未来」

「……なら、止めなきゃ駄目だな!」

 

 あっけらかんとそう言い放つカガリに、ラクスもアスランも目を見開いて、驚きを示した。

 

 無論現実が見えていない訳ではない。

 エターナルとクサナギとアークエンジェル。

 たった三隻で、これから始まる最終戦争を止めなくてはいけないと、カガリはしっかりと理解している。

 

 理解した上で、やるしかないのなら、やるだけだ。と彼女は笑うのだ。

 

「カガリ。俺たちの戦力は少ない」

「それでも! 私はたった二人で世界の争いを止めようとした奴らを知っている」

「っ」

「無理だから諦めるのか? 何も出来ないと、滅んでいく世界をただ見ているだけで、それで良いのか?」

「……いや、俺はそんなに諦めが良くない」

「そうだろ? だからさ。私達は最後まで戦うだけさ。もし、それが全部駄目だったとしても、戦わない理由にはならない」

 

 どこまでも眩しく、太陽の様な輝きを放つカガリに、エターナルのブリッジに居た者達は彼女の笑顔につられて笑う。

 こんなにも追い詰められた状況だというのに。

 それでも、確かに希望はあるのだと……そう強く感じて。

 

 それから、クサナギとエターナルはメンデルへと向かい、最大船速で宇宙を駆けるのだった。

 

 

 一方その頃。

 月基地へと向かっていたアークエンジェルは、元第八艦隊所属の者達と言葉を交わした後、地球からの部隊が到着するよりも前に月基地を離脱していた。

 しかし、アークエンジェルが月基地へ来ていたという話を聞いた地球連合軍最高司令部統合作戦室所属ウィリアム・サザーランド大佐と、国防産業連合理事にして、ブルーコスモスの盟主であるムルタ・アズラエルは、急ぎ月基地で建造されていた新造艦へと乗り込んで出撃する。

 

「いやはや。抜け目のない連中だ。僕らが宇宙へ上がってくる前の僅かな隙を付いて、妨害工作をしていたとはね」

「まるで海賊ですよ。元正規軍人とは思えませんな!」

「しかし、お陰でオーブの尻尾を捕まえる事が出来た……。僕らとしてはそう悪い事じゃないんじゃない?」

「左様ですな。例の機体。セナ様が搭乗されているという『ホープ』という機体も、L4へ向かったとの報告がありました」

「うん。あの子は姉想いの子だったからね。ちょうどいい。一緒に捕まえるとしよう」

「それがよろしいかと」

「あの子達がこちらに居るのなら、遠慮なく核が撃てるし。あの子達はどうあっても核を止めようとするだろうからね。先に障害を排除するのが賢いやり方って奴さ」

「承知いたしました。では! ドミニオン! 発進準備急がせ!」

 

 アズラエルは艦長席の隣に作った席に座りながら、正面に見える昏い宇宙に目を細めた。

 

「話をするのは月基地で。とは言ったが……君の準備を待つほど、僕は悠長じゃないんだ。キラ……さっさと捕まえて、終わらせてしまおう。こんな戦争はさ」

 

 

 そして、プラントでもまた、エターナルが逃亡した事で追撃の部隊が編成されていた。

 

 ナスカ級が三隻。

 指揮官は仮面の男、ラウ・ル・クルーゼである。

 

「ヤキン・ドゥーエの追跡データから割り出した、エターナルの予測進路です」

「L4コロニー群ですか、やはり」

「……だろうな」

「困ったものですな、あれには。妙な連中が根城にしたり、今度のように使われたりで」

「そうだな。しかし、都合が良いと言うのも確かだ」

 

「と言いますと?」

「全てが始まった地で、全てを明かすのも良いかもしれん」

「……は?」

「なに。うまく行けばキラ姫とセナ姫はプラントに来るという話だ」

 

 クルーゼは仮面の下で笑みを作りながら宙域図を見つめる。

 その真意は見えないが、これまでのクルーゼの実績が、ヴェサリウスの艦長であるアデスの口を閉ざす。

 そして、クルーゼは誰に言うでもなく、一人、笑みを浮かべたまま呟くのだった。

 

「さて。そろそろ最終局面だ。どう転ぶか。見ものだな」

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