ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第104話『PHASE-44『たましいの場所』』

 メンデルより急ぎ帰投したクルーゼは整備員に機体を任せてから、通信をでブリッジのアデスに繋げた。

 

「アデス。状況はどうなっている」

『ハッ! 現在、地球連合軍とエターナル、足つき、オーブ艦の戦闘が行われておりますが……地球連合軍艦の攻撃が激しく、コロニーにも被害が出始めております』

「やはり連中か……! このまま見ている事は出来んな。ヴェサリウス発進する! モビルスーツ隊出撃用意だ。ホイジンガーとヘルダーリンにも打電しろ」

『はっ! しかし、よろしいのですか!?』

「このまま黙って見ているという訳にもいかんだろう? 地球連合軍に姫君達を渡すワケにも、あの機体を渡すワケにもいかんのだ」

『しょ、承知いたしました!』

 

 クルーゼはアデスに指示を出してから格納庫の中へと視線を戻す。

 どうやら優秀な整備員たちは既に出撃の準備を進めている様で、ZAFTの新型モビルスーツである『ZGMF-600:ゲイツ』はすぐにでも出撃出来る状態となっていた。

 

「隊長! 出撃というのは!」

「聞いた通りだ。イザーク」

「しかし、我らは何と戦えば……?」

「目標は変わらん。地球連合軍だ。しかし……可能であればフリーダムを鹵獲。また戦場にホープが現れた場合にも同様だ」

「フリーダムの鹵獲、ですか!? しかし、キラは」

「キラが乗っているのはフリーダムだ。間違いない。見誤るなよ?」

「承知いたしました!」

 

 イザークに指示を出したクルーゼは白く塗装されたゲイツへと向かい、コックピットに入る。

 そして、操縦桿を握りながら深く息を吐いた。

 

「まさか……セナまで現れるとはな。しかもあの目……。私が思っているよりも厄介な事になっているかもしれん」

『隊長! 出撃可能です!』

「あぁ。ラウ・ル・クルーゼだ! ゲイツ! 出るぞ!」

 

 そして、宇宙へと飛び出しながらも、クルーゼは思考を続ける。

 これから先、一つたりとも計算を違える事は出来ないと。

 

 あの小島での戦闘の様に、万が一にでもキラとセナが傷つく様な事になってはいけないのだ。

 

「やはり……あの機体を動かす必要があるか。サイコフレーム。厄介な物を生み出してくれたものだ」

 

 

 そして、クルーゼ達ZAFTが戦場に参加し始めた頃。

 エターナルではZAFTの信号をキャッチしており、艦長であるバルトフェルドへと報告がされていた。

 

「熱源感知! モビルスーツ来ます! 熱紋照合、ジン12、デュエル、ゲイツ、ブルー22、マーク18デルタ!」

「さらにその後方にナスカ級! 距離30、オレンジ14、マーク33から87、チャーリー!」

 

「チィ! クルーゼめ! 嫌な時に嫌な位置に!」

 

『バルトフェルド艦長!』

「ナスカ級はエターナルとクサナギで迎撃する。アークエンジェルは連合軍を頼めるか!?」

『わかりました!』

『了解!』

 

「転進!イエロー17、マーク25アルファ、推力70!」

 

『……ぼくも、出撃します!』

「キラ!?」

「なんだと!?」

「まだ怪我が治ってはいないのでしょう!?」

『でも、この状況じゃ……戦力は一人でも多い方が良いですから……!』

 

 キラは冷や汗を流しながらも、出撃を願う。

 傷も確かに治りきってはいないが、それ以上に今、キラを追い詰めているのは精神的な問題だ。

 

 メンデルで受けたビジョンは間違いなくキラの心を蝕んでいる。

 欲望と、怒りと憎しみと。

 ドロドロとした世界の底に渦巻いていた感情に、何の準備もなく触れてしまったのだ。

 

 心が負っているダメージは見た目以上に深い。

 だが、それでも行かねばならないのだ。戦争を、止める為には。

 

 

「お願い。ラクス」

『……どうか、無理はなさらないで下さいね』

「分かってるよ。ありがとう。ラクス」

 

 キラはモニターに映るラクスに礼を言い、そして、大きく息を吐きながらフリーダムで出撃位置へと移動した。

 これから初めて動かす事になる機体……だが、不思議とキラは初めて触れた様な気がしなかった。

 

「なんでだろうね。酷く懐かしい様な気持ちになるよ……君に乗っていると」

 

 そして、フリーダムの計器に触れながら微笑み、小さく頷いた。

 ジャスティスに乗っていた時とは違い、どこか優しい気配と、あたたかな感覚。

 まるで何かが優しく包んでくれている様な感覚に、キラは傷の痛みを忘れて頷いた。

 

「ありがとう。じゃあ、行こう。一緒に付いてきて。フリーダム」

『フリーダム。発進どうぞ!』

「キラ・ユラ・アスハ。フリーダム! 行きます!!」

 

 エターナルのカタパルトから勢いよく飛び出したフリーダムという白と蒼を纏った機体は、真っすぐに宇宙を駆けながら蒼い軌跡を宇宙に描く。

 そして、ビームサーベルを抜くと、目の前に現れたジンの頭部パーツを通り過ぎながら斬り落とすのだった。

 

『な!?』

『この動きは!?』

 

「次!」

 

 ZAFTの士官学校に置かれた古びたシミュレーター。

 それには伝説が刻まれていると言われている。

 

 それは、かつてプラントで……いや、世界で最も強いと言われたパイロットのデータだ。

 暗い宇宙に白い軌跡を残しながら、人には出せない速度で、全てを破壊する圧倒的な実力。

 それが今、シミュレーションよりも遥かに超越した力で、現実に蘇っている。

 

 ジンのパイロットたちは、何度やっても勝てなかった伝説を今目の前にしながら、必死にマシンガンを撃つが、かする事すらなく、全てすり抜けてしまうのだった。

 そして、超速で接近してきたフリーダムによって、全ての武装が破壊されてしまう。

 戦闘と呼ぶにはあまりにも圧倒的なソレに、イザークはもはや笑う事しか出来ないのであった。

 

『だが! それでも俺は、あいつ等の為に! お前を止めるぞ! キラ!』

「っ!? デュエル! イザークか!」

『キラぁぁああ!』

「だから……前にも言っただろ? 君は、大振りすぎるんだって」

 

 キラは接近してくるデュエルの腕を左腕で弾きながら、デュエルの右肩にビームサーベルを突き刺した。

 それだけでデュエルの右腕は動かなくなり、咄嗟に肩のレールガンや頭部バルカンなどをフリーダムに向けて放つが、キラは既にスラスターを吹きながら上昇して、離脱していた。

 それでもイザークは諦めずキラを追うが、上から振り下ろしてきたビームライフルがデュエルの武装を破壊してしまう。

 

『うわぁぁあああ! くそ……!』

『下がれ、イザーク。私が相手をする!』

『隊長!』

 

「新型……! この感じ! ラウ兄さん!?」

『そうだ。キラ! あの状況では退く事しか出来なかったが、私はまだ諦めてはいない!』

「っ! 兄さん!」

 

 キラのフリーダムと、クルーゼのゲイツは互いにビームサーベルをシールドで受け止めながらぶつかり合う。

 そして、二人は機体だけでなく、想いもぶつけ合うのだった。

 

「兄さん! 世界を恨む気持ちは分かるけど! それでも! 引き金を引いた先には悲しみしか無いよ! それじゃこの戦争が終わっても、また次の戦争が始まってしまう!」

『だからこそ、全てを滅ぼす必要があるのだ! 争いを生み出す根を!』

「争いを生み出す根って……まさか!」

 

 キラはクルーゼの言葉に、世界の中心にある物を思い出した。

 地球。生命を生み出し、育んできた母なる惑星。

 

「地球に住む人を……全て滅ぼすつもりなの!?」

『そうだ。地球が人の住めぬ場所となれば、人々はプラントに頼らなくては生きていけなくなる! その時はじめて、世界は平和への道を歩む事が出来るのだ!』

「そんな方法で平和を手に入れても! 意味ないよ! 手を取り合えない世界じゃ! 小さな世界でも争いは起こる」

『起らぬさ! コーディネーターは種としての限界を迎えている! 限界を超える為には鍵が必要だ!』

「だから、どうだって言うんだ!」

 

 キラはゲイツから離れ、ビームサーベルでゲイツの武装を破壊しようとする。

 が、クルーゼは驚異的な操縦でそれら全てをかわし、逆にフリーダムの武装を破壊しようと迫るのだった。

 

『鍵とは……君とセナの事だ』

「は……?」

『皮肉な事であるが、ユーレン・ヒビキの作り出した最高のコーディネーターという存在は、種としての限界を超える為の鍵となった! 君は、君たちは新たなる世界での神となるんだ!』

「僕は! そんなモノに、なりたくはない!」

 

 キラは、叫びながら、フリーダムの全武装を展開し、高速移動を繰り返しながらゲイツを撃つ。

 その攻撃に片腕を吹き飛ばされながらクルーゼは叫んだ。

 

『望まぬとも! 君が神となれば争いは終わる! 誰も逆らえん! それが最も幸福な世界となるさ!』

「そんなの……! 僕は!」

 

 ゲイツはもはや戦場に居続ける事は出来ぬとナスカ級へと帰還し、エターナルとクサナギの攻撃で傷ついていたナスカ級もまた、戦場に居続ける事が出来なくなり、ZAFTは戦場から撤退してゆくのだった。

 そんな彼らの背を視ながらキラは、強い悲しみを抱えた声で叫ぶ。

 

「僕が欲しかったのは! みんなで、笑っていられる世界なんだ……! 僕は、ただ……それが欲しかっただけなのに! どうして!!」

 

 キラの声はどこにも届かず、ZAFTとの戦闘が終わった宙域でキラはただ、フリーダムの中で涙を流していた。

 しかし、ジャスティスからの通信が届いた事で、キラは涙を拭ってから通信に応える。

 

『キラ! キラ! 大丈夫か!?』

「アスラン……。うん。僕は大丈夫」

『そうか……良かった』

「アスランは? 怪我はない? 連合の新型モビルスーツと戦ってたんでしょ?」

『あぁ。何も問題はない。既に撃退した』

『キラさん!? キラさんが出撃してるんですか!? 駄目ですよ! まだ怪我してるのに!』

『シン! 黙っていろ! 今、俺がキラと話をしてるんだ!』

『ちょっとくらい良いだろ! キラさん! 俺が連合のモビルスーツを倒したんですよ! こう、ぐわー! ってやって!』

『お前は最後に無茶をしただけだろ。生きているから良かったものを。撃墜されてもおかしくはなかったぞ』

『はぁー!? 俺のお陰で奴らが撤退したんだから俺のお陰だろ!』

「……ふふ」

 

 言い争いをするシンとアスランの声を聞きながら、キラは自然と笑みを零した。

 まだ、まだ残っている。

 希望も、ここに居たいと思える場所も。

 

『どうでも良いが。シン。バジルール中尉がお前とレイに話がある様だぞ』

『え? マジ? なんだろ。褒めてくれんのかな』

『何をどう考えたらそうなるのか分からないが、おそらくは説教だ。大人しく受けてこい』

『はぁー!? 説教!? なんで!』

『命令違反に独断専行。言いたいことは山ほどあるだろうな』

『そ、そんなぁ~。キラさん。どうにかなりませんか?』

「うーん。ナタルさんが怒っているのなら、難しいかな。でも、危ない事をいっぱいやったのなら、ちゃんとお説教聞くんだよ」

『はぁーい』

 

 しょぼくれた子犬の様なシンを見ながら、キラは小さく息を吐いた。

 戦いはきっと、これからも続いてゆく。

 それでも……。

 まだ、キラは諦めずに戦うことが出来る。

 

 そう胸に想いを抱きしめて、エターナルへと帰還するのだった。

 

 

 しかし。

 そんなキラの決意はどこへやら。

 帰還して早々に格納庫へ来ていたラクスに捕まって、キラはラクスの私室へと連れ去られた。

 

 アスランは一応止める事も出来たが、ラクスの目が止めてくれるなと言っていた為、見なかった事にしてブリーフィングルームへと向かう。

 

 そんなこんなでラクスの部屋に連行されたキラは、ラクスに押し倒されて、ムーっと睨みつけられていた。

 

「ラ、ラクス。そんなに怖い顔をしてどうしたの?」

「キラ。(わたくし)はとても怒っていますわ」

「うん。よく分かるけど……」

(わたくし)は! とても! 怒っていますわ」

「ご、ごめんよ。ラクス」

 

「どうして(わたくし)が怒っているか。その理由が分かりますか?」

「えと……なんだろう。ちょっとよく分からないんだけど」

「はぁ……」

 

 キラの返答にラクスは深い、それはそれは深ーいため息を吐いた。

 そして、ジッとキラを見つめたまま言葉を落とす。

 

「キラ。(わたくし)は信用できませんか? 信頼には値しませんか?」

「そんなことないよ! ラクスの事は大事に思ってる!」

「ならば。何故(わたくし)に何も話して下さらないのですか?」

「何も……って」

「何かお辛い事があったのでしょう?」

「それは……でも、僕は」

「キラ。強さは確かに美徳かもしれません。しかし、愛している方が傷ついている姿を見続ける辛さも、分かってください」

「……ラクス」

 

 キラはやや俯きながら、ラクスから視線を外すが、ラクスはそんなキラの額に唇を落として再度語り掛ける。

 

「共に背負わせて下さい。貴女の、想いを。辛さも悲しみも。そして、喜びも……。それが私の喜びなのですから」

 

 キラはラクスの言葉に、少しだけ勇気を貰って、ポツリポツリと語り始めた。

 しかし、辛い想いはキラの心を強く揺さぶってしまい、キラの目には涙が溢れて止まらなくなってしまった。

 

 そんなキラの悲しみを全て受け止めて、ラクスは平和の歌を歌う。

 せめてキラの傷が少しでも癒えるようにと……ただ、平和を奏でた。

 

 世界がどれだけ絶望に満ちていようと、この場所だけは……とラクスはキラの平穏を願うのだった。

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