ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第11話『え? キラは女の子……なのですか?』

 ラクスが幼年学校へと編入した日の放課後。

 キラはアスランの手を借りて、ラクスに話しかけようとしていた。

 情けない姿は見せられないという思いから、セナには先に帰宅する様にお願いをしている。

 

「スーハー。スーハー!」

「少しは落ち着いたか?」

「まぁまぁね!」

「それは良かった。じゃあホラ。話しかけて」

「ちょっと待ってよ! アスラン! もう少し落ち着いてからで良い!?」

「そう言って、どれだけ時間が掛かっていると思ってるだ。さっさと行け」

「くぅー、アスランの鬼ィ!」

 

 キラは半泣きになりながら、アスランへ文句を言うが、アスランは「頑張れ」と背を押すばかりであった。

 しかし、キラもキラで意固地になっているのか、アスランの背後に回り込んでイヤイヤをする。

 そんなキラにアスランはさらに背後に回り込んでと……二人は終わりのない戦いを繰り広げていたのだが、二人だけの空間にピンク色の何かが割り込んだ。

 

 そして、颯爽とキラの手を握るとアスランから引き離す。

 

「先ほどから。(わたくし)の名前が聞こえていたのですが、何か御用でしょうか?」

「え? あれ? 僕、ラクスさんの名前呼んでたっけ」

「えぇ。しっかりと聞こえておりましたわ。確かに」

「そ、そっか……」

「はい。それで、先ほどからお名前も聞こえておりましたが、キラ様と仰いますのね?」

「え? あれ? 僕の名前、言ってたっけ?」

「ええ。しっかりと聞こえておりましたわ。確かに」

「そっか。なら、まぁ、良いか」

 

 キラは押しの強いラクスに頷きながら、少し離れようとするが、ラクスがさらに近づいてきた為、そのままの体勢で話を続ける。

 

「えと、ラクスさん?」

「ラクス。とお呼び下さい」

「あー、えと、うん。ラクス」

「はい! 何でしょうか。キラ様!」

「えと、その、さ。僕もラクスって呼ぶから、ラクスも僕の事、キラって呼んでよ」

「まぁ! よろしいのですか!? では、キラと呼ばせていただきますね。キラ」

「うん。ラクス」

「はい! キラ!」

 

 二人はまるで十年以上共に居た恋人同士の様に、互いを見つめながら名前を呼び合っていた。

 しかし、このままでは話が始まらないと、アスランは軽く咳ばらいをして、二人の意識を呼び戻す。

 

「んんっ! キラ。話があるんだろう?」

「はっ! そうだった! ごめんごめん」

 

 キラはアスランに謝りつつ、ラクスへの話を思い出すが、ラクスは一瞬だけ不満そうな顔をした後、再び天使の様な笑顔に戻り、キラを見つめる。

 

「あー、っとね。ラクス。今からおかしな事を言うんだけど」

「はい」

「実はさ。ラクスの事、初めて会ったと思えなくて」

「それは……」

「その! ラクスの事を……夢で、何度か見た事があるんだ」

「……夢?」

 

 ラクスは一瞬、飛び上がる様な喜びで笑顔を見せたが、続いて聞こえてきたキラの言葉に首を傾げて疑問を返す。

 キラは思っていた物とは違う、ラクスの反応に疑問を浮かべつつも、言葉を続けた。

 

「そうなんだ。って、なんかおかしな事言ってるよね。僕。あはは、忘れて貰えると嬉しいかな、なんて……」

「キラ!」

「っ! ラクス、さん……?」

「聞かせてください。その夢を。どの様な夢なのですか?」

 

 キラの服を掴み、必死に訴えるラクスに、キラは先ほどまで感じていた焦りの様な感情が消えるのを感じ、小さく微笑みを浮かべてから再び口を開いた。

 落ち着いた様子で一つずつゆっくりとラクスに伝えてゆく。

 

「僕が見てる夢ね。僕と君が戦っている夢なんだ。あ! いや、言い方が良くないね。僕とラクスさんが一緒に戦ってるんだ」

「……」

「僕は人型の『フリーダム』っていう名前の機械に乗っててさ。ラクスさんはピンク色の、多分『エターナル』って名前の戦艦に乗ってるの。おかしな夢でしょ?」

 

 アハハと笑ってラクスに問いかけたキラであったが、ラクスが目を見開きながら一筋の涙を流した事で無意識のウチに彼女を抱きしめていた。

 夢の中で、何度もそう願っていた様に。

 ただ強く、まだ夢よりも幼いラクスを抱きしめる。

 

 夢とは違う。

 自分もラクスも死ぬような状況ではない。

 だというのに、キラはラクスを抱きしめずにはいられないのだった。

 

「キラ……(わたくし)は。ずっと、悩んでいました。あなたと出会わない方が良いのではないかと」

「……ラクスさん」

「でも、申し訳ございません。弱い(わたくし)を許して下さい。(わたくし)はあなたの居ない世界で生きてゆけない」

 

 涙を流し、許しを請いながらもキラを強く抱きしめるラクスに、キラは「大丈夫だよ」と囁いた。

 そして、少しだけラクスから離れて、苦しそうに泣くラクスの頬に流れる涙を拭った。

 ずっと、こうしたかったのだと微笑みながら。

 

「僕はさ。ずっとこうして、ラクスさんの涙を拭いたかったんだ。怖い物なんか、悲しい事なんか何も無いよって。言いたかったんだ」

「……キラ」

「だから、ラクスさんが僕に会いに来てくれたのは凄く嬉しい」

「はい……ありがとうございます。(わたくし)も」

「ありがとう。じゃあこれから……」

「はい、(わたくし)、キラの事が……!」

「女の子同士! 何でも話せる友達になろうね! 親友でも良いけどさ!」

「好き……て、え? 女の子?」

「うん。いやー。僕もさ。女の子の友達ってずっと欲しかったんだよね! アスランと友達やってると女の子は自然と離れていくし。良かった良かった!」

 

 キラは満面の笑みでラクスを軽く抱き寄せてから、既に涙も止まり呆然としているラクスから離れた。

 ラクスは現実が理解出来ず、呆然としながらキラを見つめている。

 

「え? キラは女の子……なのですか?」

「うん。そうだよ。って、あー! もしかしてラクスも僕の事、男の子だと思ってたの!?」

「仕方ないんじゃないか? キラは女の子と遊ぶより、男の子と遊んでばかりいるし。見た目も、あまり女の子らしくは無いだろう?」

「あー! アスランが言っちゃいけない事言った! 言っちゃいけない事言ったぁー!」

「カリダおばさんも嘆いていたぞ。キラが折角買ってきた服を着てくれないって」

「うぇー。だってしょうがないじゃん。フリフリの服とか、可愛すぎて、恥ずかしいんだもん」

「それでズボンばかり穿いてるのか?」

「うん。だって、こっちの方が動きやすいし」

「なら、仕方ないんじゃないか? 元々キラは活発な方だし。セナと比べるとどうしても、な」

「アースーラーン! 女の子に言っていい事と悪い事があるだろー!」

 

 キラの衝撃発言に意識を飛ばしていたラクスであったが、キラとアスランが二人で騒ぎ始めた事で自分を取り戻した。

 そして、必死にキラへと声をかける。

 

「き、キラ! 申し訳ございません! (わたくし)、動揺してしまって!」

「良いよ良いよ。ラクスだけじゃないしさ。アスランも言ってたけど、僕が男の子っぽい格好ばっかりしてるのも悪いんだろうし。髪も短いしね。今度伸ばそうかなー」

「キラはそのままで素敵だと思いますわよ!?」

「そう? ならあんまり気にしなくても良いかな~」

「それは構わないが、キラはどこかの誰かと結婚して生きていくんだろう? どうするんだ」

「あ! そうかー。それは考えてなかったなぁー。やっぱりもっと可愛い格好をするべきか!」

(わたくし)が!」

「え?」

「うん?」

「もし、キラに相手が出来なければ、(わたくし)がキラと共に生きてゆきますわ」

「本当!? ラクスってば、優しいなぁ~。んも~好き好き」

「き、キラ! わ、(わたくし)も!」

 

 ラクスは沸騰した様に頬を上気させながら、抱き着くキラを抱き返す。

 そんなラクスとキラを見て、面白くなさそうな顔をしていたアスランはキラの肩を掴んで引き離し、キラにお説教をした。

 

「キラ。駄目だろう? そうやってベタベタとくっつくのは。迷惑になるぞ」

「あ! そ、そうだよね。ごめん。ラクス」

「いえ! 何も気にしなくても良いのですよ。(わたくし)は何も気にしませんから。さ。アスランの小言は気にせず、どうぞ」

「む。小言とは何ですか。ラクス・クライン。僕は当たり前の話としてキラに常識を教えただけです」

「まぁ。(わたくし)の名前は伏せていたのに、それを口にするなんて。どういう常識を持っていらっしゃるのかしら。アスラン・ザラ」

「あれ? あれ?」

 

 気が付いたら、笑顔のまま睨み合い始めたラクスとアスランに、キラはオロオロとしてしまう。

 そして、ラクスに右腕を引っ張られ、アスランに左腕を引っ張られて、左右に揺らされてしまう。

 

「もうラクス嬢との話は終わっただろう。さ、家に帰るぞ。キラ」

「まぁまぁ。まだ(わたくし)とキラの話は終わってませんわ。帰りたいのなら、お一人で帰ればよろしいのでは無いかしら?」

「僕は今日、キラの家に泊まる予定ですから。一緒に帰る方が良いんですよ」

「まぁ! なんて破廉恥な! 年頃の女の子の家に泊まるだなんて! いやらしい男ですわね。アスラン?」

「っ! 僕は! 別に! キラの事は!」

 

「……僕の事は?」

 

 アスランが咄嗟に叫ぼうとした言葉に、キラは戸惑ったように首を傾げながら問う。

 しかし、アスランは羞恥からか頬を赤く染めながら、なんでもない! と言うのだった。

 

 そんなアスランの反応を面白いと感じたのか。キラはアスランを問い詰める。

 

「ねぇねぇ。アスラン? 何? 僕の事をどういう風に思ってるの?」

「何でもないと言っているだろう! キラ!」

「えー。絶対に何でもない事無いと思うんだけどなぁ」

 

「き、キラ? アスランも困っていますし。(わたくし)と一緒にお話をしながら帰りませんか?」

「えー。僕はもうちょっとアスランと話をしてくからいいよー」

「そ、そんな!」

 

「もう良いだろう! 僕は何も言おうとはしていない!」

「うそだー! ウソウソー! 僕には分かるぞー!」

 

「くっ、ラクス嬢……貴女が余計な事を言わなければ!」

「アスラン! 貴方が余計な事を言わなければ!」

 

「ねー! もう! 二人で仲良くお話してないでよー!」

 

 アスランとラクスは互いに悪態をつき。

 三人以外誰もいない幼年学校の教室ではキラの叫び声が響き渡るのだった。

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