ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第108話『PHASE-46『怒りの日2』』

 ジェネシスという名前の兵器によって地球連合軍は壊滅的な被害を受けて撤退していった。

 だが、戦いはまだ終わっていない。

 それどころかより最悪な形となって戻ってくるだろう。

 

 平和を目指す三隻同盟に参加している者達はその様に考えて、プラント近くの宙域に潜伏しながらその時を待っていた。

 

『発射されたのはγ線です。線源には核爆発を用い、発振したエネルギーを直接コヒーレント化したもので、つまりあれは巨大なγ線レーザー砲なんです。地球に向けられれば強烈なエネルギー輻射は地表全土を焼き払い、あらゆる生物を一掃してしまうでしょう』

「撃ってくると思いますか? 地球を……」

「強力な遠距離大量破壊兵器保持の本来の目的は……抑止だろう。だがもう、撃たれちまったからな。核も、あれも……どちらももう躊躇わんだろうよ」

 

 マリューの不安そうな声に、バルトフェルドはやや冷たく言葉を返した。

 そして、周囲の者達の視線を感じ、言葉を付け加える。

 

「戦場で、始めて人を撃った時、俺は震えたよ。だが、直ぐ慣れると言われて、確かに直ぐ慣れたな」

「あれのボタンも核のボタンも同じと……?」

「違うか? 人は直ぐ慣れるんだ。戦い、殺し合いにも」

 

「もしそうなのだとしても……いえ、そうなのだとすれば、コーディネーターとナチュラル。互いが手を取り合いながら生きる世界にだって、慣れる筈です。人類は」

「……そうであって欲しいわね」

「はい。ですが、未来の話は、まだ未来が残っていた場合の話です。まずは未来を作りましょう。こんな所で全てを終わらせるなんて、僕は受け入れられない」

 

「キラの言う通りですわ。(わたくし)達はまだ何も終わってはいません。人は分かり合うことが出来る。それを世界に示しましょう」

「うん!」

「じゃあ決まりだな。我々の目的は、核とジェネシス。どちらも防ぎ、戦いを終わらせる……シンプルだが、容易じゃない」

「それでも、やらなきゃいけない。そうだろ? キラ」

「うん。そうだね。僕は必ず……」

 

『おいおい。話が違うんじゃねぇの?』

『突然どうしたんですか。ディアッカ』

『いやだってよ? この期に及んで、僕がーとか言ってるからよ』

 

 アークエンジェルからの通信で軽口を飛ばしてくるディアッカにアスランはフッと笑う。

 そして、意味が分からないとキョロキョロしているキラに語り掛けた。

 

「キラ。お前一人で戦おうなんて考えるな。ここにはみんなが居る。みんな、お前と同じ様に平和を願ってる。目指してる」

「……アスラン」

「そうだぞ! キラ! まずはお姉様である私を頼れ!」

「カガリ……」

「みんな想いは一緒。そうでしょ? キラちゃん」

「……はい」

 

 キラは多くの言葉に、一筋の涙を流してから大きく息を吸って、吐いた。

 そして、満面の笑顔で『お願い』をする。

 

「じゃあ、みんなの命を預けて下さい。僕たちで止めましょう。この戦争を!」

「「「あぁ!」」」

 

 キラの言葉に、皆が覚悟を決め、頷いた。

 例え、この先に広がる戦場が地獄の底であろうと……その先に希望があるのだと信じて。

 

 

 それから会議は終わり、それぞれの艦、それぞれのモビルスーツへと向かおうとしたのだが……そんなキラをラクスが捕まえて、二人きりで話したいと呼び止めた。

 

「ラクス……! 分かった。アスラン。カガリ。先に行ってて」

「あぁ」

「後でな」

 

 そして、二人きりになりキラは不安そうに震えているラクスを抱きしめて微笑んだ。

 

「ラクス。どうしたの? まだ不安?」

「……はい。やはり、こうして貴女を見送る時になると不安ですわ」

「ふふ。可愛いね。昨日はあんなに満たされた顔をしてたのに」

「それは……恥ずかしいですわ」

 

「大丈夫。僕は必ず戻ってくるよ。君の元へ。ジェネシスも核も両方止めてさ」

「……キラ」

 

 キラは軽くラクスに口づけをすると微笑み、ラクスの頬を軽く撫でた。

 そして、再度口づけを落としてから、行ってくるねと言い残し、そのまま去っていくのだった。

 ラクスは、いつかの時と同じ様にキラをただ見送る事しか出来ず、両手を握り合わせながらただ、キラの無事を願った。

 

 

 また、キラ達と別れ通路を進んでいたアスラン達も出撃前に言葉を交わしていた。

 

「……良かったのか?」

「何がだ?」

「ラクスのこと。カガリは反対するかと思ってた」

「まさか! 反対などしないさ。キラの選んだことだ。私が反対する理由はない」

「……カガリ」

「それに! だ。まだまだ時間はあるからな。見極めるのはゆっくりでも良いだろう?」

 

 通路のガラスから見える地球を背に、カガリは輝く様な笑みをアスランへ向ける。

 その笑顔に、アスランはあっけにとられた様な顔で聞き返した。

 

「どういう意味だ?」

「どの道戦いが終わればキラはオーブへ戻る。その時、一緒に来るのであれば、私が直々に監視し、キラをどの程度愛しているのか見極められるし。来ないならそれまでだ。失恋してキラが泣いてもお姉ちゃんが優しく慰めてやるという話だな」

「まったく……困ったお姉ちゃんだな」

「仕方ないだろう! キラもセナも呑気な妹なんだからな! 私がしっかり見てやらなきゃな!」

 

「……なら」

「うん?」

「その未来を護る為にも、生き残らなきゃな。カガリも、キラも、ラクスも」

「それに! お前もな!」

 

 自然な流れで自分を外したアスランに、カガリはバシッとツッコミを入れる。

 それなりに長く共にいて、言葉を交わして、アスランという人間がどういう人間か見えてきたカガリはアスランに軽く拳を向けながら想いをぶつけた。。

 

「お前が死んだらキラやセナが悲しむって言っただろ? 死なせないからな。お前」

「……カガリ」

「パーツのまま持ってきたストライクルージュがどうにか間に合ったからな。今度は私も出られる。だからキラとお前の背中は私が守ってやる!」

「ちょ! ちょっと待て! カガリ!」

「あん?」

「出るって……ストライクルージュ!?」

「そう! 既にフレイ・アルスターの奴が同じ名前の機体に乗っていた事は驚いたが、こっちはこっち。あっちはあっちだ。オーブの技術力の高さをだな……!」

「そうじゃなくて! なんでお前が戦場に出るんだって言ってるんだ!」

 

「なんだよ! モビルスーツの訓練は受けている。何も問題は無いだろう。それに私はキラやセナの姉なんだぞ。モビルスーツの操縦にはかなり自信がある」

「いや……けど」

 

「出来ること、望むこと、すべきこと。みんな同じだろ? 私だって、出来る事があるのだから、それをやりたいのさ。それは自然な事だろう?」

「……カガリ」

「戦場を駈けても駄目なこともある。だが今は必要だろ? それが。だから私は行くのさ。それが今の私がするべき事だからな」

「ったく。分かったよ。なら、お前の事も俺が守ってやる」

「おーおー。期待してるよ! 互いにな。生き残ろう! まだお前とは話したい事が色々あるんだ」

「あぁ」

 

 カガリはアスランと手を繋ぎ合い、笑う。

 不安など何も感じさせない笑顔で。

 

 

 そして、アークエンジェルの格納庫近くにある宇宙が見える通路でも、言葉を交わす者達が居た。

 

「遂に最終決戦か」

「不安なの?」

「不安じゃない者などいないだろう。私も。お前も」

「あら。よく分かるわね」

「私は人の心を読む事が出来るのでね」

「アンタ。冗談も言えたのね」

 

 暗い宇宙を見ながら言葉を交わすのは、フレイとオルフェだ。

 仲間同士で集まる中、二人は自然とその輪から外れてここに来ていた。

 同じ艦のモビルスーツのパイロットという繋がりしかない二人であるが、奇妙な友情の様な物を感じていた。

 

「でもアンタ。良かったの?」

「何がだ?」

「例のピンクの歌姫。キラの事取られちゃって」

「元より私が入る場所などない。キラは性能の劣る機体であろうと、どの様な強大な相手であろうと、ラクスの愛だけで戦う者であったからな。なる様にしてなった。それだけの話だ」

「ふぅーん。良いんだ。それで」

「あぁ。それに……今にして思えば、私がヘリオポリスへ行ったのは……確かめたかったからかもしれない。愛とは、何なのかを」

「何? アンタ。愛の意味なんか探してたの? ガキくさ」

「君に言われるとは心外だな。結局何も言えず、ここまで意地を張っているというのに」

「はぁ?」

「これがおそらく最後の戦いになる。心残りは無いようにしておけよ」

「アンタ、何言って……「ふ、フレイ!」っ! サイ……!」

 

 オルフェは後の事をサイに任せ、右手を軽く振りながら歩いて行った。

 あの無駄に意地をはる事ばかりが得意な娘も、これで少しは素直になるだろうと、二人をその場に残し通路を去る。

 

「フレイ……あの、俺」

「サイ。先に言っておくわ」

「っ! な、何かな」

「サイがずっと私の事気にしてたの、気づいてた。でも、私、素直じゃないから……」

「あぁ。分かってるよ。でも、俺はそんなフレイが好きなんだ」

「……バカね。貴方、本当に」

「良いんだよ。俺はバカで良い」

「うん。分かった。じゃあ私も、全部終わったら、サイに言いたいことがあるの」

「……あぁ。待ってるよ」

 

 それから。

 二人の影は静かに重なり、通路には静寂だけが残るのだった。

 

 

 そして、それぞれが最後の言葉を交わし合い、戦いへの準備を終わらせる。

 

『ジャスティス、フリーダム、出撃スタンバイ』

『ストライクルージュ、パワーエクステンダー、フロー正常です。パイロットがルーキーです。くれぐれも支援AIの確認願います』

 

『しっかし、俺たちはどうするかねぇ。敵前逃亡。やっぱ銃殺かな』

『そこはクライン元議長にうまい事やってもらうしか無いんじゃないですか?』

『何? 二人はプラントに戻らないの?』

『戻れるのは戻りてぇけど、戻ったら殺されるからなぁ』

『イザークなんか裁判関係なく殺しに来るかもしれませんよ』

『あり得るな……!』

『ふーん。なら、オーブに来れば? アークエンジェルも戦後はオーブに来るみたいだし。アンタ達もそうすれば良いじゃない』

『オーブかぁ』

『オーブ。可愛い子いっぱいいるわよ。キラ様とセナ様、カガリ様を守った英雄の一人って言ったらモテるんじゃない?』

『お! マジか! イザとなったらオーブ軍に入ろうかな! 俺』

『単純で良いですねぇ。貴方は』

 

 しかし、オーブ軍も悪くないかと二コルは考えながら、ブリッツの最終調整を終わらせる。

 そして、二人の会話を静かに聞いていたカナードもまた、心の中でプレアと言葉を交わしていた。

 

(感じるか? プレア)

(えぇ。強く黒い意思が宇宙に広がっています。これはラウさんですね)

(あぁ。ラウはきっと、憎しみでナチュラルを滅ぼそうとするつもりだ。俺たちが止めなきゃ駄目だ。キラは、ラウを殺せない)

(あなたは良いのですか?)

(ラウも心の底じゃあ止めて欲しいと願ってる。オーブがある地球を撃つ事にためらいを感じてる。だから、ラウを止めてやることがキラの兄として、俺が出来る事さ。失敗作でもな。俺はキラの兄なんだ)

(カナードさん)

(だから、悪いが……地獄への旅、付き合ってもらうぜ)

(ええ。共に行きましょう)

 

 

『地球軍、ZAFT交戦を開始しました』

 

『核を持った別働隊がいるはずだ! そいつを探せ!』

『黒いアークエンジェル級! ドミニオンが部隊の中心に居る筈だわ! 索敵範囲を広げて!』

 

 そして、遂に……!

 アークエンジェルの索敵が、ドミニオンの存在を発見した!

 

『オレンジ25、マーク12、アルファにドミニオンです!』

 

 ドミニオンが発見された事で、全ての艦船はモビルスーツを出撃させる。

 

『モビルスーツ、発進して下さい』

『全艦、モビルスーツ発進!』

 

 

『ムウ・ラ・フラガ、ストライク、出るぞ!』

『ディアッカ・エルスマン、バスター、発進する!』

『ニコル・アマルフィ! ブリッツ、行きます!』

『カナード・パルス! ドレッドノート! 出す!』

『フレイ・アルスター。ストライクルージュ! 行くわ!』

『オルフェだ。ガンダム行くぞ!』

 

 

『ストライクルージュ、いくぞ! ……うっ!』

『はぁ!? カガリさんが出撃したぁ!? バカなんですか! あの人! ったくもう! シン・アスカ! ムラサメ行きます!』

『護衛対象が多いな……シン。油断するなよ。レイ・ザ・バレル。ムラサメ発進する!』

 

 

『アスラン・ザラ、ジャスティス、出る!』

『キラ・ユラ・アスハ、フリーダム、行きます!』

『ミーティア、リフトオフ!』

 

 

 それぞれの艦から出撃した者達は、平和を求め、宇宙を駆ける。

 全ての戦いを終わらせるために。

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