ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第109話『PHASE-47『終末の光1』』

 三隻同盟からモビルスーツが出撃した直後の事。

 ヤキン・ドゥーエ後方にあるジェネシスから放たれた光が、再び戦場を眩く照らした。

 

「アレは!? 推定される目標は!?」

「照準は月! プトレマイオスクレーターと思われます!」

 

 ナタルの叫ぶ様な声に、カズイは即座に言葉を返した。

 その報告に、ナタルは地球では無かったと安堵しながらも、送られてきた映像を見て、歯を食いしばる。

 そこには、月基地がジェネシスによって壊滅している光景が映し出されていたからだ。

 

「こんな戦いに、何の意味があるというんだ!」

『これ以上あれを撃たせてはなりません!』

『矛先が地球に向いたら終わりだぞ!』

 

「艦長! ドミニオン及び地球軍の大型モビルスーツが動きます!」

「目標は!?」

「プラント群です!」

 

『くっ! プラントが!』

「追います! 地球軍はこちらで! エターナルとクサナギはジェネシスを!」

『分かった!』

 

 マリューはバルトフェルドに叫びながら、アークエンジェルを転進させて、ドミニオンと、核ミサイルの部隊を追いかけた。

 プラントへの直接攻撃をさせない為に。

 

 そして、アークエンジェルにはフリーダム、ジャスティス、バスター、ブリッツ、フレイの駆るストライクルージュ、ガンダムが付いていくのだった。

 クサナギ所属の部隊と、ストライク、ドレッドノートだけはジェネシスへと向かう。

 

 

 戦場を避け、プラントへ向かうドミニオンにアークエンジェルとモビルスーツが迫った。

 

『アズラエル様。ピースメーカー隊。準備完了しました』

『発進だ! あの忌々しい砂時計! 全て叩き落すんだ!』

『ハッ!』

 

『アガメムノン級より、モビルアーマーの出撃を確認!』

「あの部隊は!」

『やらせるか!!』

 

 そして、後方から追いかけるキラ達だけでなく、前方のプラントからも迎撃の為の部隊が出撃していた。

 

『敵モビルアーマー部隊接近。距離450!』

 

『来るぞ! 散開! プラントへ放たれる砲火、一つたりとも通すんじゃない!』

『『『はっ!』』』

 

 

『ブルー117、マーク52アルファにアークエンジェル。接近してきます』

『あの艦は……! まだ僕らの邪魔をしようっていうのか!』

『迎撃だ! アークエンジェルを落とせ!』

 

「っ! アズラエルさん!」

 

 アークエンジェルが接近しようが、ZAFTのモビルスーツ部隊が展開されようが、変わらずプラントへ核を放とうとするアズラエルにキラは通信を繋げて訴えた。

 ピースメーカー隊の核ミサイルを全て撃墜し、アズラエルへと呼びかける。

 

『キラか! 何の用だ!』

「貴方を止めに来ました! こんな事をしても何の意味もない!」

『意味があるか、無いか! それを決めるのは僕だ! 君じゃない! この戦争を終わらせて平和を作ってやるって言ってるんだ! 黙って見ていろ!』

「そんな事、出来る訳がないでしょう! 武器を捨てて下さい!」

『武器を向けながら言う言葉じゃないんだよ! それは! 君も、ZAFTも!』

「……なら!」

 

 キラはミーティアから機体を分離させ、ドミニオンの前で両手を広げて制止した。

 そして、コックピットを開き、生身で外に出る。

 

『キラ!? 何をやってるんだ! 早く戻れ!』

「アスラン。黙ってみていて。これは、僕のやるべき事なんだ」

 

 キラは両手を広げたまま、ドミニオンをジッと見据えた。

 

「戦争を、ここまで激化させてしまったのは……僕だから」

『……!』

「だから、話をしましょう。アズラエルさん」

 

 あくまでも武器ではなく、対話を求めるキラに、ドミニオンの環境でアズラエルは拳を握りしめて、椅子に叩きつけた。

 キラはまだ信じているのだ。

 平和を願う心を、あれだけ踏みにじられても、利用されても、それでも……まだ話し合いが出来ると信じている。

 愚かで……どうしようもなく、愛おしい子であった。

 

 アズラエルの頭には、かつて大西洋連邦で共に過ごした時間が蘇っていた。

 穏やかな時間。

 愛娘の姉として、アズラエルの友として、共に語らい合った日々。

 

 それがあったからこそ、アズラエルはコーディネーター全てを憎むのではなく、停戦の道を探していた。

 しかし、それを壊したのはコーディネーターだ。

 アズラエルの大切にしていた物を踏みにじって来た。

 ずっと、ずっと!!

 

『艦長!? 急速に接近するモビルスーツ!』

『何!?』

『迎撃しろ!』

『いえ、それが……! これはホープです!』

『何!?』

 

 キラがアズラエルを止めた事を好機として、戦場の彼方から急接近したホープはドミニオンのシステムを一部奪い取り内部へと強硬着艦する。

 そして、呆然としている格納庫の整備員に軽く挨拶をしてから、ドミニオンのブリッジへと飛び込むのだった。

 

 

「アズラエルさん!」

「……君も来たのか。セナ」

「はい。お話合いをする為に。武器は持っていません」

「だろうね。君も、キラも……本当に愚かだな」

 

 アズラエルはため息と共に椅子から立ち上ると、懐から銃を抜いてセナに向けた。

 そして、冷たい声でセナに語り掛ける。

 

「僕を甘く見たな。悪いけど、僕は障害を排除する為なら何でもやる人間なんだ」

「はい。存じています」

「だったら、さっさとここから逃げる方が賢明だと思うけど?」

「撃ちたいのでしたら、撃ってください」

「なに……?」

「私が撃たれれば、お姉ちゃんも諦めるでしょう。アズラエルさんとの交渉は出来ないと」

「撃たれれば死ぬ。それは分かってるんだよね?」

「はい。一度それで死に掛けましたから。よく知っています」

「それでも、逃げないと?」

「……はい。まだ私は、私達は、アズラエルさんと対話する事が出来ると。信じていますから」

 

 静寂に包まれたドミニオンのブリッジで、アズラエルは静かにセナを見つめ続けた。

 セナもまた、静かな瞳でアズラエルを見つめ続ける。

 

 この時間がいつまでも続くかと思われたが、静寂を破ったのはアズラエルだった。

 不意に右手に握っていた銃の引き金を引いたのだ。

 

「あ、アズラエル様!?」

『セナ!』

 

 サザーランド大佐と、キラの声が同時に響き、周囲のブリッジクルーが恐る恐るセナを確認すると、セナは頬から血を流しているだけで、変わらずアズラエルを見つめているのだった。

 

「……どうして君たちは、そんなにも」

 

 銃を持っていて、脅している筈のアズラエルが何故か追い詰められた様な顔になり、セナを見据える。

 しかし、そんなアズラエルにも、セナは変わらず慈愛に満ちた柔らかい笑顔を向けるのだった。

 

「人は、追い詰められた時に本性が出る、とよく聞きますが、私は違うと思います」

「……? 急に、何の話だい?」

「私は、穏やかな時間。心が安らいでいる瞬間にこそ、その人の本質が出るのだと思います」

「それで?」

「私は、マリーさんと私達とアズラエルさんの奥様の皆でお茶会をした時のアズラエルさんが本質なのだと思います。あの場所に憎しみは無かった」

「当たり前だろう。その場所には憎むべきものなど何も無いんだ」

「なら、それなら! アズラエルさんの中に元々憎しみなんか無いって事じゃないですか……! それは無くても! アズラエルさんは生きていける」

「……」

「コーディネーターを憎まなくても、生きていけるんです! アズラエルさんだけじゃない。みんな! 憎しみ以外の想いを持って、生きていける」

「それでも、僕は、コーディネーターが憎いんだよ。僕の大切な物を踏みにじるあいつらが!」

「しかし、アズラエルさんを踏みにじったコーディネーターは、全てのコーディネーターでは無いでしょう? プラントを核で撃っても、名も知らぬコーディネーターが死ぬだけです」

「それでも、コーディネーターを全て殺せば、消えるさ」

「本当ですか?」

「君の、その目は……」

 

 セナは虹色に輝く虹彩でジッとアズラエルを見つめた。

 その偽りの奥にある本質を。

 

「アズラエルさん。コーディネーターは何をしても滅びはしません」

「……核を撃たれれば、誰でも死ぬ」

「命は、そうでしょう。しかしまた新しいコーディネーターが生まれてくる」

「そうなれば、また滅ぼすだけだ」

「そうやって、いつまで戦い続けるつもりなのですか? 人類が滅びるまで?」

「それは……」

「アズラエルさんも本当は分かっている筈です。この戦いの果てに待っているのが、未来ではなく、終末であると」

「……」

「そして、アズラエルさんも、罪は生まれにあるのではなく、その生きて来た生の中にあると……分かっているはずです。お姉ちゃんを信じる事が出来たアズラエルさんなら……! 分かるはずです! 信じることが、出来る筈なんです!」

 

 セナは必死に訴えた。

 アズラエルなら分かると。

 

 そして、一歩、また一歩と歩いて、アズラエルの銃を己の胸に押し付けた。

 

「それでも、やはり理解出来ない。許せないと言うのであれば、私を撃って、その憎しみを消してください。それで、アズラエルさんがお姉ちゃんと共に地球の未来を考えてくれるのなら、安い代償です」

「……まったく、君は」

 

 アズラエルは真剣なセナの顔を見て、大きなため息を吐いた。

 そして、セナの手を払いのけると、銃の安全装置を戻し、懐にしまった。

 

「全てのコーディネーターを赦すつもりはない。ですが、もし君たちがジェネシスを破壊する事が出来るとい事であれば、和平に向けて考えてあげても良いでしょう」

「……! アズラエルさん」

「だから、君も、もうモビルスーツなど降りて……」

 

「ね、熱源接近! モビルスーツです!」

「何!? 迎撃しろ!」

「これは……早い!!」

 

『フン! 落ちたものだな! ムルタ・アズラエル! 小娘の甘言に惑わされるとは! やはり世界の支配者はこの俺が相応しい!』

「どうやら小物が邪魔をしに来たみたいですね。サザーランド大佐。撃墜してください」

「ハッ! モビルスーツ部隊! 迎撃だ!」

 

 ドミニオに向かって飛び込んできた漆黒のモビルスーツは器用にもストライクダガーの攻撃を避けながらドミニオンに接近すると、巨大な右手をドミニオンのエンジン部に叩きつけて、ビームを放った。

 その影響で、ドミニオンが大きく揺れる。

 

「エンジン部に直撃しました!」

「被害はどうなっている!?」

「120から152ブロックまで閉鎖!」

「推力30%に低下!」

「今の攻撃で火器にも影響が出ています!」

 

「くっ! 面倒な! セナ、君は先に脱出しなさい。我々も脱出する」

「なら、アークエンジェルへ!」

「我々が向かって、殺されなければ良いですがね」

「マリューさん達はその様な事はしません!」

「……分かりました。では今だけは信じてあげましょう。総員脱出だ! サザーランド大佐!」

「えぇ。分かっております。脱出艇を用意しろ! 我々はアークエンジェルへ脱出する! モビルスーツ部隊は脱出艇を護衛しろ!」

 

 

 ようやくまとまった地球軍との話し合いに水を差したモビルスーツに、キラは急いでフリーダムのコックピットへと乗り込んで立ち向かう。

 だが、そんなキラの前に、漆黒の宇宙から数機のモビルスーツが現れて、ビームサーベルを振り下ろしてくるのだった。

 

「こいつ等! ミラージュコロイド!?」

『ふははは! 大人しくしろ! キラ・ユラ・アスハ! そうすれば、痛い想いをしなくてすむぞ?』

「何が!」

 

 キラはフリーダムを操って、目の前に現れたモビルスーツへと迫る。

 が、一機のモビルスーツを狙おうとしても、すぐ近くにいるモビルスーツが上手くカバーに入ってしまい攻撃を防がれてしまう。

 そして、さらに別のモビルスーツが隙を作ったフリーダムに向かってミサイルを放つのだった。

 

 激しい爆発を受けながら、キラはモニターをジッと見据えた。

 アスランと同等か、それ以上の強さ。

 これほどのパイロットが複数いるなんておかしいと。

 

『キラ!』

「アスラン! 気を付けて! こいつ等! 普通じゃない!」

『みたいだな!』

 

 十数機現れたモビルスーツはどれも似たような見た目をしたGタイプのモビルスーツであり、まるで一人の人間が同時に全ての機体を操っているかの様な奇妙さがあり、キラたちだけでなく、援護に来たディアッカ、二コル、フレイ、オルフェも戸惑った様な声を上げるのだった。

 

『なんだ、こいつ等!』

『油断しないで下さい! ディアッカ! フレイさん! これだけの練度! 並のパイロットではありません!』

『違うわ! こいつ等!』

『人間じゃない! 機械だ!』

『『え!?』』

 

『ふははは! 気づいたか! 愚かなる者達よ。貴様らの相手をしているのは人形だ。お前たちの戦闘データを元に戦闘を自動で行う様にプログラムした戦闘する人形! モビルドールとでも言おうか!』

『モビルドール!?』

『そして! 全ての機体が核動力で動いている! このままプラントへ向かえば、どうなるかな!? ふふふ、ふはははは!』

「そんな事! させない!」

『はっ! させない。か! 健気な物だな! キラ。お前が大人しく俺に従うのであれば……!』

 

『その必要はない!! イザーク!』

『っ!? こ、この声は!? 貴様、アスラン! 生きていたのか!?』

『二コル! ディアッカ! フォーメーションBだ! 一機ずつ落とすぞ!』

『オーケー!』

『分かりました!』

 

『なに!? 二コル!? ディアッカ! 貴様ら! どういう事だ!?』

『イザーク。細かい話はまた後で!』

『そうそう。今はこいつ等を落とさないとよ! キラちゃんが変態に狙われてるんだぜ!?』

『~~! 後でだな! 後で必ず話を聞くからな!』

 

 イザークはやけになって叫びながら、モビルドールの群れに突っ込むアスランについてゆく。

 そして、ジャスティスの動きに合わせて、ジャスティスがシールドで弾き飛ばした機体を背後からビームサーベルで突き刺して、撃墜。

 そして、イザークのデュエルを狙う機体を、ディアッカがバスターで狙撃し、また、接近してくる機体をブリッツがミラージュコロイドで接近しながらビームサーベルで貫いた。

 

『キラちゃんのデータが入ってるわりに、随分と弱くねぇか? キラちゃんなら今のだって余裕でかわすし、逆にこっちが落とされてるぜ!』

『所詮は人形ですからね。キラさんにはなれないという事です』

『フン! 俺の方が強いのだから、この程度は当然だ』

『少し前に負けていただろう? イザーク』

『貴様! アスラン! この戦争が終わったら覚えてろよ!?』

 

 軽い言い争いをしながらも次から次へとモビルスーツが破壊されてしまい、ムドウはナイトメアの中で怒り、叫んだ。

 

『くそっ! この程度か!? 仕方ない。ここは撤退を……!』

『逃げらると思っているのか?』

『っ!? なに!? ミラージュコロイドを……!』

『姿を隠すだけの臆病者を見つけるのは容易い事だ!』

 

 オルフェはガンダムでナイトメアに接近し、ビームライフルで狙撃する。

 例え機体を隠す事が出来たとしても、アコードとしての力と、ガンダムに乗り、より冴えわたっている直感でナイトメアの位置を狙い撃った。

 

『そこだ!』

『くっ! バカな! だが……! この程度ではこのナイトメアの装甲は破れん! 愚かなり! ふははは!』

『接近戦なら!』

『骨董品にパワーで負けると思っているのか!』

 

 ビームサーベルを抜き、ナイトメアへと接近戦を仕掛けたオルフェであったが、ナイトメアは容易くガンダムのビームサーベルを受け止めてしまった。

 激しいプラズマを発生させながら、二機はぶつかり合う。

 だが、言葉通り、ナイトメアの方がパワーは高いらしく少しずつだがガンダムは押されて行った。

 

『このまま散れ!』

『ふっ……二流だな。お前は』

『何!?』

『敵の足が止まっているぞ! フレイ・アルスター!!』

 

『はぁぁああああ!!』

『は!? な、なに!?』

 

 戦場で立ち止まってしまったムドウは、その隙だらけの姿を、背後から急接近していたストライクルージュによって貫かれた。

 何の迷いもなく。

 セナのサポートを受けながら、キラの想いと共に戦うフレイによって、深くビームサーベルを突き立てられる。

 

 その攻撃によって左肩を損傷しながらもムドウはナイトメアを動かして、ガンダムとストライクルージュを破壊しながら遠ざけた。

 だが、フレイは構わずムドウに接近し、ビームサーベルを振るう。

 

『な、なめるな! 小娘! こちらには、これまでのキラの戦闘データがあるのだ!』

『だから、何だってんのよ!』

『最強のパイロットのデータさえあれば! 何者にも、負けはしない!』

『舐めてんのは! アンタでしょうが!!』

 

 フレイはナイトメアの残された右腕の攻撃でシールドごと、左腕を吹き飛ばされながらも機体に触れる程接近し、ビームサーベルをナイトメアの胴体に深く突き刺した。

 

『アンタは所詮データ。私は、キラの想いと一緒に戦ってんのよ! その私が、負けるワケ無いでしょ』

『ばか……な……!』

 

 ナイトメアはストライクルージュの攻撃で爆散し、その爆発に巻き込まれそうになっていたストライクルージュをフリーダムが抱き上げて飛ぶ。

 激しい命がけの戦闘で、息を荒くしていたフレイは、モニターに映るフリーダムをそっと撫でた。

 

『フレイ! 大丈夫!?』

『えぇ。私は無事よ』

『よ、よかったぁ』

 

 安心したのか、涙ぐみながら微笑むキラにフレイは目を伏せながら笑う。

 

『だって……いつだって、貴女が助けてくれるから』

 

 そして、フリーダムはそのままフレイをアークエンジェルへと送り届け、ジャスティスと共にミーティアの加速でジェネシスへと向かうのだった。

 最後の目標を、破壊する為に。

 僅かに残る希望の灯を掴むために。

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