アークエンジェルがドミニオンに向かっていた頃。
ムウとカナードは因縁の相手と戦場でぶつかっていた。
『クルーゼ!』
『ラウ!』
「はっ! お前たちか!」
『これが望みか!? 貴様の!』
「そうだ! と言いたいがな! これは私のではない!」
クルーゼはプロヴィデンスという機体を操りながら、ビームライフルを撃つストライクの攻撃をかわし、ドラグーンシステムで全方位から攻撃してくるカナードの攻撃をかわす。
そして、言葉と共にビームライフルを放ち、カナードのドラグーンシステムによる攻撃端末を一つ、また一つと破壊するのだった。
「これが人の夢! 人の望み! 人の業!」
『チィ!』
「他者より強く、他者より先へ、他者より上へ!」
『ふざけるな!』
「競い、妬み、憎んで! その身を喰い合う!」
『ラウ! 俺たちは! それが全てじゃねぇだろ!』
「全てでないと言うのなら、今ここにある物はなんだ!? これが全てだ! ここには憎み合う者達しか居ない!」
『貴様の理屈だ! 思い通りになど!』
「既に遅いさ、ムウ。私は結果だよ。だから知る!!」
クルーゼはストライクとドレッドノートの砲撃をかいくぐって、ストライクに急接近するとそのまま右腕を斬り落とした。
そしてストライクを蹴り飛ばし、ドレッドノートへとビームライフルを放つ。
「自ら育てた闇に喰われて人は滅ぶとな!!」
ドレッドノートもまた、右肩にビームライフルの直撃を受けてそのまま吹き飛んで行くのだった。
逃げるストライクとドレッドノートを見ながら、クルーゼは満足げに笑い、呟いた。
「殺しはしないさ。これからプラントがキラとセナにとっての楽園になるとはいえ……二人を守る者は必要だからな」
そして、クルーゼは彼らを見逃し、そのまま次なる場所へと向かった。
プロヴィデンスが教えてくれる、ジェネシスを破壊する可能性のある次なる脅威へ。
「む? どうやら核は防いだ様だな。これでプラントは狙われない……ならば! 残るは!」
クルーゼは次なる目標として、エターナルとクサナギに目を付けた。
核が防がれた以上、キラとセナの帰る場所はプラント以外は必要ない。
オーブなど、キラとセナを戦いに巻き込むばかりで、クルーゼにとっては敵と同様に許せぬ存在であった。
そして、それはラクスも同じ。
キラやセナに剣を与えるなど、クルーゼにとって許せる存在では無かった。
だから……!
「ここで消えて貰おう! オーブ! そして、ラクス・クライン!」
クルーゼは多数の敵に対して、背中のバックパックに装備された多数のドラグーンシステムによる攻撃端末を解放した。
そして、二つの艦を囲むようにビーム砲を撃つ。
『っ!? 回避してください!』
『モビルスーツ接近! ブルー52、チャーリー!』
『アレは……!』
『回避! 取り舵!』
クルーゼの悪意に気づいたラクスが急いで回避と叫ぶが、既に遅く、クルーゼの放つビームはエターナルとクサナギの武装を破壊してゆく。
だが、それを黙ってみている事はなく、カガリがストライクルージュでプロヴィデンスへと突っ込んだ。
『止めろー!!』
『駄目です! カガリさん! その機体は!』
『ったくもう! レイ! カガリさんを護るぞ! あの機体、なんかおかしい!』
『……あぁ』
前に突っ込むストライクルージュを追うようにムラサメが二機追いかけた。
だが、プロヴィデンスはビームサーベルを抜いて接近戦を仕掛けるストライクルージュの攻撃を容易く受け止めると、ムラサメに対してはドラグーンシステムによる攻撃端末で迎撃をする。
『うわっ!? なんだよ! コレ!』
『ドラグーンシステムだ!』
『はぁ!? くそっ!この!』
シンとレイはドラグーンシステムによる攻撃をかわしながら、背中合わせとなりビームを放つが、異様な技量によって操られている攻撃端末を打ち落とす事が出来ず、また雨の様な攻撃にさらされてしまう。
そして、そうしている間にも、カガリは危機に陥っていた。
『邪魔をするな! 私達は平和を!』
「フン! 平和! 平和か! お前たちがキラとセナを戦いに巻き込んで置いてよく言う!」
『は、はぁ!? 私がキラとセナを戦いに巻き込んだだと!?』
「そうだ! あの子達は戦いなど望んではいなかった! だが、お前たちが自国の安全の為にと、兵器を作らせたのだろうが!」
プロヴィデンスはストライクルージュを引き離し、蹴りつけて、バランスを崩させてからゆっくりと肩に担いだ『MA-M221:ユーディキウム・ビームライフル』でストライクルージュを狙う。
一撃で仕留める為に。
それを防ごうとシン達はムラサメで向かおうとするが、ドラグーンシステムによる攻撃を避ける事に精一杯で、それ以上は何も出来なかった。
「お前の後はラクス・クラインだ……!」
そして、ビームライフルは放たれて、真っすぐにストライクルージュへと向かってゆく。
『カガリさん!』
『カガリ様!!』
『よけろ! カガリさん!』
ラクスも、周囲に居たオーブ兵も、シンも。
誰も助けられず、叫ぶ事しか出来ない中……遂にビームライフルがストライクルージュのコックピットを貫くと思われた……が!
ミーティアから緊急離脱をしながら突っ込んできたフリーダムがシールドで、プロヴィデンスの攻撃をギリギリのところで防ぐのだった。
そして、フリーダムとは逆側からストライクルージュを狙って放たれた攻撃端末によるビーム砲もまた、フリーダムと同じ様に飛び込んできたジャスティスによって防がれる。
「チィ! もう戻って来たのか!」
『カガリ! 大丈夫か!?』
『わ、私は大丈夫だ……だが!』
『アスラン! 君はジェネシスを! 僕はあの機体を、止める!!』
『キラ!? 駄目だ! 二人で!』
『もう時間がない! この人は、ラウ兄さんは、僕は止める!!』
キラはフリーダムのスラスターを全開にしてプロヴィデンスにぶつかるようにして飛び込んだ。
そして、そのままエターナルとクサナギから遠ざけるように飛び続ける。
それを見ていたアスランは、分かったと短く返して、ヤキン・ドゥーエへと向かってスラスターを吹かせた。
『アスラン!? どうするつもりだ!?』
『ヤキンに突入してコントロールを潰す!』
『アスラン!?』
この後に起こるであろう悲劇を知っているラクスは、アスランを止めようとするが、それで止まる男ではない。
だから、ラクスだけでなく、カガリもまたストライクルージュを動かしてジャスティスを追うのだった。
『私も行く!』
『カガリ!?』
『時間が無いんだろ!? 行くぞ!』
『駄目! アスラン! カガリさん!』
『大丈夫だ。任せろ!』
カガリは短く通信でそう告げて、アスランと共にヤキン・ドゥーエに向かった。
そして、カガリの援護にはムラサメが二機ついていくのだった。
『二人だけじゃ心配ですからね! 付いていきますよ!』
『バカ! お前らはクサナギの護衛をしてろ! これからZAFTの本陣に行くんだぞ!』
『だからこそ! 付いていかないと駄目じゃないですか! キラさんが泣くところなんか! 俺は見たくないんですからね!』
『……シン』
『俺も同意見です。どうか承認を』
『まったく! 私達から離れるなよ!』
『それはこっちのセリフっすよ!』
ヤキン・ドゥーエにアスラン、カガリ、シン、レイが向かっている頃。
キラは既にプロヴィデンスと激しい戦闘を行っていた。
並の者達では近づくだけで撃墜されてしまうであろう二人の激闘は、エターナルから離れ、ジェネシスへと近づきながらも続いていた。
互いにビームライフルを撃ち合い、互いのモビルスーツを傷つけあう。
「ラウ兄さん! こんな戦争! いつまで続けるつもりなんだ!」
『どちらかが滅びるまでだ! それが人の望みなのだから!』
「そんな事、誰も望んでない! みんな、自分の大切な人を守りたいだけなんだ!」
『ならばその手に持つ物はなんだ! その口から放たれる言葉はなんだ!?』
「くっ……!」
『正義と信じ、解らぬと逃げ、知らず! 聞かず! その果ての終局だ! もはや止める術などない!』
「そんな事!」
『人は滅びる定めだったのだ! その時が今来たに過ぎん!』
「それでも、兄さんは人の愛を信じていたじゃないか! どれほど悲しい過去があっても! それでも! 僕らと共に過ごしていた時は! 確かに兄さんは世界を愛していた!」
『あぁ、そうだ! その通りだとも! だが、そんな世界を壊した者が誰か知っているか!?』
「……!」
『あの日! 私はこの世界の真実を見た! 母を信じ、無垢に愛情を求める我が子を撃つ! 信じられぬからと! 未来に何かするかもしれないと! 娘を信じる事も出来ぬ者が親である世界だ! 何を信じようと、変わりはしない!』
「ヴィアさんは! 撃てなかった!」
『それでも銃は向けた! 私はあの時、セナの声を聞いた! 引き裂かれそうな絶望の声を! それが全てだ!』
プロヴィデンスの猛攻は激しさを増してゆき、ドラグーンシステムから放たれるビームを含めれば世界はビームの色で染まりつつあった。
逃げ場のない戦場。
押し寄せるビームと、クルーゼの叫び。
キラはギリギリの世界の中で、かわし、受け止め。
進む……!
悲しみの世界で、絶望の中に居る兄を救うために。
自由の翼を広げながら。
「それでも!!」
『っ!?』
「それでもセナは! お母さんを愛しているんだ!」
キラはドラグーンシステムによる攻撃端末をを一つビームライフルで撃ち落としながら叫んだ。
頭は普段よりもクリアになり、世界が止まって見える程にキラの意識は研ぎ澄まされてゆく。
「セナは、ただ、お母さんと一緒に、僕やカガリや、アスランやラウ兄さん。みんなと一緒に暮らしてた月での生活の様に! 幸せな場所で笑っていたかっただけだ!!」
『それが願いだとしても、人の欲望が尽きない限り、その願いは叶わない!』
「そんな兄さんの理屈!」
『それが人なのだよ! キラ!』
「違う!」
キラは強い叫びと共にビームサーベルを抜いて二つの攻撃端末を斬り落としながらプロヴィデンスへと迫る。
「人はそんなものじゃない!」
だが、クルーゼはフリーダムの攻撃をかわすと、再びビームを雨の様に浴びせながら叫んだ。
『何が違う! 何故違う!』
「くっ……!」
『戦場を見ろ! メンデルを思い出せ! この憎しみの目と心と、引き金を引く指しか持たぬ者達の世界で! 何を信じ、何故信じる!?』
「それしか見ようとしない兄さんが!」
『見えぬさ! それしか見えん! ここにはそれしか存在しないだろう! そうやって、君も利用されてきたのだろうが!』
「っ……!」
『苦しみ、悲しみ、痛みを抱えながら戦い続ける意味などどこにもない!』
キラはいくつかの攻撃端末を落とし、遂にはクルーゼの駆るプロヴィデンスへも攻撃を当て始めるが、それでもまだクルーゼの優位は揺るがない。
フリーダムもまた、プロヴィデンスの攻撃で傷ついているから。
既にいくつかの武装は破壊されていた。
『まだ苦しみたいか! いつかは! やがていつかはと! そんな甘い毒に踊らされ一体どれほどの時を戦い続けてきた!?』
「だとしても! 僕たちは、平和が欲しいんだ!」
『ならば受け入れろ! 既にジェネシスは発射体勢に入っている!』
「そんな!?」
キラはフリーダムのモニターからすぐ近くにあるジェネシスを見やった。
確かにクルーゼの言う通り、ジェネシスは動き始めている。
アスランは間に合わなかったのか。
分からない。
だが、それでもキラにはまだやるべき事がある。
やれる事がある。
『もはや止める術はない!地は焼かれ、人は帰る場所を失い! プラントだけが楽園となる!』
「そんな……」
『人が数多持つ予言の日だ!』
「そんなこと!」
『それだけの業!重ねてきたのは誰だ!! 滅ぶべきなのだ! 人などは! 争いを呼ぶ者達は!』
キラはプロヴィデンスの左肩を狙撃し、ビームサーベルを使えなくしてからビームサーベルを抜いて、駆ける……!
サイコフレームが放つ光を全身から出しながら、宇宙を駆けた。
「それでも!」
『くぅっ!?』
クルーゼがキラを止めようと攻撃端末からビームを放つが、フリーダムはどれだけ自機を傷つけられようと、構わず進み続けた。
あれから。
あの日から、遠く離れてしまった兄の元へ。
「それでも、僕は……! この世界を守りたいんだ!!」
『っ!』
「愛する人達がいる! この世界を!!」
そして、フリーダムのビームサーベルはプロヴィデンスを貫いて。
ジェネシスの発射口付近で停止した。
それから少しして……ジェネシスが発射される前に核爆発が発射口付近で起こり……フリーダムとプロヴィデンスからの信号は共に……途絶えた。