メイリンの協力も得られる事になり、キラ達はひとまずメイリンが掴んだという情報を見る為に彼女の部屋へ向かった。
女の子の部屋に入るという事で、イザークとディアッカは部屋の外で待ち、部屋の中にはメイリン、姉のルナマリア、キラとラクスが入る事になる。
「情報としてはそこまで多くないんですが……」
「良いよ。少しでも切っ掛けになる事はあるからね」
「はい……! それでですね。ちょうどプラントの監視カメラをハッキングして遊んでた時だったんですが……」
「アンタ。部屋に引き籠って何をやってるかと思ったら、そんな事やってたの?」
「もう! お姉ちゃん! 今、大事な話してるんだから!」
「こっちだって大事な話よ。まったく。まさか家族に犯罪者が居るなんて思わなかったわ」
「アハハ。大丈夫だよ。ルナマリアちゃん。メイリンちゃんは僕達に協力して、システムに侵入してたって事にするから」
「もう! 本当にウチの妹が申し訳ございません! キラ様方の寛大な配慮にはどれだけお礼をしても足りません!」
「お姉ちゃんは大袈裟だなぁ」
「アンタは少しは反省しなさい!」
ルナマリアはメイリンの頭を掴み、頭を下げさせる。
そんな二人の関係が、かつての自分とアスランを思い出させる様で、キラはから笑いをしながら元の話に戻すのだった。
「ま、まぁ。そういう訳だからさ。とりあえず情報を確認しても良いかな」
「は、はい! そうですね! ほら、メイリン!」
「分かってるよぉ。お姉ちゃんが余計な事しなきゃ、もう出してたんだからね」
「メイリ~ン?」
「ご、ごめんって、もう心配かける様な事はしないよ!」
メイリンは怒りを示すルナマリアに何度も謝ってから、再びパソコンへと向き直った。
メルヘンなピンク色で飾られているパソコンであるが、やっている事はメルヘンとは程遠い。
犯罪に両足……どころか全身を浴びせているパソコンである。
が、これにより人命が救えるのならば安い物であった。
「ここ、ですね。マイウス市の封鎖地区の奥に毎日誰かが入り込んでいるんです。しかも一人や二人ではなく……大勢」
「……ここは」
「キラ」
「うん。よく覚えているよ」
「それで、おもしろ……あ、いえ。何か妙だなと思いまして! 内部の監視カメラにアクセスして、その人たちの足取りを追った所……これが」
そうしてメイリンが示した画面には、数機のモビルスーツと、その前で武器を手にしながら話をしている人々が映っていた。
「この人たちは私が見つけた数日後には居なくなってしまって、今はもう監視カメラの記録にも残っていないんですけど。何かとんでもない計画を考えているみたいなんです」
「その、計画というのは?」
「プラントの周辺宙域で、『核ミサイル』を搭載した地球連合軍の艦を発見。『核ミサイル』を極秘裏に回収し、再び戦争を始めると」
「……!」
メイリンの言葉にキラはキュッと唇を締めて、画面を強く見据えた。
その瞳に映るのは強い怒りだ。
再び戦争を始めようとしている者達への、怒り。
「ラクス。エターナルは動かせる?」
「はい。もしもの時の為に整備はしっかりと」
「ありがとう。じゃあ後はモビルスーツだけど……」
「でしたら、キラに相応しいモビルスーツを用意してありますわ」
「僕に……?」
「はい。コックピット付近は残っておりましたから、再び再建するのはそれほど難しくは無かったと、ハインライン様が」
「……! まさか」
キラは目を見開いて、ラクスを見つめた。
ラクスはキラの瞳に、微笑みで返す。
「そして、新しい自由の翼には、ラウ様も開発に協力しておりまして」
「兄さんが?」
「はい。翼はどこまでも届く様にキラは願っていると仰いまして、あの御方が最後に乗ったモビルスーツと同じシステムが搭載されております」
「っ! ドラグーンシステム!」
「まだ試作段階ではありますが、あの兵装の試験運用という事で、エターナルと共に動かしましょう。そして、この事件の解決を」
「そうだね。核ミサイルを使って戦争を起こすのなら、月基地か……もしくは地球か」
キラとラクスは言葉を交わしながら、これから起こる事に対して準備を進めようとしていたのだが。
それにメイリンが待ったをかける。
「キラ様! ラクス様! 待ってください!」
「うん? どうしたの? メイリン」
「あの人たちが話していた中で気になる事が一つありまして!」
「気になる事?」
「はい。あの人たちは『コロニー落とし』をすると言っていたんです」
「コロニー、落とし……?」
「プラントを地上に落として、地上を壊滅させると……! その為にプラントを狙うと! 私、それを聞いて、怖くなって、キラ様に助けて貰いたくて……!」
震えながら目尻に涙を浮かべているメイリンを、キラはそっと抱きしめて、大丈夫だよと囁いた。
その強さにメイリンは安心したように笑う。
そんな姿に、もしかして、一緒に着いてゆきたいと願っていたのは、プラントでただ待っているのが怖かったからかもしれない。
なんてキラは考えるのだった。
「じゃあ一緒に行こうか。プラントと、地球を守る為にさ。それに、戦争を……もう二度と起こさせない為に」
「はい!」
「そうですわね」
「あ、あの!」
キラの言葉にメイリンとラクスが頷いている中、おずおずとルナマリアが手を上げてキラにアピールをした。
「ん? どうしたの? ルナマリアちゃん」
「あ、いえ。その……可能であれば、私もご一緒させていただければと」
「あんまり良くは無いけど。理由があるのなら聞きたいな」
「その、そんなに凄い理由じゃ無いので、ちょっと恥ずかしいのですが、その……メイリンが……メイリンだけを戦場へ送るのが心配で」
「なるほど」
「あ! いえ! その、メイリンが我儘を言って、付いて行く事になったので、メイリンを説得すれば良い話なんですけど」
「ふむ」
キラはわたわたと両手を動かしながら必死に言葉を並べるルナマリアに、少しばかり考えて、ラクスに振り返った。
そんなキラに、ラクスはニッコリと微笑んで頷く。
「キラの思うままに」
「ありがとう。じゃあ、良いよ。一緒に行こうか」
「ほ、本当ですか!?」
「うん。それにちょっと手伝って貰いたい事も、あるしね」
「手伝い……?」
キラは少しばかり人の悪そうな顔でニヤリと笑うと、ルナマリアとメイリンを連れ、イザーク、ディアッカ、ラクスと共に急いでエターナルへと向かうのだった。
それから迅速に必要な資材を搬入し、エターナルの発進準備を進める。
艦長にはラクスの誘いで即座に頷いたバルトフェルド。
副長にはダコスタ、火器管制にはアイシャを、そしてオペレーターは……。
「んじゃ、オペレーターはメイリンね。よろしく」
「えぇえぇぇえええ!? わ、私ですか!?」
「メイリンなら大丈夫だよ。マニュアルはコレ」
「わわ、はわわ」
「ま、わかんない事があったら何でも聞いて」
「は、はひ! がんばります!」
「そしてー、ルナマリアね」
「は、はい!」
メイリンへの無茶ぶりを見て、何をさせられるんだろうか。と怯えた様な顔をしていたルナマリアはキラに連れられて格納庫へと向かい……「はい!」と指を刺された機体を見て、目を見開いた。
いや、まさか。そんな筈は……と思いながらもキラを見るが、キラはニッコリと笑うばかりである。
「ルナマリアは、この機体ね」
「な、ななな、なんで!? 私、モビルスーツなんて乗った事ないですよ! ZAFTの人にお願いすれば!」
「んー。確かにその方が良いんだろうけどさ。言っちゃ悪いけど、信用できないんだよね。今は誰が味方で、誰が敵か分からないからさ」
「でもー!」
「大丈夫だよ。この機体。ジャスティスには、ZAFTで一番強い人のデータが乗ってるからさ。ほら、アスラン・ザラって聞いた事あるでしょ?」
「それは、確かにありますけど」
「じゃあ大丈夫。困った時にはアスランが助けてくれるよ。どうも最近の研究でサイコフレームはそういう金属だって分かったみたいだしさ」
「さいこ……?」
「あー。気にしないで。こっちの話だから。だから、ルナマリアはなーんにも気にしないで乗ってくれれば大丈夫。戦闘になったら僕が戦うし。ルナマリアに任せたいのはあくまでサポートだから」
キラは能天気な笑顔で、アハハと笑いながらルナマリアの肩を叩く。
こんな事で安心など出来ないが、ルナマリアはため息を吐きながら再建されたジャスティスを見上げるのだった。
フェイズシフトがダウンしている為、あまり目立ってはいないが、それでも感じる威圧感は相当な物である。
ルナマリアは緊張で吐きそうな気持を抱えながらも、キラに助けを求める様な視線を向けた。
「はいはい。そんなに不安そうな顔しないでよ。大丈夫。僕だって初めてモビルスーツに乗った時は緊張したけど、何とかなったしさ」
「私はキラ様とは違うんですよ!?」
「分かってるって。だから、何かあったら僕が居るから」
「あの! 家に来た時に一緒に居た軍人さんが居るじゃ無いですか!」
「あぁ、イザークとディアッカ? 二人は別行動。僕らだけじゃ対処出来ない問題を二人にカバーして貰う感じ」
「そんなぁ~」
「大丈夫。安心して! 僕達は囮だからさ! エターナルはピンクだし。フリーダムとジャスティスを動かすからね。これは目立つよー? 地球連合軍には警戒されにくいっていうメリットもあるしね」
「全然安心じゃないですよ!」
「そう? ま、その内慣れるから。頼りにしてるよ。ルナマリア」
「キラ様~!?」
キラは機体の紹介も終わったと、再びブリッジへと向かった。
そして、ちょうどエターナルと通信をしていたイザークたちへと軽く視線を向ける。
「エターナルの出撃準備は順調だ。そちらはどうだ」
『ボルテールは既に出撃準備を完了している。そちらの出撃に合わせるつもりだ』
「了解した」
「私達も、準備が出来次第出撃しましょう」
「そうですな。後少しで全て完了する予定です」
「分かりました。では引き続きお願いします」
『そういえば……キラ!』
「ん? どうしたの? イザーク」
『本当にパイロットは補充は必要なかったのか?』
「うん。もう有望そうな子を見つけたからね」
キラは隣に立つルナマリアを見て、ニコッと笑う。
その笑顔に、ルナマリアは何とも言えない気持ちになったが、この場で出来ないと叫ぶのも何だか格好悪く感じてしまい口を噤んでしまった。
まぁ、キラに失望されたくないという様な想いもあったと思う。
『まぁ貴様がそう言うのであれば、分かった。しかし、クルーゼ隊長をカナーバ議員の護衛に。というのはどういう采配だ。確かに隊長ほどの御方なら護衛の任務でも問題無くこなせるだろうが……特務隊も護衛をしているのだぞ?』
「そりゃラウ兄さんが誰よりも信頼出来るからに決まってるじゃない」
『いや、俺が言いたいのはな。信頼できるからこそ、エターナルで共に出撃すれば……!』
「違うよ。イザーク」
『なに?』
「今回の事件、恐らくだけど一番危険なのは僕でもラクスでもイザーク達でもない。カナーバ議長なんだよ」
『なんだと……?』
「今動いてるのはザラ派でしょ。ザラ派からすれば、クライン派が政権を握っているのは面白くないだろうし。戦争を起こす上で一番邪魔だ。だから、何かあった時に、何でも出来るラウ兄さんにお願いしたの」
『なるほどな……分かった。ではそちらは任せるとしよう。クルーゼ隊長ならば何が起きても問題は無いだろう』
「そゆこと。後は僕らで何かやらかそうとしている連中を止めるだけ。簡単な仕事だね」
『フン。そうだな』
イザークはあくまで軽い調子で笑うキラに合わせて、鼻を鳴らしながら笑う。
今回の作戦であるが、決して簡単な作戦ではない。
未だ世界には多くの火種が残っているのだ。
何かの拍子に、再び世界を巻き込んだ大戦争が起きてもおかしくない。
だが、それでも……キラは一人では無いのだ。
イザークも、キラと敵対していた頃を想えば、仲間に居るという事実だけで心強い。
イザークと共に通信を聞いていたディアッカとニコルも同じ気持ちであった。
「お話中失礼。出港準備完了しました」
「分かりました。こちらはすぐにでも出ますわ」
『了解しました! ボルテールはエターナルの出航に合わせ、出撃します!』
「では景気よく行きましょうか。姫!」
「わかりました」
「機関始動! メインゲート開け! 各部システム最終チェック!」
「オールシステムズ・ゴー」
「では、参りましょうか。キラ」
「うん、行こう」
ラクスとキラは微笑み合って、開いていく隔壁の向こうを見つめた。
『エターナル発進準備よし』
『ラクス様、キラ様! どうぞご無事で!』
「分かりましたわ。では、エターナル! 発進して下さい!」
ラクスの言葉に合わせて、エターナルは大いなる宇宙へと飛び出してゆくのだった。