ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第118話『どうやら我々は嵌められた様ですな。ラクス様』

 戦闘も終わり、エターナルへと帰投したキラは、フリーダムを着艦させてから深く息を吐いた。

 そして、コックピットを飛び出して、真っすぐにシャワー室へと向かう。

 

「き、キラ様! お疲れ様です! さっきの戦闘! ホントに凄くて!」

「あぁ、ありがとうね。ルナマリア。でも、ごめん。汗でドロドロだからさ。シャワー浴びてくるよ」

「あ! そうですよね!」

 

 ニコニコと微笑みながら見送ってくれるルナマリアに笑顔で軽く手を振りながらキラは廊下へと飛び込んで、溜息を吐きながら逃げる様にシャワー室へと飛び込んだ。

 そして、冷たいシャワーで全身を冷やしながら、何もない壁を睨みつける。

 

 泥の様にへばりつく絶望は、どれだけ洗い流そうとしても流れ落ちる事はなく、キラの心にしがみついたままだ。

 何も変わらない。

 

 あれからまだたったの三ヵ月だ。

 何かが変わる程の時間は経っていないし、何かが変わる様な何かも起きていない。

 キラは何も変わらない世界で今日も生きている。

 

 目を閉じればユニウスセブンでの事は思い出せるのだ。

 あの事件からキラが殺して来た多くの命も、思い出せる。

 

 プラントと地球連合が停戦しようとも、キラの戦争は未だ終わっていないのだ。

 

「……はぁ」

「お疲れですわね。キラ」

「っ!? うわっ! ら、ラクス!? なんで、ここに!」

「キラが泣いている気がしましたので」

「いや、泣いてないよ! っていうか、狭いんだから入ってきちゃ駄目だよ!」

 

 シャワー室の中にある個人がシャワーを浴びるスペースで、キラは微笑んでいるラクスに驚き声を上げた。

 が、ラクスは気にせずキラに触れながら悲しそうに微笑むのだった。

 

「キラ。何か悲しい事があったのでしょう?」

「……ラクスには、何も隠せないね」

(わたくし)はキラの事をいつも見ていますから」

「嬉しいよ」

 

 キラはラクスに軽く口づけしてから「後で話すよ」と告げた。

 のだが、ラクスはキラの傍を離れず、ニコニコと微笑んでいるのだった。

 

「あのー? ラクスさん?」

「何かございましたか? キラ」

「いや、何かあったか? というか、今起こっているというか」

「ふふ。キラは可愛いですわね」

「そう言われるのは嬉しいけどさ? 今はちょっと待って欲しいというか」

「あら。キラは(わたくし)がお嫌いですか?」

「好きだけどさ。それはちょっと、意地悪な質問じゃない?」

「嬉しいですわ」

「聞いちゃいない。まぁ良いけどさ……はい。お応えしますよ。お姫様」

 

 そして、キラとラクスの影が重なり。

 それなりに時間が経ってから二人はブリッジへと向かった。

 

 

「状況はどうですか?」

「連中は完全に撤退したみたいです。今は連中が残したオペレーション・メテオの前線基地を調べている所ですな」

「そうですか。何か見つかれば良いのですが」

 

 先ほどまでの姿とは変わり、キリっとした顔でバルトフェルドと言葉を交わすラクスに、キラはやや呆れた様な顔で苦笑する。

 しかし、そんな姿を目ざとく見つけたアイシャがクスリと笑って意味ありげな視線をキラとラクスに送るのだった。

 

「しかし、連中の正体が分かったのは大きいですな」

「えぇ、そうですわね」

 

「パトリック・ザラの懐刀だったメイア・シヴァか」

「バルトフェルド隊長は、メイア・シヴァの事をご存知ですか?」

「えぇ。それなりには。ZAFTの前身的な組織であった黄道同盟の熱心な構成員でしたな。モビルスーツの初期開発に携わって……っと、まさか」

「はい。メイア・シヴァはキラやセナさんと共にジンの開発を行っておりました」

「そうですか……なるほど。という事は」

 

 バルトフェルドは途中で話を止めて、キラを見つめる。

 ラクスもまたキラを見つめて、少し申し訳ない顔をした。

 

「えと?」

「どうやら我々は嵌められた様ですな。ラクス様」

「えぇ」

「え? えと、どういう事?」

 

「メイア・シヴァの目的は、貴女という事ですわ。キラ」

「え? えぇぇえええ!? な、なんで!?」

「理由なんていくらでもあるさ。キラ様はモビルスーツの開発も製造も、操縦も何でも出来るからな。何をするにしても、近くにいる方が便利だろ?」

「そうですわね。そして、キラを呼び寄せる為にオペレーション・メテオの兆候をオーブへと知らせた」

 

 キラはラクスとバルトフェルドの言葉に目を見開いた。

 そして、彼女と戦った際に言っていた言葉を思い出す。

 

「しかし、メイアにとっても予想外だったのは、エターナルとフリーダムですか」

「えぇ。おそらくメイアはキラが単独か、それに近い形で来ると予想していたハズです。そうなればエネルギー切れを狙う事も出来たでしょう」

「ですが、フリーダムは核動力。エターナルにはミーティアがありますからな。例え戦艦を用意したとしても捕獲は難しいでしょう」

 

「でも……僕が目的だって言うんなら、それでメイアさんに接触する事も出来るんじゃないですか?」

「キラ!?」

「また戦争が始まるくらいなら、僕はどんな手段でもそれを止めたいよ」

「しかし、お前を味方に入れてやるのはおそらく次の戦争準備だぞ」

「でも、その間に説得するだけの時間があるじゃないですか」

 

「いえ……おそらく説得は難しいと思います」

 

 ラクスはキラの言葉を静かに否定しながら首を振った。

 そして、やや瞳を伏せながら言葉を重ねる。

 

「メイア・シヴァは……ユニウスセブンでご家族を亡くされているのです」

「……それで、僕を恨んでいるんだよね」

「キラ! それは違いますわ!」

「ラクス……!」

 

「プラントに……キラの事を恨んでいる者などおりません! 皆、分かっているのです! キラが、キラでも防げなかった事なのだと」

「でも、僕が……僕がちゃんと殺せていれば」

「キラ……!」

 

 キラが苦しみ藻掻く様に発した言葉に、ラクスは酷く辛そうな顔をしながら首を振った。

 それは、キラが何よりも望まない事だからだ。

 前の世界で、キラが殺して来た命にどれだけ心を傷つけてきたか。

 それを誰よりも知っているラクスは、キラにその道を選んで欲しくなかった。

 

 例えそれが、ただのワガママだとしても。

 

「私はキラに誰かの命を奪う方法以外の道を選んでいただきたいのです」

「……ラクス」

「その道がとても苦しく、困難な道である事は分かっています。ですが、それでも……」

 

 苦しそうな顔で両手を握り合わせながらラクスはキラに訴える。

 いや、祈っていると言っても良いだろう。

 

 そんなラクスに、キラはフッと息を吐きながら笑いかけた。

 ラクスを安心させる様に。

 その祈りに応える様に。

 

「分かったよ」

 

 キラは一度頷いてから、大きく息を吸い込んで、ラクスに向けた言葉に重ねて想いを伝えた。

 

「僕はさ。結構我儘なんだ」

「……はい」

「だから、助けられる命は全て助けるよ」

「……」

「でもね。その願いばかりじゃ難しい事も分かってる。だからさ。ラクスには悪いけど……僕は必要な時には撃つ。それが世界の為になるのなら。もう二度と、後悔したくないから」

 

 キラはハッキリと自分の想いをラクスに告げる。

 そして、自分自身も自分がそう考えているのかと納得して頷いた。

 

 自分の気持ちを言葉にする事で自分をより深く理解した。

 

「キラ。キラの願い。(わたくし)にも協力させて下さい」

「勿論! 言ったでしょ? 僕は我儘なんだ。だからさ。ラクスも当然巻き込むよ。だって、ラクスは僕と一緒にどこまでも行ってくれるんだもんね?」

「えぇ」

 

 ふわりと笑うラクスにキラは手を合わせ、エターナルのブリッジは優しい空気に包まれる。

 

 

 それから。

 キラ達はメイアの足取りを追うべく残された基地を調査したのだが、そこでメイアの更なる計画を知ってしまう。

 

 そう。

 メイリンが調べた『コロニー落とし』という言葉の通り、隕石ではなくコロニーを地上へ落とす作戦だ。

 

「……まさか、プラントを……いや……ユニウスセブンを地上へ落とそうとする計画だなんてね」

 

 少しおどけた様な顔で呟くキラであったが、その顔は青ざめており、唇も震えている。

 右手で自分を抱きしめて深く息を吐くが、平静を保つのも難しい様な状況だ。

 

「しかし、パナマへ落ちた隕石のサイズから考えれば……ユニウスセブンが地上に落ちた時の被害は考えるまでも無い。地上の人間は絶滅するだろう」

 

 そして、バルトフェルドの言葉にエターナルのブリッジに居る者たちは誰もが顔をこわばらせた。

 

「止めましょう」

「……! ラクス」

「相手を全て滅ぼしての平和など、何の意味もありません。残るのは人という種族の滅亡です」

「そうだね。……ダコスタさん。ユニウスセブンの状態は調べられますか?」

「はい。ユニウスセブンは常に監視してますから……しかし、未だ動きはなく安定軌道にいるようです」

「では、急ぎ参りましょう。地上へ向かう前であれば、私たちにも出来る事は多くあるハズです」

 

 ラクスの言葉に、皆が頷きエターナルは急ぎユニウスセブンへと向かう事になった。

 本来であれば地球連合軍へと伝えるべき事であるが、その場合、彼らはユニウスセブンを破壊しようとするだろう。

 

 多くの人が眠るかの地を破壊する事にキラ達は抵抗があり、自分たちが対処できるギリギリまで、自分たちだけで解決しようとするのだった。

 

 

 前回までの奇襲とは違い、今度は堂々とエターナルをユニウスセブンへと向かわせて、ユニウスセブンの異常を探す。

 

「これは! フレアモーターが仕掛けられています! 数はまだ少なくユニウスセブンを動かす程の量ではありませんが」

「……どうやらあの計画は真実だったみたいだね。信じたくは無かったけど」

「キラ……」

「フリーダムで出るよ。今ある装置だけでも破壊しないと」

 

 強い決意を秘めた瞳でキラはブリッジを飛び出し、格納庫へと向かう。

 そして、フリーダムで出撃する準備をしていたキラは艦内に流れた放送に目を細めた。

 

『コンディションレッド発令! コンディションレッド発令! ユニウスセブンに多数数の熱源を発見。モビルスーツです』

 

「……!」

「キラ様! 私は」

「今回も出撃は大丈夫……」

「いえ! 私も出ます!」

「ルナマリア……?」

「前の戦いで、私、見てるばっかりで……でも、キラ様を一人で戦わせるのは、何か違うって思って!」

「……うん」

 

「だから、足手まといかもしれないんですけど! 一緒に、行きます!」

「ホントは君に戦闘をお願いする気は無かったんだけど……エターナルをお願い出来る?」

「はい!」

 

 キラは優しくルナマリアに微笑んで、そしてジャスティスを見上げた。

 ルナマリアを守って欲しいと。

 

 ジャスティスは静かに佇んだままであったが、その姿が、まるでアスランの意思を示しているかの様でキラは小さく微笑んだ。

 そして、フリーダムへと向かって、すぐに出撃する。

 

「キラ・ヤマト! フリーダム! いきます!!」

 

 ユニウスセブンを……そして、地球を護るために。

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