ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第125話『ラクスと一緒に世界と戦うのも、良いかもね』

 プラントへ無事到着したキラは一度カナーバらと別れ、クルーゼより連絡を受けていた場所へラクスと共に向かうことになった。

 そして、人口の海岸線をエレカで走りながら、ラクスと言葉を交わす。

 

「この辺りは結構静かなんだね」

「そうですわね。こちらはアプリリウスからも遠いですし。人も少ないですからね」

「そっか」

 

 キラは風にやや長い髪を遊ばせながら風景をそれとなく眺めた。

 流れてゆく町並みは、アカツキ島で暮らしていた日々や、月で暮らしていた静かな生活を思い出させるものである。

 

「キラはこういう場所がお好きですか?」

「あぁ……うん。そうだね。静かな場所は好きだよ。心が落ち着く感じがする」

「ふふ。やはりラウ様はズルいですわね」

「ズルい?」

「はい。あの方は、プラントへ来た時からこちらの市に住んでおりまして、色々と見て回り、稼いだお金で家を買っていた様ですから」

「そうなんだ」

「きっとキラやセナさんと共に暮らす家を探していたのでしょう」

「……それは、やっぱり嬉しいな」

 

 キラはホッと息を吐きながら遠い場所を見る様な目をしつつ微笑んだ。

 その表情はどこまでも安らいでいる物であり、キラが何よりも信頼している相手に向ける目である。

 

 クルーゼや、セナ。

 家族。そして親友であるアスランやラクスにも同じ。

 

 だが、それでもラクスはクルーゼが羨ましかった。

 キラやセナを裏切る様な行為をしてもなお、キラから強い信頼を向けられているクルーゼが。

 だから、ちょっとした悪戯心もあり、ラクスはキラに一つの問いを向ける。

 

「キラ」

「んー? なぁに?」

 

 キラはエレカのハンドルを握りながら、軽い調子でラクスに問い返す。

 

「もし、(わたくし)が世界の敵となったら、どうしますか?」

「んー。そうだねぇ」

 

 長い髪を風になびかせながら、血の繋がった母であるヴィアの様に整った顔で、真っすぐに道の先を見据えながらキラはフッと笑って口を開く。

 

「まずは話を聞くかな」

「お話を?」

「うん。だって、ラクスにもきっと事情があるだろうからさ。それをまずは聞かなきゃなって」

 

 敵対していたアスランとすら対話を求めたキラは、当然の様にラクスとの対話を求める。

 それはそうだろうと思う。

 どの様な相手であろうと話し合いで解決できるのなら、この優しい少女はそれを選ぶのだ。

 

「それで、どうしても(わたくし)が世界の敵となるしか無いとしたら」

「まぁ……そうだね。その時は」

 

 キラは長い直線の道を走らせながらスッとラクスに視線を向けた。

 その流し目は、いつもの可愛らしいキラとは違い、かつての様な……前の世界でラクスが接していたキラによく似た、強い心で苦難に立ち向かい続けた『キラ・ヤマト』によく似た凛々しい物であった。

 その姿にラクスはドキリと心臓が跳ねるのを感じる。

 

「ラクスと一緒に世界と戦うのも、良いかもね」

「っ!」

 

 その誘う様な瞳に、ラクスは強く心が揺さぶられるのを感じながら、両手で胸を押さえて深呼吸をする。

 かなりいけない誘惑であったが、ラクスは何とかまだ世界の敵とならずに済んだのであった。

 無論、これからの世界がどうなるか分からない以上、世界と戦うという選択肢が無い訳ではない。

 

 だが、それでも……今ではない。

 今はまだ……その時では無いのだ。

 

 だが、こんな事ではこれからのキラと共に過ごす生活が心配でたまらないと、ラクスは頬を緩めながら小さく笑ってしまうのだった。

 

 が。

 そんなラクスの妄想は、思わぬ所からの攻撃で粉々に砕かれる事となる。

 

「やぁ。キラ。よく来たな」

「ラウ兄さん! カナーバ議長の事。無理言ってごめん!」

「良いさ。むしろキラからのお願いだ。嬉しかったよ」

 

 月でキラ達が幼い頃に願った様な海が見える大きな家の前で、キラとクルーゼは感動の再会をしている。

 それをエレカの近くで立ちながらラクスはジィーッとキラ達を見つめた。

 見つめた。

 

 ……見つめた。

 

 しかし、一向に二人は二人の世界から返ってこず、そのまま言葉を交わしているのだった。

 

「ん、んんっ!」

「っ! あ、ラクス! ごめんごめん!」

「いえ。何も問題はありませんわ」

 

 キラキラと輝く様な笑顔でラクスはキラに微笑みながら、先ほどの咳ばらいを無かった事にした。

 そして、キラと共に家の中へ入ろうとしたのだが……クルーゼに阻まれてしまう。

 

「あれ? ラウ兄さん?」

「どうした? キラ」

「いや、えっと、ラクスが……」

「あぁ、ラクス嬢はそろそろ帰らないと夜遅くなるだろう? 駄目だぞ。キラ。良家のお嬢さんを夜遅くまで付き合わせるのはな」

「そうだよね。ゴメン。ラクス」

「いえ、キラ! (わたくし)は」

「さ。私がラクス嬢を送ってこよう。キラは家の中に入ってなさい」

「はーい」

 

「ちょ! 待って下さい! キラ!」

「んー?」

「言っておりませんでしたが、(わたくし)も本日はこちらに泊めて頂こうかと」

「え? そうなの? ラクスは大丈夫?」

「はい! (わたくし)は何も問題ありませんわ」

 

 クルーゼに邪魔をされてはたまらないとラクスは必死に喰らいついた。

 せっかくキラがプラントへ来た千載一遇のチャンスなのだ。

 キラとのラブラブな共同生活を逃すつもりなど、ラクスにはない。

 

 ヤキン・ドゥーエで対峙した時の様な威圧感をクルーゼから感じながらも、ラクスは令嬢らしい微笑みを浮かべてホホホと笑う。

 クルーゼもまた、ラクスがタダで帰るつもりなどない事を察し、クククと笑った。

 

「二人ともそんなに見つめあっちゃって……仲いいねぇ」

 

 そしてキラは呑気に笑いながら二人の会話をニコニコ見ているのだった。

 

「クライン家の令嬢にして、クライン派の旗頭がこの様な所に居ては危険でしょう。ザラ派の者たちがいつ貴女を狙うか分からない」

「それならば心配はいりませんわ。キラがこちらに居る事で護衛は配置されておりますし。私も護衛の方が居ますから。同じ場所に居る方が効率的でしょう?」

「おや? キラを危険な事に巻き込むというのですか? それはキラの『友人』として相応しい姿ではありませんな」

(わたくし)とキラは『恋人』ですから。何も問題はありませんわねぇ~」

 

 バチバチと火花が散る様な会話もキラには楽しい会話に見えるらしくニコニコしながら話を聞いていた。

 しかし、家の中から短い黒髪の少年が出てきた事で、キラはそちらに振り返る。

 

「あれ!? キラさんじゃないっスか!」

「ん? あれ! シン! どうしてプラントに?」

「へっへっへ。それは……」

「シン!」

「あ! やべっ! そうだった。えと、秘密の任務って奴っすね」

「秘密の任務ぅ~?」

 

 シンがキラから目を逸らしながら放った言葉にキラは胡散臭い物を見る様な目を向けた。

 が、シンは冷や汗をたらりと流しながら目を逸らし続ける。

 

「シーン? 僕に隠し事をするの?」

「え、えとー。それは」

「シン。俺たちの任務を思い出せ」

「う、うぅー」

 

 キラとレイに挟まれながら、シンは呻きつつ、言葉をフワフワと浮かせ続けた。

 が、遂に限界を迎え、シンは家の中へと逃げていくのだった。

 

「あっ! もう……! レーイ?」

「自分たちはプラントへ観光に来ているのです」

「ふーん。で? いつ頃オーブに帰る予定なのかな?」

「今の所は決まっておりませんね」

「じゃあ、プラントで遊んでる感じ?」

「それでも構わないのですが、キラ様がアカデミーで講師をすると聞きました。丁度良いので、我々もアカデミーに入学しようかと考えております」

 

 どうせ初めから決まっていただろうに。

 しれっと今決めたかの様な空気で話すレイにキラはフンと鼻を鳴らした。

 そして、オーブに居る時から、よく隠し事をする二人の口を割らせる為の作戦を実行する事にした。

 

「ふふふ」

「……?」

 

 キラは不敵な笑みを浮かべながらレイの手を握り、そしてそのままレイの腕に抱き着いた。

 が、レイはいつもの無表情でキラを見つめ返す。

 何かあったのか? とでも言いたげな顔だ。

 

「……何か。僕に話したくなったんじゃない?」

「何も?」

「もっとギューッて抱き着いちゃうよ?」

「一国の姫ともあろう方がはしたないかと」

 

「はぁー。もうレイもアスランみたいになっちゃって。モルゲンレーテに居た時は可愛かったのに」

 

 キラはため息を吐きながらレイから離れ、そろそろ家の中に入ろうとラクスの元へ向かう。

 そして、未だクルーゼと言葉をぶつけ合っていたラクスを呼んだ。

 

「ラクスー! そろそろ家に入ろうよー」

「っ! は、はい! そうですわね! 入りましょう!」

 

 ラクスはクルーゼにフッと笑ってからキラの手を取り、家の中へと飛び込む様に入っていった。

 そして、クルーゼはそんな姿に息を軽く吐いてから二人の後ろに付いて歩いていたのだが、途中でレイが俯いている事に気づき声を掛ける。

 

「レイ? どうした?」

「い、いえ……なんでも、無いですよ」

 

 顔を真っ赤にしながら、腕を押さえているレイに何があったのだろうかと思いつつも、嫌な気配は感じていない為、何か面白い事が会ったのだろうと結論付けてクルーゼはレイと共に家に入った。

 ひとまずはキラの歓迎会である。

 

 そして、ついでではあるが、ラクスの歓迎会もしてやろうとクルーゼは考えた。

 先ほどは嫌味な言葉をいくつかぶつけたが、キラの幸せを邪魔するつもりは無いのだ。

 キラが幸せであればそれでいい。

 

 その為ならば、ラクス・クラインとも親しく接して見せようとクルーゼは心の中で考えた。

 だが……。

 

「まぁ……タダで可愛い妹はくれてやらないがな……ラクス・クライン」

 

 クルーゼはニヤリと口元を釣り上げながら笑い、やや嬉しそうな足取りで家の中へレイと共に入っていった。

 

 それから。

 クルーゼの家では夜遅くまで楽しそうな声が響き、ずっと静かであったその家には暖かな光がいつまでも灯っていた。

 それは、おそらくずっとプラントで独り戦っていたクルーゼが求め続けた物であり。

 月でクルーゼと別れてからキラが手を伸ばし続けた理想の家であった。

 

 

 そして、翌日。

 キラはラクス、シン、レイ、クルーゼと共に軍のアカデミーへと向かうのだった。

 新しいアカデミーの講師という生活を始める為に。

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