ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第13話『青き清浄なる世界のために!』

 ラクスが月へ来てから一年ほどの時間が経った。

 

 C.E.(コズミック・イラ)64年2月5日。

 今日はラクスが九歳となった誕生日という事で、キラたちはコペルニクスにあるショッピングモールに来ていた。

 探している物は勿論、ラクスへのプレゼントである。

 

 普段はキラの隣や、セナの姉、兄という位置を巡ってラクスと争っているアスランであるが、ラクスのめでたい日という事で、今日の主役はラクスだと自身もプレゼントを探している。

 が、アスランの見ている店はジャンク屋である為、ラクスの喜ぶプレゼントが選べるかはまた別の話であった。

 

 そして、アスランが見ているジャンク屋の向かいにある少し大人向けの洋服店で、キラはラクスと共に唸りながらプレゼントを選んでいた。

 

「んー。悩むなぁ」

(わたくし)は、キラからの贈り物でしたら、何でも嬉しいですわ」

「それは嬉しいけどさ。どうせなら最高に喜んで貰いたいじゃない?」

「まぁ、まぁまぁ! キラは優しいですわね」

「へへ。まぁ、せっかくの誕生日だしね」

 

 キラは店内に並ぶ多くの服を一つ、また一つと選んではラクスに合わせて悩む。

 無論、これだ! という物もいくつかあるのだが、キラ自身、お小遣いはあまり多く貰っていない為、金額という意味でも悩みが多いのだ。

 限られた金額の中から、最高のモノを探す。

 それが今のキラに与えられた最大のミッションであった。

 

 そして、そんなキラを見ながら、既にラクスはかなりの満足感を得ていた。

 生まれ変わる前、キラは男性であった為、あまり服への興味を示しておらず、ラクスの買い物に付き合ってはくれるが、当たり障りのない意見ばかりで少しだけ不満もあったのだ。

 しかし、生まれ変わった今、キラはラクスと同じ様に見た目への興味を強く持ち、買い物も一緒に楽しんでくれる。

 キラと再会してすぐの頃は、キラが女の子になっていた事にショックを受けたが、今では女の子も悪くないとラクスは真剣に悩むキラを見て、微笑んだ。

 

 そんな二人の買い物は既に二時間を経過しており、既にジャンク屋での買い物を終わらせていたアスランはセナと共にベンチで時間を潰していた。

 一緒に買い物へ来たため、キラとラクスが終わるのを待っているのだが……遠くから見ていても、終わりは見えない。

 

「長いな」

「そうですねぇ」

「セナは、何か買う物は無いのか?」

「私はもう、ラクスさんへの買い物は済ませています」

「そうなのか」

「はい。この通りです」

 

 上着の内ポケットから取り出したのは小さな紙袋で。

 アスランは特に気にする事なく中身を問う。

 

「何を買ったんだ?」

「はい。ロケットペンダントという物で、中に写真が入れられるんですよ」

「それは凄いな。それだけ厚みがあるのなら、銃弾とかも防げそうだ」

「あはは。そうですね。アスランお兄ちゃんは何を買ったんですか?」

「僕は、パーツだよ。ペットロボットでも作ろうかと思ってさ」

「ペットロボットですか」

「そう。色々機能を付ければ便利かなって」

 

「名前はもう決まってるんですか?」

「それは……考えてなかったな……。ラクスに決めて貰えば良いか」

「それも良いですけど。ちゃんと名前を決めてから贈った方が愛着が湧くんじゃないですか?」

「そう言われると、それも、そうだな……しかし、どうするかな。何かいい案は無いか? セナ」

「えぇー!? 私ですか!? えーっと、えーっと。何かそのペットロボットの特徴は無いんですか?」

「丸くて、ボールみたいに跳ねて、喋ったりする」

 

「うーん。じゃあ……『ハロ』とか?」

「ハロか。良いな。そうしよう」

「えぇー!? そんな簡単に決めちゃって良いんですか!?」

「簡単じゃないよ。セナが考えてくれた名前だ。きっといい名前になる」

「うぅ……なんだか責任重大ですね」

「ラクスもきっと喜ぶと思うよ」

「そうだと良いんですが……うっ! 何か考えて居たらお腹が痛くなってきました」

「大丈夫か?」

「はい。ちょっと外しますね」

 

「一人じゃ危ないだろう。ついていく」

「いや、あの。それは恥ずかしいので」

「恥ずかしい? 何故だ」

「いえ、その……そのですね。お手洗いに行くので」

「入り口まで行こう」

「もう! 恥ずかしいので! ここで待っていて下さい!」

「あ、あぁ。分かった」

 

 アスランは顔を真っ赤にしながら珍しく怒ったセナに驚きつつ、ベンチで大人しくセナを待つことにした。

 セナは群衆の中に一人でテッテッテと走って行き、人込みの中で見えなくなる。

 やはり一緒に行った方が良かったのではないだろうか。

 

 そんな風に考えていたアスランであったが、キラにまた「女の子って言うのはね!」なんて説教されてしまうなと笑い、大人しく待っている事にするのだった。

 

 

 アスランの元から離れたセナは、一人群衆の中を小さな体で走っていたが、背後を振り返り誰も付いてきていない事を確認してから、スッと狭い道に入った。

 そして、さらに奥へと進み、従業員専用の道へと入り込み、どんどん奥へと向かって足を進める。

 その動きに迷いはなく、懐から取り出した端末で道を確認しながら、歩き続けるのだった。

 

「……ここか」

 

 セナは暗い路地の奥で、目的の物を見つけると、その近くに座って背負っていた鞄からPCを取り出して足の上に置く。

 そして、PCから伸びてるケーブルを壁にある従業員専用回線差込口に繋げるとキーボードを打ち始めた。

 

 当然の話ではあるが、セナが使おうしている回線は従業員専用である為、厳重なセキュリティがある。

 しかし、それらをセナは容易く突破してゆくと、最奥にあるセキュリティ情報にアクセスし、内部のデータをいじって行った。

 

 全ての作業が完了するまで約十五分。

 セナは誰にも見つかる事無く仕込みを終えると、PCを再び鞄にしまって従業員用の通路を逆走し始めた。

 普通の子供らしい笑顔で、歩く。

 

 そして、セナがちょうど従業員用の通路から外へ出た瞬間、ショッピングモールにあるいくつのかの通気口から煙が吹き出し、警報が鳴り響いた。

 

「なに!?」

「テロか! 逃げろ!」

「どいて! 邪魔よ!」

 

 人々が混乱の中で、他人を押しのけながら逃げようとしている姿を狭い通路から眺めてセナは笑みを深める。

 楽しいゲームを遊んでいる子供の様に。

 

「青き清浄なる世界のために!」

「きゃあああ!」

 

 そして、人々が逃げて行った入り口の方からは多数の銃撃音と共に、『ブルーコスモス』という反プラント・反コーディネーターを掲げる過激派の環境圧力保護団体が現れた。

 彼らは天井に向かって銃を乱射しながら、逃げようとする人々を威圧しつつ、充満する煙の中を話しながら歩く。

 

「余計な銃弾は使うな! 我々の目標はあくまでクラインとザラの子供だ!」

「ハッ!」

「大人は無視しろ。殺すのは子供だけで良い。楽な仕事だ。そうだろう?」

「ハッ! 承知いたしました!」

 

 ただのテロリストにしては、規律のある集団はショッピングモールの中を進みながら銃を構える。

 だが、煙の影響もありテロリストたちはゆっくりと足を進めていた。

 

「しかし、なんだ。この煙は……我らの行動が読まれていたというのか」

「隊長! 前方にっ……!」

「ん? なんだ。どうした!? ぐわっ!」

 

 しかし、慎重に足を進めていたテロリストたちは突如として現れた屈強な男たちによって銃撃されてしまう。

 一人、また一人と仲間を撃たれ、逃げ出そうとした最後の一人も、後ろから撃たれて殺されてしまうのだった。

 

 セナはそれを見て、面白く無さそうな顔をしながら煙の中を外へと向けて走って行った。

 計画を確実に達成する為に。

 

 だが、入口へと向かう途中に現れたよく知る人の姿にセナは足を止めた。

 

「そこまでよ。セナ」

「っ! ヴィ、ヴィアママ! 良かったです! 今、怖い事が起こって!」

「動かないで!!」

「っ! ど、どうしたんですか? ヴィアママ。そんな怖い顔をして」

 

 煙に覆われたショッピングモールの通路で、ヴィアは銃を構えて銃口を真っすぐにセナへ向ける。

 その目に一切の迷いはなく、確かにセナの体を捉えていた。

 

「わ、私ですよ。セナです。ヴィアママの娘の!」

「貴女の行動はずっと監視していたわ。セナ」

「え? い、いつから……!」

「貴女を私の子供として引き取った時から、ずっとよ」

「どうして!?」

「貴女がキラを害そうとした時、殺す為よ」

「っ!?」

 

 ヴィアは確実にセナを仕留める為に、銃を構えたまま一歩、また一歩とセナに近づく。

 銃口は常にセナを捉えていた。

 

「プロジェクトNTを調べた時、貴女の事を私たちは知ったわ。ユーレンが研究していた『最高のコーディネーター』、アウラの研究していた『アコード』、そしてジゼルの研究していた『人類の革新・新しい進化の形』。全ての要素を持ち、世界を支配する為に生まれた存在……!」

「な、何を言っているんですか……? 私には分かりませんよ?」

「誤魔化そうとしても無駄よ。遺伝子に意思を刻むなんて、おとぎ話だと思っていたけど、今の貴女を見ていると、現実なんだと思い知らされるわ」

「ま、待ってください。遺伝子に刻まれた意思? 何を言っているんですか。意味が分からないです! それに! 例えどの様な生まれであっても、セナはヴィアママの娘ですよ! セナはヴィアママを愛していたんですよ! そんなセナを撃つっていうんですか!?」

「私は、貴女の事を、娘だなんて思った事……一度だって無かったわ」

 

 そのヴィアの言葉に、冷たい表情で放たれた意思に、初めてセナの顔が歪んだ。

 先ほどまで浮かべていた笑みは消え、純粋な怒りを表面に噴出させる。

 

「お前は! 親としてセナを引き取ったのでは無かったのか!?」

「悪いけど。初めから私にとって貴女はただの監視対象よ。私の娘はキラとカガリだけ。こんな筈じゃなかったって恨んでくれても良いわ」

「セナはお前の事を、慕っていた! 純粋に、娘として信頼していた! 愛していた! 例えお前の心が愛を向けていなかったとしても!それを感じていたとしても! 私はお前の奥底に、あると信じていた!」

「勝手に作られた子供に、愛情なんて持てるワケが無いでしょう?」

「っ!?」

「それに……やっぱり、そうね。存在するだけで災いを呼ぶ……貴女は、生まれるべきじゃなかったんだわ」

「ヴィア・ヒビキ!!」

 

 怒りのままに、セナは背中に背負った鞄から隠し持っていた銃を取り出して、ヴィアに向ける。

 セナの怒りは止まらず、何のためらいもなく、引き金を……引いた。

 

 そして一発の銃声が静まり返ったショッピングモールに鳴り響き、世界は大きくその運命を……変えた。

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