ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第129話『では、リュニック。出撃する!』

 地球軌道上……から少し外れた場所でセナは遠く離れたプラントの映像を見ていた。

 流れているのは、アイドルとして活動を始めたキラの映像である。

 隣にはラクスことミーアの姿もある。

 

「セナ様。何か良い事でもありましたか?」

「はい。実はプラントでお姉ちゃんがアイドルデビューをしまして。その映像を見ていました」

「姉君というと、キラ様ですかな?」

「はい! 自慢のお姉ちゃんです」

「なるほど……では、私も後ほど拝見させていただくとしましょう」

 

「作戦行動中に随分と楽しそうじゃないか。リー」

「ハッ! ロアノーク大佐! 申し訳ございません!」

「ごめんなさい。ネオさん。私が話しかけてしまって……」

「姫君からのお誘いであれば仕方ないですか。次からは気を付けろよ。リー」

「ハッ!」

 

 地球連合軍所属の宇宙艦ガーティ・ルーのブリッジで、艦長であるイアン・リー少佐は直接の上官であるネオ・ロアノーク大佐の言葉に敬礼で応え、安堵の息を落としながら艦長席に座る。

 そして、眼前に広がるデブリの群れに目を向けた。

 

「しかし、デブリ帯の調査とは……気が遠くなる様な作戦ですな」

「そう言うな。先のコロニー落としや、大戦中の隕石落としはデブリ帯にあると言われるZAFTの前線基地から行われていた。停戦中にさっさと叩いておかないと、また隕石落としをされるぞ。パナマの様にはなりたくないだろう?」

「それは……確かに」

「パナマは……あれからどうなっているのでしょうか?」

「一応再建は始めております。が、まぁ全てを破壊されたのでね。少々時間が掛かっている様ですな」

「そうですか……」

「ですが、まぁ。あの辺りにあったしがらみも全て隕石で吹き飛びましたからね。そういう意味では楽な仕事ですよ。連合も、ユニウス条約で色々と大変でね」

「……南アメリカ合衆国の独立戦争、ですか」

「えぇ。アレもその一つですね。元々、キラ様とセナ様が殺されたからと一つになった組織です。お二人が生存しており、平和を願っているとなれば地球連合である必要はない。という考えの様ですな」

「難しい問題ですね」

 

 セナははぁ、と息を吐きながら地上で起こっている数々の争いに頭を悩ませる。

 地球連合とプラントの戦いから、世界は一気に平和への道を歩み始めたワケだが、いきなり全人類が手を取り合い仲良しこよしを始めたワケではない。

 世界には多くの火種があって、今日もどこかで火種が爆発しているのだ。

 

 しかし、セナはその争いに介入する意思を見せてはいなかった。

 それは、彼らの戦争が絶滅戦争に繋がらないから……ではない。

 

 連合、独立国。

 その両方にそれぞれの正義があるからだ。

 

 セナは平和を求めているが、平和の為だからと自由に生きる意志を捨てさせるつもりは無い。

 自由の為ならば戦う事も必要であると考えている。

 

 だからこそ、プラントでモビルスーツを開発し、オーブでモビルスーツの開発を行っていたのだから。

 

 しかし、それが正しい事と分かっていても……やはり悲しみは感じてしまう物であった。

 真の意味で世界に平和が訪れるのはいつになるのか。

 セナは未だ見えない遠い未来を想う事しか出来ないのであった。

 

『セナ! オッサン! なんか見つけたぜ!』

「サブナック少尉! セナ様の事はセナ様かセナ姫様だ。そして、私の事はロアノーク大佐と呼びたまえ!」

『チッ。メンドクセェな。それで? どうすんだよ』

 

「オルガさん。その妙な物のデータを送って貰えますか?」

『おー。送るぜ』

 

 カラミティのパイロットであるオルガ・サブナックから送られてきた情報をセナは即座に解析し、そのデータをガーティ・ルーのクルーとパイロットに共有する。

 

「どうやら当たりの様ですね。これは前線基地の跡地だと思われます」

『お。じゃあぶっ壊しても良いのか?』

 

 オルガの問いかけに、セナはチラリとネオを見た。

 破壊するのは間違いないが、その前に調査をするかどうかの確認だ。

 

「セナ様が調べたデータのみで十分でしょう。中に入って何かトラップが発動しても面白くない。ここは破壊で良いかと」

「分かりました。では、オルガさん。お願いします。クロトさんとシャニさんもご協力をお願いします」

『おっしゃー! 良いストレス解消になるぜ!』

『了解! ですよ。ダラァー! 抹殺!』

『ハッハッハ! ハー!』

 

 およそ軍人とは思えない叫び声を上げながら前線基地を破壊する三人の姿にネオは頭を抱える。

 この様な者達を預けられて、これではセナ様の騎士として相応しくないとでも言いたげな姿だ。

 

 そんなネオに苦笑していたセナであったが、ふと手元の端末に着信が来ている事に気づいた。

 

「はい。こちらセナです」

『あー。セナ? 作戦中、悪いね』

「いえ。私は構いませんが……何があったのですか?」

『あぁ。南アメリカの事は知っているね?』

「はい。独立戦争をしているんですよね」

『そう。それでだ。実は上層部と既に決着はついていてね。こっちとしては別に独立を認めても良いって話になってるんだよ。条件付きだけどね』

「なるほど」

『でも、それじゃ完全な独立にならないって喚いている英雄サマと市民が居てね。悪いんだけど、セナの方でどうにか出来る? こっちも無駄な争いはしたく無いんだ』

「それは構いませんが……少々地球連合、というか大西洋連邦が嫌われ者になっても大丈夫ですか?」

『あぁ。問題ないよ。そろそろ大統領の首を変える時機だからね。好きにやってくれ』

「分かりました。では、私が説得に行きましょう」

『助かる。この礼は以前から君が知りたがってたハーフコーディネーターのテロリストの情報でどうかな?』

「助かります。では、私もすぐに向かいますね」

 

 アズラエルとの通信を切って、すぐにでもモビルスーツを借りて地上へ向かおうとしていたセナであったが、満面の笑みを浮かべたネオがすぐ目の前で跪いており、セナは一応彼に聞いてみる事にした。

 

「ネオさん? こちらの作戦は」

「私はセナ様の騎士。地上へ向かわれるという事であれば私も向かいましょう」

「しかし作戦が」

「それについては何も問題はありません。そうだな? リー」

「えぇ。勿論ですとも。セナ様もお気になさらず」

「という訳です。では早速参りましょう!」

「きゃっ!?」

 

 ネオは無重力の中で器用にもセナを抱き上げると、勢いよくブリッジを飛び出して行った。

 そして、セナが消えたブリッジではクルー達の重いため息が響き渡る。

 

「はぁ……良いよなぁ。大佐は」

「しょうがないだろ。あの人は」

「くそっ、せっかくセナ様と同じ艦で働けると思ってたのに」

 

「ぼやくな! ぼやくな! また機会はある! 俺だって悲しいが、世界には色々な理不尽があるんだ。諦めろ」

「艦長ぉー」

「えぇい。泣くな。貴様も軍人だろう! セナ様が再び戻られるまで戦果を上げろ! 以上だ」

 

 情けないクルーを叱咤しつつ、リーはネオ専用のモビルスーツの準備をさせる。

 こんな事もあろうかと用意させておいたモビルスーツの出番である。

 

 まさか、セナも一緒に出て行くとは思っていなかったが。

 

『準備が良いな。リー。では、後の事は頼んだぞ』

『申し訳ございません。リーさん。皆さん。後の事はお願いします』

「お任せ下さい!」

 

 モニターに映った、ネオの膝の上にチョコンと座るセナに、ネオへの強い嫉妬を感じながら、リーは笑顔で二人を送り出す。

 心の内では出撃など許可したくはないが、向こうは自分の二階級上である。

 軍人である以上、逆らう事は出来なかった。

 

『では、リュニック。出撃する!』

『行ってきます』

 

「お気をつけて!」

 

 リーは敬礼をしながらカタパルトで射出されてゆくモビルスーツを見送った。

 ストライクとほぼ同型の見た目でありながら、黒いトランスフェイズ装甲を採用しており、バックパックにはパーフェクトストライクとほぼ同型の装備を標準で搭載している。

 ビームサーベルにビームライフル。

 『15.78m対艦刀 シュベルトゲベール』に『ビームブーメラン マイダスメッサー』『ロケットアンカー パンツァーアイゼン』『320mm超高インパルス砲 アグニ』と装備も盛りだくさんである。

 

 そして何よりも、ミラージュコロイドシステムと核エンジンを搭載した条約違反の機体であるが、これが造られたのはユニウス条約が締結される前であり、詳細な設計書も既に廃棄されている。

 セナにはこの機体の事を伝えているが、あくまで平和的な活動にのみ限定するのならと認めさせた機体だ。

 

 隕石落としやジェネシスという脅威に対抗する為、と言われてしまえば強く言えないセナを利用した機体である。

 が、現状『リュニック』を扱える人間は限られており、セナの手でネオ以外に起動できない状態にしている為、セナから絶対に離れようとしないネオの専用機ならばと飲み込んでいる部分も大いにあった。

 

 何にせよ。

 ネオの行動をセナが決める以上、何かが起きる可能性などほぼゼロに等しい、という事だ。

 

 

 そして、ガーティ・ルーを離れた『リュニック』は最大速度で地球へと向かい、南アメリカ合衆国へと直接降下しようと地球軌道上で更に加速する。

 その激しいGにセナはキュッとネオに縋りついていたのだが、ネオはそんな風にセナに頼られているという状況に強い喜びを覚え、更に機体を加速させていた。

 騎士を自称する割にはあまりにも主を無視した動きであるが、ネオにとってはどの様なやり方であれ、セナに頼られているという状況こそが正義であり、それ以外は些末な事である。

 そして、やりたい放題しながら大気圏を抜けた『リュニック』は地上で行われている戦闘に向けてビームライフルを構え、狙い撃ちながら地上へと降り立った。

 

「戦闘を止めて貰おうか! 地球連合! そして、南アメリカ合衆国!」

『な、なに!? 貴様! 何者だ! その機体は!』

 

「私か? 私は世界を救った英雄。救世主! 慈愛の天使の騎士! ネオ・ロアノークだ!」

『ふざけた奴め! 撃破しろ!』

「我が主に銃口を向けるとは……愚かな」

 

『リュニック』は高速で機体を操りながら、地球連合のストライクダガー部隊へと突っ込み、セナの姉であるキラの様に機体の武装やメインカメラだけを的確に破壊するのだった。

 

『こ、これは……! この戦い方は!』

「そう! 私こそが、ネオ・ロアノーク。セナ様の騎士である!」

 

 オープンチャンネルでセナを見せながら宣言したネオに、地球連合の機体はすぐさま撤退してゆくのだった。

 そして、地球連合とたった一人で戦っていた男、ソードカラミティを駆る切り裂きエドことエドワード・ハレルソンへと振り返る。

 

「さぁ。エドワード・ハレルソン。貴国を救いに来たぞ。セナ様がな」

『……!』

 

 不遜に、大胆に、自分が正しいと信じて疑わない男の言葉が、エドに突き刺さり、エドは冷や汗を一つ流すのだった。

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