ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第132話『ODR。君も聞いた事がありますね?』

 ネオと別れ、単独行動を始めたセナは、南アメリカ合衆国と連合との和平交渉に立ち合い、独立を勝ち取ってから、アズラエルの元へと向かった。

 目的はハーフコーディネーターのテロに関する情報を貰うのと、ネオと別行動をすると伝える為だ。

 情報に関しては既に約束しているから問題ないが、ネオの件に関しては交渉が難しいかなと考えていたセナであるが……。

 

「無論、構いませんよ。ただし、代わりの護衛を用意します。そいつらを連れて行く様に」

「……え」

「なんですか。その間の抜けた顔は」

「いえ。許可されるとは思っていなくて……」

 

 セナの言葉にアズラエルはフンと鼻を鳴らした。

 何をバカな事を、という様な感情と。それほど間違いではないか。という感情が入り混じった様な表情だ。

 

「まぁ、君がどう考えてその結論に至ったか。それは問いませんが……アレは、ジブリールと繋がっていますからね。君が要らないというのであれば切り捨てる方が良いという考えです。シンプルでしょう?」

「……ジブリールさん」

「そう。陰湿な男でね。今もどこかに隠れてコソコソ動いてますよ。まったくドブネズミの様な男だ」

「アズラエルさんは、ジブリールさんと、その……あまり仲が良くは無いのですか?」

「えぇ。当然。アレとの共通点なんて、コーディネーターが消えて欲しい。くらいなモノですよ。それ以外は何一つとして共感出来ませんし。話をしたいとも思いませんね」

「そうだったのですね」

「なので。君がアレを捨てたいと願うのなら、こっちとしても願ったり叶ったりというワケです。あぁ、新しい護衛に関しては、あの三人で良いですね? 並のコーディネーターよりはやれますし。頭は足りませんが、そこは君が補うでしょう?」

「オルガさん達とご一緒出来るのなら、私は嬉しいですが……地球連合軍としては良いのでしょうか?」

 

 セナの問いかけにアズラエルは椅子に軽く体重をかけ、きざったらしく指を動かしながら遠い目をした。

 クスリや身体改造は最低限なのだから、使い勝手のいい道具が出来たかと思えば、命令違反の常習犯だ。

 軍隊としては無能も良い所である。

 

 高い金を払って作った割には使えないな。というのがアズラエルの感想だ。

 だから、セナが上手い事使ってくれるのなら、かけた費用分くらいは回収できるだろうという目算である。

 

「大丈夫ですよ。軍隊という組織は無能な味方というのを最も嫌う物なので。あぁ、まぁ。それはビジネス界も同じですが」

「はぁ……なるほど」

「ま、こちらの事は気にせず上手い事使って下さいよ。あ、でも新型のテストデータは欲しいので、新型が出来たら持って行くように」

「分かりました。とは言っても、あまり戦闘はしませんよ」

「ふふ。そうだと良いですがね。世界という奴は、君が思っているよりもずっと愚かなんですよ。セナ」

「……そうだとしても、戦闘にはならない方法で解決します」

「そうですか。まぁ、精々頑張って下さい」

 

 セナにひらひらと手を振り、アズラエルは話を終わらせた。

 が、セナが頭を下げてから出て行こうとした時に、ふと思い出したことがありセナを呼び止める。

 

「あぁ。そういえば、君に一つ聞きたいことがあるんでした」

「はい? なんでしょうか」

「ODR。君も聞いた事がありますね?」

「はい。オーブの組織ですね。正式名称は『オーブ外務省外郭団体国際協力機構管轄団体組織国際災害救助隊』です。怪しい組織ではありませんよ。オーブ国籍者の海外における生命財産の保護を目的とする組織ですから。ミヤビ・オト・キオウという五大氏族の次期当主が管理しています」

「ふぅん。なるほどね。……じゃあ聞き方を変えようか」

 

 アズラエルはニヤリと口元にだけ笑みを作って、セナを真っすぐに射抜いた。

 セナの嘘を見破る為に。

 

「所属不明の新型モビルスーツ『エクリプス』」

「……」

「君は当然知っていますね? オーブ連合首長国代表首長カガリ・ユラ・アスハの妹『セナ・ユラ・アスハ』」

「……さぁ」

 

 セナはとぼけた様な顔をしながらアズラエルから軽く視線を外し、壁を眺める。

 そして、淳に壁を見つめてからアズラエルへと視線を戻して微笑んだ。

 

「私は何も知りませんね」

 

 それからセナはゆっくりと頭を下げて部屋を出て行った。

 そんなセナを見送りながらアズラエルは椅子に深くもたれかかりながらため息を吐く。

 

「嘘を吐くのが上手くなったよ。セナ」

「しかし……情報をベースにして考えれば嘘は明白だ」

 

「今度は何を始めるつもりなんだか」

「まったく……厄介な国だよ。本当に」

 

 アズラエルはサザーランド少将へと連絡を取り、セナの監視をする為の部隊を編成するのだった。

 

 

 アズラエルへの報告を終わらせたセナはホープで海上を進みながらアズラエルより貰ったデータを確認していた。

 そこにあるのは大戦前、そして大戦中に行われていたハーフコーディネーターへの差別の記録と、そんな彼らがテロ行為を行っているという情報だ。

 

 ハーフコーディネーターは完璧なコーディネーターではない為、コーディネーターは彼らを受け入れない。

 そして、ハーフとはいえ、コーディネーターである為、ナチュラルではない為、ナチュラルは彼らを受け入れない。

 

 その結果、彼らは酷い差別を受けながらコーディネーターにもナチュラルにもなれず、地獄の様な世界を生きて来たという。

 それがどれほどの苦しみか。

 多くの者に愛され、オーブという差別の比較的少ない国で生きて来たセナには分からない。

 

 だが、差し伸べた手を払われる苦しさはよく知っているつもりだ。

 だから……セナは世界を平和にする為に、苦しんでいる人に手を差し伸べる為に、彼らの元へ行く。

 

 一人でも多くの人が。

 一つでも多くの争いが。

 世界が平和へと近づけば……きっとまた、今度こそ手が届くかもしれないからと。

 

「……お母さん」

 

 セナが一人コックピットで俯きながら呟いた時、一つの通信がホープに入った。

 それはアズラエルとセナが用意した特殊な回線からの通信で、セナはまだ何か言い忘れたことがあったのかと通信を繋いだ。

 

「はい。こちらセナです」

『おー。ホントに繋がったぜ。おう。俺だ』

「あぁ、オルガさんでしたか!」

『僕も居るよ!』

『俺も……!』

「クロトさんにシャニさんも。通信なんてどうしたんですか?」

『いや、それがよ? オッサンが《これからは君たちがセナを護るんですよ。傷一つ付けない様に》なんて言っててよ』

『ぎゃははは! 似てる似てる!』

『そっくり……クク』

『だー! お前らうるせぇ! それで、せっかくだしセナが居る場所に直接向かうか。って思ってよ』

「なるほど。では私がこれから向かうポイントを送りますね」

『お、サンキュー』

『なんか欲しい土産あるー?』

『へっへっへ。宇宙のゴミくらいしかないけどさ……』

 

「あぁ。それなら……」

 

 セナはオルガたちと話している間に届いたオーブからの緊急メッセージに目を通しながら笑う。

 ちょうど良いタイミングだったと。

 

「モビルスーツのエネルギーと弾薬を十分に積んで来てください」

『お!? って事は?』

「はい。戦争を始めます」

 

 セナはクスっと笑って、彼らが喜ぶ様な言葉を向けた。

 その言葉にオルガたちは狂喜乱舞しながら通信を切り、それぞれの機体へと向かうのだった。

 

 

 そして、セナ達がオーブの近海へ向かっている頃。

 ODRのミヤビ・オト・キオウは思わぬ通信に叫んでいた。

 それは、妹の様に思っていたセナが突然こちらへ来ると言っていたからだ。

 

「はぁー!? いや、来るのは良いけど! こっちは今からエクリプスを整備するところで……」

『はい。存じています』

「いや、なんで存じてんのよ……って、まぁ、アンタら姉妹にそれを言っても無駄か。それで? こっちに来るのは良いけど、やる事ないわよ? エクリプスが完全修復終わるまで動けないし」

『やる事ならありますよ』

「何言って……」

 

「お嬢様! ナウルの整備工場より緊急通信です!」

「今度はなに!?」

「アンティファクティスから攻撃を受けていると!」

「っ!」

 

『という訳です。エクリプスの機密を護るためにも、行きますね』

「ちょ、待ちなさい! セナ! アンタが傷ついたらカガリがうるさい……って通信切れてるわよ!」

「セナ様からの通信、切られました」

「くっそ! キラみたいな事して! とにかくナウル島へ向かって! あの子がくる前にこっちで解決するわ!」

 

「それは無茶だろう。こっちには半壊したエクリプスしか無いんだ」

「でも、見捨てる事は出来ないよ。工場の人たちも、セナ様だって」

「ならどうするって言うんだ。タツミ。どんなモビルスーツが出て来るかすら分からないんだぞ」

「それでも……」

 

「はぁ……ったく、やめやめ! ここで喧嘩してても何にもならないわ。とにかくやれるだけの事をしましょう。どの道、セナはここに来る。なら、見捨てるって選択肢は初めから無いのよ。あのバカ放っておいたら何するか分からないんだから」

「しかし、それでタツミが死んだらどうなる」

「そうならない為の最善を考えるって言ってるの!」

「……なら、もう二号機を動かすしかないだろう」

「ケン! アンタ……!」

「二号機?」

 

 ケンの言葉にタツミは疑問を投げたが誰もその疑問には応えない。

 その空気に、タツミはこれまで自分たちがやって来たエクリプスによる人助けを超えた何かが二号機にはあるのだと察した。

 そして、その引き金を引いてでも、何とかしようとケンが考えている事も……。

 

「ケン。お願い出来るか?」

「タツミ!」

「……タツミ」

「僕一人じゃやっぱり不安だし。セナ様も守り切れるか分からない。それに、ミヤビちゃんも、イザとなったら逃がさないと、でしょ?」

「誰がミヤビちゃんか! 誰が!」

「いてて!」

 

 ミヤビに頬を抓られながら、タツミは真っすぐにケンを見据えた。

 そしてその視線の強さに、ケンはフッと笑ってエクリプス二号機を動かす為の許可を再度ミヤビに求めた。

 

 タツミとケン。

 今日という日まで共に苦難を乗り越えてきた二人から求められ、ミヤビは苦笑しながら二人の提案を受け入れるのだった。

 それがどの様な結果になるか、分からないままに。

 

「良い? タツミ。とにかく今は時間が無いわ。セナのバカはこっちに向かってるし。工場区の職員も危ない」

『うん』

「けど、エクリプスは半壊状態で普段のポテンシャルは出せない……そんな状態でアンティファクティスから工場を取り戻す。無茶苦茶な作戦よ」

『分かってる、けど……やらなきゃ。助けなきゃいけない』

「えぇ。だから、アンタはとにかく時間稼ぎ。二号機が動くまで、戦いながら逃げる。良いわね?」

『うん。何とかやってみるよ』

 

 モニターの向こうで笑う少年タツミ・ホーリに何とも微妙な顔をしながらミヤビは彼を送り出すのだった。

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