ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第135話『大変な事になりました』

 セナとミヤビの言葉により事情を知ったタツミであったが、ここでふと疑問に思うことがあった。

 それは、何故セナがわざわざ敵にエクリプス二号機を渡すような真似をしたのか。という点だ。

 

 そんなタツミの疑問は、タツミが口にするよりも前にミヤビがセナにぶつける。

 

「ところで、セナ。アンタ。ワザとケンに二号機を渡したわね?」

「はい」

「なんで、そんな事したのよ! 事と次第によってはまた戦争が起きるのよ!?」

「その様な心配は要りませんよ」

「は? 連中はアレを使って、どこかの国を攻撃するわ! そうなったら!」

「それは出来ないので。何も心配は要りません」

 

 ミヤビが口にした不安をハッキリと否定するセナに視線が集まる。

 だってそれは先ほど話した事項と完全に矛盾した言葉であったからだ。

 

 完全なエクリプスは、世界の脅威となる。だから抑止力になるという話だったじゃないか、と。

 

「ケンさんは、二重スパイであった。というお話です」

「は」

「はぁぁあああ!?」

 

 叫び声をあげる二人に、セナはニッコリと微笑んで、今日まで隠し続けてきた事項を打ち明けた。

 

「ケンさんと出会ったのは大戦前の事でした。モビルスーツ開発を行う傍ら、優秀な人材を集めようとカレッジを調べていた私達はケンさんの事を知ったんです。ケンさんは情報工学でとても優秀な成績を収め、また素晴らしい身体能力を持っていた為、卒業後はテストパイロットとしてスカウトするつもりでした」

「ですが、ケンさんのお父様はテロで亡くなっており、お母様も大変苦しい状態でして。カレッジを中退してしまったんですね」

「私達は慌てて彼に接触したのですが、そこで知ったのは……まぁ、スセ家の当主の氏族らしからぬ話であり、恥もあって、再びカレッジに通える様に資金援助をしようとしました。ですが、それならば働きたいというケンさんの希望もあり、テストパイロットとして雇う事になりました」

 

「そんな中、ケンさんが……スセ家の欲望を見つけ出し。私達にソレを差し出しました。本人は偶然だと言っておりましたが、憎しみがあったのだと思います。長い間、お母様がスセ家の当主に苦しめられていた様ですから」

「そして、より詳細な情報を手に入れる為に、ケンさんはスセ家の当主に養子となれる様に求めたのです」

 

 セナの話を黙って聞いていたミヤビはふと、疑問に思ったことがあり、セナに問う。

 

「しかし、よく頷いたわね。あの男が。自分の事しか考えてない男でしょ。アイツ」

「なので、私かキラお姉ちゃんと婚約者になる事で成り上がる事が出来ると彼に言っていたそうですよ? あの頃はかなり親しかったですし。俺ならあの二人と結ばれる事は容易いと言って、説得した様です」

「……アイツ。よくやるわね。オーブでそんな事言ってる奴が居たら殺されてもおかしくないってのに」

「なんか、別の意味でケンってすげぇなって思っちゃった」

 

 ミヤビとタツミは、オーブでのキラとセナの人気を考え、呆れた様な顔をしたが、そういう危険な橋すら迷わず渡る姿がケンらしいと苦笑する。

 そして、二人の疑問も消えたという事で、セナは再び話を続けた。

 

「そして、彼の信頼を得る為にケンさんはエクリプス計画にも参加し、パイロットとして選ばれ……最大の信頼を得てから全ての情報を入手し、徹底的に叩き潰す。という予定だったのですが」

「あー」

「え? なに? なんで僕を見るの?」

 

「彼以上の適任者が見つかってしまった。それが彼の計画が変わってしまった一つの要因でした」

 

 そう。

 ケンのエクリプスとの神経網適合率は80%と高い数値が出ていたのだが。

 それを偶然迷い込んだ少年タツミが98%という数値を出してしまった事で、ケンはメインパイロットから下ろされてしまったのだ。

 

「ですが、ある意味で、それは非常に幸運な事でした。何故なら、エクリプスの正式なパイロットから外されてしまった事で、ある組織がケンさんに接触してきたからです」

「アンティファクティスね」

「はい。彼らはハーフコーディネーターのテロ集団であり、どこから情報を入手したのか、エクリプス計画の事も知っていた様でした。そしてエクリプスに最も近い位置にいたハーフコーディネーターであるケンさんへと接触を図ったのです」

「それで……」

「ケンさんは、とても優秀な方ですから。彼らの語る理想の世界が、破滅に繋がる事をよく理解していました。彼らを野放しにすれば、オーブが再び戦火に巻き込まれる事も理解していました。そうなれば穏やかな生活をしているお母様も荒れ狂う世界に巻き込まれてしまう……。そう考え、彼はアンティファクティスの内部へ入り込み、情報を探る事にしたのです」

「……お母さんのため」

「そうですね。そして、全ての作戦は成功し……彼らの信頼を得る為にエクリプス二号機を手に入れ、遂に行くことが出来たアンティファクティスの本拠地へと向かったというワケです」

 

「だいたいの事情は分かったわ。私達に黙っていた理由も何となく察しがつく。セナは秘密主義だからね。そのせいで私達は苦労させられてるんだけど、まぁ良いわ」

「あー、はは」

「それで? これからどうするっていうの? このままただ待っているって事は無いんでしょ?」

「それは勿論。敵の本拠地が分かってから、ケンさんより秘密通信を受け取る事になっていますので、その通信を受けてから反攻作戦に入ります。これで一件落着というワケです」

 

 何も問題はないと語るセナの顔を見ながら、ミヤビは大きな不安を感じていた。

 セナという少女は、世界の人々が考える様に、自分で考える様に完璧な少女ではない。

 かなり抜けている所があるのだ。

 

 そして、彼女が抜けている部分は人の心に関する箇所が多く……そして、それは時に大きな事件を引き起こしてきた。

 大戦の際にセナの暴走により、あわや世界が滅びかけた時の様に。

 

 ミヤビは非常に嫌な予感を感じながら、セナを見つめ。

 ミヤビとは別の感情であるが、タツミもまた不安そうな顔でセナを見つめていた。

 

 タツミは一般的なオーブ国民である為、セナはセナ様らしい完璧なお姫様という情報しか持ちえないが。

 ケンの事はODRの活動を通じてよく知っていた。

 母親の話は初耳であったが、セナやキラにケンが強い感謝を向けている事は知っていたし。

 彼女たちが守るオーブという国をとても愛していたのも知っていた。

 

 だから、彼の裏切りに驚いたし。セナの言葉で大きく納得する所もあった。

 しかし、だ。

 一つだけ納得できない所がある。

 

 ケンがセナ達や母親を護るために敵の組織へ潜入したとして……果たしてそのまま終わりだろうか? という疑問だ。

 アンティファクティスには何か大きな組織が後ろに付いている筈だとケンはよく言っていた。

 その組織を探らなければいけない、とも。

 

 ならば……だ。

 ミラージュコロイドとニュートロンジャマーキャンセラー。

 そして、変形する事で戦闘機の様な速さで飛ぶことが出来、どこへでも強襲出来る機体を手に入れた彼が、このまま終わる事を望むだろうか。

 

 そう考え、タツミは一人の男を思い出す。

 台風により多くの命が危険に晒される中、自らの命を捨ててでも、人を助ける為に戦った男の事を。

 嵐の向こうへ消え、帰る事の無かった父親の事を。

 タツミは思い出していた。

 

「おや。早いですね。もう通信が来ました。では、戦闘の準備を始めましょう。皆さん。オルガさん。クロトさん、シャニさんもお願いしますね」

「お、またやるのか?」

「良いですねぇ」

「はぁー。だるいけど。良いぜ」

 

 セナの言葉に、やる気をみなぎらせている三人を見ながら、タツミはそれとなくセナに近づく。

 そして、セナが開いたパソコンの画面を見ながら、画面に映っているケンを見た。

 その顔は……タツミの父と同じく、強い決意に満ちた顔をしていた。

 

「お疲れ様です。ケンさん。状況は如何ですか?」

『あぁ。何も問題はない。連中は俺の事を疑っていないみたいだ。今はテスト飛行って事で空を飛ばしてる。この通信は誰にも聞かれてない』

「それは良かったです。それで、ハーフコーディネーターの方々はどうですか?」

『少し話した感じ……多分、そこまで悪い連中じゃないと思う』

「なるほど……では、やはり彼らの目的は憎しみではなく、帰る場所を作るため……ですか」

『おそらくはな』

 

「分かりました。ではオーブで彼らを受け入れる準備をしましょう」

『どれくらい時間がかかる?』

「そうですねぇ。受け入れ自体はそれほど時間は掛からないと思いますが……オーブに入国してからは少し待って貰うかもしれないですね」

『分かった。じゃあそっちの事は頼む。セナ姫様なら上手くやってくれるだろ。後、お姫様もな』

「ちょっと! ケン! アンタ! 私に黙って随分と勝手な事やってくれたじゃないの! 帰ってきたら怖いからね!」

 

 セナをやや押しのけつつ、ケンを怒鳴るミヤビと苦笑するセナ。

 そんな二人を見ながら、どこか遠い物を見る様な目をしているケン。

 

 タツミのドクドクと早くなっていく心臓は、この状況に対する強い違和感を訴えていた。

 何かがおかしいと、叫んでいる。

 

 酷く嫌な予感が頭から離れない。

 

「け、ケン……!」

『あぁ、タツミか。さっきは悪かったな。だが、許してくれ。これも全部作戦だったんだ』

「いや……それは、良いんだけどさ。ケン……その、もしかして、死ぬつもりなのか?」

『……』

 

 タツミのその言葉はあまりにも唐突な物であった。

 だが、何を言っているんだという顔をしているミヤビやセナとは違い、ケンは静かな凪いだ海の様な表情で静かに口を開く。

 

『お前は……本当に、妙な所で鋭いな』

「っ!?」

「ちょっと、どういう事!? 今の!」

 

『アンティファクティスの背後にはブルーコスモスが居る。その親玉。ロード・ジブリールが』

「……! どこでそれを」

『調べたんだよ。セナ姫様は身内には甘いからな……。そして、コイツを放置すればまた戦争が起こる事も、分かった』

「まさか、お一人で!?」

『例え、ジブリールがどれだけ強力な兵器で自分を守っていても、高速で近づいてくる絶対に打ち落とせない核ミサイルは……防げないだろ?』

「止めて下さい! 彼は必ず捕縛出来ます! だから」

『俺たちはオーブに沢山助けて貰ったから……後は、ハーフコーディネーターたちの事を頼む』

「ケンさん!」

 

『タツミ。悪かったな。こんな事に巻き込んで……でも、ODRでやってた事は……悪くなかった。じゃあな』

 

 そして通信は切れ、セナは青ざめた顔を上げた。

 

「大変な事になりました」

 

 ミヤビはまたやらかしたセナに怒鳴りつけてやりたい気持ちだったが、今はそれどころではない。

 すぐにでも動き出す必要があるのだから。

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