ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第136話『そこは、ミヤビお姉ちゃんの得意技である『なかったこと』にして貰えれば』

 前大戦の終わり、ヤキン・ドゥーエでの戦いにおいて、セナを狙い、アズラエルを殺そうとした男、ロード・ジブリール。

 セナが彼と出会ったのは大戦の最中であった。

 

 そして、あの日よりセナはジブリールの事を調べ、新しい争いを起こそうとしているジブリールを何とか捕まえようとしていた。

 が、彼は常に裏の世界に潜っており、その居場所は分からない。

 しかも、ネオという彼の側近を、アズラエルを使ってセナに近づけ何かを狙っている様だった。

 

 それに感づいたセナはネオを使い、逆にジブリールを誘い出そうとしていたのだが、長くネオと共に行動しても何も起きず。

 仕方ないかとネオを切り捨て、焦ったジブリールが何か行動を起こすのではないかと考えていたのだが、その矢先に予想外な事が起きた。

 

 それがケンの暴走である。

 

 無論、ケンの言う通り、エクリプスを特攻兵器にしてジブリールが居る場所に向かえば流石の彼も生きてはいけないだろう。

 エクリプスは多少の防衛装置なら容易く突破する事が出来るし、シェルターに隠れようがそれごと破壊する事も可能だ。

 そして、最終手段ではあるが、自爆すれば……核爆発により確実にジブリールを仕留める事が出来る。

 

 最悪ではあるが、最も有効な作戦であったのも確かだ。

 問題はケンに誰もそんな事を望んでいないという事であるのだが……そういう嫌な所はセナによく似ている所であった。

 

「と、とにかく。エクリプス二号機の居場所を調べましょう。ジブリールさんの場所が分からなければ行動出来ないでしょうし。居場所が分かるまでアンティファクティス内で行動する筈ですから」

「……そうね」

 

 ミヤビはため息を吐きながら、ホントにろくな事にならないなとセナをジトっと見つめる。

 優秀なのだ。優秀な子なのだ。

 しかし、人の感情が相変わらず読めていない。

 

 どうせ善意でケンにアレコレとあげた後、お返しは何も要らないですよ。とかやったんだろうとミヤビは推察する。

 そして、復讐も含め、全てを助けてくれた少女が……善意だけで行動している少女が、その身を犠牲にしてでも世界の争いを止めようとする。

 そんな行動を見てしまえば、知ってしまえば、ただ見ている事など出来ないだろう。

 ミヤビと同じ様に。彼女たちが不意に消えてしまう恐怖を、ケンも味わった筈だ。

 

 だからこそ。彼の想いは、セナがもう一度同じ様な事をしていると知り……暴走へと繋がった。

 何だかんだと言って、ケンも一般的なオーブ国民であったという訳だ。

 

 だからこそ。彼の想いを理解したミヤビは、同じ気持ちを持つ『仲間』としてケンの手を掴み、こちら側へと無理矢理にでも連れて来ようと決意する。

 何せ、我らを護ろうと必死にセナ姫様はいつだって何も言わぬまま危険地帯へと飛び込んでゆくのだから。

 人手はいくらあっても足りないのだ。

 

「でも、どうするの?」

「あまり使いたい手段では無かったのですが……ZAFTに支援を要請します。今のプラント最高評議会議長さんはお知り合いなので」

「オーブとプラントと繋がっているなんてバレたら大変な事になるわよ?」

「そこは、ミヤビお姉ちゃんの得意技である『なかったこと』にして貰えれば」

「誰のせいで得意になってると思ってるのよ! 誰のせいで!」

「い、いたい、いたいですぅー」

 

 セナの顔を掴み、頬に指をグリグリと当てながらミヤビは怒りを示す。

 オーブのそこまで長くない歴史を見ても、首長とその妹たちだけで多くの事を『なかったこと』にしてきたミヤビは怒鳴りつけた。

 カガリのレジスタンス活動やら、ヘリオポリスでのアストレイ開発、連合との密談やプラント指導者との密談。

 数えればキリがない。

 

 しかも、この姉妹の厄介な所が、一つの事件を抜き出しただけでも国家を揺るがすレベルのやらかしなのである。

 ミヤビの怒りもよく分かるものであった。

 

「とりあえず、さっさとその議長とやらに連絡しなさい」

「は、はひ。あ、そういえばアズラエルさんにも連絡しないと」

「ハァー」

 

 あわあわと慌てながら関係各所に連絡をするセナにミヤビは深いため息を吐きながらジト目でその動きを見守った。

 通信には映らない様に気を付けながら。

 

 

 それから。

 セナはプラントと連絡を取り、議長であるギルバート・デュランダルとの協力を取り付けた。

 その後、アズラエルに連絡を取り、事情を説明して、衛星を借りた事を謝ったのだが……。

 

「あぁ、そういう事態であったのであれば良いでしょう。サザーランド少将も実験が出来たと喜んでいましたしね」

「……はい」

「それで? これからどうするんです。ジブリールの尻尾を捕まえるというのであれば、彼らだけでは戦力不足でしょう。部隊を貸しましょうか?」

「あー。いえ。それに関しては既にお願いしてるので」

「お願い? しかし、連中は潜水艦を使っていると言うし。水上戦力しかないオーブでは難しいでしょう」

「あー、えと、そのーですね。それについては心配要らないといいますか」

「……なるほど。その反応。プラントに協力を願いましたね?」

「うっ!」

 

 セナの反応にアズラエルはスッと視線を細め、机を指でカツカツと叩きながら少しばかり語気を強める。

 それは、アズラエルとの会話の中でコーディネーターが出てきた時にいつも起きる現象であった。

 

『気に入りませんね。地上で連中が活動するのを容認しろと?』

「あー、いえ。容認はしなくても良いんです。ただ無視していただければ」

『それを! 容認と言うんだ! セナ!』

「ひぅっ!」

 

『しかし、連中が出張ってくるなら良い機会です。こちらも戦力を出しましょう』

「えっ! いや、ちょっと待ってください!」

『コーディネーター共め。調子に乗るなよ……!』

 

 そして、アズラエルとの通信は切れ、セナは頭を抱えながら今度はプラントへ連絡をする事にした。

 アズラエルとは違い、デュランダルは穏健派である。

 誠心誠意お願いすれば、やっぱり協力は無しでと言っても怒らないだろうと。

 

 だが……。

 

『そうか。地球連合が。それは大変だったね。セナ』

「えぇ。なので、先ほどはお願いしてしまったのですが、今回はやっぱり無しという事で」

『うん。そういう事なら仕方ない……』

「……!」

『と、言いたいところなんだが。すまないね。君からの救援要請という事で、喜び勇んだ者達が既に軍部へ向かってしまったんだよ』

 

 セナはデュランダルの言葉に意識を失ってしまいそうな衝撃を覚えた。

 あれだけ戦争を止める火種を起こさない様にすると言っていたのに、セナ自身が火種になってしまったのだ。

 それはショックも受けるだろう。

 

『いや、すまないね。もしこれで地球に住みづらくなったら、いつでもプラントに来ると良い』

 

 何とも胡散臭い笑顔でそんな事を言うデュランダルに、セナは何とも言えない気持ちを抱えるが、失敗したのは自分である故。大人しく飲み込んだ。

 そして、デュランダルに礼を言い、通信を切ってから一人、どうした物かと頭を抱える事になる。

 が、結局どうする事も出来ず、運命の日を迎えるのであった。

 

 

 それから時は経ち。

 アンティファクティスの拠点を発見したセナたちは一つの作戦を立て、その場所へ向かっていた。

 セナはホープに乗り、ミヤビと共に雲の中を飛びながら海上を静かに見つめる。

 作戦開始まで時計を見ながら静かに待つのだ。

 

 そして、セナ達が見つめる海上へ一機のモビルスーツが近づき……海中にある潜水艦へと攻撃を仕掛けた。

 そのモビルスーツの名は『エクリプス』

 

 当然と言えば当然のことであるが、攻撃は潜水艦に直撃しない様に調整されていた。

 エクリプスも一度攻撃した後、戦闘機形態で一度離脱した為、緊急浮上してきた潜水艦からエクリプス二号機が出撃し、エクリプスを追う。

 

 その隙にセナは一気に潜水艦へと強引に着艦して、格納庫へと入るのだった。

 

『私はセナ・ユラ・アスハ。貴方方に攻撃する意思はありません。交渉をしに来ました』

「交渉だと!? そんなの信じられるかよ!」

 

 ホープの前で怒りながら叫ぶ赤髪の少女、ヴァレンティーナ・ビノンにどう答えた物かとセナが考えて居ると、コックピットハッチを開きミヤビが外へと飛び出してしまう。

 

「み、ミヤビお姉ちゃん!?」

『良いから! セナはホープで待機! 良いわね!』

「えぇぇええ!?」

 

 そして、ホープという守られた場所から外へと飛び出したミヤビは、コーディネーターらしい卓越した身体能力でヴァレンティーナの前に降り立ち、笑う。

 挑発する様に。

 

「ひさしぶりね」

「お前は……! あの時の!」

「今回は交渉に来たの。時間もあんまり無いし。さっさと貴方たちのボスの所に案内してくれる?」

「時間がないって……!」

 

 ヴァレンティーナがミヤビに言葉を投げつけようとした瞬間、大きく潜水艦が揺れた。

 それは海中で何かが爆発した音であり、緊急警報が艦内に鳴り響く。

 

『まずい! 地球連合の機体だ! それにZAFTの機体もある!』

「な、なんだって!?」

「どう? 状況は理解した?」

「お、お前たちがやったのか!?」

「私たちじゃないわ。向こうが勝手にここへ来たのよ。もしかしたら貴女たち。狙われてたのかもね」

「っ!」

 

 そして、ミヤビの言葉に合わせて再度潜水艦が大きく揺れる。

 その振動に、潜水艦への影響を考えて居ないであろうソレに、ヴァレンティーナは拳を強く握りしめながらミヤビを睨みつけた。

 

 おそらくはミヤビの言う通りであろう。

 彼女は何もしていない。

 そうでなければ、地球連合やプラントが大事に、大事にしているセナ様がいるここに影響がある場所で戦闘などしないだろうから。

 

 だから、彼女は頷くしか無かったのだが……ミヤビが信用できないという想いから唇を強く噛みしめた。

 だが、そんなヴァレンティーナの想いをくみ取る様に、一つの放送が格納庫に響いた。

 

『ヴァレ。彼女を僕のところに案内してくれ。直接話がしたい』

「い、良いのかよ!」

『あぁ。そうでなければ、どうする事も出来ないだろうしな』

 

 既に、ほぼ詰んでいる状態であるが、それでもまた逆転出来ると、ジョエルは笑う。

 いや……むしろ、この状況こそ好都合であると。

 

 格納庫のホープを見ながら怪しく嗤うのだった。

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