ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第137話『オーブに来なさい!』

 プラント、連合の協力もあり、アンティファクティスが拠点としている潜水艦を発見したセナ達は、エクリプスで強襲し、二号機を迎撃に出撃させる事で潜水艦の中へ強行着艦する事に成功した。

 内部にさえ入ってしまえば、ホープとセナの力でシステムジャックする事は可能であり、アンティファクティスは状況として完全に詰んでしまったワケだが。

 それでも彼らは諦めていなかった。

 

 そうしなければ生きていく事は出来ないから。

 ようやく見つけた楽園に、未だ夢を見ていたから。

 

「やぁ、歓迎するよ。オーブからの使者。ハジメマシテと言うべきかな。俺の名前はジョエル・ジャンメール・ジロー。アンティファクティスのリーダーをやっている」

「私は、ミヤビ・オト・キオウ。オーブの五大氏族キオウ家の次期当主よ」

「そうか。それで? 俺たちに話とはなんだ? 連合軍やZAFTを動かしてまで」

「いや……あの人たちは勝手にやってるだけなんだけど……まぁ良いわ」

 

 ミヤビは苦労がにじみ出ているため息を零しながら、ジッとジョエルとヴァレンティーナを見据えた。

 そして、『交渉』を始める。

 

「大人しく投降しなさい。今ならまだ……『なかったこと』に出来るわ」

「メリットを感じないな」

「メリットって……! このままじゃ、アンタたち、死ぬわよ!? 連合もZAFTもセナがいるから攻撃を仕掛けてないだけなんだから!」

「だが、戦争が始まれば、俺たちに構っている暇は無くなるだろう?」

「この期に及んで……!」

「二号機は既にこちらの手の内にあるのだ。彼がエクリプス一号機を振り切って、そこへ向かえば戦争は再び起こる!」

「そんな事をしても……あなた達をプラントは受け入れないわ」

「っ!」

 

 ミヤビとジョエルの会話を焦った顔で聞いていたヴァレンティーナはミヤビの言葉に驚き、思わず二人の会話に入り込んでしまう。

 

「そんな事ない!」

「プラントはあなた達が考えるほど甘い国じゃない」

「だって、戦争が始まれば……! 地上のコーディネーターは受け入れてもらえるじゃないか! 同胞だからって! その中にはハーフコーディネーターだって居たって話だ! 私達はそれを知って!」

「そうね。それは間違いじゃないわ。でもね。プラントはもう……貴女たちの事を知ってるのよ。連合の騙し討ち部隊。ヴァレンティーナ・ビノン准尉」

「それは……! でも、それはやらされてただけなんだ! 生き残る為には! 仕方がなかった!」

「でしょうね。でも、それを言えるのは撃った側の人間だけだわ。撃たれたプラントはそんな風にあなた達を思えない。また騙し討ちをするのだろうと疑うだけよ」

「……っ!」

 

 ミヤビの冷徹な言葉に、ヴァレンティーナはグッと何も言えず、言葉を飲み込んでしまった。

 

 そう。それは、彼女たちが行ってきた罪が白日の下に晒されてしまったからだ。

 彼女たちハーフコーディネーターが連合に捕らえられ、死か、連合に協力するかを選ばされ、その結果行ってきた罪。

 

 ZAFTのモビルスーツを使い、味方のフリをしながらZAFTを攻撃し、自分たちごと攻撃してくる連合から必死に逃げ回り、這いまわって生きて来た記憶だ。

 それが既にバレているという事であれば、確かに彼女たちをプラントが受け入れる事は無いだろう。

 彼女たちはプラントの……コーディネーターの敵なのだから。

 

「なら、アタシ達はどうすれば良いって言うんだよ! 帰る場所もなく! どうやって生きれば良い」

「オーブに来なさい!」

「っ! おー、ぶ?」

「そう。オーブよ。貴女たちがテロ行為を行った罪だけ償えば、私達はあなた達を受け入れるわ」

「そう言って! また私達を騙すんだろ!?」

「オーブの現国家元首は! セナとキラの姉よ。そして! 二人と同じくらい、弱者に手を差し伸べる子だわ! カガリ・ユラ・アスハは! あなた達を見捨てない!」

「……! 信じても……良いのか? オーブなら……オーブに行っても、良いのか?」

「それを決めるのはあなた達よ。私達は、差し出された手を掴むだけ。それはずっと変わらないわ」

 

「な、なぁ……ジョエル。オーブなら」

「くだらない結論を出したな。ヴァレ」

 

 縋り、助けを求める様にジョエルへと目を向けたヴァレンティーナに対して、ジョエルは冷たい顔をしたまま持っていた銃を撃つ。

 だが、今までの人生の経験から……裏切られるという行為になれていたヴァレンティーナはそれを咄嗟に避け、ジョエルへと視線を向けた。

 

「どういうつもりだ!? ジョエル!」

「今更救われようなどと、下らないと思わないか? 自然ではない形で生まれて来た……汚らしい存在。コーディネーター。お前たちは滅びるべきなのだ。青き清浄なる世界のために」

「ブルーコスモス……!」

「くそっ! お前も私たちを、騙してたのかよ!」

 

 ヴァレンティーナは軍人として鍛えた腕で、続く銃弾を避けながら走り、部屋の入口近くで立っていたミヤビの腕を引っ張って外へと飛び出した。

 そんなヴァレンティーナを追うべく、ジョエルも入口へと歩いて向かったのだが、何故か入口が開かない。

 

「その扉は既にロックしていますよ。ジョエル・ジャンメール・ジロー」

「貴様は……! セナ・ユラ・アスハか!」

「えぇ。その通りです。ハーフコーディネーター等と言う出来損ないの割にはよく出来ました。半分がサルという事で会話が出来るか心配でしたが、その矮小な頭でも多少は思考が出来る様ですね。安心しました」

「……お前は、何者だ」

 

 ジョエルたちが話をしていた部屋の奥にあるもう一つの入り口から中に入って来た少女は、普段のセナとはまるで違う。悪意に満ちた顔で笑い、見下した挑発じみた言葉をジョエルに投げつける。

 それは世界やジョエルが知るセナからは大きくかけ離れた姿であった。

 

「おや? 先ほどは正解していたというのに。もう忘れてしまったのですか? 私はセナですよ。まぁ、アスハとかいう旧人類の名を名乗る事はあまり好きではありませんがね」

「……セナ・ユラ・アスハとよく似ているが、違う。双子か?」

「はぁ。信じて貰えないというのは悲しい物だな。ジョエル・ジャンメール・ジロー。この体は確かにセナの物であるというのに」

「体、という事は、二重人格か」

 

「まったく貴様ら旧人類は。そうやって何か定義しなくては気が済まないのか? 私は私であり、セナは私である。それで十分だろう?」

「それで? そのセナ様はここに何の用だ。俺がブルーコスモスだと知り、捕まえに来たのか?」

「別に。貴様にもブルーコスモスにも興味はない。所詮は下等なゴミ同士の争いだ。どうでも良いというのが本音だな」

「ならば……!」

「ただ、な。不愉快なんだ。お前たちの様な羽虫が、私のセナに近づこうと飛び回っているのがな」

 

 『セナ』はニヤリと口元を歪めながら嗤い、ジョエルを見ながら呟いた。

 

「『闇に、落ちろ』」

「ぐっ……あぁぁあああ!!!」

 

 その瞬間、ジョエルは今までの冷徹な表情はどこへやったのか、苦悶に顔を歪めながら床に跪いた。

 そして、持っていた銃を手放しながら両手を床について、滝の様な汗を流しながら苦しみの声を上げる。

 

 そんなジョエルに近づきながら『セナ』は床に落ちていた銃を拾いジョエルへと冷たい目と共に向けた。

 

「死にたいのなら、一人で死ね。私のセナを巻き込むな。ゴミが」

 

 『セナ』はそれから数発の銃弾をジョエルへと放ち、銃をジョエルの近くに投げ捨ててから部屋を出て行った。

 そして、ホープへと戻っている途中の道で周囲をキョロキョロと見ながら慎重に歩いていたヴァレンティーナやミヤビと合流する。

 

「ミヤビさん!」

「セナ!? アンタ! ホープの中に居なさいって言ったでしょ!」

「ご、ごめんなさい。ミヤビさんが心配になってしまって……!」

「ったく! しょうがない子ね! 交渉はまぁまぁうまく行ったんだけど、ちょっと面倒な事になったからさっさと逃げるわよ!」

「面倒って」

「話してる暇は無いから!」

 

 ミヤビはセナを抱え、ヴァレンティーナと共に走る。

 部屋で起こった事を回りの兵士に伝えながら走る二人は、何とか格納庫へと辿りつき、ヴァレンティーナとミヤビは格納庫の通信機を使って艦内に緊急連絡をする。

 ジョエルがブルーコスモスであり、アンティファクティスは騙されていたと叫びつつ、オーブが受け入れてくれるという話を叫び続けた。

 

 そして、そんな彼女たちの必死な訴えを聞きながら一人ホープに乗り込んだ『セナ』はフンと鼻を鳴らしながら、ホープを起動させようとしたのだが……そこでふと思い出した事があり独り言を呟く。

 

「このまま放置しては面倒ごとになるか。一応偽装はしておくべきだな」

 

 『セナ』は格納庫に配置されていた一機のモビルスーツにアクセスし、その機体を外部から起動する。

 そして、自動戦闘プログラムを流し込んで、機体を動かすのだった。

 

『ぶ、ブーストレイダーが動いてる!? くそっ! ジョエルか! みんな、逃げろ! 船が沈む!』

『外にオーブ艦を呼んでるわ! とにかく脱出して!』

 

 通信から聞こえてくる叫び声に顔をしかめながら『セナ』は自分もさっさと離脱しようとホープの操縦桿を握る。

 が……ホープは何をしようと動く事は無かった。

 

「チッ! 道具の分際で私に逆らうか。なら、仕方ない」

 

 セナはホープが動かない事に舌打ちをしてから深呼吸をして目を閉じた。

 そして、直後にあどけない子供の様な顔をしたセナが目覚める。

 

「え? あれ? ここは? えと、私、どうしていたんでしたっけ?」

『セナ! セナ聞こえる!?』

「は、はい! 聞こえます! ミヤビお姉ちゃん!」

『アンティファクティスのボスがブルーコスモスで! それがバレて、今潜水艦を沈めようと暴れてるの!』

「えぇぇええ!? と、止めないと!」

『駄目だ! 潜水艦の中で暴れてるんじゃ、止めようとしても艦は持たない! アンタは脱出しろ!』

「でも、それなら艦の人を助けないと!」

『……! セナ様は本当に、セナ様、なんだな』

「えと?」

『もし、生きてオーブへ行くことが出来たら、今度はゆっくりと話をさせてくれ。ミヤビ! アンタも逃げろ! アタシはギリギリまで、ジョエルを止める!』

 

 ヴァレンティーナはミヤビをホープの方へと向かわせて、自身はエールカラミティに乗り込んだ。

 そして、すぐ近くで暴れているブーストレイダーへと向かって、その動きを制限しようと戦いを仕掛ける。

 少しでも多くの人が脱出できるようにと。

 

 そんな彼女の奮闘を横目で見ながら、ミヤビはホープへと飛び込んで、セナと共に潜水艦から脱出するのだった。

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