ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第138話『コイツ、自爆しようとしてる!』

 セナ達がアンティファクティスの潜水艦へ向かっている頃。

 エクリプス二号機とケンを外へ誘い出したタツミは彼の説得を行うべく通信を繋いでいた。

 

 おそらくは世界でたった一人、タツミにしか出来ない仕事をこなす為に。

 困った人を救助する為に、エクリプスに乗り続け、ケンと共に様々な修羅場を潜り抜けて来たタツミだけが、彼に言葉を届ける事が出来ると。

 ミヤビとセナに託され、ここへ来たのだ。

 

「ケン!」

『タツミか! 余計な事をしやがって! もう少しでアイツの居場所が分かったのに!』

「セナ姫様は、ケンがそんな事するのを望んでない!」

『知ってるさ! だが、誰かがやらなきゃ! いつかまた! 世界はあの子を殺す!』

 

 ケンの叫びは、ミヤビから聞いた話からそれほど外れていないモノだった。

 そして、その叫びは、その痛みは、その嘆きは、タツミもよく分かるモノだった。

 

『お前だって分かるだろう! 待っている事しか出来なかった俺達をおいて、闇の向こうに消えてしまった人を見ているだけだった気持ちは! お前には! 分かるだろう!』

「……あぁ」

 

 タツミは、かつて起こったオーブでの災害を思い出していた。

 大型の台風がある島に襲い掛かり、外交的な問題もあって、軍が動けない中、誰かを助ける為に嵐の中へ飛び出していった父親の事を。

 オーブによってもみ消されたこの事件で、タツミは多くのお金をオーブから貰ったが、それで心の奥に突き刺さった棘は消えなかった。

 

 痛みは、苦しみは残り続けている。

 そして、それはおそらくケンも同じなのだろうとタツミは思った。

 もしかしたら、この痛みがあったからこそ、二人はまるで違う性格だというのに、親しくなれたのかもしれないと。

 

 だが、違う。

 ケンとタツミは違うのだ。

 

 確かに後悔があった。

 父親を見送る事しか出来なかった己の無力さが。

 

 しかし、それと同じくらい……タツミは征くべき場所に向かう男に、憧れたのだ。

 だから、ソレをただ否定するケンとは違う。

 今は違う場所に居た。

 

「でも、僕は違う」

『なに?』

「確かに、父さんが死んだのは悲しかったよ。でも、でも! 父さんは何も間違えた事はしてなかった!」

『お前……!』

「誰かを助けようとして、死んでしまうのと! 死ぬことを前提として作戦を立てるのは違うんだよ! ケン!」

『だが、こうしなければ』

「例え、ケンがジブリールって奴を倒しても、きっと次の奴が出てきて、その人の為にセナ様は傷つくよ」

『……!』

「なら、ケンのやろうとしている事は無駄になる。だから、その方法は間違ってるって事じゃないか!」

 

 タツミはケンに言葉を叩きつけて、並走していたエクリプスを変形させながら二号機に近づいて、接触した。

 そして、帰ろうと優しく声を掛ける。

 

「僕はまた、ケンと一緒にODRやりたいよ。セナ様も、ミヤビちゃんも続けて良いって言ってたから……」

『駄目だ』

「ケン……!」

『俺は、もう出来ねぇよ。信頼を裏切っちまったからな! 途中では止められない』

「ケン!」

『最後までやり通す! それが俺の覚悟だ!』

「この、わからずや!」

 

 その言葉がおそらくはキッカケだった。

 エクリプス二号機はバッと一号機の手を振り払うと戦闘状態に移行する。

 

『どちらにせよ。場所はある程度特定してるんだ。もう少し時間をかければ見つけることが出来る。そして、見つければこっちのもんだ。二号機はここにあるんだからな!』

「そんな事! させるもんか!」

『だから……』

 

「僕が君を止める!」

『俺はここでお前を落とす!』

 

 二つのエクリプスは互いに武装を展開しながら高速で大空を飛び回る。

 ビームライフルを向けながら互いに撃ち合うが、その軌道はあまりにも速すぎるエクリプスには当たらず、空中に光の軌跡を残すばかりであった。

 

『くっ! はやい!』

「コレが核動力!?」

『ホーリはナチュラルの筈だ! 何故このGに耐えられる!』

「まだ……まだ早く飛べるはずだ! エクリプス!」

 

 互いに誰かへ向けたワケでも無い言葉を吐きながら、常人では追いつけない高速戦闘を繰り広げながら上空へ、更に上空へと高速移動しながら飛び続けた。

 やがてそれは雲を突き抜け、戦闘機の領域へと向かってゆく。

 

 モビルスーツがこの空域で戦闘を行った記録はない。

 だが、二人はそんな意識もないまま前人未到の領域へと飛び込んでゆくのだった。

 

「ケン……!」

『タツミ!』

 

 このままでは埒が明かないと変形しようと考えたのは、ほぼ同時の事であった。

 二人は雲の上で、モビルスーツ形態へと変形し、ビームサーベルを抜いてぶつかり合う。

 ビームサーベル同士がぶつかるプラズマが、周囲に影響を与え、雲を散らし、火花を散らせるが、二人は気にしないまま叫び続けた。

 

「もう、止まれぇ!」

『今更だ!』

「お母さんだって、オーブでケンを待ってるんだろ!」

『もう、死んだ!』

「っ!」

『最期まで笑って、逝った! だから俺はもう満足なんだ! もう未練なんか何もない!』

 

「なら……! 僕が未練だ!」

『はぁ!?』

「ミヤビちゃんだって、きっと悲しむ! 泣く! 泣き叫んで、文句を言うと思う!」

『いや、それは……確かに、想像できるが』

「ケンと繋がっている人は、もうお母さんだけじゃない! 多くの人がケンと繋がってるんじゃないの!? ケンが居なくなったら、セナ様はきっと悲しむよ! こんな悲劇を起こした自分が悪いって、自己犠牲的な方法を取るかもしれない!」

『一国の姫様が、自分を犠牲とした作戦なんか立てる物か!』

「分からないじゃないか! セナ様も、キラ様も、一度、死にかけたんだろう!?」

『――!』

 

 タツミの言葉はケンに、あの時の事を思い出させ、苦しみを思い出しながら唇を噛みしめる。

 優しい姫様が、ケンの死に何も感じないとは考えられなかった。

 

 そして、長くは無いが、短くもない時間を共に居た……ミヤビもまた。

 

「なら、僕たちで平和を作ろうよ! ちょっと前まで戦争をやってた世界が、急に平和になるとは思えないけど、それでも僕たちの行動は、ODRは少しずつでも世界から争いを消していた筈だ!」

『……』

「いきなり全部を変える事なんて出来なくても、少しずつ、少しずつ変えれば良いじゃないか。みんなそうやって、世界と戦ってきたんだろう?」

 

 ケンはまるでセナ本人から怒られた様な気持ちになりながら、機体の動きを止めた。

 そして、タツミに向かって何かを喋ろうとした瞬間、二人に地上から緊急通信が入る。

 

『ちょっとぉ! まだ説得終わらないの!? こっちはアンティファクティスのボスが最後の抵抗にって暴れだして! 大変! ぎゃん!』

『み、ミヤビお姉ちゃん! 大丈夫ですか!?』

『いて、てて……頭、打った』

『ひゃあ! 血が! ホープさん! ミヤビお姉ちゃんが怪我をしない程度に動いて逃げて下さい!』

 

『おい! 大丈夫か!? くそっ! なんでジョエルの奴! 二人ばっかり! こっちも見ろよ!』

 

 

 地上で起こっている事に、二人は急いでアンティファクティスの本拠地があった潜水艦へと急いだ。

 二人がほぼ成層圏近くから地上へ降りて来ると、そこでは半壊状態になった潜水艦と、多くのZAFT、連合のモビルスーツに囲まれながらも暴れているブーストレイダーの姿があった。

 

 ブーストレイダーはまるで死ぬことが怖くないとでもいう様に、暴れ、傷つき、火花を散らしながらも戦いを続けている。

 その姿は狂気そのものであった。

 

 しかもそんな状態にあっても、ホープを狙い続けており、その憎しみがまるで形となっている様でもある。

 

『止めろぉぉおお!!』

 

 そんな戦場に高速で降下してきたエクリプス二号機はその勢いのままブーストレイダーに突撃し、海へと機体を落とす。

 だが、そんな大きすぎる衝撃を受けても、何も影響はないとでもいう様にブーストレイダーは変形しながらエクリプス二号機から離れ、ホープを執拗に狙う。

 

「こいつ! 止まれ!」

 

 そして、二号機と共に降りて来たエクリプスもビームライフルをブーストレイダーに向かって放つが、一切速度を緩める事のないままエクリプスに突撃しつつ、ホープを見つけると砲撃を放つのだった。

 そんなブーストレイダーにタツミは一つの覚悟を決める。

 ビームサーベルを抜くと、ブーストレイダーに突き刺しながらもう片方の腕でブーストレイダーを掴み、高速で飛び上がったのだ。

 先ほどまで居た上空へ。空の果てへ。

 

『何をしてる! タツミ!』

『タツミ! 危険よ!』

『タツミさん!』

 

「駄目だ。コイツ、自爆しようとしてる!」

 

 タツミはブーストレイダーと接触した時、エクリプスから警告を受けたのだ。

 接触しているブーストレイダーが自爆しようとしていると。

 

 おそらくは、戦闘がこれ以上継続出来ないと、せめてホープだけでも道連れにしようとしているのだとタツミは判断し、ブーストレイダーを捕まえながらミヤビ達の元から離れる事にしたのであった。

 

『なら、早く捨てて、戻ってきなさい!』

「駄目だよ! 離したら、被害が出る! だから……!」

 

 タツミは空へと向かう。

 憧れた人の背中を追う為にも。

 

 自分にしか出来ない事を成し遂げる為にも。

 

『あの、バカ!』

 

 だが、そんなエクリプスを追いかける機体が一機あった。

 エクリプス二号機である。

 

 ケンは高速で二号機を操り、戦闘機並の速さで上空へ駆けあがってゆくエクリプスに追いついた。

 そして、タツミに怒鳴りつける。

 

『おい! どういうつもりだ! 人には死ぬなとか言っておいて!』

「いや、でもこのまま放置したら、姫様たちが!」

『分かってるよ! だから運び出すのは分かる! だが、なんでそれを一人でやってんだって言ってんだ!』

「……協力、してくれるの?」

『当たり前だろ……俺たちは、仲間なんだから』

「……ケン」

 

『とりあえず、コイツを大人しくさせるぞ!』

 

 ケンはビームサーベルをブーストレイダーのコックピットに突き刺し、動きを止めさせると、未だ自爆シークエンスが終わっていない事を確認して、更に上空へとエクリプスと共に駆けた。

 そして、成層圏を超え、地上への被害が出ないであろう場所まで到達し、ブーストレイダーを放り捨ててから再び地上へと最大加速をする。

 

『自爆までの時間は!?』

「もう十秒もない!」

『なら、全力で踏み込め!!』

 

 それから数秒後、ブーストレイダーは上空数キロを自爆の炎で焼き尽くし……空の藻屑となって消えるのだった。

 エクリプスと二号機は閃光に飲み込まれ、その姿は光の中に消えて行った。

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