ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第139話『実は、まったく新しいモビルスーツを開発しようと、私は考えているんだ』

 アンティファクティスを名乗るテロ集団が、大西洋連邦などの艦を襲った事件について。

 オーブ連合首長国のODRという組織とセナがそれを未然に防ぎ、大きな被害なく事件を終わらせたという事がニュースとなり、プラントにもその情報が届いていた。

 

「なお、ODRのパイロット二名には連合国より感謝状の贈呈を考えており……って、どうしたの? キラ、嬉しそうね」

「まぁね。嬉しいよ。どうなるか心配だったけど、生きる決断をしてくれた事がさ」

「……? 何の話?」

「頑張り過ぎな子の話。自分を犠牲にして恩返しを……。なんて考えてるんじゃないかって思ってたからさ。一緒に笑える子が出来たんだなって思うと嬉しくて」

「ふぅん。よく分かんないけど」

「ま。そんなに大した話でもないよ。もうね! じゃ、そろそろ時間だし。行こうか。『ラクス』」

「はぁい。んんっ! 分かりましたわ。キラ」

 

 先ほどまでキラと共にダラダラとニュース記事を読んでいたミーアは、キラの言葉に立ち上がり、慣れた調子でラクス様という存在に成る。

 そして、キラと共に招待されていた場所へと向かうのだった。

 

 そこは、マイウス市の封鎖地区の奥。

 関係者以外は立ち入り禁止である……この世界で初めてモビルスーツが生まれた場所であった。

 

 キラと『ラクス』を迎えに来た車に乗り込んで、二人はそのまま該当の地区まで行き、かつて秘密裏にモビルスーツが開発されていた場所へと踏み込んだ。

 

「んー。懐かしいね。ココも」

「そうだな。私にとってもつい先日来たばかりの様だよ」

 

 そして、秘密工場の奥でキラが呟いた言葉に一人の女性が言葉を返しながら近づいて来た。

 その女性は、この場所に幼いキラとセナを連れ込んでモビルスーツ開発を手伝わせた張本人であり。

 つい先日、地球へと廃棄コロニーを落とそうとした、ZAFTの前身的な組織であった黄道同盟の熱心な構成員であった女性。

 メイア・シヴァであった。

 

「メイアさんは、本当につい先日ここに来てましたよね? 監視カメラのデータ。見てるんですからね」

「そこまで知られていたか。流石はキラ様。という所かな」

 

 本当は、メイリンがシヴァの暗躍を発見していたのだが、メイリンの安全を守るためにも。

 そして、もしもの時の切り札とする為にも、キラは自分がやった様に語る。

 これはメイリンやルナマリアとも話し合って決めた事であった。

 

「まーた悪い事考えてるんじゃないでしょうねぇ」

「もうやらないと言っただろう? 君という貴重な人材を失う事はプラントにとって大きな痛手なんだ。ブルーコスモスを殲滅するよりも、君を守る方が重要度は高い」

「なんか微妙な比べ方をされてて反応が難しんですけど」

「過去の憎しみよりも、未来を視ているという事だ」

 

 メイアの遠回しな言葉にキラは微妙な顔をしたが、何を言ってもこういう人たちは止まらないと知っている為、それ以上の追撃はしない。

 が、代わりにメイアは小さく笑みを浮かべながらキラに語り掛けた。

 

「だが、良い訓練にはなっただろう?」

「何がです?」

「イザという時には殺さなくてはいけない。という覚悟をする訓練だ」

「まぁ……そうですね」

「どの様な結論でも構わないが、考えた事も無いのと、考えた事があるとでは大きな差がある。その切っ掛けとしては悪くなかったと思うよ」

「……実際の被害が出る所だったんですけどね」

「悪いが、私はプラント以外の事に興味が無くてね。気にしていたのはプラントと、君の事だ」

「僕? 利用価値があるからって事ですか?」

 

 キラがいじけた様に言った言葉にメイアは少しだけ寂しそうな顔をする。

 そんな表情をされてしまえば、キラが強く問い詰める事は出来ず、む、と黙ってしまうのだった。

 

「もう知っているだろうが、私は……ユニウスセブンで夫と息子を失った。だから、私には、もう……ザラ閣下やシーゲル・クライン同志と目指した理想しか残っていないのだ。後は……世界から排除されそうになった幼い姉妹、とかな」

「……メイアさん」

「戦争に巻き込んでおいて、虫が良い話ではあるがな。私はお前たちと過ごす日々が楽しかったんだよ。図々しい話ではあるが、お前たちを娘の様に思っていたのかもしれない」

 

 そんな風に。

 遠い目をしながら語られてしまえば、いよいよキラに発する言葉はなく。

 はぁと小さくため息を吐いて、分かりました。とだけ言うのだった。

 

 そして、話を変えようと、呼びだした用事は何なのかとメイアに問おうとしたキラであったが、その前に騒がしい声がキラの来た方からして、キラはそちらへと視線を向ける。

 

「うん?」

「離せよ! 離せって! 俺たちはキラさんの知り合いで!」

「その証拠がどこにあるというのだ。どこの組織の間者かもわからないお前たちを離すワケが無いだろう」

「嘘じゃないって! なぁ!? レイ!」

「えぇ。本当です」

 

 その、聞きなれた声と名前にキラは思わず天を仰ぎながら額に自分の手をぺしっと当てた。

 とてもよく知っている子供達の声である。

 

「シン! レイ! ……それに、サトーさん」

「キラさーん!」

「申し訳ございません。キラさん」

 

「む? なんだキラ様の知り合いであったか。コソコソと隠れていたのでな。捕まえたのだが」

「申し訳ございません。サトーさん。イタズラが好きな子達で……。ほら、二人とも。ご迷惑をおかけしたんだから。謝るよ」

「ちぇー。ごめんなさい」

「申し訳ございませんでした。お手間をお掛けしました」

 

 頭を下げる三人に、サトーは軍人として、人生の先輩として、シンとレイの頭をガシッと掴み、一言だけ言っておく。

 

「まったく。キラ様にあまり迷惑をかけるなよ。お前たちを庇えば庇う程に評判は落ちるんだ。ちゃんと考えておけ」

「は、はい!」

「承知いたしました」

 

 思っていたよりも素直に敬礼をするシンに、キラは少し驚きながらも、厳しいが優しい父親の様な姿で叱るサトーを見て、ホッと息を吐いた。

 が、それはそれとして、言いたいことは言っておく。

 

「サトーさん。ありがとうございます。でも、好き勝手して僕に迷惑をかけたのはサトーさんも同じなので、猛省してくださいね」

「そうだな。ユニウスセブンを落とそうとしたのは、確かに、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。遺族の方々に何と詫びれば良いか。英霊の魂を奴らに叩きつけるならボアズにするべきだった。ユニウスセブンに軍人は居なかったのだから」

「いや、地球に落とすなって話をしているんですけどね? 僕は」

「……?」

「そんな言っている意味が分からないみたいな顔をしないで下さい。まったくもう!」

 

 どいつもこいつも、とキラはプンスカ怒りながら地団太を踏み、文句を言おうとしたのだが。

 まるで見ていたかの様なタイミングでキラが爆発する前に、一人の男が暗闇から姿を現した。

 

「やぁやぁ。すまないね。来るのが遅れてしまった」

「デュランダル議長!?」

 

 キラは突然議長が現れたという事で背筋を伸ばし、姫らしくもあり、軍人らしくもある姿で彼を迎え入れたのだが。

 周りの人間は誰一人として敬礼などはしない。

 

 シンとレイはまだしも、他、三人はプラントの人間じゃないのか。とキラは思ったが、そのまま飲み込んだ。

 そして、デュランダルに対して伺う様な顔をしながら用件を尋ねる。

 

「もしかして、私たちを呼んだのは」

「あぁ。私だよ。キラ君。久しぶりだね。ラクス様の件以来かな」

「そうですね……」

 

 キラはチラッと背中に隠れているラクス、ことミーアを見た。

 ミーアはキラの後ろにコソコソと隠れながらデュランダルの視線から逃げている。

 そんな様子に、苦手意識でもあるのかな。なんてキラは考えながらミーアを庇いつつ、デュランダルへと微笑んだ。

 

 そして、デュランダルもまた、そんな二人の様子を見て微笑みを浮かべる。

 穏やかな空間のハズなのに。何故か不思議と気持ちが悪くなる様な場所となった。

 

「それで……私達の用事というのは?」

「あぁ。是非とも君たちに頼みたい事があってね」

「頼みたい事ですか? ……まさかテロ行為じゃないでしょうね」

 

 キラはメイアとサトーを見てからそんな事を言うが、デュランダルはハハハと軽く笑った後、そんな事はしないと首を振る。

 

「私はクライン派だよ。あまり強硬的な作戦は好きじゃないんだ。やるなら穏便に、だね」

「フン! クラインの軟弱者め」

「シーゲル・クライン同志は時に、力で理不尽と抗う事も大切だと言っていましたがね」

 

「と、まぁ。彼らの様なザラ派の軍人から私は嫌われていてね。彼らと繋がりを持つ為にも、キラ君を呼びたかったという訳だ」

「なるほど。理解しました。ですが、クライン派としてザラ派の筆頭であろうメイアさんとサトーさんに繋がりを持ちたいのは、プラントを一つにまとめる為ですか?」

「それもある」

「も、という事は……」

 

「実は、まったく新しいモビルスーツを開発しようと、私は考えているんだ」

「まったく新しい」

「モビルスーツ?」

 

「何故、その様なモノが必要なのでしょうか」

 

 興味があると言わんばかりにメイアとサトーが反応するが、キラは冷ややかな目をデュランダルへと送る。

 そんな視線に、デュランダルは降参だと、両手を上げながら言葉を返した。

 

「そう怒らないでくれ。キラ君。私は何も再び大戦を始めようとしている訳じゃないんだ」

「では、何のために?」

「プラントを護るためだよ」

「守るって……でも戦争はもう終わったでしょう?」

 

「いや。まだ終わっていない」

 

 デュランダルは笑みを浮かべたまま、ハッキリとキラの言葉を否定した。

 そして、驚く様な言葉をこの場に居る全員に伝えてゆく。

 

「戦争はまた起きるだろう。我々が仕掛けようとしなくてもね」

「それを止める為に、セナは地上で活動をしています。そして、僕も……」

「だが、後手に回っている事は確かだ。先日の事件で、私は確信した。アンティファクティスなる組織の背後に……彼が居ると」

 

「彼……?」

 

「ロード・ジブリール。キラ君もセナ君も勿論承知の事とは思うがね」

「……まぁ、そうですね」

「彼を止めなければ、世界はまた戦火に巻き込まれるだろう。だが、そうなった時の為に。今度こそプラントを守るために。私はインパルス計画を実行するつもりだ。そのために、諸君には協力していただきたい」

 

 キラたちはそれぞれの思惑を胸に、彼の言葉に耳を傾けるのだった。

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