ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第141話『若者は勢いがあって良いね』

 キラはデュランダルから聞いた話を飲み込みながら、ふむと考える。

 今の話の中で気になる点がいくつかあったからだ。

 

「しかし、モビルスーツを奪取させるという事は、それ相応の被害が出ますよね?」

「あぁ。その可能性は高い」

「最悪は、ヘリオポリスの様に崩壊しますよ? プラントが。それを議長は許容するのですか? 平和の為なら仕方がないと」

「ふむ。その質問は少し間違っているね」

「と、言いますと?」

 

「私が何もしなくとも。ロード・ジブリールは戦争を起こす為の手段を取るだろう。例えば、もう一度プラントへ核ミサイルを放つ……とかね」

「……!」

「それを考えれば、モビルスーツを奪取させる方が被害は少なく済むし、ある程度こちらで誘導も出来るだろう?」

「それは……そうですけど」

 

「戦争を止める事は出来ないのですか?」

「あぁ。無理だ。ハッキリ言おう。不可能だと」

「っ」

「どれだけ君たちが平和を訴えようと、それに同調する人が増えようと、人は大きな流れには逆らえないのだよ。そして、地球の国家や勢力の後ろには彼らが居る。ロード・ジブリールをはじめとする。死の商人……ロゴスがね」

「そうですね」

「そして、彼らへの説得は君やセナ君にも出来なかったのだろう?」

「……そこまでご存じでしたか」

「あぁ。実に残念な話だと思うよ」

 

 デュランダルは本当に、心の底から残念だという様な顔でキラに言葉を投げた。

 そして、この場に居る者達へも同じ様に言葉を向ける。

 

「私はクライン派であるが、今度の戦争ではザラ派の者達とも共に戦えると思っているのだよ」

「その根拠を知りたいな」

「同じ者を敵と定めているからさ。血のバレンタインを引き起こしたのも、彼らロゴスなのだ。そして、戦争を引き起こしたのも、プラントの独立を妨害し続けてきたのも、同様だ。彼らは自己の利益の為に他者を踏みにじってきた。そんな彼らとは私達クライン派も戦わなくてはいけないと考えている」

「それは結構な事だ。しかし、平和の歌姫であるラクス様はどう考えて居るのかな」

 

 メイアはデュランダルの言葉に頷きながら、キラの後ろに居る少女へと視線を向けた。

 戦場に居る時はもっと強い目と言葉を持っていたが、ここに居るのはまるでただの少女の様だと思いながら。

 

「わ、私……いえ。ワタクシは。その……デュランダル議長のお考えが正しいと考えております」

「ふぅん。戦う事が必要だと?」

「は、はい……!」

 

「メイア。彼女は先の大戦で三隻同盟を結成し、ヤキン・ドゥーエの戦場を駆けていた。そして、平和を求め、戦っていた。その意志は何も変わらないとも」

「なるほどね。まぁ、議長殿とラクス様が頷くのなら、クライン派はまとまるだろう」

「ザラ派はどうかな」

「まぁ、私達が居れば、ある程度はまとめられる。他は……まぁ、戦争が始まるという事になれば仲間にする事は容易だ」

「それは助かるね。では、二人にはそちらをお願いしたい」

 

「それは良いが、いつ始まる。十年後という事では話にならないぞ」

「私の想定では二年以内。インパルス計画が早まれば、一年半くらいで戦争が始まるだろう」

「承知した。であれば何も問題はない。我々はセカンドシリーズへの機種転換を進めるとしよう。新たなる戦場の為に」

「あぁ」

 

 サトーの言葉にデュランダルは微笑みを浮かべたまま頷き、そのまま部下たちの元へと戻って行った。

 そして、メイアもまたサトーと同じ様にいくつかの情報をデュランダルから聞き、その情報を持ってどこかへ向かう。

 

 そんな姿を見ていたキラは彼らが居なくなってから小さくため息を吐いた。

 

「二年……か」

「キラさん? 大丈夫っすか?」

「あぁ、ごめんね。シン君。心配かけちゃって」

「全然! 俺達に出来る事なら何でも頼ってください! な? レイ!」

「えぇ。その為に、我々はここに居るのですから」

「ありがとね。二人とも」

 

 キラはシンとレイを抱きしめてから、頬に口づけを落とす。

 そして、話は終わったとキラ達の方に向かって歩いてくるデュランダルへとキラは視線を向けた。

 

「やぁ。すまないね。待たせてしまった」

「いえ……」

「キラ君にはつらい話となっただろう。しかし、回避が難しい事であれば、心の準備をした方が良いかと思ってね。迷惑だったかな」

「その様な事はありませんよ。ただ……僕は、どれだけ厳しい状況でも諦める事はしたくありません」

「無論。私も戦争が回避出来るのであれば、それ以上の喜びはない。キラ君達がその為に必要な事があるのならいくらでも支援する事を約束するよ」

「……はい。ありがとうございます」

「だが、君とセナ君が失われてしまえば、地球の国家との恒久平和は難しい。その点だけは気にしておいてくれると助かるな……。と、言っても君たちは自分の価値を低く見積もる所があるからね。是非、君たちにもお願いしたいな。シン・アスカ君。レイ・ザ・バレル君」

「はい! お任せください!」

「ハッ!」

「若者は勢いがあって良いね」

 

 デュランダルはシンとレイの言葉に笑みを浮かべながら応え、そして二人にインパルスとセイバーのデータが入った資料を渡してから遠くで待っていてくれる様に言う。

 

「わざわざ護衛としてオーブから来ている彼らを遠ざけるのは申し訳ないが……ここから先は重要な機密だからね。すまないが、許してくれ」

「……彼らがオーブから来ていると、何故分かったんですか」

「アカデミーでも彼らは有名なんだ。初めて乗ったモビルスーツを手足の様に動かしたり、まるでどこかで学んできたかの様なナイフ戦が出来たりね。おそらくは教えた者が優秀なのだろう。例えばZAFTの元トップエース。アスラン・ザラとかね」

「どこまで調べたんですか?」

「別に多くは調べていないさ。ただ、キラ君が来訪された時から、それほど時間を経てずにオーブから来たお客さんの同行くらいは調べるかな」

 

 当然の様に言い放ったデュランダルの言葉は非常に無茶な物であったが、真実こうして見破られている状況ではどうにも反論は出来ない。

 キラはこれ以上喋っても墓穴を掘るだけか、と口を噤んだ。

 

 そんなキラにデュランダルは微笑みを浮かべたまま言葉を続ける。

 

「それで……ラクス様の件だがね」

「あっ! も、申し訳ございません! 私、勝手な事を言ってしまって」

「いや、あの状況では仕方ないだろう。君は政治には詳しくないし。ラクス嬢の考えをあの状況で理解するのは不可能だ。君も、そう思うだろう? キラ」

「……まぁ、そうですね」

 

 キラとしては、ラクスの考えを勝手に語られる事は酷く不満な事であったが、確かにデュランダルの言う通り、あの状況ではどうする事も出来なかったという事はよく理解していた。

 ミーアはあくまで表向きの影武者。

 ラクスと考え方が同じなワケでは無いのだ。

 

 だから、こういう時の為にあらかじめ準備をしておく必要があったのだが……その準備を怠った自分が悪いとキラは考える。

 そして、必死に謝っているミーアに大丈夫だよ、と言いながらキラはひとまずインパルス計画に参加する事を約束するのだった。

 

 

 それから。

 キラはシン達の元へ向かい、一緒に設計書を見ながらあーでもないこーでもないと言葉を交わしていた。

 そんなキラを遠くから見ながら、ミーアは先ほどまでの怯えた表情をどこに置いて来たのか、酷く冷静な顔で口を開く。

 

「これで良かったんですか?」

「あぁ。完璧だよ。君は確かに『ラクス・クライン』だった」

「でも……オドオドとしていたのは良くなかったのでは?」

「いや、逆にアレが戦場に居た『ラクス・クライン』と君とを明確に分けるモノとなる」

「……? それだと私が偽物だとバレてしまうのでは?」

「そう思うのは君が自分をミーア・キャンベルだと知っているからさ。知らぬ者ならば、君こそ本物だと考える。何故なら君の隣には英雄、キラ・ユラ・アスハが居るのだからね。その隣に立つ物を偽物とは思うまい」

「それは……確かに」

「そして、そう考えた時、彼らはこの様に考えるだろう。ラクス様を愛するキラ様が、果たして戦場にラクス様を連れて行くだろうか。あの場所に居た者は影武者か、もしくは君が無理をした姿であったのではないか、とね」

 

 デュランダルの推察に、ミーアは僅かに目を見開いてから、小さく笑みを零した。

 それは、自分の思い描いた未来に世界が進んでいると確信できたからだ。

 

「なるほど。それは素晴らしいですね。このままいけば、私がラクス様となるワケですか」

 

 ミーアはキラが自分を求める姿を想像して、キュッと手を握りしめた。

 そして、微笑みを浮かべたままキラを見つめていたのだが、少しだけ気になる事があり、それをデュランダルに問う。

 

「そういえば、私がラクス様になるとして……あの御方はどうされるのですか?」

「どうもしないさ。私は、ね。ただ……まぁ、いつかぶつかる事はあるかもしれないな」

「その場合は」

「もしかしたら、悲しい事件があるかもしれない。だが、彼女の意思を継ぐ者は居るからね」

 

「そうですわね。プラントの皆さまが心を痛める事は無いように。(わたくし)も頑張りたいですわ」

 

 ほんの少し前まで隣で話していたミーアが、ふとした瞬間に喋り方も雰囲気も、完全な『ラクス・クライン』へと変わってしまった事で、デュランダルは笑みを深めた。

 声が似ているというだけで見つけ出した少女であったが、これは思わぬ収穫であったな、と。

 

 そして、彼女に後の事は任せ、デュランダルも秘密工場を出て行く。

 が、そんなデュランダルを目で追う事もなく、『ラクス』はジッとキラを見つめ続けた。

 

 妄執か。愛情か。

 もはや原型が無い程にかき混ぜられた感情の色は分からないが、ミーアはただキラと共に居る幸福を喜びながら、聖女の様な微笑みを浮かべて、誰にも届かぬ祈りを口にする。

 

「早く。戦争が起きないかしら。そうすれば、あの御方も動くでしょうし。それを排除しようとする方も増えるでしょう」

「あぁ……早く、早く起きないかしら」

「キラの瞳に映る(わたくし)が、あの御方から(わたくし)に移る日は……まだかしら」

 

「全てを持って生まれたんですもの。何不自由なく生きてこれたんですもの。一つくらい。(わたくし)が頂いても良いですわよね? ね……ラクス様」

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