ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第143話『おいお前! あんまり調子に乗ってるんじゃないぞ』

 シンが内密にではあるが、正式なインパルスのパイロットとして決まっていた頃。

 遂にセカンドステージシリーズと呼称されるモビルスーツ群が試験配備された。

 

 とは言っても、戦時中では無いため、これから試験運用を行い、より機体を実戦仕様に変更してゆく事になる。

 という訳で、インパルス、カオス、アビス、ガイアのテストパイロットとして選ばれた四人が、アーモリー・ワンへと招集された。

 

「本日はお集まりいただき、ありがとうございます。僕はセカンドステージの開発責任者という事になっています。キラ・ヤマトです。何か分からない事があったら何でも聞いて下さいね」

「はい!」

 

 キラの言葉に真っ先に反応したのはリーカ・シェダーという視力調整用の眼鏡をかけた女性であった。

 かなり小柄な見た目であり、キラは年上が相手だというのにやや気安い口調で言葉を返す。

 

「はい。なんでしょう。リーカ・シェダーさん」

「キラ様は、プラントを救った英雄のキラ様だと思うんですけど。お呼びする時はキラ様とお呼びした方が良いですか?」

「あー。そういう固いのは良いですよ。これから、それなりに長い付き合いになるでしょうし。キラでもキラちゃんでも好きな様に呼んでください」

「あ! そうなんですねー。じゃあキラちゃんって呼ばせていただきますね!」

「ありがとうございます。リーカさん」

 

 うふふと互いに花が咲きそうな笑顔を向け合うキラとリーカであったが、そんなほんわかした空気を刺すような言葉で介入する男が一人。

 まるでナイフの様な殺気と空気を纏ったマーレ・ストロードはキラを睨みつけながら舌打ちをしつつ、言葉を投げつけた。

 

「おいお前! あんまり調子に乗ってるんじゃないぞ」

「はぁ」

「英雄だか何だか知らないが。お前が戦果を上げられたのは機体がフリーダムだったからだ。それを忘れるな」

「なるほど」

 

 金色の髪をツンツンと尖らせながら、態度も口調もトンガリ君な男にキラはあまり興味も湧かず適当な返事をする。

 そんな態度が気に入らなかったのか、マーレは更にキラへと暴言を続けた。

 

「議長のお気に入りか何か知らないが、機体の性能に助けられただけの小娘が偉そうにしているのが気に入らないんだ」

「別にテストパイロットが嫌なら言ってくれれば別の人にお願いするから良いですよ? はい。お帰りはあちら―」

「っ! 偉そうに指図をするな!」

「はぁ。では何がお望みなんでしょか」

「俺をインパルスのパイロットにしろ」

「それは無理」

「何故だ!! 俺はここにいる誰よりも強い!」

「強いかどうかが重要じゃないの。テストパイロットなんだから必要なのは適正だよ。テキセー。分かる? テキセー」

「っ! バカにするな!!」

「別にバカにした意図は無いですけれども」

 

 キラは肩をすくめながらマーレの言葉を流す。

 が、マーレの怒りはそれで消える筈もなく、更にメラメラと燃え上がっていた。

 それを面倒だなぁとでもいう様な顔でキラは見やる。

 

「じゃあ、どうやったら納得出来るんですか? アナタは」

「俺と模擬戦をしろ。賭けるのは当然、インパルスのパイロットの座だ」

「ったく。しょうがないなぁ。こんなの予定に入れてないんだけど」

 

「あ、あの? キラちゃん。良かったら私が変わりましょうか?」

「あー。良いですよ。大した時間もかからないでしょうし」

「なにィ!?」

「最初に鼻っ柱をへし折るのが一番手っ取り早いってイザークも言ってたし。やりましょうか。模擬戦。その方が分かりやすいでしょ」

「貴様! 負けたら跪いて謝らせてやる!」

「へーへー。どうぞ、ご自由に。他は? もう良いですか? 今なら出血大サービスでハグとかキスを付けてあげても良いですけれども」

「調子に乗りやがって! 思い知らせてやる! おい! そこのお前! アビスを準備しろ! 徹底的に叩き潰してやる!」

「元気だねぇ。ま。それくらいの方が潰れなくて良いけどね」

「き、キラちゃん? 本当に大丈夫? お姉さんも手伝おうか?」

「あー、良いですよ。一回キッチリやった方が後腐れも無いでしょうし。あ、ごめんなさい。ジンを一機用意して貰えますか?」

「じ、ジン!?」

「しょ、正気なのか!? キラさん! ジンでアビスと戦うだなんて! アビスにはフェイズシフト装甲が!」

「分かってますって。僕もアレの開発には関わってますしね」

 

 キラはひらひらと手を振りながら、リーカとここまで状況を黙って見ていたコートニー・ヒエロニムスに手を振る。

 そして、キラが負けるとは微塵も思っていないシンに、行ってくるねーと手を振って模擬戦の場へと向かった。

 

 流石に。

 高出力なビーム兵器を多数搭載しているアビスが模擬戦を行うという事で、場所はプラントの外が選ばれた。

 プラントへの影響が出ないやや離れた宙域で、開始の時をキラもマーレも静かにコックピットの中で待つ。

 

 そして、そんな戦場をアーモリー・ワンのモニターからシン達は確認していたのだが、ここで思わぬ客人が顔を出した。

 

「もう始まってしまったかな?」

「ぎ、議長!? どうしてこちらに!?」

「次代を担うモビルスーツの試験初日だ。顔くらいは出すさ」

 

 現最高評議会議長、ギルバート・デュランダルが現れた事でリーカ達は敬礼を返し、モニターが見える最も前の席にデュランダルを案内した。

 そして、デュランダルと共に来たタリア・グラディスという名の女性士官もリーカたちへと敬礼を返す。

 

「あぁ。そう言えば君たちにも紹介しておこうか。現在開発中の新造艦。ミネルバの艦長を務める事になる……」

「タリア・グラディスです。あなた達がセカンドステージのテストパイロットね。よろしく」

「よ、よろしくお願いいたします!」

「よろしくお願いします!」

「まぁ、現在はテストパイロットという所だが、特に問題が無ければそのまま正式なパイロットとして採用される。よろしく頼むよ。グラディス艦長」

「はぁ……分かっております。そして、それを束ねる隊長は、あちらですか」

「あぁ、キラ君の事はよく知っているだろう?」

「えぇ無論。彼女を知らぬ者などプラントには居ないでしょう。私もヤキン・ドゥーエで彼女を見ました。まぁ、その際には我が方のモビルスーツと交戦中でしたが」

「キラちゃんと『交戦』出来たモビルスーツが……?」

「えぇ。あなた達もアカデミーに居たのなら聞いた事はあるでしょう? ラウ・ル・クルーゼ。伝説のパイロットよ。彼と一騎打ちをしていたのよ。とてもじゃないけど、普通のパイロットがどうこう出来る戦いじゃ無かったわ」

「あぁ、クルーゼ隊長か。確かに、彼とキラ君の戦いならば、見ごたえがあっただろうね」

「議長! そういう物言いは慎んでください!」

「いや。すまないね。私はモビルスーツに乗って戦う事は出来ないが、見るのは嫌いじゃないんだ」

「まったくもう……まぁ良いですわ。とりあえず拝見させていただきましょう。私達の艦の隊長を」

 

 タリアはそう言うとさっさと椅子に座って観戦モードに入ってしまい、デュランダルもそれに合わせてタリアの隣に座る。

 そして、リーカ達もおずおずとデュランダルたちの後ろからキラ達の戦いを見るのだった。

 

「ふむ。キラはジンに乗っているのか。これは面白いね」

「何を笑っているんですか議長。相手はフェイズシフト装甲。ジンの武装では何一つ通りません。まったく。あの子……何を考えているのかしら」

「さて。見せて貰おうじゃないか。最高のコーディネーターの戦いを」

 

 それから。

 デュランダルたちも到着して観戦を始めたという事で、キラとマーレの模擬戦は開始された。

 

 が、試合が始まった当初はやや一方的な戦いであった。

 あれだけキラが挑発していたにも関わらず、ジンは防戦一方で反撃すら出来ない状態だったのだ。

 いや……出来ない。ではなく、していないだけか。

 

『ふははは! どうした!? いきがって! ジンなぞで出撃してきてこのザマか!』

『……』

『機体の性能で戦果を上げたと言われたのが、それほど悔しかったのか!? 反撃してみたらどうだ!』

『まぁ、そう言うのなら、するけど。もう良いの?』

『なに!?』

 

 キラがマーレに問いかけた瞬間、ジンは通常では考えられない程の加速で移動を始めた。

 しかも、周辺にあるモビルスーツ大の小惑星を蹴りながら加速を続けて、更にその速度を上げてゆく。

 

「これは……!」

「リミッターを外しているな!」

 

 タリアの驚愕に満ちた呟きにヴェルヌ局と呼ばれる兵器設計局の1つに所属していたコートニーが即座に答えを返した。

 

「しかし、それだけではこの速さは説明が出来ない」

「キラさんはデブリを蹴って加速してるんだ!」

「まるで曲芸師ね」

 

『実際にやってみたけど、結構出来るもんだね。ホープの声の人にも感謝しなきゃ……かな!』

『チッ! 捉えられない! だが、どれだけ早くとも! ジンではアビスの装甲は破れない!』

 

 キラのジンを追ってビームを放つが、その全てが暗黒の宇宙空間を彩るだけで終わってしまう。

 だが、それでも負けじとキラを煽るマーレであったが、その答えは雨の様な銃弾で返された。

 

『フェイズシフト装甲は、初期型のGAT-Xシリーズだと通常弾頭でも76発で、その効力を失う。勿論改良されているセカンドステージはもっと多くの時間展開が出来るけど……無限じゃないんだよ』

『くそっ! おのれ!!』

 

 マーレがキラの攻撃に反撃しようとしても、攻撃は当たらず、一方的に銃弾の雨を浴びる事になってしまう。

 それはまるで悪夢の様な戦場であった。

 

 マーレからの攻撃は一切当たらず、キラの攻撃は全て命中するのだ。

 今、マーレが無事なのは、あくまでジンが実体弾しか放ってないからである。

 これがビーム兵器であれば、とっくの昔に終わっているのは誰の目にも明らかであった。

 

 そして、それはマーレ自身も同じである。

 だから……。

 

『ふざけるな! この俺が! こんな雑魚モビルスーツに!!』

 

 マーレはアビスの全武装を、攻撃された方へ向けて放った。

 そして、その射線の先にはキラの駆るジンがおり、マーレは勝ちを確信する。

 

 だが、しかし。

 

『なるほど。こういう時に有効なのか。ガンダムの声の人にも、今度会ったらお礼を言っておこう』

 

 キラが冷静な呟きと共にジンを加速させ、ビームとビームの隙間を潜り抜けながら真っすぐにアビスへと向かってきたのだ。

 既に武装を全て使ってしまったアビスにキラの接近を止める術はなく、キラはジンの重斬刀を抜くと、それを構えながら真っすぐにアビスへと突っ込んだ。

 

 そして、肩の関節に重斬刀を突きさして左腕を稼働不能にする。

 

『さて、お勉強。その2だ。フェイズシフト装甲は確かに実体弾の攻撃を弾く。でもね。機体の全てがフェイズシフト装甲に包まれている訳じゃない。関節部とか駆動部は防ぐことが出来ないんだよ』

『ぐ、ぐぉおお! だ、だが!』

『そして、お勉強。その3』

 

 キラはアビスに取りついたまま機体を加速させて近くにあったモビルスーツ大の小惑星に叩きつける。

 フェイズシフト装甲は確かに作動して、機体を護るが……中のパイロットはその衝撃を受ける事になった。

 

『確かにフェイズシフト装甲は機体を護るけど、パイロットまで守ってはくれない。油断は良くないよ。ここが戦場ならもう死んでる。分かるでしょ?』

 

 キラはふわりと優しい笑みを浮かべると、アビスの中で呆然としているマーレに微笑みかけた。

 

『さぁ、どうする? 僕としては、アビスのテストパイロットをお願いしたいけど。嫌なら話は聞くよ?』

『何故……俺なんだ』

『何故って。そりゃ、あなたの腕を買ってるからだよ。前大戦でグーンやゾノで戦って、フォビドゥンブルーとも互角の戦いをしたって聞いたし。そういう凄腕のパイロットに、アビスのテストをして欲しいって思ったから』

『……そうか』

 

 マーレは顔を伏せたままキラの言葉に頷いた。

 そして、ため息と共に自らの敗北を認める。

 

『俺の……負けだ』

『そ。ありがとう。じゃあアビスの事。お願いね』

『あぁ。分かった』

『ではこれで一件落着という事で。これからお願いね? マーレ・ストロードさん』

『あぁ』

 

 これで無事最初の任務も終わりだとキラは大きく息を吐くのだった。

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