ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第151話『PHASE-3『予兆の砲火1』』

 謎の組織により、キラ・ユラ・アスハ、セナ・ユラ・アスハが誘拐され、さらには新型のモビルスーツまで奪取されたZAFTは新造艦ミネルバを発進させ、敵の母艦を討つべく宇宙へと躍り出た。

 

「機関始動。ミネルバ発進する」

 

 タリアの指示で初出撃と初戦闘を同時にこなす事となったミネルバクルーであるが、訓練の成果か落ち着いて対応が出来ている様だった。

 その様子に安堵しつつも、状況的には最悪だとタリアは宇宙の暗闇を見つめる。

 

「気密正常、FCSコンタクト、ミネルバ全ステーション異常なし」

「索敵急いで。インパルス、ザクの位置は?」

「インディゴ53、マーク22ブラボーに不明艦1、距離150!」

 

「母艦か?」

「おそらくはそうでしょう。この辺りに不明艦などいる筈もありませんから」

「そうだろうな……しかし見た事のない形状だな」

「代表もご存じないとなると……はてさて、どこの艦やら」

 

 背後から聞こえてくるカガリとデュランダルの言葉を受けつつも、タリアはキッと不明艦を睨みつけた。

 ここからは戦闘が始まる。

 様々な政治的事情は後ろの人たちに丸投げして、自分は戦闘を行うべきだ、と。

 

「初見をデータベースに登録、以降対象をボギーワンとする!」

「同157、マーク80アルファにインパルスとザク、交戦中の模様」

「呼び出せる?」

「駄目です。電波障害激しく通信不能」

「敵の数は!?」

「1機です! ですが……これは」

「何なの!?」

「データベースと一致! 連合の……核動力モビルスーツです!」

「何ですって!?」

「か、核動力!? でも条約違反ですよぉ!?」

「そんなことを気にしている組織じゃないって事でしょ!」

 

「……核動力とは。また随分と厄介なものが出てきた物だ」

「チッ。どこのどいつだ。条約違反の機体を持ち出すとは」

 

 タリアは不明艦へと進むミネルバの中で思考を巡らせ、一つの指示を口にした。

 

「ボギーワンを討つ! ブリッジ遮蔽、進路インディゴデルタ、加速20%、信号弾及びアンチビーム爆雷、発射用意!」

「……」

「アーサー! 何をしてるの!」

「あ! あぁ、はい! ランチャーエイト、1番から4番、ナイトハルト装填。トリスタン、1番2番、イゾルデ起動! 照準ボギーワン!」

 

「彼等を助けるのが先じゃないのか? 艦長。核動力の機体にバッテリー機で勝つことは難しいぞ」

「そうですよ。だから母艦を討つんです。敵を引き離すのが一番早いですから。この場合は」

「しかし、敵は無限に稼働し続ける事の出来る機体だろう?」

「機体は持ってもパイロットが持ちません! 帰還信号を撃て!」

 

 タリアはデュランダルの言葉を否定し、即座にシン達へと帰還信号を放つ。

 一応、デュランダルと共に居るカガリの意見も気になったが、彼女はタリアの行動が正しいと思っているらしく特に口を挟む事は無かった。

 

「ナイトハルト、てぇ!」

「エンジンを狙って! 足を止めるのよ!」

 

『艦長! 自分はまだ行けます!』

「インパルスのパワー、危険域です」

「戦闘継続は困難! 分かるでしょう!? 良いから帰投しなさい!」

『でも! あの艦にはキラさんが! セナが!』

 

「敵は逃げようとしている! インパルスの加速力じゃ追いつけないわ! 急いで帰還しなさい!」

『俺はこのまま行きます! あと少しで、こいつも落とせる!』

 

「ボギーワン、離脱します! イエロー71アルファ!」

「っ!」

「艦長!?」

「……このまま一気にボギーワンを叩きます。進路イエローアルファ!」

 

 タリアは命令を聞かないシンに、心の中でキラに恨み言を言いながらも、ミネルバを前に進める。

 だが……。

 

「ボギーワン、船体の一部を分離!」

「撃ち方待て! 面舵10、機関最大!」

 

「駄目だ! 艦長!」

「え……?」

 

 今まで黙っていたカガリが叫んだ瞬間、ミネルバの眼前でガーティー・ルーより切り離された推進剤予備タンクが炸裂し、目が眩む様な閃光と衝撃がミネルバのブリッジを襲う。

 その衝撃にクルーは悲鳴を上げ、次に視界が戻った時には既にガーティー・ルーの姿は存在していないのだった。

 

「各ステーション、状況を報告せよ!」

「バート! 敵艦の位置は!?」

 

「待って下さい、まだ……」

 

「CIWS起動、アンチビーム爆雷発射! 次は撃って来るわよ!」

「見つけました。レッド88、マーク6チャーリー、距離500」

「逃げたのか?」

 

「やってくれるわ、こんな手で逃げようとは」

 

 タリアは唇を嚙みながら遠方へと逃げるガーティー・ルーを睨みつけた。

 そして、即座に後ろへと振り返りデュランダルとカガリへと視線を向ける。

 

「だいぶ手強い部隊のようだな」

「ならば尚の事このまま逃がすわけにはいきません。そんな連中に彼女たちとあの機体が渡れば……」

「あぁ。そうだな」

 

「今からでは下船いただくこともできませんが、私は本艦はこのままあれを追うべきと思います。議長の御判断は?」

「私のことは気にしないでくれたまえ、艦長。私だってこの火種、放置したらどれほどの大火になって戻ってくるか……。それを考えるのは怖い。キラ君とセナ君の奪還は勿論のこと。新型機の奪還、もしくは破壊は現時点での最優先責務だよ」

「承知いたしました。代表も問題ありませんか?」

「あぁ。むしろこちらからお願いしたいくらいだ。あの艦に奪われたのは我が国の至宝なのだからな」

 

 タリアは許可も貰ったと息を軽く吐いて再び前に向き直る。

 そして、すぐにでも艦を動かす為に指示を出してゆくのだった。

 

「バート。トレースは?」

「まだ追えます」

「では本艦はこれより更なるボギーワンの追撃戦を開始する。進路イエローアルファ、機関最大!」

 

 

 そして、ブリッジは安定を取り戻し、ガーティー・ルーへの追撃戦を始めたのだが……格納庫はまだ荒れた状況であった。

 嵐の中心は、やはりというべきか、インパルスのパイロット、シン・アスカである。

 

「あのまま戦ってたら落とせてた!」

「無茶を言うな。レイのザクもお前のインパルスもエネルギーは危険域だった。継続していれば落とされたのはこちらだ」

「分からないじゃないか!」

「分かるさ! お前はその程度の事も分からないのか!? アカデミーで何を学んできたんだ!」

「くっ! ぐぎぎ!」

 

 アスランを睨みつけるシンと、そんなシンに小言をぶつけるアスラン。

 戦う二人の姿は非常に険悪な物であったが、オーブに居た時から二人の争いを見慣れているレイは軽いため息と共に二人が落ち着くまで壁に寄り掛かりながら腕を組んで見ているのだった。

 

 そんなレイにやや離れた所から無重力の中を泳いできた少女が話かける。

 

「レイ!」

「ルナマリアか。どうやらお前も無事だったようだな」

「何とかね。オーブの人に助けられたわ」

「……そのオーブのパイロットは?」

「代表の護衛だからって言うんで、ブリッジの方に向かったわ。代表も今はブリッジの方にいるからね」

「そうか」

 

 短く返事をしてから再びレイはシンたちの方へと視線を向ける。

 が、シンとアスランは変わらず言い争いを続け、場は収まる気配を見せなかった。

 

「しっかし、最悪ね」

「何がだ」

「キラさんの事。セナちゃんもだけど。機体を奪うだけじゃなくて二人も攫うなんて」

「そうだな。しかし……連中にとっては機体よりも二人の確保が重要だったように思う。機体の奪取はただの手段だ」

「でしょうね。ホント、最悪だわ。キラさんかセナちゃんが居れば、シンも少しは冷静だったのに」

「仕方ない。シンにとっては、何よりも辛い事だろうからな」

 

『全艦に通達する。本艦は此より更なるボギーワンの追撃戦を開始する。突然の状況から思いもかけぬ初陣となったが、これは非常に重大な任務である。各員、日頃の訓練の成果を存分に発揮できるよう努めよ』

 

 ミネルバの副官であるアーサーからの放送に、レイはため息を吐きながらシンを呼ぶ。

 

「シン!」

「なんだよ!」

「戦闘は終わりだ。次の出撃まで体を休めるぞ。このままでは助けられる物も助けられない」

「ほら。シン。行くわよ」

「分かった……」

 

 シンはレイとルナマリアに言われ、渋々格納庫からシャワールームへと向かうのだった。

 戦いの疲労を残したまま次の戦いへ向かう事など出来ない。

 それはシンもよく分かっていた事なのだから。

 

 そして、アスランもようやく少し落ち着いたシンにため息を吐きながら格納庫の壁の向こう。

 敵艦へと攫われてしまった幼馴染と妹を想うのだった。

 カガリはきっと、このままで終わる事は無いだろうと考えながら、アスラン自身も次の戦いへと準備を始める。

 

 そんなシンとアスランの戦いを少し離れていた場所から見ていた銀髪の男はクックックと笑いながら口を開いた。

 

「実に情けないことだな。アスラン・ザラ」

「笑っている場合ですか? シュラ」

「何がだ?」

「キラ様とセナ様の事です。まさか彼らが二人とも連れ去ってしまうとは……」

「まぁ、予想は出来た事さ。そして、これからの展開も全て準備は終わっている」

「では?」

「あぁ、次の戦いで俺はガーティー・ルーへと潜入し、キラ姫を救出する。騎士らしくな。これでキラ姫も誰が本当の騎士か分かるだろう。アスラン・ザラなどではなく、この俺こそが真の騎士なのだと」

「……」

「イングリット。何だ。その目は」

「いえ。貴方もネオ・ロアノークという男も、どうしてその様に騎士の真似事が好きなのかと思いまして」

「旧人類と一緒にするな。俺は世界を正しく管理する姫君の剣として生まれた。つまりは騎士だ。キラ姫様もこの俺が騎士として立っている姿が格好いい。似合っていると言っていたぞ」

「まぁ……キラ様は否定をされない御方ですから」

「フン」

 

 イングリットが冷めた目でシュラを見ながら告げた言葉にシュラは鼻を鳴らしてどうでも良いと切り捨てる。

 大切な事は自らの力を示す事だと。

 

「しかし、俺が潜入する以上、機体はお前に預けるぞ。イングリット。問題は無いな?」

「えぇ。何も。あなたの戦闘プログラムはインストールされていますから」

「ならば問題は無いだろう。後はキラ姫の元へ行くだけだ」

 

 シュラはキラを迎えに行った時の妄想をしながら、再びクックックと笑い始める。

 そんなシュラにイングリットは、はぁとため息を吐いて遠い空の向こうに居るであろう想い人の事を考えるのだった。

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