ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第16話『……あぁ、ホント。平和だなぁ』

 キラとセナがプラントへ来てから一週間ほどの時間が経った。

 手術が終わってすぐの頃は、長時間起きている事も難しかったセナであるが、一週間も経つ頃にはすっかり元気になり、ベッドの上でだが、起きている事が出来るようにもなった。

 

「うん。経過は順調だね」

「ありがとうございます」

「いや。ボクは大した事をしていないよ。必要な情報は全て受け取っていたからね。感謝するのなら、月で君を救ったという医者に感謝する事だ」

「はい」

「退院に関してはいつでも構わないけど。しばらくは車椅子で生活して貰うよ。リハビリはもう少し体が治ってから。いいね?」

「はい。分かりました」

 

 先生のいう事をしっかりきいて、セナは笑顔で頷いた。

 その様子にキラは安心しながら、セナを救ってくれた先生に頭を下げる。

 

「じゃあ、これでセナも退院できるワケだけど……月に帰っちゃまずいんだよね?」

「そうですわね。何か異変があったらすぐに病院へ行かないといけませんし」

「うーん。そうなると、この辺りで住める場所を探さないといけないのか」

 

 うーんと腕を組みながら悩むキラに、ラクスが微笑みながらいつもの様に声をかける。

 

「そういう事でしたら、キラ。どうぞ。(わたくし)の家に来てくださいな」

「ラクスの家? いや、でも、良いのかなぁ」

「大丈夫ですわ。お母様は地球へ行くとの事で当分は帰ってこないと言っていますし。お父様も忙しくしていますから。(わたくし)一人では寂しくて……」

「あぁ! わ、分かったよ。じゃあお邪魔するけど、良いかな」

「キラ!」

「わ。どうしたのアスラン」

「いや。家なら僕の家も空いてるぞ……って言おうとして。母上も、キラに会いたがっていたし」

「あー。そっか。レノアおば様も居るし。パトリックおじ様もいるんだもんね。挨拶はしたいなぁ」

 

 うむむ。と悩むキラはセナに意見を聞こうとしたが、お姉ちゃんが選んでくださいと微笑むばかりであった。

 こうなると、キラがラクスかアスランの家を選ばなくてはいけない。

 非常に悩ましい問題だ。

 親友の家か。親友の家か。

 

「まぁ、アスラン。年頃の女の子を二人も家に連れ込んで、何を考えてますの?」

「何も変な事は考えていません! 俺はキラの親友で、セナの兄ですから!」

「口では何とでも言えますわ」

「言っておきますが、キラとは親友なんです。変な事など起きる筈がない!」

「ま。ではキラに魅力が無いと仰りたいんですの?」

「誰もそんな事は言ってないでしょう!?」

 

 キラが悩んでいる間に、ラクスとアスランがいつもの争いを始めてしまい。

 仕方ないとキラは、ひとまず争いを終わらせる為にも、交互に泊まらせて貰いたいと頼むのだった。

 正直なところ、病院に泊まり続けたいという想いもあったが、日々運ばれてくる患者を見ていると、病室を一つ占拠しているのが申し訳なく感じるというのもある。

 

 

 それから、苦笑するセナと共にひとまずザラ邸へと向かったキラであったが、月にあったキラの家が数十個入る様な豪邸に案内された上に、ザラ夫婦揃っての大歓迎を受けるのだった。

 

「父上! 母上! 本日帰る予定だったのですか!?」

「キラちゃんが来ると聞きましたからね。飛んできました」

「キラ君にはアスランが世話になっているからな。挨拶は必要だろう」

 

 何を当たり前の事を、とでもいう様なパトリックとレノアの反応にアスランは頭を抱えるが、キラは仲が良いんだなぁと思いながら、セナと共に頭を下げる。

 

「お久しぶりです。レノアおば様。それと、直接会うのは初めましてですね。パトリックおじ様」

「えぇ。本当に。月で会った時以来かしら」

「あぁ。初めまして。というのも奇妙なものだが。これからもアスランの事を頼むよ。キラ君」

「はい! お任せください! 僕がしっかりアスランの事を見ています」

 

「そうやって父上や母上の前でだけ、良い顔をするのはどうかと思うぞ。キラ」

「あら。そうなの? アスラン」

「えぇ。キラは学校の宿題もやらないし。いつも妹のセナや、私に甘えているんです」

「ちょ、ちょっと! アスラン! バラさないでよ~!」

「同じ家に居たらすぐに分かる事だ。こうした方が、キラも過ごしやすいだろう?」

「そういう事じゃなくて!」

 

「うふふ。本当にキラちゃんは面白い子ね。あなた」

「あぁ。そうだな。アスラン。多少の我儘というのは可愛い物だ。お前がしっかり支えてやれば良い」

「はい!」

 

 敬礼をするような勢いでパトリックに返事をするアスランに、パトリックは微妙な顔をしながらうむと頷いた。

 そして、キラへの挨拶も終わったと、キラが連れている車いすの少女へも視線を落とす。

 

「久しぶりね。セナちゃん。体は大丈夫?」

「はい。レノアおば様。傷はまだ完全には治っていないのですが。もう痛みは殆ど無いです」

「何かあれば、すぐに言うんだぞ。病院はいつでも受け入れる事が出来るからな」

「はい。パトリックおじ様。ご心配ありがとうございます」

「ふふ。いい子。いい子」

 

 レノアは元気よく返事をするセナの頭を撫でてから、夕食にしましょうかと三人を誘って奥へと招くのだった。

 それから、五人は和やかな会話をしながら食事を終え、キラとセナはアスランに案内されて寝室へと向かっていった。

 

 残されたパトリックとレノアは少しだけ沈黙の時間を過ごしてから口を開く。

 

「病院から連絡がきた」

「結果はどうでしたか? 二人の間に少しでも子供が出来る可能性があるのなら、嬉しいのですけれど」

「……」

「あなた」

 

 難しい顔のまま沈黙しているパトリックに、レノアは悲しい気持ちを抱いたまま考え込んでしまう。

 現在プラントで問題となっている第二世代以降の出生率の問題について、二人は話し合っていた。

 

 遺伝子を操作して生まれてきたコーディネーターへの天罰なのか。自然の摂理なのか。

 第一世代まではナチュラルよりも低いながらも子供が出来ていたコーディネーターであったが。

 第二世代同士、または第二世代と第一世代の間では非常に子供が出来にくくなっており、社会問題となっていたのである。

 

 このまま時が過ぎれば第三世代となった時、子供が出来る可能性はさらに低くなる可能性があり、コーディネーターは種として未来へ繋ぐ事が難しい状態にあった。

 その問題を解決する為に、更なる遺伝子の研究を重ねたり、婚姻統制を実施している物の、今のところ目に見えた結果は出ていない。

 

 だからこそ、子供が作れる選択肢を取るべきなのだが、レノアはアスランに幸せな結婚をして欲しいと願っていた。

 自分とパトリックが結ばれた時の様に。

 

「確かに出生率も大事ですが、可能性が少しでもあるのなら……」

「いや。違うのだ」

「え?」

「キラ君とアスランの間で子供の出来る確率は99%という数字が出た」

「……まさか。そんな。あり得るのですか? その様な数字」

「無いとは言わん。どの様な物でも、可能性は零では無いからな。しかし、問題なのはここからなのだ」

「問題、とは」

 

 パトリックはレノアの問いに、眉間の皺を撫でながら、重々しい口調で語り始めた。

 聞く者によっては喜劇だが、彼らにとっては悲劇的な話を。

 

「病院がな。要らん気を遣って、アスランだけでなく、他の評議員の子との相性も調べたのだ」

「まぁ」

「そして……全員同じ結果となった」

「では、ほぼ確実に子供が出来る、と」

「あぁ。そうだ」

「それは、キラちゃんが第一世代のコーディネーターだからという事なのでしょうか?」

「いや、他の第一世代コーディネーターと第二世代コーディネーターでの出生率を調べると、やはり低いままであったことから、おそらくキラ君だけが特別なのだ」

「……それは、困りましたね」

「あぁ。エザリア辺りは、明日にもキラ君を出せと来るかもしれん」

「……」

「どうしたものか。戦車を数台敷地内に置いておく方が良いかもしれんな」

「あなた」

「うん? どうした」

「私に妙案があります」

「ほぅ」

「どうやらキラちゃん達は、ラクスさんとも仲が良いとの事。そして、クラインの家もキラちゃんを受け入れる事は出来ると言っていました。おそらく、ラクスさんとキラちゃんが友人なのでしょう」

「そういえば、シーゲルもそう言っていたな」

「そこで、キラちゃんをひとまずクライン家に預け、アスランは日々クライン家へ向かい、キラちゃんと親交を深めると」

「おぉ、確かに。我らがキラ君を手放すとは思わんからな。裏を突くというワケか」

「はい。後はアスランとラクスさんの婚約を匂わせておけば……アスランは婚約者の元へ通っているという風に映るわけです」

「それでいこう。では早速明日、シーゲルに話をしておく。シーゲルもラクス嬢への求婚で困っていたからな。ちょうどいいだろう」

「えぇ」

 

 かくして、ザラ家で行われた秘密の会合は、キラを何としてもアスランの婚約者としたい二人の策略により、一つの作戦を実行する事で話し合いを集結させた。

 

 翌日、キラとセナは当初の約束通りクラインの家に向かう事になり。

 何故かパトリックとレノアが勧める為、何かが起きるまではクラインの家に居る方が良いだろうという事になった。

 

 無論、これはアスランにとっては面白くない方針であるが、父と母に言われては何も言い返す事が出来ず、勝ち誇っているラクスにキラとセナを預ける事となった。

 

 しかし、当初の不満はどこへやら。

 アスランはクライン邸の海を眺める事が出来る広い中庭にあるガラス張りの小部屋を見て、そこのベッドで心地よいという様な顔をしながら休むセナを見て、セナが良いのなら良いかと納得する事にした。

 

 そして、セナやキラに不満が無いかと毎日の様にクライン家を訪問し、キラとセナ。

 ついでのラクスと日々の交流を重ねてゆくのだった。

 

 テロで負った傷はまだセナの体に残っているけれど。

 それでも、ようやく落ち着いた時間が帰ってきたと、キラは安堵しながら青空の向こうを見上げるのだった。

 

「今日も、いい天気だねぇ。セナ」

「はい。風も気持ちいいですし。素敵な場所ですね」

「うん。そうだね」

「ふふ。お二人が望めば、いつまで居ても良いのですよ」

 

「ラクス。それは困ります」

「あら。何が困るんですの? アスラン」

「言わなくても分かるでしょう! キラもセナも籠の鳥では無いんですよ!?」

「籠の鳥が幸せではないと誰が決めたのですか!」

 

「……あぁ、ホント。平和だなぁ」

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