ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第156話『PHASE-5『癒えぬ傷痕2』』

 格納庫での争いを終わらせたキラは、真っすぐにブリッジへと向かい、中に入ってからすぐにタリアへと声をかけた。

 

「タリアさん。状況は」

「あまり良くは無いわ。かつての軍事衛星ボアズは現在地球へ向けて加速中。その原因は未だ不明です」

「止める方法は?」

「既にいくつかの部隊が動いていて、小惑星の破砕作業へと向かっているわ。でも、正直なところ、それで止められる保証もない」

「でしょうね。ミネルバはどうされますか」

「このまま破砕部隊の援護に向かいます。どうやらボアズにモビルスーツらしき影を見たっていう話があってね。交戦も予想されるわ」

「分かりました。ジャスティスはどうしましょうか。これから起こるのは戦争ではありません」

 

 キラの言葉に、デュランダルは少し思考をしている様だった。

 そして、悩むデュランダルの隣に座った少女がデュランダルへと言葉を向ける。

 

「プラントが表立って、核動力の機体を使うのは問題が残るでしょう。ここは我が国が危機的状況にお借りしたという事にするのは如何か?」

「代表」

「かつて起こったコロニー落とし騒動の際、フリーダムとジャスティスという英雄の機体が地球を救った事は記憶に新しい。そして、その戦いでフリーダムは『失われてしまった』。しかし、ジャスティスは解体されず残されていた、平和の象徴として」

「……なるほど。その象徴を、本来の持ち主が使うのであれば、批判も無いという事ですか」

「そうだ。ちょうど、この艦にはジャスティスで戦争を止めた、アスラン・ザラが乗っているのだからな」

「カガリ!」

「キラ。使える者は使えというのがお父様の教えでもある。この状況。アスランの名を利用しない手は無いだろう」

「それは……そうだけど、良いの?」

「アイツなら頷いてくれるさ」

 

 カガリが肩をすくめながら言った言葉に、キラは僅かに不満を残しながらも頷く。

 そして、タリアに自分はザクに乗ると言おうとしたのだが……。

 

「貴女はデュランダル議長をお送りして頂戴」

「えぇ!? いや、戦力は多い方が良いでしょう!? 僕も出撃すれば!」

「そういう訳にもいかないのよ。敵の狙いが分からない以上、貴女を出撃させる事は許可出来ません。これはデュランダル議長も承知の話よ」

「くっ!」

「そして、私も承知した話である。アーモリー・ワンでお前とセナが狙われた以上、どこでどんな奴がお前達を狙っているか分からん。隕石落としなんてやる連中が手段を選ぶとも思えんからな」

「でも! それならなおさらシン君達が危ないじゃない!」

「だとしても、お前を無理に庇って落ちるよりはマシだ。分かるだろう? キラ。戦場に迷いを持って行けば死が待っている。だからお前は彼らを信じて、一度後方に下がれ」

「……わかったよ!」

 

 キラはぶすーッと納得できないと顔に出しながら頷く。

 そんなキラに苦笑しながら、デュランダル議長はそろそろミネルバを退艦するとキラに声をかけるのだった。

 

 そして、キラはタリアの指示通りにデュランダルをミネルバへ向けて加速しているナスカ級へと送るため、モビルスーツ格納庫へと向かうのだった。

 

 その道の途中でキラにデュランダルはいつもの調子で語り掛ける。

 

「いや、すまないね。この様な状況の中、君にこのような働きをさせて」

「本当ですね」

 

 キラは一切の愛想笑いも、気遣った様な言葉も向けず、ただ嫌味だけをデュランダルへと返した。

 ボアズを止める為にセナの救出を諦めたというのに、肝心のボアズ落下阻止には関われないと言われたのだ。

 気分が悪くなるのも当然だろう。

 

 デュランダルはいじけた様な声を出しているキラに笑みを深めながら声をかけた。

 

「すまないね。ミネルバにはザクしか機体が残っていないし。君は隊長として前線へと向かおうとするだろう? しかし、また核動力の機体が出て来た場合、ザクでは対処が無理だ。タリアはそれを懸念しているのだよ。実際、ファウンデーション王国の機体でも長くは戦えなかったしな」

「だとしても! 僕には戦う力があります」

 

 振り返り、目じりに涙を溜めながら、キラはデュランダルに訴える。

 その様子にデュランダルは子供に向ける様な笑みを浮かべながら口を開いた。

 

「ならば、どうするね。君も無理に出撃するかい?」

「それが可能であるならば」

「ふむ……」

「ですが、駄目だと言うんでしょう? 貴方もタリアさんも、カガリも」

「いや」

 

 想像とは違い、キラの言葉を否定したデュランダルにキラはやや驚きながら目を見開いた。

 そして、どういう事かとデュランダルへと言葉を向ける。

 

「タリアが考えたのはザクでは難しいという事だ。ジャスティスもユニウス条約の関係から難しいしな」

「では……!」

「例えば、機動力に優れた機体。セカンドステージの機体であれば……」

「セカンドステージって、機体は奪われて……! あ」

「そう。奪われたのは三機だけだ。『ZGMF-X23S セイバー』は未だ我が方に遺されている」

「で、でも……! アーモリー・ワンまで取りに行っている時間は」

 

 キラが出す戸惑った様な声に、デュランダルは笑みを返した。

 その様な不安など何もないと。

 何も必要ないという様に。

 

「現在、私の迎えに来ているナスカ級にはあるモビルスーツが搭載されていてね。今、長距離航行用のブースターを外付けさせている状況だ。もしかしたら、必要になるかもしれないと考えてね」

「……! 議長」

「ナスカ級との合流地点から加速すれば……地球へ落下する前のボアズに追いつく事が出来るだろう」

「議長!」

「君には必要な剣だ。持って行くと良い」

「ありがとうございます! 議長!」

 

 キラは勢いよく頭を下げて、こうしてはいられないとデュランダルの手を取り、格納庫へと急いだ。

 そして、アスランが使っていたザクへとデュランダルと共に乗り、ミネルバから出撃するのだった。

 議長を安全な場所へと運び、新たなる剣を受け取る為に。

 

 

 キラがデュランダルと共にミネルバから出撃していた頃。

 ブリーフィングルームではルナマリア達がボアズについて言葉を交わしていた。

 

「ふーん。けど何であれが?」

「隕石でも当たったか、何かの影響で軌道がずれたか」

「地球への衝突コースだって本当なのか?」

「バートさんがそうだって」

「はぁ~、アーモリーでは強奪騒ぎだし、それもまだ片づいてないのに今度はこれ?どうなっちゃってんの」

 

 大した準備もないまま出撃となり、連戦。

 体の疲労はある程度取れたとしても、精神の疲弊は残ったまま。

 

 そんな状態では愚痴をぶつけ合う様な事になってしまうのも仕方ないだろう。

 

「で、今度はそのボアズをどうすればいいの?」

 

「砕くしかない」

「砕くって?」

「あれを?」

 

「軌道の変更など不可能だ。衝突を回避したいのなら、砕くしかない」

「砕くっていってもなぁ。地球軍の攻撃で削れているとは言え、結構デカいぜ?」

「そんなもんどうやって砕くの?」

「プラントには小惑星の衝突に備え、いくつかの専用兵器があるはずだ。それを使うしか無いだろう。そして、俺たちは作業をしている間の護衛だな」

「護衛って、また戦争するのか?」

「あぁ。その可能性は高い。ボアズにはモビルスーツの影が確認されている」

 

 レイの言葉に、皆重いため息を零しながら途方もない話に頭を抱える。

 言うだけなら簡単であるが、実行するとなれば、その難易度は並の事ではない。

 

「ホントに出来るのかよ……」

「出来る出来ないじゃない。やるしか無いんだ」

「シンの言う通りだ。衝突すれば地球は壊滅する。そうなれば何も残らないぞ。そこに生きるものも」

 

「地球、滅亡……」

「だな」

 

「そんな……」

 

「はぁー、でもま、それもしょうがないっちゃあしょうがないかぁ?」

「ちょっとヨウラン!」

「いや、でもさ。おかしな話じゃんか。プラントは何も関係ないのにさ。そこまで必死になってやる話かって?」

「シンとレイは地球の! オーブの出身よ!」

「あ……」

 

 ルナマリアが指摘した言葉に、ヨウランは顔を青くしながら二人を見た。

 が、二人はルナマリア程怒りを示しておらず、手を横に振るばかりだ。

 

 新兵である自分たちが、いきなり数億人の命を背負わされて戦えと言われたのだ。

 ヨウランの気持ちもよく分かると、シンもレイも問題にはしない。

 彼の言葉が本心ではないとよく知っているから。

 

 プレッシャーで潰されそうな中、少しでも場を明るくしようと放った言葉なのだろうと。

 まぁ、デリカシーはモビルスーツ十機分程足りては居なかったが。

 

「どういう意味だ。今の言葉は」

 

 しかし、まぁ。

 おそらくそれは非常に不幸な出来事であった。

 

 ちょうどブリーフィングルームへと作戦の話をしに来たアスランが、ヨウランの面白くない冗談を聞いてしまったのは。

 言うなれば、本当にただ、不幸なだけの出来事だったのだ。

 

「作戦行動中の軍人が、その作戦について問題発言をしているとは思わなかったな」

「何だよ。アンタには関係ないだろ」

「関係ないだと?」

「あぁ。そうさ! アンタはオーブの軍人で、ここはプラントの戦艦の中だ! アンタに何かを言われる筋合いはない!」

「なんだと……?」

 

 シュラとの衝突でいつもよりも苛立っていたアスランがシンの言葉に強い怒りを感じながらシンを睨みつける。

 だが、シンも、セナを救えなかったという苛立ちと、キラが次の作戦には参加しないという不安から、ちょうど良い苛立ちをぶつける相手が来たとアスランに怒りを向けた。

 

「聞こえなかったのかよ! アンタには関係ないって言ったんだ!」

「関係ないことがあるか! これは全人類が関わる事件だ! 今回の事件で滅ぶのが地球だけだと!? ふざけるな! この事件で多くの人が死に、その怒りと絶望がどこへ行くと思う!? 何故プラントが必死にボアズを止めようとしているのか、その意味が理解出来ないのか!?」

「何が! 俺たちは隕石落としなんてやってない!」

「じゃあ、地球軍がそれをしたと生き残った者がそう考えると思うのか!? お前は! その怒りの矛先が、どこへ向かうのか! 想像も出来ないのか!? ボアズを管理していたのはプラントだ! 地球の怒りは、間違いなくプラントへと向かう! そうなれば、今度こそ世界は止まらない戦争へと逆戻りだ! キラとセナが命がけで作った平和が! 踏みにじられるんだぞ! シン!」

「わ、分かってるよ! だから、止めるんだろ!?」

「それが分かっているのであれば、ふざけた話をしている間に、準備をしろ! 世界は、何も待ってはくれない! 大切な人を失ってからじゃ! 遅いんだ!」

 

 アスランの言葉は重く、ブリーフィングルームに居た者へと叩きつけられた。

 それは、かつての大戦で受けた被害や、アーモリー・ワンで友人で会った者を亡くした者も同様である。

 

 何かが起きてからでは遅い。

 起きる前に、止めなくてはいけない。

 

 それは、確かに正しい叫びであった。

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