ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第157話『PHASE-6『世界の終わる時1』』

 アスランとシンがブリーフィングルームでぶつかり合って、少々空気は荒れてしまったが、その代わりアスランのお陰で空気はだいぶ引き締まった。

 ボアズを止めなくてはいけない。

 キラやセナが導いた平和の世界を護るためにも。

 

 シンはドクドクと早くなる心臓の音を感じながら大きく深呼吸を繰り返す。

 そして、計器を確認してから操縦桿を握り、再び計器を確認して……と繰り返していたのだが。

 

『まぁ、あれよね』

「うん? なんだよ。ルナ」

『よくよく考えたらさ。地球はシン達の故郷ってだけじゃなくて、キラさんとセナちゃんの故郷なのよね』

『なんだ。忘れていたのか。ルナマリア』

『別に忘れてないわよ! 確認しただけ! かーくーにーん!』

『フッ。なら良いがな』

『厭味ったらしいったらありゃしない。アンタ。友達無くすわよ。そんなんじゃ』

『それは困るな。俺の友はお前とシンしか居ないのだから。大切な友人が減るのは困る』

『レイ……! って、アンタ!? アグネスの事は!?』

『アグネス……?』

『その心底何を言っているか分からないって反応止めて。あんまりにもアグネスが可哀想だから』

『冗談だ』

『アンタがやると冗談に聞こえないから怖いのよ』

 

 通信で行われる同期の軽い世間話に、シンは大きな声を出しながら笑う。

 これから多くの命が失われるかもしれない戦闘が始まるというのに、ふざけたやり取りをしていると。

 

『緊張は解けたか? シン』

「あぁ。ありがとな。レイ。ルナ」

『まったく。しょうがないわね』

 

 だが、緊張していては本来の実力を出す事は出来ないと、シンはこれまでとは違う深呼吸を行った。

 心に宿るのは、キラから真っすぐに向けられた言葉。

 

『大丈夫。シン君なら出来るよ』

 

 オーブには家族が居るが、きっとトダカ達が守ってくれるだろうとシンは地上への心配も消して、任務に真っすぐ向き合う事に決めた。

 やらねばならない。

 例えキラが居なくても、作戦が失敗すれば地球も、家族も失われるのだとしても。

 

 緊張は消し去って、ただ真っすぐに任務へと向かう。

 

『聞こえるか。シン・アスカ。レイ・ザ・バレル。ルナマリア・ホーク。今回の作戦、シュラ・サーペンタインの機体は未だ修復中なため、出撃は出来ない。その為、対処は俺達だけで行う事になる』

「はい」

『モビルスーツ隊の指揮は俺が取る事になった。コレは艦長命令だ。文句は言うなよ』

「はい!」

『……妙に素直だな。大丈夫か? シン』

「はい。今はボアズを止める事に集中するべき時で、目的に向かって真っすぐに進んでいる貴方は信用しても良いとキラさんが言っていました」

『……! キラが』

「だから、俺も信じます。貴方を」

『了解した。既にボアズ周辺で、戦闘が始まっている。俺達の任務は、ボアズを破壊する為のメテオブレイカーを守る事だ』

「はい!」

 

『敵が使用しているモビルスーツはゲイツ。だが、動揺するなよ』

『ゲイツ!? で、ありますか!?』

『そうだ。だが、コーディネーターとは限らない。正体は依然として不明なままだ。各員注意を怠るな』

「はい!」

 

 アスランの指示にシンは黙って従って、メイリンの誘導でミネルバから出撃してゆく。

 いつも通りに三機の戦闘機を一機のモビルスーツへと合体させて、フォースシルエットを装備し、アスランが駆るジャスティスの背中を追いかけながら地球へと向かって進んでゆくボアズを目指した。

 

 元々巨大な要塞であったボアズは、地球軍の核攻撃によって崩壊したが、中心部の小惑星はまだ形を残しており、これが地上へ落ちた場合にどうなるかなど、直接モニターを見れば考えるまでもない事である。

 

 シンは急いで飛び込みたい気持ちを何とか抑え、アスランの指示に従って、メテオブレイカーの配置を確認しながら少しずつ奥へと進行していたのだが。

 不意にインパルスのコックピットにアラートが鳴り響いた。

 

「敵襲!?」

 

 アラートが鳴った方へと視線を向ければ、そこにはゲイツがビームクローを展開しながら迫ってきており、シンは冷静に距離を取ってビームライフルで狙撃しようとした。

 しかし、ゲイツは器用にも機体を急制動させて、ビームシールドでインパルスのビームを防ぐのだった。

 その動きはGへの考慮がまったくされておらず、搭乗者は血を吐いてしまいそうな程無茶な動きであったが、ゲイツの動きに乱れは見えない。

 

 それがあまりにも奇妙で、シンはゲイツに向かって通信を繋いでみる事にした。

 

「おい! ゲイツのパイロット! 聞こえるか!? なんでこんな事をする!」

『……』

「どうしてこんな物を地球に落とそうとしているんだ!」

 

 だが、シンがどれだけ声を掛けてもゲイツおパイロットからの返事はなく、シンは舌打ちをしながらビームライフルをゲイツに向けて撃つのだった。

 

「くそっ! アスラン。何かおかしいですよ! こいつ等!」

『どうやらその様だな!』

 

 アスランもまたゲイツに対して苦戦しており、シンはさらに疑念を深めてゆく。

 核動力の機体であるジャスティスを操っているアスランが容易く落とせない相手。

 そんなエースパイロットがそんなに居るだろうか、と。

 

 しかも、付近には母艦も見えず彼らは完全に孤立しているのだ。

 ボアズくらいの大きさがあれば重力も発生しているし。地球に近づいて行った場合、脱出も困難になる。

 そんな捨て身の作戦に、これほどのエースパイロットが参加しているという事実に違和感が生まれた。

 

 そして、そんなシンの疑問を解消する答えが、レイから飛んできた。

 

『これは、モビルドールシステムだ!』

「モビル、ドール!?」

『何なのよ! ソレ!』

『前大戦で、オーブの氏族が使ったシステムだ。膨大な戦闘データを元に、自動で戦闘をさせるプログラムだ!』

『えぇ!? って事はなに!? コレって、全部機械がやってるってこと!?』

『そういう事になる』

 

『なるほど。モビルドールか!』

 

 アスランは納得したとばかりに、近くに居たゲイツへと突撃して弾き飛ばし、体勢を崩させた状態で狙撃する。

 ビームライフルによる追撃は外れてしまったが、レイのザクがビームライフルでトドメをさしてくれた。

 

『ならば、各機一人で対処するな! 連携攻撃で倒すんだ! 連中はエースパイロットと同等の腕がある!』

「分かった! ルナ!」

『はいはい! 了解! でもエースって言ったって、キラさんよりは弱いんでしょ!?』

『だが、手ごわい事は確かだ。油断するなよルナマリア!』

『分かってるっての! そこっ!』

 

 シン、レイ、ルナマリアは絶妙なコンビネーションを見せながら、一機に集中攻撃をして確実に一機ずつ落としてゆく。

 アスランはそんなシン達の隙を潰しながら隙間を縫うように攻撃を繰り返し、確実に一機ずつ潰していくのだった。

 

 そんな事を繰り返している間に、メテオブレイカーもかなりの数を仕掛ける事が出来て、遂にボアズは真っ二つに割れたのだが……!

 割れた隕石の前方が割れた際の衝撃もあり、前へと押し出されて地球へと更なる加速を始めてしまった。

 

「これは!」

『このままでは! 付いてこい! シン! ルナマリア! レイ!』

「了解!」

 

 だが、このまま落としてたまるかとアスランは機体を加速させ、ボアズの割れた前方へと向かう。

 既に地球はかなりの大きさになってきており、ボアズもまた、地球へと真っすぐに向かっていた。

 

 

 宇宙で、アスラン達がボアズを巡る攻防戦を繰り広げている頃。

 地上にあるロード・ジブリールの住処では、ジブリールがロゴスのメンバーへ向けて通信を行っていた。

 

『さてと、とんでもない事態じゃの』

『まさに未曾有の危機。地球滅亡のシナリオですな』

『ふ。書いた者がいるのかね』

 

「それはファントム・ペインに調査を命じております」

 

『大丈夫なのか?』

「問題ありません。デュランダルの仕掛けた罠など、既に解除しております。何も問題はありませんとも」

 

『それもそうだが。今更、なんぞ役に立つのかなそんなものを調べて』

「それを調べるんですよ」

 

『しかしこの招集はなんだ、ジブリール。まあ、大西洋連邦をはじめとする各国政府が、よもやあれをあのまま落とすとも思ってはおらんが。一応避難や対策に忙しいのだぞ、みんな』

「この度のことには正直申し上げて、私も大変ショックを受けましてね。あのZAFTが誇る強大な宇宙要塞ボアズの残骸が、まさかそんな、一体何故?」

 

『チッ』

「まず思ったのはそんなことばかりでした」

 

『前置きはいい。ジブリール』

「いえ! ここが肝心なのです」

 

『どういう事だ』

「やがてこの事態は世界中の誰もがそう思うこととなるでしょう。ならば我々はそれに答えを与えてやらねば」

 

「プラントのデュランダルは既に地球各国に警告を発し、回避、対応に自分達も全力を挙げるとメッセージを送ってきました」

『早い対応だったな』

『奴等も慌てていた』

『ならばこれは本当に自然現象ということかな? だがそれでは……』

 

「いえ! そんなことももうどうでもいいんです。重要なのはこの災難の後、何故こんなことに、と嘆く民衆に我々が与えてやる答えの方でしょう」

 

『やれやれ、もうそんな先の算段か?』

「無論! 原因が何であれ! あの無様で馬鹿な塊が間もなく地球、我等の頭上に落ちてくることだけは確かなのです。どういう事ですこれは! あんなものの為に、この私達までもが顔色を変えて逃げ回らねばならないとは!」

 

『それは……』

 

「この屈辱はどうあっても晴らさねばなりますまい。誰に!? 当然あんなものを宇宙に作ったコーディネーターどもにです。違いますか?」

『いやぁそれは……』

『それは構わんがな』

『だがこれでは被る被害によっては戦争をするだけの体力すら残らんぞ』

 

『それにセナ様とキラ様は反対されるだろう』

「それについてはもはや問題とはなりません! お二人は、今、世界に言葉を届ける事が出来る様な状態ではありませんから」

 

『なんだと?』

『どういう事だ。ジブリール』

「二人の身柄に関しては既に私の手中にあります。もはや我らを止める事が出来る存在は居ない!」

 

 大仰に両手を広げながら語るジブリールに、他のロゴスメンバーは思案し続けていた。

 だが、彼らは彼らの目的の為に頷く。

 

『良いだろう』

「では例のプランで。そのことだけは皆様にも御承知おき頂きたく、今日お集まりいただいたのです」

『なるほどな』

『強気だな』

『コーディネーター憎しでかえって力が湧きますかな、民衆は』

 

『残っていれば、だがね』

『残りを纏めるんでしょ?憎しみという名の愛で』

 

『ん、皆プランに異存はないようじゃの、ジブリール』

「ありがとうございます」

 

『では次は事態の後じゃな。君はそれまでに詳細な具体案を』

「はい」

 

『しかし、どれほどの被害になるのかね』

『戦争はいいがこういうのは困るね。どちらにせよ、青き清浄なる世界の為に、さ』

 

 ジブリールは最後まで笑顔でモニターへと向かっていたが、通信が切れた瞬間に持っていたワイングラスを床に叩きつけ、憎しみの声を上げた。

 支配者たる己が、あの様な者達に頭を下げなくてはいけないのかと。

 

 ジブリールのプライドはいたく傷つけられたが、それでも彼は目的の為にプランを用意するのだった。

 コーディネーターを壊滅させる為の、作戦を。

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