ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第160話『PHASE-7『混迷の大地2』』

 地球へと落下するボアズの破片を砕きながら大気圏へと突入したミネルバは、大きく揺れる艦体の中で対応に追われていた。

 周囲には厚い雲が雷鳴を轟かせており、初めて地球へと来たクルーなどはその音や光に怯えている。

 

「艦長! 空力制御が可能になりました!」

「主翼展開! 操艦慌てるな!」

「主翼展開します。大気圏内推力へ」

 

 タリアは初めての出撃から続き、初めての大気圏突入、そして大気圏内での航行と続く無茶苦茶に何とか耐えながら指示を続ける。

 これが危機的状況で無いのなら文句の一つでも出る所である。

 

「通信、センサーの状況は?」

「駄目です。破片落下の影響で電波状態が……」

「レーザーでも熱センサーでもいいわ、インパルスとジャスティスとセイバーを探して」

「しかし、この状態では……!」

「メイリン! 最後に確認したポイントから、落下予測地点を予測! 急いで!」

「は、はい! データ出します!」

 

 メイリンより示されたデータを睨みつけながらタリアはミネルバを嵐の中で動かして、インパルス達が落ちて来るであろう場所へと向かった。

 そして、その予測が正しかったのか。

 もしくは運が良かったのか。

 雲の切れ間からゆっくりと降りて来る二機のモビルスーツを発見する。

 

「艦長! インパルスとセイバーを発見しました! 生きてましたよ!」

「そうみたいね。通信を繋いで」

 

『……ザザ……ルバ!』

「シン? 聞こえる? こちらミネルバ」

『あ、ぁ! ……える! ……さんが! ……も!』

 

「駄目です。殆ど通信が繋がりません」

「分かったわ。まずは着艦させて。事情はそれから聞きます。ジャスティスが居ないのも気になるわ。索敵を続けて!」

「はい!」

 

 

 そして、無事ミネルバに着艦したインパルスとセイバーからシンとキラが救出され、ジャスティスが行方不明となっている事を知る。

 タリアはカガリにその事を伝え、帽子をやや深く被りながら申し訳ないという顔をするが、カガリは特に気にした様子も見せないまま通信を貸して欲しいと言うのだった。

 

「すまないな」

「しかし、代表。この状態では衛星通信は使えませんよ?」

「問題はない。ここは太平洋だろう? それならば、専用回線があるんだ。どんな時でも使える、な」

 

 カガリはメイリンにその回線の事を伝え、ODRというオーブの組織へと繋げる。

 

『なに!? このくっそ忙しい時に! どこの誰!?』

「すまないな。私だ」

『私だって……カガリ!? アンタ、プラントに行ってたんじゃないの!?』

「まぁ、そうだったんだが、色々とあってな。今はプラントのミネルバという艦に乗って、太平洋に居る」

『まぁ、位置は見えるから分かるけど。それで?』

「あぁ。見つけて欲しいモビルスーツとパイロットが居る。それとオーブ行政府にミネルバの受け入れ準備を」

 

「だ、代表!?」

「あー、いや。勝手な事をしてすまない。だが、見る限り艦の状態は酷い物だ。この辺りならオーブが一番近いし。こんな状況ではZAFTの基地も動けないだろう?」

「いえ。それは、そうなのですが……そのような施しを受ける理由は」

「気にしないでくれ。諸君らのお陰で地球の被害がかなり抑えられたのは確かだ。これはあくまでその事に対する礼だよ。何も気にする必要はないさ」

 

 カガリは何でもない事の様にタリアへ言葉を返し、そのままODRの責任者である『ミヤビ・オト・キオウ』との話を続ける。

 そして、オーブの現在の状況と、それに対する対策もだ。

 

 それから。

 それなりに長い時間話をしていたカガリであったが、話もまとまり、タリアに礼を言ってからキラを見て来ると言ってメイリンと共にブリッジを出て行った。

 

 その背中を見ながら、タリアは小さくため息を吐き帽子を深く被るのだった。

 

 

 そして、それから数日が経ち。

 ようやく天候も戻って来たという事で、ミネルバはオーブ連合首長国へ向けて移動を始めた。

 

 既にキラの調子も戻っており、デッキで潮風を受けながら青空を見上げてため息を零していた。

 

「……」

「キラさん」

「ん-? あぁ、ルナかぁ。どうしたの?」

 

「どうしたの? じゃありませんよ。艦長が探してましたよ。隊長が任務を放り出して何やってるんだ! って」

「あぁ、報告書とかはイングリットさんがやってくれるって言うし。何かあったらシュラ君が動いてくれるからねー。隊長は休憩中でございます」

「そんなに勝手してると怒られますよ。ほーら。ちゃんと隊長やらないとー」

「えー。もー。しょうがないなぁ。じゃあ、ルナマリア君! 今から射撃教習を行う! 準備をしたまえー!」

「えぇー!? 今から!?」

「何? 文句あるの? ぼく、隊長だよ?」

「ちぇー。しょうがないなぁ。シンとレイも呼んできますよ! ついでに副隊長たちも!」

「んー! よろしく」

 

 キラはルナマリアに手を振り、再びデッキの柵にもたれかかって、ため息を……。

 

「隊長殿」

「んー? あぁ、今度はシュラ君か。それにイングリットさんも。こんにちは」

「えぇ。お疲れ様です。隊長殿」

「お疲れ様です。ヤマト隊長」

「うん。まぁ、何というか。相変わらず固いねぇ。二人とも」

「まぁ、それが軍隊という物ですからね」

「ファウンデーション王国に居た時にはもっと自由だったけど?」

「自国と友好国とでは違いますよ」

 

「まぁ、その割にはすぐ騎士ごっこをしますよね。シュラは」

「おい」

「私は事実を口にしただけです」

 

 ジトっと睨みつけるシュラをイングリットはツーンと弾き飛ばす。

 何ともデコボコな二人であるが、キラは落ち着かない気分の時に二人が来てくれて嬉しく思うのだった。

 

「ねー。シュラ君。お願い聞いてくれる?」

「はい! 何でも仰ってください!」

「じゃ、僕と模擬戦して」

「それは断らせていただきます」

「ぶー。何でも言うコト聞いてくれるんじゃないんですかー?」

「その様な事、仰いましたかあ?」

「さっき仰ってたでしょ! もう! 忘れちゃったの!?」

「いやはや。隊長殿の教育のお陰か、都合の悪いことはすぐに忘れる様になってましてね。はてさて何のことやら」

 

 キラはシュラの言葉に酷く不満げな顔をしながら策に深くもたれかかった。

 そして、不敵な笑みを浮かべているシュラに文句をぶつける。

 

「僕が知る限り、今ここで一番強いのは君なんだよ」

「それは光栄です。が、そうであるならば、模擬戦をする理由が見えません」

「僕が強くなりたいから。それが理由だけど」

 

 シュラはキラの返答に、大仰な仕草でショックを受けているという様なポーズを取った。

 そして、笑みを浮かべたままキラに再び言葉を向ける。

 

「キラ姫様が強くなる必要などございませんよ」

「そうも言ってられない状況になったんだよ。シュラ君」

「であれば、俺に命じれば良い。眼前の敵を排除せよ! と。さすれば全ての敵を撃ち滅ぼしてみせましょう。それこそが、我が役目」

「それで君が死ぬ所は見たくないね」

「まさか。姫様は俺が負けると?」

「うん。可能性はゼロじゃないでしょ?」

「……」

 

 あっけらかんと、当たり前の様にキラが放った言葉は、おそらくシュラのプライドを酷く傷つけた。

 そして、シュラは演技じみた顔を止め、やや素の状態で嘆息する。

 

「まったく。見くびられたものだ」

「なら、僕と戦う?」

「その挑発には乗りませんよ。ですが、一つ気に入らない事がありますね」

「うん? 君が負けるかもしれないって言った事? でもそれは……」

「違う」

「え?」

 

 ギラギラと燃える瞳でキラを見つめるシュラに、キラは何のことでシュラが怒りを燃やしているのか分からなくなった。

 そして、可愛らしく首を傾げたのだが、そんなキラの疑問に答えたのはシュラではなく、隣に立っていたイングリットであった。

 

「シュラはアスラン・ザラに嫉妬しているのですよ。姫様」

「アスランに?」

「イングリット!!」

 

「その様な大きな声を出さないで下さい。シュラ。隣に居るのですから普通の声で呼べば聞こえます」

「ならばそのふざけた口をすぐに閉じろ! 姫様の前だぞ」

「その言葉。そっくりそのままお返ししますよ」

 

 どこか冷徹な雰囲気のイングリットと、燃える様な闘気を燃やすシュラは相性が悪いのか、今日も今日とて些細な事からぶつかっている。

 そんな二人を見ながら、キラはなんでこの二人をセットで派遣したのかとファウンデーション王国に対して小さな疑問を持つのだった。

 

 しかし、まぁ。

 一度行っただけの国をあれこれ邪推するのは良くないか、と思考を止める。

 

「はいはい。キラ姫様の前で喧嘩しないのー。お姫様命令ですよー」

「しかし! 姫様!」

「はい! シュラ君! 一点減点! お姫様である僕は酷く気分を害しました」

「くっ!」

 

「なんてのは冗談だけどさ。仲良くはやらなくても良いけど、上手くはやってよ」

「はい」

「分かっております」

 

「うんうん。それなら良いけどねー。じゃ、二人もついでにここで射撃訓練やってく?」

 

 キラはルナマリア達が歩いてくるのを見ながら、シュラとイングリットに提案した。

 二人は後ろから人が来る気配に気づき、振り返ってから、なるほどと頷いて、快く射撃訓練に参加するのだった。

 

 そして、まずは見本を見せるという事でシュラがハンドガンを持ち、撃った。

 のだが……。

 

「三発中央から外れてますね」

「有効弾だ」

「まぁ確かに。ですが、外れは外れなので。アスラン・ザラなら全弾当てていたでしょうね」

「チッ! もう一度だ! もう一度!」

 

 シュラが見本として見せた物を、わざわざミリ単位でイングリットが批判した為、終わらないシュラの訓練時間が始まってしまう。

 そんなシュラとイングリットを見ながら、レイは淡々と訓練規定をこなし、シンも何とか同じ様に訓練を行うのだった。

 

 そして、残されている問題児ことルナマリアは……。

 

「あー! もう! 当たんない! なんかおかしいんじゃないの!?」

「ルナはすぐ銃のせいにするよなぁー」

「だからお前は成長しないんだ。ルナマリア」

「いやだって! 近寄って殴ったり、蹴り飛ばした方が早いじゃない!」

「キラさんじゃないんだからさ」

 

「むむ? なんか僕の悪口を言ってるのが聞こえたぞー? 新兵諸君!」

「ハッ! 申し訳ございません! 教官殿! 出来れば、見本を見せていただきたく!」

「ハァー。しょうがないなぁー」

 

 キラはシンに言われ、渋々といった様子で銃を持ち、何の迷いもなく一気に撃ち尽くしてゆく。

 そして、全て打ち終わってからドヤ顔で「どう?」」とシン達に言うのだった。

 

「す、すごい……! 全弾外れてる……!」

「何故それで誇らしげな顔が出来るのか。謎だ」

「キラさんだからな。常識で考えてはいけない」

 

「なんだよー! こんなの当たらなくたって、近づいて殴ったり、蹴り飛ばした方が早いだろー?」

「レベルがルナと一緒」

「えー? 私の方が当たってたでしょうが!」

「そういう事じゃない」

 

 ワイワイと騒がしい中、騒ぎを聞きつけたのか、カガリが面白そうな顔で近づいて来た。

 そして、頬を膨らませているキラを見て、何となく事情を察する。

 

「なんだ? 射撃訓練か」

「えぇ。カガリ様もやってみますか?」

「良いのか?」

「もちろん!」

 

 快くカガリに銃を貸すシンに、ルナマリアは大丈夫なのか? と不安そうな顔をするが、キラよりも綺麗な姿で連射し、アッサリと全弾中央に当ててしまうのだった。

 その、シュラとほぼ変わらない結果に、ルナマリアは唖然としながら結果とカガリを交互に見やる。

 

「ふぅ。ま、こんな物か。少し中央からはズレてしまったな」

「相変わらずだね。カガリは」

「フン。お前も軍人ならこの程度は出来るようになれ。無理だというのなら、今すぐ私の秘書になれ」

「相変わらず無茶ばっかり言うね。君は」

 

 呆れた様な顔でカガリに言葉を返すキラであったが、カガリはそんなキラの手を取り、「仕事だ」と言いながらキラを引っ張ってゆく。

 そして、あ、と思い出した様に振り返ると、いつかの時、好き放題してくれたファウンデーション王国のシュラに意趣返しをするのだった。

 

「そう言えば。アスランは私よりもずっと銃が上手かったな。ま。アスランはキラが最も信頼する男だから。当然だが」

「……!」

「ほら! 行くぞ! キラ! グラディス艦長とオーブに滞在する際のすり合わせをするんだ!」

「えぇー!? そんなの僕必要!?」

「当たり前だ!」

 

 それから。

 キラを引っ張っていくカガリを見送ったシュラは無言のまま銃を手に的に向かって撃ち続けるのだった。

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