ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第17話『私はメイア・シヴァという』

 キラとセナがクライン邸に移り住んでから一ヵ月程の時間が経った。

 クライン邸はキラたちが来てからも、変わらず静かで、穏やかな空気の流れる場所であり、セナの傷も少しずつ快方に向かっている。

 

「セナもすっかり良くなってきたね。顔色も最近はずっと良いし」

「そうですか? 自分ではよく分かりませんが、傷は痛くなくなりました!」

「うんうん。じゃあ前から気になってたし。プラントの中を少しお散歩してみようか」

「「え!?」」

 

 キラとセナの穏やかな会話に、アスランとラクスの声が重なる。

 その驚愕に満ちた声に、キラは、ベッドの上で上半身だけを起こしているセナと二人で見つめるのだった。

 

「どうしたの? ラクス。アスラン」

「あー、いや。その、だな」

 

「ま、まだ外は寒いですし。部屋の中に居た方が良いのではないでしょうか!」

「上着を着れば大丈夫だよね? セナ」

「はい!」

 

「いや、しかし、まだ完全に治っていないんだ。あまり出歩くのは良く無いだろう」

「大丈夫だよ。僕が車イスを押して行くし」

「あ、でも、それだとキラお姉ちゃんに申し訳ないですよね」

「何言ってるの! セナは凄く軽いし。迷惑とか、申し訳ないとか、何も無いよ!」

 

「「あーうー」」

 

 アスランとラクスは何か、何か無いかと探し続けたが、結局良い言葉は浮かばず、キラとセナの外出を止める事は出来ないのだった。

 そして、セナの車イスを押しながら街の中を歩くキラの後ろで、横並びになって歩く。

 

「プラントは街も綺麗だねぇ」

「そうですね。ゴミも落ちてないですし。建物も綺麗に……?」

「どうしたの? セナ」

「あの、道の先で困っている方が居る様に見えたので」

「困っている人?」

 

 キラはセナが見ている方に視線を移して、道の先にいる老婦を見る。

 どうやらベンチに座りながら、何やら手元の端末を操作している様だが、うまく言っていないのか困ったという様な顔で首を傾げていた。

 

「お姉ちゃん……」

「分かったよ。行ってみようか」

 

 セナの甘える様な声に、キラは満面の笑みを浮かべながらセナの車イスを押して、ベンチに座る老婦の所へ向かった。

 

「ん~。どうすれば良いのかしら」

「何かお困りですか!?」

「わ! ビックリしたわ」

「あ、ごめんなさい」

「いえいえ。良いんですよ。それで私に何か御用かしら」

「はい! 何かお困りかなと思いまして! 良ければお手伝いさせて下さい!」

 

 車イスに座ったまま笑顔で話しかけるセナに、老婦は眩しい物を見た時の様に目を細めながら小さく頷く。

 こんな可愛らしいお嬢さんたちにどうにか出来る問題では無いだろうけど、それでも親切には親切で応えたいと、老婦はなるべく優しい声に聞こえる様に心掛けながら言葉を紡いだ。

 

「実はね。私の足は片方が義足なんですけれど。この義足がうまく動かなくなっちゃって」

「そうなんですね。端末お借りしても良いですか?」

「え、えぇ。大丈夫ですよ」

「お姉ちゃん。私も見たいです」

「オッケー。じゃあセナ、はい」

「ありがとうございます」

 

 セナはキラから端末を借りると、何故か車イスに収納されていたキーボードを端末に接続し、車イスの手すりに端末をおいて、高速でタイピングを始めた。

 

「ふんふん。だいぶ古いシステムみたいだね」

「はい。でも、一部修正している所もありますね」

「丸ごとリプレイスするか、新規開発すれば良いのに」

「うーん。でもハードの問題もありますし。古いシステムの方が都合が良いという事もあるじゃないですか」

「それは確かに。何でもかんでも買い替えとはいかないしねっ! と、見つけた! セナ! そこ!」

「流石はお姉ちゃん。凄い早いです」

「ま、セナのお姉ちゃんだからね」

「障害物に反応して、自動で避けるシステムと、筋肉に反応して動くシステムがぶつかってますね。珍しい事象でも無いですし。これは障害が起こりやすいのでは無いでしょうか」

 

「ねね。お祖母ちゃん。義足が動かなくなる事って結構よくあるの?」

「え? えぇ、そうね。最近はよく起るわ」

「なるほど。おそらくは探知システムの方にも問題がありそうですね」

「そっちもついでに直しちゃおうか」

 

 キラとセナは一つの画面を見ながら、ここがこう。そこがソレ。と会話しながら高速で手を動かしてゆく。

 そして、老婦が呆然としている間に、二人はシステムの改修をすっかり終えて、老婦の義足は無事滑らかな動きを取り戻すのだった。

 

「まぁ。凄い。動く様になったわ」

「へへ。良かった」

「良かったです!」

「ありがとうねぇ。お嬢さんたち。何かお礼をしなくてはいけないわね」

「いえいえ! お礼だなんて!」

「私達、ちょっとシステムを触らせていただいただけなので!」

「でも……」

「あー! っと、お元気でー!」

 

 キラはどうしても引いてくれない老婦に困り、そのままセナの車イスを押して通りの向こうへと勢いよく走り去っていった。

 そのまま曲がり角を曲がって、真っすぐに進もうとしたのだが、曲がった先では数人のスーツを来た男たちが立ちふさがっており、先へ進む事が出来なくなってしまう。

 

「っ! な、なんですか!? あなた達は!」

「キラ! セナ!」

 

 何とか車イスを止めて、自身も止まりながらキラは男たちに叫び。

 後ろから追ってきたアスランとラクスも警戒しながらキラとセナに近づいた。

 

 しかし、どうやら彼らはキラやセナに危害を加えようと考えていたワケではなく、何か別の用事がある様だった。

 

「いや、すまない。少々強引な手段を取ってしまった」

「……貴女は」

「私はメイア・シヴァという。初めまして、だな。お嬢さんたち」

「あ、えと。僕はキラで、この子はセナって言います」

「そうか。キラにセナ。すまないな。実は、二人と話をしたくてね。こんな手段を取ってしまった」

「お話、ですか?」

「あぁ。そうなんだ。ほら、さっき、道の途中で困っていた老婦を助けていただろう?」

「え? あぁ、はい」

「実はあの老婦はもう潰れてしまったメーカーの義足を付けていてね。それでよく故障していたのさ」

「……?」

「私たちも何とかしてやりたいとは思っていたんだが、義足は思い出の品だと言うし。システムは複雑で、読み解くのには時間が掛かっていた」

「はぁ……」

「直すにしても再起動とか、初期化とか。そんな手段しか取れなかった訳だが……君たちは彼女の問題をアッサリと解決してみせた!」

「……偶然ですよ」

「偶然なモノか! 遠くから見ていたが、君たちは間違いなく、あのシステムを理解しながら読み解いてゆき、問題点を……探り当てた!」

 

 メイア・シヴァと名乗る、長い銀髪で灰色の瞳を片方を隠した理知的な女性は、キラとセナを見つめながら興奮して語り、二人の行動を指し示す。

 いかにそれが特別な行為であったかと。

 

「それで……もし、それが真実だとして、それが何だと言うんです」

「君たちに一つ頼みたい事があるんだ」

「頼みたい事……?」

「そう。あー、っと、実はだな。今プラントでは、プラントの外にある『邪魔な物』をどかす為に……巨大な人形を開発していてね」

「巨大な、人形……?」

「もしかして、デブリ等を排除する為に、人型の大型機械を作ろうとしているのでは?」

「あー、なるほど。でもそういうのは戦闘機のミサイルとかで破壊するんじゃなかったっけ?」

「平時ならそれも出来ますが、今のプラントは理事国からの圧力を受けていますから。武器を持つのは難しいのかもしれません」

「なるほど……」

 

 キラとセナの話を黙って聞いていたメイアは、人好きのする笑顔を浮かべながら二人の話を肯定する。

 そして、軽やかな口調で言葉を続けた。

 

「やれやれ! 中々察しの良い姉妹だ。ここまで見抜かれてしまうとは、恥ずかしい限りだよ」

「では?」

「そう。我々プラントは今、理事国に睨まれていてね。満足にデブリの排除も出来ないのさ。そこで、武器ではなく、巨大な人形を使って、デブリを排除しようとしていた。という訳なのさ」

「なるほど」

「大変なんですね……プラントも」

「そういう訳さ。どうかな。我々に手を貸してくれないかな。私達コーディネーターが平穏に暮らせる世界の為に」

 

 キラとセナはメイアの言葉にうんと頷いて、彼女に手を貸す事を決めるのだった。

 そして、メイアに案内されるまま車に乗り込んで、走り出す。

 

 会話に割り込む事も出来ず、二人を止める事も出来なかったラクスはアスランと共に、メイアの車に乗り込んでジッと彼女を強く見据えた。

 

「そう睨まないで下さい。ラクス・クライン」

「彼女たちは(わたくし)の友人です。そんな二人に兵器の開発を手伝わせるなど」

「兵器とは伝えなかったでしょう?」

「しかし、作らせるのなら同じことだ」

「しかし、プラントを守る為に、より大きな力を求めるのは当然の事かと思いますが、貴方は違うのですか? アスラン・ザラ。ザラ閣下のご子息であるのなら、理解は出来るかと思いますが」

「……っ」

「『黄道同盟』はザラ閣下とシーゲル・クライン同志を中心として集まった。そしてその目的は、プラントを、コーディネーターを守る事。その為に、我々は今、力を求めている。そうでしょう?」

「しかし、キラもセナさんもプラントの人間ではありません!」

「情報漏洩等は問題にならないでしょう。お二人のご友人だという事なのですから」

「そういう問題ではなく!」

「そこまでご不満なら、全てを話しても私は構いませんよ? どうか、貴女の大切な友人方を守る為に、ナチュラル共を殺す兵器の開発を手伝ってくれ。とね」

「そんな言い方……」

「一目見て、お優しい方だという事は分かりました。だから、お二人の命を守る為なら協力してくれるでしょうね」

「そんなやり方で得た力に意味なんかない!」

「意味を求めている状況では無いのです。子供には見えないかもしれませんが……必死なのですよ。我々は。人の心を捨ててでも、成し遂げなくてはいけない事がある」

 

 車の窓から外へと視線を移して、流れていく平穏な街並みを見ながら、疲れた顔でメイアは呟いた。

 その表情に。

 父から事情を聞いていたアスランも、これから起こる事を知っているラクスも。

 何も言えないまま、ただ黙る事しか出来ないのだった。

 

「はぁ……申し訳ございません。どうかご理解をいただきたいです。これも全ては平和の為なのですから」

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