ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第174話『PHASE-14『明日への出航2』』

 キラとユウナがハウメアの女神が祀られている祭壇まで車で向かっている頃。

 アスランはアークエンジェルでアスラン専用にカスタマイズされたムラサメの最終調整をしていた。

 そして、そんなアスランの元へとフリーダムで出撃する予定のオルフェが近づいてくる。

 

「アスラン・ザラ」

「……オルフェ・ラム・タオか。何の用だ」

「いやなに。死人が平然と歩いているからな。少しばかり話をしてみようと思っただけだ」

「俺はまだ死んでいない。行方不明だ。オーブも公式に、そう発表しただろ?」

「あぁ。当たり前の様にアークエンジェルの格納庫に居るワケだがな」

「……」

「理由を聞きたいものだな。アスラン・ザラ。何故、死んだフリなどをしている」

 

 オルフェの問いに、アスランは少しばかり考える仕草をした。

 そして、再びオルフェへと視線を戻してから口を開く。

 

「偽物が、出てきたんだ」

 

 アスランが呟いた言葉に、オルフェはピクリと眉を動かす。

 それは、マリューやムウから聞いた話と奇妙に一致した。

 

「偽物?」

「最初は……お前の偽物が現れた。ファウンデーション王国にな」

「それが私だとは思わなかったのか?」

「バカを言うな。大戦の後、キラとセナを護る様にとしつこく言ってきた男が、あの様な事をするか。アレは間違いなく偽物だ」

 

 ハッキリと、そう言い放つアスランにオルフェは思わず吹き出してしまいそうになるのだった。

 前の世界から含め、今日という日までずっと敵であった男から、奇妙なほどに信頼されている。

 それは何ともおかしな事だ。

 

 まぁ、オルフェ自身もキラとセナに関してはアスランを信用していたワケだが。

 

「そして次に、ラクスの偽物が現れた。キラはアレを影武者だと言っていたが、ほぼ同時期に二人も偽物が現れたんだ。しかも両方キラとセナに近しい人物。これで何もないと思うのは愚かだろう?」

「だからお前は、パトリック・ザラの息子であるアスラン・ザラの偽物を誘い出す為に、あえて行方不明となった、か?」

「あぁ。しかもおあつらえ向きに『アスラン・ザラ』は英雄的な行動をして行方不明。ミネルバにはジャスティスもある。華々しい帰還にはもってこいだろ?」

「確かにな。それで、お前はソレを見つけてどうするつもりだ」

「今はまだ、分からない」

「分からない、か」

「あぁ。敵の狙いは見えないし。キラとセナを手に入れて何をするつもりなのか。それも分からない……だが」

 

 アスランはギュッと右手を強く握りしめる。

 その力で、パイロットスーツが少しだけ軋む音がした。

 

「俺はキラとカガリを守りたい。セナを取り戻して、三人をまた守るだけだ。敵が、どれほど強大だとしてもな」

「そうか」

 

 オルフェは強いアスランの眼差しにフッと笑みを零した。

 そして、アスランに笑いかける。

 

「ならば、私とお前の進むべき道は同じという訳だ。アスラン・ザラ」

「オルフェ・ラム・タオ」

「貴様の事は気に入らん。だが、今は共闘してやっても良い」

「そうか。まぁ、そうだな。別に親しくする必要はない。ただ、同じ目的を果たすだけだ」

「あぁ。その方が気楽でいい」

 

 アスランとオルフェは握手をするでもなく、話が終わったらさっさと自分の機体の方へ戻ってしまった。

 何ともビジネスライクな関係である。

 

 そんな二人を遠くから見ていたムウとマードックは小さくため息を吐いて口を開いた。

 

「何とも不器用な」

「キラの嬢ちゃんかセナの嬢っちゃんでもいれば違うんでしょうけどねぇ」

「そうだなぁ。しかし、キラは救出してもミネルバだぜ。こっちの艦には乗らねぇ予定だ」

「えぇ!? それは、大丈夫なんですかい?」

「まぁ、一応正規のZAFT艦だからなぁ。表立ってキラに何かをする事はねぇだろうよ。しかし……妙に気になる事もあるんだよなぁ」

「なんですかい?」

「坊主が言ってただろ? 偽物が居るってさ。俺も、少し前から、ちと引っかかる事があってな」

「まさか、フラガ一佐の偽物が?」

「いや、俺じゃねぇ。あの野郎。ラウ・ル・クルーゼと似たような感じの奴が、居る気がするんだ」

「それはまた……厄介な」

「あぁ。本当にな。だがまぁ、アレはアレで別物だし……だー! 考えてても分かんねぇ!」

 

 ガシガシと頭を掻くムウにマードックは哀れな物を見る様な目を向けていたが、そんな時にアークエンジェル内部に艦長より連絡が入る。

 作戦時刻となった為、アークエンジェルを発進させると。

 

 

 そして、ブリッジでは静かにアークエンジェル発進の準備が進められていた。

 

「機関、定格起動中。コンジット及びAPUオンライン。パワーフロー正常」

「遮蔽フィールド、形成ゲイン良好。放射線量は許容範囲内です」

「外装衝撃ダンパー出力30%でホールド。気密隔壁及び水密隔壁、全閉鎖を確認。生命維持装置正常に機能中」

「主動力コンタクト。システムオールグリーン。アークエンジェル全ステーション、オンライン」

 

「注水始め!」

 

「ラミネート装甲、全プレート通電確認。融除剤ジェルインジェクター圧力正常。APUコンジット。分離を確認」

「150……180……調圧弁30。FCS及び全兵装バンク、レミテーターオンライン。フルゲージ」

 

「メインゲート開放」

 

「拘束アーム、解除。機関20%、前進微速」

 

「水路離脱後、上昇角30。機関最大!」

 

「各部チェック完了。全ステーション正常!」

「海面まで10秒、現在推力最大」

 

「離水! アークエンジェル発進! 同時にカタパルト解放! フリーダム! ムラサメ発進!」

 

 海面より飛び出した白亜の艦と、そこから飛び出した二機のモビルスーツは、姫を助ける為にオーブ本島へ向けて飛び立つのだった。

 

 

 アークエンジェルを飛び出したフリーダムとムラサメであるが、目的地はそれぞれ違う。

 フリーダムを駆るオルフェはハウメアの女神の祭壇へと向かい、ムラサメを駆るアスランはカガリの待つオーブ本島の山奥だ。

 

 二人は特に別れを言い合う事もなく、それぞれの場所へ向けて真っすぐに飛ぶ。

 

 無論、オーブの領空に突如として現れたモビルスーツは即座にオーブ国防軍に捕捉され、迎撃部隊が出撃する事となった。

 だが、まぁ。

 これも全て対外的なパフォーマンスでしかない。

 

 オルフェは迫りくるムラサメの翼をビームサーベルで斬り落とし、何の迷いもなくハウメアの女神の祭壇の上に居たキラの目の前に舞い降りた。

 

「この様な婚儀! 認めるワケにはいかないな!」

 

 そしてオープンチャンネルで宣言をするとキラに向かってフリーダムの手を伸ばす。

 

『な、なんだぁ!? お前は! き、キラ!』

『危険です! ユウナ様! お下がりください!』

『ぐほっ!』

『ユウナ様をお守りしろー!』

『応!』

『き、きさまら! 邪魔だ―! 僕の上にのるなぁー!』

 

 オルフェはキラの花婿として立っていた男が殴られ、多くの軍人に押さえつけられている様子を見ながら、やや引いた顔をしていた。

 だが、今大事なのはキラの事だとコックピットまで連れて来る。

 

「オルフェくん」

「キラ。無事か?」

「うん。来るのが早くてビックリしちゃった。本当はもう少し遅く来る予定だったと思うんだけど」

「艦長からの指示だ」

「それは知ってるけど。オルフェ君が僕のところに来るまでの時間の事を言ってるんだよ」

「さて、何のことやら」

「もうちょっとオーブ軍と戦ってから来る予定だったのに」

「良いだろう? 別に。早くて困る事は無いんだ」

「まぁ、ね」

 

 キラはまったく相手にしてくれないオルフェに苦笑しつつ、アークエンジェルへと向かっているフリーダムに声を上げた。

 

「オルフェ君。向かうのはミネルバ。だよ」

「別に良いだろう。アークエンジェルでも」

「オルフェ君」

「キラの居場所はアークエンジェルの筈だ。ZAFTじゃない」

「だとしても。僕は今、ZAFTに所属してるから」

「……」

「お願い。オルフェ君」

「……わかった」

 

 オルフェはキラに言われ、大人しくミネルバへと機体を向けた。

 そして、オーブから既に出航しているミネルバの居場所を探し、それに接近する。

 

 ミネルバはフリーダムの接近に気づき、すぐに迎撃としてインパルスとブラックナイトスコードを出撃させるのだった。

 

「オルフェ君。インパルスに通信を繋ぐね?」

「あぁ」

 

「シン君。聞こえる? 僕だよ」

『キラさん!? キラさんが動かしてるんですか!?』

「うーん。僕は乗ってるだけなんだけど……ごめん。今からそっちに移っても良いかな?」

『えっ!? ちょ、ちょっと待ってくださいね!』

 

 キラはコックピットハッチから外へ出て、フリーダムの手の上に乗った。

 そして、近づいてくるインパルスと位置を合わせ、オルフェはキラをインパルスへと導いていく。

 

 そんな中、ブラックナイトスコードより、フリーダムへと通信が入る。

 

『……貴様。オルフェ・ラム・タオだな?』

「その声は、シュラ・サーペンタインか。久しいな」

『裏切者が! よくも俺の前に顔を出せたものだな!』

「フン。裏切りか。下らん」

『なに!?』

「与えられた役目の中でしか生きられない者が、そこから外れた人間を裏切りとはな。冗談もそれくらいにしてくれ」

『貴様ぁ!』

 

 今にも飛び掛かってきそうなシュラの気配に、オルフェは戦闘する為の準備をする。

 が、シュラは言葉だけで実際にはブラックナイトスコードを少しも動かす事は無かったのである。

 

「……?」

『オルフェ・ラム・タオ。今は見逃してやる。キラ姫様が巻き込まれるかもしれんからな』

「キラ姫様……?」

『次、貴様と再び相まみえた時! その時が貴様の終わりだ!』

 

「フン」

 

 オルフェは既に切れた通信の向こうへと鼻を鳴らした。

 しかし、それはそれとして……インパルスの手の上からオルフェに向かって手を振ってるキラを見やる。

 

「まさか。あのシュラも落としたのか? キラ……君は本当に、恐ろしいな。しかし……イングリット。君もそこにいるのか」

 

 オルフェは、少しばかり考えてからフリーダムをアークエンジェルへと向けて動かした。

 スラスターを全開にし、古い感情を捨て去る様に。

 今、目の前にある、やるべき事をなす為に。

 そのことだけに集中するのだった。

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