ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第176話『PHASE-15『戦場への帰還2』』

 タリアとキラがデュランダルと話をしていた頃。

 ミネルバのクルーは休暇という事で、カーペンタリアの町でショッピング等をして楽しんでいた。

 

「また休暇かぁ。なんか休暇休暇で逆に疲れちゃうねー」

「そう? なら、アンタは仕事してれば良かったじゃない」

「そういう事じゃないよ! お姉ちゃんのイジワル!」

「ハァー。でも、どうせならキラさんと買い物に来たかったなぁ」

「そうだねぇ」

 

 メイリンとルナマリアは、ため息と共に遠い空を見上げ、しかし居ないものはしょうがないと再び化粧品等を買う為に店を巡るのだった。

 

「じゃ、まずはココね!」

「別に良いけど。また化粧品買うの?」

「良いじゃない。またいつ出航命令が出るか分からないんだから。今のうちに買っときゃなきゃ」

「悪いとは言ってないわよ。何が何でそんなにいるんだか知らないけど」

「う……悪かったわね」

「だから、悪いとは言ってないじゃない? 私もキラさんも全然使わないしさ」

「ウッサイなぁ……お姉ちゃん達には分からない話だよ。文句があるなら一人で行くから良いよ!」

「はいはい。私が悪かったわよ」

 

 ルナマリアはいじけるメイリンに謝罪し、メイリンと共にカラフルな看板の店に入っていくのだった。

 しかし、軍人でここまで見た目にこだわる子も珍しいとルナマリアは色々な商品を試しているメイリンを見て思う。

 

 なんともまぁ、真剣な物であると。

 軍務にもこれくらい真剣なら良いのだけれど。生憎とメイリンは片手間で軍務が出来てしまうほどに優秀なのだ。

 だから、普通の人間が気にする余裕のない見た目にこだわる事が出来る。

 

 しかし、そんな優秀なメイリンは自分の優秀さをどうとも思っておらず、見た目というそこまでルナマリアが重要視していない部分で嫉妬してくるのだ。

 ルナマリアはミネルバで唯一、キラの推薦で乗艦した妹を見て、小さくため息を吐くのだった。

 

「やってらんないわ。ホント」

「なに? 良い奴見つからないの?」

「まぁ、ね。私は全然詳しくないから」

「ちぇー。厭味ったらしいの。ほら、手貸して。こうやって実際に塗ってみて試すの。じゃないとどういう色が出るか分からないんだから」

「……アンタ。こういうのどこで覚えて来るの?」

「本とか色々見て覚えたの!」

 

 何もしなくても可愛い姉とは違うんだ! とメイリンは言いたそうにしながら叫んでいたが。

 ルナマリアにしてみれば、こんな事を調べる余裕があるくらい優秀な妹が羨ましいのだ。

 

 やはり両者はどこまでもすれ違ったまま、仲良く喧嘩をしながら買い物をするのであった。

 

 

 ルナマリアとメイリンが微妙なすれ違いをしながら仲良く喧嘩をして買い物をしている頃。

 シンとレイは折角だからと、シュラと共に食べ歩きなどをしていた。

 

 親睦を深めようとわざわざ考えたワケでは無いが、まぁ一緒に戦っている仲間であるし。

 キラからも仲間同士、仲良くしておく方が良いと言われていた事もあるし。

 それとなく誘ったワケであるが……誘われて付いて来たシュラも当初はあまり興味は無さそうであった。

 

 シュラもシュラで、キラが仲間同士なんだから仲良くしておけ。とよく言っていたから、たまには良いかと付いて来ただけである。

 だから、正直な所食べ歩きなどに興味はなかった。

 食べ物など……栄養補給という観点から考えればスピードが命。

 ならば、食べやすく栄養価の高い物を食べるのが正義であると。

 

 戦士である役目を背負った己には、その様な食事こそが最も相応しいと。

 そう考えていた……およそ一時間程前までは。

 

「おぉ。ただ肉を焼いて、タレを付けただけだというのに! 上手いな! これは!」

「でしょう?」

「あぁ。これほどの物は食べたことがない。よほどの品か」

「いや。その辺に売ってる。副隊長が言った通り、ただ肉を焼いてタレを塗っただけの品ですよ」

「なんだと!?」

「サーペンタイン副隊長は食事も簡素なものが多いですからね。こういう品には驚かれますか」

「あぁ! 驚きだ。まさか世界にこの様な物があるとは! 母上は必要ないと言っていたが……! うぅむ、これは……」

 

 大仰な仕草で感動を示しているシュラに、シンとレイは互いに目線を合わせながら肩をすくめた。

 適当な気持ちで始まった親交であるが、思ったよりも好感触で何だか複雑な気持ちである。

 

「そこまで気に入ったのでしたら、俺の買った辛口も食べてみます? はい。一切れ」

「良いのか?」

「良いですよ。気にしないでガブっとやって下さい。俺もレイも気にしてないですよ」

「そうか。では貰おう」

 

 シンが別の串を咥えながら、持っていた串の一本をシュラに渡す。

 シュラはその肉を一口食べてから再びシンへと串を戻した。

 

 そして、シンもレイと一口ずつ分けて食べ、感想を言い合う。

 

「中々良い味だな。しかし辛味が強すぎるか?」

「それが良いんだろ? 別に辛すぎたらジュース飲めばいんだからさ」

「それは料理への冒涜だろう? 料理はあくまで料理だけで完結するべきだ」

「レイは相変わらずこだわるなぁ~」

 

「う、うまい……!」

 

 シンとレイがいつもの様に食べ歩き品評会をしている頃。

 一番最初に食べてからずっと無言であったシュラが天を仰ぎながら涙を流していた。

 その姿に、シンとレイはやや引きながら、声をかける。

 

「それほどですか?」

「あぁ。今、世界の広さを噛みしめている所だ」

「な、なるほど」

 

 シンとレイの中で、シュラ・サーペンタインという男の評価が、堅物でアスラン嫌いの、気難しい人という評価から、何だか愉快な人へと変わりつつあった。

 そして、そんな三人の元へやや離れた所から声がかかる。

 

「あー。シン君! レイ君。シュラ君。三人が一緒なんて珍しいね」

「あ。キラさん」

「キラさんも休暇ですか?」

「うん。会議も終わってね。だーかーら。僕もまーぜて」

「良いっすよー。今、ちょうど食べ歩きの一件目が終わった所で」

「ほぅほぅ。それで? 味の方はどうでしたかな?」

「まだあるんで一口どうぞー」

「ありがとー。シン君やさしー。では一口失礼します。はむ」

 

 キラはシンが持っていた串にそのままかぶりついて、もぐもぐと食べる。

 そして、ふむふむと言ってから、判断を下した。

 

「ふむ。少々辛いですね?」

「ほら見ろ。シン」

「えぇー!? キラさん! ジュース飲んで! ほら。ジュース!」

「はいはい」

 

 キラはシンが差し出したコップのストローに口を付けて、チューっと中のジュースを飲む。

 そして、再び思考を巡らせた。

 

「んー。辛さがマイルドになって、良い感じだね。これはこれで良し!」

「ほら見ろ。レイ」

「キラさんは評価が甘いからな。次の店に行くぞ」

「へっへ。負けた言い訳を用意しておけよ?」

「お前もな」

 

 シンとレイがニヤリと笑いながら拳をぶつけ合い、そんな二人をキラが微笑ましい物を見る様な目で見ている頃。

 ずっと無言であった男が動き始めた。

 

「は、破廉恥なー!!?」

 

「へ?」

「姫様! い、今。シン・アスカとく、くち、口づけを!」

「はい?」

「あー。間接キスって事言いたいんじゃないっスか? ズズゥー」

「ふーん。シュラ君ってお堅いんだねぇ」

 

「貴様! シン・アスカ! 言っている間にジュースを飲むな! それはキラ姫様が口をつけた物だぞ!」

「はぁ。まぁ、そうっすね。んぐんぐ」

「今度はキラ姫様が口を付けたもので!」

「はいはい。シュラ君。目立っちゃうから黙ってねー」

 

 キラは近くで売っていた焼き菓子を一つサッと買ってくると、それに軽く口づけをして付けた場所をシュラの口に突っ込んだ。

 無論、口を付ける所から見ていたシュラは、この行為により完全に機能を停止する。

 

「さ。静かになった。次の店に行こうか」

「良いんっすか?」

「大丈夫。ほら。シュラ君行くよ」

 

 シュラはキラの声に反応し、ぎこちないながらも動き始めた。

 それを見て、キラは上手上手と笑っていたが、これによりシンとレイの中でシュラは何だか愉快な人から愉快な人へと評価が変わったのであった。

 

 

 シン達が楽しく食べ歩きをしている頃。

 シン達の誘いを断り、自室で休む選択をしていたイングリットはベッドで横になりながら天井を見つめていた。

 

 いや、正確には天井を見ているのではなく……つい先日遂に再会してしまったオルフェの事を考えて居たのである。

 

「オルフェ……生きてたんだ」

 

 考えている事を実際に口に出してみれば、イングリットの中で温かい気持ちが芽生える。

 オルフェがファウンデーション王国を出て行った日から、ずっと、ずっとイングリットの中で引っかかっていた事。

 

 それが、ようやく紐解かれていく様な喜びがあった。

 母であるアウラより、オルフェは死んだと聞かされていた。

 だから代わりのオルフェを作ったとも。

 

 しかし、イングリットは『あのオルフェ』がそんな簡単に死ぬとは思えず、いつかどこかで会えたらとずっと願っていたのだ。

 そして、それが叶った。

 

 無論、まだ言葉は交わしていないが……それでも彼はまだ生きていたのだ。

 これがどれほど嬉しいか。

 

 イングリットはベッドの上で転がり、枕を抱きしめながら小さく息を吐く。

 ほぅと、安堵とも喜びともとれる息を吐いて……そして小さく微笑んだ。

 

「オルフェ」

 

 イングリットは再度オルフェの名前を呟いて……あの時の、オルフェがファウンデーション王国を去る時に交わした言葉を思い出していた。

 

『オルフェ? どこへ行くの?』

『ここでは無い所だ』

『でも……アウラ様は』

『イングリット』

『……!』

『君が、彼女ではない事は知っている。分かっている。だが……言わせてくれ』

『な、なに……?』

 

『役目に縛られるな。君はもっと自由に生きられる筈だ。君は誰よりも、人間らしく生きていたのだから』

『生きて、いた……?』

『ではな。……もう会う事も無いだろう』

『待って! オルフェ! っ!?』

『っ!?』

 

 あの時、最後にイングリットがオルフェに触れた瞬間に見えたビジョン。

 どこか……おそらくはモビルスーツの中で……血まみれのオルフェに抱き着いて泣いていたイングリットの姿がイングリットの中から離れない。

 

 そして、同時に聞こえた声も。

 

『オルフェを助けて……今度こそ』

 

 その声は消えそうな声で。

 でもオルフェを通じて、確かにイングリットの中に届いていた。

 

 そして、その声は……イングリットと同じ、声をしていた。

 

「オルフェ……貴方にもう一度、会って話がしたい」

 

 イングリットは目を閉じながら一粒の涙を流すのだった。

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